イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

謀略と紛争の世紀

ピーター・ハークレロード、原書房。サブタイトルは「特殊部隊・特務機関の全活動」 おおむねその通りの内容で、とにかくみっしりと、特殊部隊と情報機関がいかに、冷戦の代理紛争としてアルバニアインドシナ、マラヤ、朝鮮半島アルジェリア、ボルネオ、チベット、ヴェトナム、カンボジアラオスアフガニスタン――もちろん他の場所でもそのような暗躍はあっただろう――で失敗してきたか、を書き連ねた本。
とにかく食いにくい。入り組んだ記述と、味のない事実の連続で可読性は低い。だが、地べたを這いずり回るような緻密な記述が、逆にいかにして西側諸国が冷戦の代理戦争を旧植民地に押し付け、薄汚い工作をし、情報整備の失敗や逆スパイ、人事関係の個人的感情などで失敗してきたか、を的確に教えてくる。
特に今は対テロ特殊部隊の第一人者としてスポットライトを浴びている英軍SASの、異常なまでの植民地紛争への駆り出されぶりは目を疑うものがある。やってることは地元民の虐殺と、内戦の扇動。ヒーローの所業ではないが、この本に載っている資料の背骨は確かであり、つまりはSASは軟弱なヒーローではなくやはり軍事組織――しかも非正規線をメインとする――なのだ。
そんな発見がある本である。確かに大量の記述と、軍事資料に特徴的な英略語―OSGだのSISだのFIMだのAAFAだの―が連発する文章は読みにくい。それでも、大量の資料の裏側から事実を引っ張り挙げ、冷戦下の代理戦争を再構築したこの本は面白い。良著。