イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

3月のライオン

羽海野チカ白泉社ハチクロが終わってどうするのかな、と思ったら漫画雑誌界最大級の闇鍋に飛び込んだチカ先生の新作、祝単行本発売。連載を追っかけていなかったので買うかどうか迷いましたが、なんだかんだで先生の漫画引力が強く、気付けば買っておりました。ギギギ。いや歯噛みするところじゃないんですけどね。
先生の得意手であるノスタルジで繊細な空気を活かしつつ、将棋という思いもかけないソースに手を伸ばしたこの作品。将棋監修が先崎八段であることに、ちょっとびっくり。グラスハートウォーミングなお話重視で将棋はおろそかかな、と思いきや、ぞんがい棋譜も読める辺りは流石の漫画力ですね。ここが読めないと、普通の高校生が主役でも良い訳であるし。
「センシティブな天才」が主人公なのは、先生の漫画ほとんどそうなのでさておくとして。今回はハチクロのような青春群像劇ではなく、主役にピンを寄りつつ、脇のキャラを放射状に掘っていくつくり、のようにこの段階では思えます。そのキャラたちがやっぱ立ってる。なんだかんだで、ここまでキャラを廻す力量ってのは本当に凄い。
とりあえず、主人公零くんがやっかいになっている三姉妹が可愛すぎて困る。おねいさん、中学生、幼児と多様なニーズにお答えします商売ですからネと見せかけて、各年齢にふさわしい分厚い描写力でがっつり魅力的かつ人間的にかいております。メインヒロイン三人用意して、全部動いているのはすげぇなぁ。オレも銀座でふらふらしてたら、おねいさんが介抱してくれるかなぁ(ポワワ)。
チカ先生は細かい仕草や、手・視線の演技でキャラを描写するのがとても巧い漫画家だと思うわけですが。年齢の離れた女性たち(+おじい)がいっしょに暮らしている今回のセッティングだと、そこらへんの対比が際立ちますね。モモちゃんはちゃんと保育園に通っている風に、ひなたちゃんは中学生らしく。絵として漫画として、油断なく演出できる漫画力の高さが遺憾なく発揮されてます。
棋士もひょこひょこでてきますが、やっぱり二階堂くんだね気になるのは。いいやつだよ。バカに見えて真っ直ぐ速い球ってのは、ありがちに思えてなかなか投げられない球だと思う。それを理想的なコースと速度で、将棋のライバルというポジションに放れるのはとてもいい。でも村上九段がモティーフなので、死んでしまわないか一巻の時点で心配。うう。
とりあえずカタログ的にキャラを並べたように見えて、細かく彫って魅せる演出が巧く、ぐいぐい引き込まれていく一巻目。ハチクロが正直、巧く終われなかった漫画だけに、この漫画は巧く育ち、巧く死んでほしい漫画です。巧く生まれることには、これ以上もなく成功していると思います。おもしれー。