イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

作家の自伝 澁澤龍彦

澁澤龍彦日本図書センター。僕はエッセイというものはあまり読まないのだが、澁澤と池波と向田は別格でよく読む。というわけで目に付いたので図書館の棚からもって来た。
やはりいい。切れ味と才気、そして何よりユーモアに満ちた、軟らかな文章。そのくせ怜悧な筆の力がしっかりとした土台になっている。まさに才気。わかりやすい文章というのはエッセイに必須の条件だが、さらりと知恵の極北を使いこなしつつ平易、というのは、やはり実力、むしろ人徳の領域のように感じる。
「狐のだんぶくろ(この本に載っているのは抄であるが)」に見えるノスタルジーの的確な切断。目に浮かぶような情景と香り、音、味、匂い。才気溢れる、という表現が生ぬるいほどの知恵人であった澁澤の、平易で滑らかな文章は、やはり面白かった。