イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

サイエンス21

ミチオ・カク、翔泳社。コンピューター、DNA、量子論という三つのポイント、2020年から2050年という時代に的を絞った未来技術論。150人超という大量のインタビューと、自身科学者である筆者の博識に支えられたなかなか確かな本である。出来ないことは出来ないと切り捨てつつ、この本が執筆された1997年段階ですでに急速な成長を見せていた三分野を掘り下げ、「素晴らしき新世界」の姿をいきいきと描写してくる。
未来論の本が陥りやすいパターンは、一つはいまだ実証されていない理論をさも確実であるようにして論を展開するパターン、もう一つは無意味に科学が倫理性を失うことを強調し、漆黒の未来を提示するパターンである。この本は両方のパターンから脱却している。それは資料への深い読み込みと確かな知識、そして、各論の最終論として提示される「もう一つの未来」、経済や政治や倫理において致命的なミスをしでかした結果、これらの科学技術が致命的な結果を引き起こす未来予測をしっかりと提示しているからである。
科学技術は発展する。否応もなしに、我々の快楽を求める心という暴れ馬に引きずられ、経済原則を燃料に走り続ける。そして、その道のりは勝手に決まるものではないと思う。それを決めるのは僕らで、決めなければならないのは僕らだ。そのことを、科学技術が提出する未来予想図であるこの本は考えさせてくれる。良著。