イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

リリアとトレイズ 4(下)

時雨沢恵一電撃文庫。つうわけでリリトレ下巻。今回は徹頭徹尾、時雨沢鉄錆びモードであり、血と雪と血と血と銃弾ばっかりの大殺し合いでございました。リリトレイチャイチャは次巻以降に持ち越しかなと。んでもってその殺し合いですが、乾いてるなぁ。そして、乾いているからいいなぁ。
時雨沢恵一は、ひどくシニカルな作家だ。文体の乾燥度もそうだし、ジュブナイルなキャラクターと物語の中にポン、とひどく乾いていて、的確な死人を放り出す。時雨沢恵一の描く死は乾燥している。死体の描写は細緻でありながら感情の色が無く、それが訪れる状況自体にドラマ性は薄い。時雨沢恵一の操る死神は、物語をわかっていない。
それがいい。人が死ぬのは、乾いたことだ。藁のようにではなく、震えながら死ぬのか。はたまた、震えながらではなく、藁のように死ぬのか。ヘルダーリンはどうでもいいとして、時雨沢恵一の場合は、人死には乾いている。乾かしている。作家としての文体を駆使し、小説としての上げ下げを操作して、徹頭徹尾水気を抜いている。それがいい。それでいい。人が死ぬのだから。
そういう意味で、今回人殺しを仕事にしているトラヴィス少佐がバリバリ活躍したのは一つの宿命かな、と思う。僕はトラヴィス少佐がとても好きなので満足である。そして、その血を継ぐリリアは乾いた死を受け入れず、トレイズは十五にして乾いた死の与えてとしての自分を躊躇わないあたりに、乾いていない人間の物語としての小説と、それを描く時雨沢恵一という作家の巧さを見るような気がするのだ。