イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Fate/hollow ataraxia

つーわけで達成率100%到達、と。
ネタバレ感想をするので、読みたい人は


うん、良かった。まずはじめの感想はそれである。
エロゲーが基本的に一人称メディアであることを逆手に取った、シロウ←→アvンジャー入れ替えのトリックはなかなかに効果的だった。アヴェンジャーという、前作では絶対悪、否、意識無き怨念装置として描写された存在を、ここまで人間として描くのは、なかなかいい。
双子の入れ替えトリックと同様、言葉使いで早い段階で入れ替えトリックには気付くと思う。ただ、それがカレンとバゼットの前だけ、というのはありだ。ありだけど、僕には、凄く、哀しかったのだ。
正直な話をすれば、聖杯でのバゼットとアヴェンジャーの別離には、落涙してしまった。僕はあまり泣かない人間なので、自分で驚いた。それは、哀しかったんだと思う。そして、「普通には、飽きた」といえたアヴェンジャーに「よかったね」という気持ちが強かったんだと思う。
今回、正直日常パートがダルい。僕はダルな話は大好きだが、それにしたって少々ダルすぎだ。でも、それはアヴェンジャーが望んだかけがいのないもの。タイトルの「hollow ataraxia」とは、結局繰り返す四日間自体のことではなく、アヴェンジャー=無が結局自らの意思で捨て去った無為な意義のことだと、誤解してしまうぐらい。
僕はこの、アンリマンユと呼ばれた存在の話が、好きだ。たとえ、その存在を世界で二人しか覚えてくれなくても。覚えてくれている存在が残ったというエンディングは、ああ良かったなぁと、少し思った。
演出に関してはややくどい部分もあるが、前回よりもさらに使い方を覚えた感じがある。いろいろ面白く出来ていた。脚本・話の運びに関しては、ダルな日常とソリッドな「四日間の夢」の対比が個人的にはうまくいっていたと思う。全体のからくりを考えるとなおさらである。新しく加わった人の脚本もシームレスな感じで、違和感なく楽しめた。
しかし端キャラをここまで取りあえげて、しかもギャグテイストないじり満載でありながら、最後のサーバント大集合防衛線のかっこよさは凄い。やっぱり奈須きのこのキャラクタの掘り込み方は、当代弌といっていいものだと思う。
前回参加組で株を上げたのはランサー兄貴(VSバゼット戦の男ぶり)、虎ねえ(暴れるだけの生き物じゃない心遣いを発揮)、イリア(今回のベスト可愛い生き物賞)あたりで。葛木とキャスターはまぁオレはこのカップリング厨房なので控えめに言うと最高。なんてハードボイルド。あとエンディング後の藤ねえの相談に乗る葛木は、カップリング厨の寝言を全部差っ引いてもかっこいい。
新キャラはどれもとても好き。アヴェンジャーは言うまでもなく。この話の主役として、永遠に続く四日間を、美しい夢の日々を、捨て去ることが出来た彼はとてもいい。カレンは、最後の最後で追い足つめてきた感じ。アヴェンジャーとのセックスシーンは、TYPE−MOON全体を見回しても一番好き。そして、ガラスの階段での別れ。ここでも泣いちゃうんだなぁ。ううむ。
歪んだシナリオと、歪んだPC1と、歪んだヒロインって感じ。んで歪んだシナリオコネであるバゼット姉さんはかっこいいね。ああいうスラットな女の人はとても好き。アヴェンジャーのことを覚え居ているのが、何より好き。
ともかく非常に楽しく、美しく、良い作品だった。前回がモラルの話だったわけだが、今回はなにしろ「この世全ての悪」が主役なわけで、うって変わってアモラルな話だ。でも、それは月まで届くガラスの階段、虚空の中の伽藍堂という美しいイメージと相まって、とてもモラリスティックな結末を迎える。「腐り姫」以来、どうにもこういう価値転倒を念頭に置いた作品に、ひどく弱い。
ともかく満足でした。あ、ただ
全体的に、服飾デザインのセンスの悪さは本当にどうにかしてほしい。

追記;蛇足な考察
後日談に出てきてないメンバーでおそらく、第五回聖杯戦争を生きて迎えられなかったのはマキリ、真アサシン、アサシン、葛木、キャスター、バーサーカー、イリア、ギルあたりは本編の台詞で確定だと思う。アーチャーは不明。ただ、凛がセイバーのマスターで魔力供給しているのだとすればアーチャーは現界できていない? ランサーは言峰の衣鉢を継いだ可憐がマスターをしていることだろう。もしかすると、セイバーも自分の意思で死すべき運命を受け容れているのが五日目の真実なのかもしれない。考えてもせん無いことなのだが、ね。

追記の追記
タイトルは「Fate/Recycling Daybreak」とかでも良いなぁ、とか思った。あの四日間は、ウツロじゃなかったと、そう思うのだ。