イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

青の歴史

ミシェル・パストゥロー、筑摩書房。「青」という色に関する歴史書。いや、とにかくまず博識の本である。西欧において「青」がたどった歴史を纏め上げるために使用される知識は歴史学、美学、美術史、宗教学、経済学など多岐にわたり、しかもそのどれもが非常に深い理解の下で的確に運用されている。
その知識をバックボーンに、的確な視線と文責でかかれる文章は非常にわかりやすい。さらに、多数の図版が「青」という色の歴史の本であるこの本に、可読性と説得力を与えている。歴史という意味でも、色彩という意味でも。
個人的に関心したのは、「中世においては色彩の混交は神の秩序を乱すと考えられ、染色業者は紫を出すために赤と青の染料を混ぜることをしなかった」というエピソードだったり、「ローマ期から重んじられていなかった青が最初に地位を見出したのは、黒を纏う事しか許されなかった喪婦マリアが、聖母マリアとなった中世末期である」というエピソードだったりする。とにもかくにも、「青」の一文字の歴史を的確にそして読みやすく描ききった良作である。