イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

法律の世界地図

21世紀研究会、文春新書。「世界地図」シリーズの一冊で、扱っているのは法律。編書なのだが、具体的な筆者の名前が載っていない不誠実さは本格的にどうにかしたほうがいいと思う。内容がどうであろうとも、一瞬で色々な物が消し飛ぶ処置である。
さておき、肝心の内容であるが、いい意味でも悪い意味でもライトである。新書らしく横幅広く扱っており、古代法、近代法イスラム法、現代法の四つに章をたて、それぞれヴァラエティ豊かに紹介している。書き味も全般的に軽めで読みやすく、興味を引く文面ではある。
のだが、編所の悪い点である「スタンスが統一されていない」という部分がもろに出ており、特にイスラム法・社会に対する各章ごとの政治的身振りの差異は、船頭多くして船山に登るというか、お互いにあさっての方向を向いて別のことをしゃべり続けているとしか書きようがない。事実の紹介自体はそこまで的を外していないのだが、解釈というものは(ことこのように解りやすく書くことを目的とした書物では)常に存在し、そして複数筆者であるこの本はその解釈が致命的に食い違っている。
なので、情報源・知識源としては色々と危うい。編集統一の出来ていない分析は、偏向した情報と同じくらい(もしくはそれ以上に)読解を必要とする。自分自身でフィルタリングし、違和感を洗い出し、他の情報とあわせて見比べて、この本は初めて意味合いを持つように思える。そういう意味で、せっかくのハンディ差が荒さに押し流される形になっており、もったいない限りである。