イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ボトルネック

米澤穂信、新潮社。というわけで田中君に米澤穂信の小説を借りて読んだ。帯には散々「苦いよ」と書いてあったわけですが、そのとおり、苦かったです。相も変わらず構築の巧さが見える筋の作り方と、ワンアイデアを追求する話の運び。キャラクター間の掛け合いに味がある米澤先生には珍しい感じの話ですが、言葉の使い方と小説の運び方は流石、と言える巧さ。
登場人物は高校生だし、青春ミステリというくくりも間違ってはいないと思う。しかしこの小説が対象にしているのは青春、と言うことよりももう少し横幅の広い部分だと思う。それは僕の個人的な資質に、この本が扱っている題材が刺さると言うだけの話なのかもしれない。が、どうあれ刺さる小説は強い小説だ。
この本に限らず、米澤穂信の小説には苦さの中の甘さと、甘味の奥の毒を隠している。そこがこの作家の巧さなのだが、今回は毒を表に出してきた。古典部シリーズの爽やかさの奥の陰影と、この本の苦味の奥の光。それは青春小説、というラベル張りを拒絶できる堅牢な小説の力を宿した書き口とあいまって、この作家にし書けないなにかを本に宿すことに成功している。
ワンアイデアを大切にするあまり、米澤穂信の最大の魅力である登場人物の生存感覚が少々削れているのは事実のような気もする。キャラの台詞回しが硬いし、モールドももう少し掘って欲しい。が、やはり面白かった。