イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

膚の下

神林長平早川書房。とにかく、分厚い本だった。もちろん量も多い。二段組684ページ。目も疲れれば首も痛い。だが、一気に読ませる驚異的な文章の上手さは、流石に伊達や酔狂で日本SF界最後の重鎮まわけではない。まず、単純に物語のつくりが上手い。人間の道具として作られた主人公が、部下と仲間を得、戦い、成長していく。小説としての上手さが図抜けている。そこでまず、読まされてしまう。そして強調したいのは、構成の上手さ。これだけの長編ともなると複線の外し忘れの一つや二つあるのだが、ほぼ完璧な構成で過去から未来へと繋がり広がる思いと夢を描いている。このスケールの大きさは、最近読んだ小説のなかでもピカイチだろう。そして、神林作品の最大の特徴である思索性。神と人、人と人形、そして世界。SFというジャンルでしか捉えられない大きな言語の網が広がり、そして収束していくこの快楽は、SFを呼んでいて本当によかったと感じる瞬間である。このような快楽を与えてくれたこの作品にこころから感謝する。