イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 15/03/24

・アルドノア・ゼロ:第23話『祈りの空』
PD(ぽっと出)の火星側チートがマズゥールカ卿のアシストを受けて、全てをなぎ倒す大逆転ホームランをぶっ放す回。
いや、実際の所姫様のホームランであり待ち望んでいたことではあるのだが、結婚は吹っ飛びすぎだろテメー。
個人の情だけで動いてきた姫様が、恋愛という最大の情を切り捨てて、象徴として生きる覚悟を決めたと見ると、納得も行くか。
これでスレイン君は王族との結婚、王国の樹立を僭称した大罪人だが、彼の首にギロチン落とす覚悟も、姫様にはあるってことだよな、コレ。

そんな姫様争奪戦を横合いから掻っ攫われた主人公二人は、それぞれ死亡フラグの蓄積に余年がなかった。
つーか地球サイドの死亡フラグ買い占めがあまりに急過ぎて、半分ギャグ。
無敵のイナホマンが不調になった途端、全滅すら見えてくるパワーバランスが良く分かる。
フラグ立てすらせずバッサバッサ殺すよりは、俄然良いけどね。
色々極端だよなぁ、地球も火星も。(今更な感想)


スレインくんに関しては、2クール目結構長く夢見れたんだし、来るべきものが来たねとしか言いようがねぇ。
偽姫を利用したメディア戦略で地位を作った彼が、姫様の<暴露>で足元を崩されるってのも、因果応報というにはあまりにも……。
ほんとスレイン君は、スタッフに(歪んだ形で)愛されていると思います。

エデルがスレイン擁護するところは、『スレインが全部捨てて守ろうとしたのは、スレインの中の姫様』ってのを都合よく抜いてあって、なかなか面白かった。
イナホマンと違って、生身の姫さまと中身のある会話、全然出来なかったもんなぁ。
地球サイドと火星サイドに立場が別れた段階で、ある意味必然だったというか。
君が悪いんじゃあない……『見切りと決断力のある姫様が起きてたら話がとっとと終わるので、しばらく寝かせておこう』という、とても正しい判断をした脚本のせいさ……。

姫様が自分のクエストを達成し、お話全体としては終わるオーラムンムン。
しかしスレインくんの溜まりに溜まったエゴは……イナホと殺し合えば形が付くか。
デウス・エクス・マキナっ面で出てきた二代目クルーテオ卿が、最終決戦を生き延びられるのかが、今現在の最大関心事であります。

 

蒼穹のファフナーEXODUS:第11話『変貌』
お風呂! 合宿!! 甘酸っぱい恋愛×3!!!
日常回の合間合間に、人間以上の存在に変貌していく子供たちを織り交ぜることで破壊力大。
初代の合宿回を丁寧にリスペクトした展開で、この後の地獄を想定させて更に倍。
そんな感じの、島メンバーのエピソードでした

島に残ったメンツは新入りが多いので、こうやって環境や性格を掘り下げてくれる回は、とても嬉しい。
細かいエピソードの建て方がしっかりしてて、いい所悪い所引っ括めて、彼らの生活が見えてくるお話になってました。
日常シーンを『いいな、続いてほしいな』と思えば思うほど、それを崩しに来る世界を『どうにかせな! いえ、してください!!』と思う気持ちが強くなるというね……。

子供っぽさの強く残るミミカと、それを守ろうと気張る防人レオ。
失った姉を中心に、複雑な家庭にいるスイくん。
EXODUS組、三者三様の事情が更に垣間見えて、今回とても良かったです。

先輩パイロットたちも、それぞれの立場で人生の蹉跌に立ち向かっていて、こういう部分をしっかりやるファフナーは、やっぱ信頼できるアニメ。
サラッと流される戦闘シーンも、戦闘こそが日常であり、日常は戦闘であるという彼らの生活が際立って、描かないことで刺さる演出になってました。
ヒロトが伝えたメッセージに対する反応とかも、各自の考えが反映されてて面白い。

一番掘り下げられてたのは織姫ちゃんだけどね……日常満喫しすぎだろ、あのケイ素生命体。
芹ちゃんはすっかり幼女にリードされるのに慣れきっていて、すんごい爛れた関係になりつつ在る気がする。
異質な生命体を受け入れる余裕が島にあるのは、今後を考えるといいかもな……。(唐突に暗い顔になりつつ)


んで。
そういう素敵で大事な日常を描いた上で、チート料金の取り立てに来るのがこのアニメでして。
人間以上になっちゃった子供たちの異常と変質が、素敵な日常と同じ丁寧さで描かれてて、いやー刺さる刺さる。
あのピンチを覚醒で乗り切った時から、嫌な予感はしていたんですが、心がホッコリした良いタイミングで回収に来ました。
最悪です。(褒め言葉

子供たちの体がキモくなってくのは生理的な嫌悪感があるし、ファフナーの能力=戦闘での活躍と変質を被せてるのは、あの戦闘にテンション上がってた視聴者の罪悪感を、絶妙にくすぐる見せ方でした。
窮地の描写が上手いから、そこから脱出にのめり込み、その代償に嫌悪と痛みを感じる。
落差で魅せる演出に関しては、日常-異常という今回の落差だけではなく、話数をまたぎシリーズ全体に仕込まれたものも生きている感じがします。

インドでは弓子さんが入れ替わり、美羽ちゃんが成長し、島では子供たちが変質。
いろんな場所で、人間とフェストゥムの境界が揺らいできてます。
そんな状況で第1クールの終わりが近づいてきてんだけど……一体どうなってしまうのやら。
不安で楽しみという、ファフナー特有の感想が強まるぜ。

 

アイドルマスターシンデレラガールズ:第10話『Our world is full of joy』
シンデレラプロジェクト第五の刺客、原宿に爆誕!!
というわけで、17歳と13歳と11歳のユニット、凸レーションの個別回でした。
セイクリッドセブン第8話『マゴコロを込めて』、アイカツ!第79話『Yes! ベストパートナー』を担当し、デート脚本を書かせたらこの人と俺の脳内で決定している綾奈ゆにこ脚本による、ハッピーハードコアなお話。
いやー、ゆにこには参るね……(何度目かの感嘆)

 

今回も第9話と同じく、ユニットは既にデビューしていて、アイドル本番の真っ最中に何かを掴んでいく展開です。
既にデビュー済みという始まり方は、結成までの時間を飛ばすことで、開いた時間を別の事柄に回すことが出来る強みがあります。
第9話はその時間をKBYDを第二の主役ユニットとして扱い、かなりの尺を取ることでファンサービスを果たし、アイドルバラエティーを生っぽく描写することで、世界観の肌理を細かくしていました。

今回のお話はあくまで凸レーションにクローズアップした作りで、開始10分間の順当な流れの中で圧倒的な多幸感を、後半10分の波瀾万丈なすれ違いでアイドルユニットとしての強みと、幸せなだけではないキャラクターの掘り下げを、それぞれ見せていました。
凸レーションはその名前の通り、年長者であり人格者でもあるきらりが出っ張り、子供チームの背中を見守るのが、基本的なシフトです。
子供チームの中にも役割分担はあって、13歳の美嘉はとにかく色恋ネタに引っ張りたがるおませさん、11歳のみりあちゃんは純朴で素直な子供と、ユニット内部での立ち位置はかなりクッキリしています。
いや、みりあちゃんはイノセンスなだけじゃなくてスナップスカウト相手にイタズラしたり、クレープを「美味い匂いがする!」ってワイルドな表現したり、元気なところもあるわけですけどね。
そこも好きです僕は!(急な主張)

この基本シフトを手短に見せているのがアバンでして、美嘉が茶化し、みりあちゃんは判っておらず、きらりは乗っかったり訂正したりして全体の流れを調整するという、凸レーションの基本的な立ち位置が既に見て取れます。
このキャラクターの基本スタンスは、今までの物語の中でも細かく描写されていたものであり、過去の資産を活かし、そのキャラクター『らしい』シーンをたくさん入れることで、安心感と多幸感が生まれてきます。
『僕の好きな子たちが、僕の好きな部分をどんどん出してくれる』というのは、とても幸せな気分になるものです。

OPが挟まって原宿にやって来た後のシーンも、凸レーションの基本スタンスは崩れること無く、『らしい』シーンがどんどん出てきます。
莉嘉は元気で、みりあちゃんは健気で、きらりは優しくて賢い。
妹が好きすぎて仕事に支障をきたすレベルの姉も加わって、仲良しで幸せな空気が醸造されていく、波風の少ないシーンです。

キャラクターが常時笑顔なこと、「かわいー」「かわいー」と言い続ける観客の声、ヴィヴィッドな色彩に染め上げられたPikaPikaPopの服、みりあちゃんの言葉を借りれば「大きなお菓子」のような、原宿という街そのもの。
『らしさ』を見せるこのパートは、多幸感をブーストするアイテムに満ちあふれています。
幸せを意味するフェティッシュで画面を埋め尽くし、演出のラインを統一する絵造りは、このアニメ全体の強力な武器ですね。
全体のトーンだけではなく、城ヶ崎姉妹の携帯にぶら下がるお互いのストラップ(姉妹愛の象徴)だとか、みんなで楽しく食べるクレープだとか、単品で強い印象を与えるアイテムもバンバン写す。
映像全体に宿らせたムードと、わかり易く刺さるフェティッシュの併用は、スタッフが与えたい印象を視聴者に感じさせることに成功していて、とても良いと思います。


その上で、この先の展開につながるシーンを抜け目なく入れ込んでいるのも、今回のお話が優れているポイントです。
まず、『らしさ』の強調は多幸感をブーストするだけではなく、『らしさ』が失われる瞬間、『らしくない』ことをするギャップをも強調するための布石です。
『らしくない』ことをするとキャラクターの意外な側面が強調され、多角的な描写が可能になるというのは、例えば第3話でムードメーカー本田未央が凹まされ、クールな渋谷凛がNGを引っ張った時を考えると分かり易いと思います。
これと同じ展開が後半にあるので、前半で凸レーションそれぞれの『らしい』行動とはなにかを、しっかり見せることが必要なわけです。

二つ目に、今回のお話は赤城みりあ城ヶ崎莉嘉諸星きらりそれぞれのキャラクターを描写するだけではなく、凸レーションというアイドルユニットが、何故愛されるのか、何故これから成功するのか、その説得力を出す回でもあります。
答を出すためには問わなければいけないので、バックステージから移動車にかけて、プロデューサーが『客を巻き込むためには、どうしたらいいのか』という問題意識を、凸レーションに投げかけます。

これを言っておくことで、後半の原宿大移動とその解決が、ただ『みんなが混乱し、迷子になったが平和に解決できた』という狭い現象ではなく、『凸レーションは決断力と華と言う武器を持ち、ステージからの広い視野を持っている』という、ユニットとしての強みを説明するシーンにもなっているわけです。
その片鱗は、クレープを食べたあと莉嘉が「お客さんに、どんなクレープが好きか聞くとか?」という台詞にも見えます。
『クレープの原宿』という立地を観客と共有し、共感されやすいエピソードをMCの中に入れ込むことで距離を縮めるテクニックを、莉嘉は無意識のうちに掴んでいるわけです。
とても幸福で平穏無事なシーンの中に、後半の波乱の中で生きる要素を埋め込み、お話の展開をスムーズに流させる手腕は、とても優れていると思います。

 

今回のお話が凸レーションメインで回っているとはいえ、三人以外のキャラ描写も貪欲に行われます。
今回の主なサブアクターはプロデューサーと美嘉、千川ちひろ、特別待遇な蘭子といった所。
そのうちプロデューサーと美嘉は後半の混乱の中で動揺し、敏腕プロデューサーと頼れる先輩アイドルという『らしい』立場から外れた行動を取ります。
二人は今までのお話の中でも重要な役割を担っていて、プロデューサーに至ってはその不器用さでいくども失敗して、『らしくない』部分も彼の一部だという共通認識が出来ているので、正確にはもう一つの『らしさ』を見せる、と言ったほうがいいでしょうか。

ともかく、前半と後半では違う行動を取る立場なので、平穏無事に進む前半において、彼らは『らしい』行動を取ります。
つまりビシッと細かい指摘が出せるデキる先輩と、より良いステージのためにしっかりとした提案が可能で、ユニットを輝かせるための明確なヴィジョンを持っているプロデューサーとして掛け合う。
ここで背筋の伸びた姿を一回見せておくことで、後半の動揺した情けない姿が映えるわけです。

更に言うと、前半で凸レーションに指導的な立場を取っていた二人と切り離されることで、凸レーションは独力での解決を余儀なくされます。
三人で辿り着いた解決法により混乱は解消し、ステージは一回目よりも大きな成功をおさめる。
二人の年長者の指導的なシーンを入れることで、後半彼らを乗り越え独自の解決法を編み出す凸レーションの成功の大きさが、よりはっきり見えますね。


『らしくない』姿というと、今まで真面目一辺倒だったプロデューサーの変化も、多数描写されていました。
砕けた態度で莉嘉にイジられる姿は、7話で「あの人何考えてるか分かんないんだもん」と言われていたことを考えると、大きな変化です。
7話での波乱を乗り越え、『アイドルを運ぶ車輪』というネガティブなプロデューサー『らしさ』も、徐々に変化しているということでしょうか。

過去話との対比で言えば、2話では集合写真をキッパリと断っていたプロデューサーも、クレープを勧められ、笑顔の写真を取られと、アイドルとのプライベートな距離感が生まれていました。
『変則的ギャルゲーのアニメ化』というジャンル的な要素を鑑みなくても、無骨で誠実な男が変化していく様子は、見ていて楽しいものです。
まぁあんだけ良い子達がいたら、俺だってモテたいわけで、何が言いたいかというともっとプロデューサーのモテシーン来いッ!! ってことです。


お話を安全無事に着陸させるために頼れる大人の位置から動かないちひろさん、賑やかしのはずなのに妙に描写が冴え渡ってた蘭子は、混乱が始まってからの登場になります。
担当アイドルが大事過ぎてテンパったことを言うプロデューサーを制し、お話が収まるべきところに収まるために必要な行動を取るちひろさんは、頼れる『らしい』行動を取るのが今回のお仕事。
『らしくない』ちひろさんを見るためには、また別の機会が必要なのでしょう。
……ちひろさん『らしさ』があの逆光背負っての助け舟だとしたら、ただの『頼れる大人』とはまた違うキャラってことなのかなぁ……。

蘭子に関しては、8話の個別回を受けてシンデレラプロジェクトに馴染んできた様子が、色々と見て取れました。
特にプロデューサーには尻尾ブンブン振ってるのが見えて、『これじゃ、蘭子じゃなくてワンコじゃん』っていう感想を持ちました。(ダジャレマンNEO爆誕)
PikaPikaPopの服気に入ったのか、ずっと着てるし、可愛いなぁ。
凸レーションのモノマネネタになるくらい、蘭子の個性がプロジェクトに浸透している様子も見て取れて、こういう変化を細かく見せてくれるとキャラクターたちの変化を感じられ、嬉しい限りですね。

 

脳髄が溶けて流れ出そうなくらいの多幸感で進んできたお話は、『Orange Sapphire』が終わると同時に雲行きが怪しくなり、雪崩れるように不穏な展開に突き進んでいきます。
通行人の一言を意識して距離を置いた結果、盗撮と間違えられてポリスに連行→スナップ雑誌記者をからかうのに夢中で気づかない→聴取中なので電話が取れない……と、ドミノを倒すように事態は悪化し、混乱の度合いを深めていく。

このシーンは平穏を打ち破って『らしくない』部分を見せるセッティングであり、同時に『起きてほしくないことを起こす』というサスペンスの基本に則って、視聴者の心拍数を上げに行くシーンでもあります。
なので、とりあえず底を打つまで、事態はゴロロと低い方に転がっていく。
ブレない大人として解決の鍵を握っているちひろさんに、最初は電話が通じない所が巧い。
すれ違いシチュエーションを現代劇でやる時は、どう情報通信機器を無力化するかが重要だなぁと、莉嘉の携帯が壊れるシーンで思いました。


どんどん悪くなっていく状況の中でも、きらりは年少組を不安にさせないよう気丈に振る舞っています。
年少組が失敗(とは言うものの、丁寧にストレスはコントロールされていて、『まぁしょうがない』と思える失敗に落ち着いているのは流石)を告白するたび、即座にハグして不安を取り除いたり、『ここは自分の庭だからすぐ見つかる』『スーツの人はみんなプロデューサーに見えるものだから、しょうがない』と安心させる言葉をかけていて、優しくて頼れる人なのだと判る。
ここら辺は、前々から孤立してる子に必ず声をかけていた面倒見の良さの延長であり、『らしい』部分です。

(……『スーツの人はみんなプロデューサーに見える』は、ちょっとPちゃん好き過ぎじゃねぇかなぁ。
もしクレープをプロデューサーが齧っていた場合、その後は間接キスになる。
真っ先にクレープあーんを言い出したきらりは、かなりアクティブにタクティカルにプロデューサーに迫っている疑惑が……?
素晴らしい、もっと行こう)

さておき、不安な迷子タイムもきらりの頑張りでハッピーな常態を維持できていた凸レーションですが、ついに限界が来ます。
莉嘉の靴擦れにきらりが気づき、『いつも元気にハッピーに出っ張って、ユニットを支えるお姉さん』という立ち位置から降りることで、凸レーションは今まで見せていた多幸性、凸レーション『らしさ』からドロップしかかってしまうわけです。
気丈な態度が折れかかるのが、自分のミスではなく他人の傷であるところに、きらりの精神性が垣間見れます。


ここで、今まで支えられ自由に遊ばせてもらっている立場だった年少組と、支え遊ばせる側だったきらりとの立場が逆転します。
年長者として『らしい』態度を取ってきたきらりは、失敗を認めてもらい、身体的接触(きらり→年少組の場合はハグ、年少組→きらりの場合は頭を撫でる)で安心を得、「大丈夫だよ」と言って貰える子供の立場、『らしくない』位置に下がります。
反対に年少組はきらりが今まで担当していた、庇護し見守りやるべきことを教えてくれる大人の立場、つまり『らしくない』位置に上がるわけです。

位置が入れ替わることで何が見えるかというと、一つはユニットとしての凸レーションの柔軟性と堅牢さです。
『リーダーにしてムードメーカーであるきらりが沈めば、みな為す術なく沈む』という柔弱な関係性ではなく、きらりが凹んだ時は他の二人が前にでて、凸レーションらしさを維持していく余裕があるユニットなのだということが、このやり取り(というか今回のエピソード全体)から見て取れます。
この即応性は未央が沈んで凛が引っ張った3話のNGに似ていますし、未央が沈んだら凛も沈んでしまった7話前半のNGとは対比的ですね。
お互いがお互いを支えあい前進するラブライカや、杏の天才性で道を進んでいくCIとは、また別の形かな?

もう一つは、三人がより人間的な複雑さを持ったキャラクターだということが見えます。
きらりは血を流さない天使でも、どんな時でも問題を笑顔で解決できる物語装置でもなく、心が沈む時もあれば、失敗することだってある。
美嘉は思春期全開で大暴れして、沢山いる姉(美嘉、前川、きらり……)にフォローしてもらうだけではなく、ピンチに負けない心の強さと、前に出る積極性を持っている。
みりあちゃんだって、聞き分けのいい子というだけではなく、6歳上で45センチも背が高い女の子でも、傷ついていたなら手を差し伸べられるという、成熟した面を見せた。
このような多面性を見せることで、キャラクターはより魅力的に、より"リアル"に、視聴者に接近し、より好かれていくわけです。

この様に『らしい』面と『らしくない』面をしっかり見せることで、ユニットとキャラクター、その核にある部分と、それに反しながらもそれを支える多角的な要素が、両方浮かび上がってくるわけです。
そのためには、『らしさ』を的確に伝えることで何が『らしくない』のか、視聴者に伝えなければなりません。
デレアニはちょっとしたシーンでキャラクターの要素を見せることが巧いアニメなのですが、やはりカメラの真ん中に主役として座る今回こそ、『らしさ』と『らしくなさ』を見せる重要なチャンスになります。
前半のハードコアにハッピーな空気と、後半発生する混乱のドミノ倒しは、『キャラクターの魅力を掘り下げる』というエピソードの狙いを支える両輪なのです。


凸が凹になりかけるピンチを無事乗り切った後、みりあちゃんの提案で莉嘉をきらりが抱っこすることになります。
ここのやり取りは後の『原宿ブレーメン音楽隊』(莉嘉ONきらり状態の呼称。俺考案)、つまりは『アイドルユニットとしての、凸レーションの強さ』に繋がる描写であり、同時に抱っこを恥ずかしがる莉嘉と、きらりにしか出来ないことを素直に考えたみりあの年齢差が出るシーンでもあります。
まぁ毎日杏ちゃんぶら下げてるし重たいキグルミも着てるからね、抱っこくらい片手で余裕だよね。

『原宿ブレーメン音楽隊』による客の引き込みは、前半でプロデューサーが投げかけていた疑問に独力で回答するシーンであり、とにかく客の目を引く華と牽引力、行動力が凸レーションの強さなんだと説明するシーンでもあります。
一回目のステージでのさらっとした説明でもそうなんですが、きらりのコンプレックスになっている長身を武器に変え、莉嘉ONきらりで目立ちまくることが、プロデューサーが三人に合流し、話が収まっていく起因になるのは、本当に素晴らしい。
『覚悟を決めれば、欠点こそが長所になる』と言う描写は、8話の蘭子、9話の杏と智絵里にも通じるこのアニメ全体の世界律なのでしょう。

二度目のステージでも凸レーション(というか莉嘉)は、アイドルとしての強さを発揮しています。
MCで「ちょっとトラブルがあって~」と匂わせておいて、「トラブルって?」「何々~?」という反応を引き出し、「な~いしょ!」で切り上げて観客を煽るやり取りのセンスは、『どうやって客を巻き込むのか』という今回の課題に追加点を加える、切れ味鋭いやり取りです。
今は子供っぽい憧れが先行している(性的な意味も含めた)仄めかしの話術が、近いうちに大きな武器になると予感させる描写で、キャラ記号とのかみ合わせがとても良いと感じました。
私服で被っていたのも、姉とお揃いの小悪魔ハットだったしな!

更にいうと、この後の「どんな時でも、バッチシ笑顔で、ハッピーハッピー元気」という言葉は、『凸レーションはどんなアイドルユニットなのか』という疑問の端的な答えになっていて、エピソード全体で手に入れたものを短勁に示している言葉でもあります。
今後凸レーションと、彼女たちが所属するプロジェクトが飛躍する理由は、『素敵なことが逃げないように、いつでも笑顔でいられる』ユニットだからだと、今回のエピソードで示されているのです。
そう言うふうに、作中での価値が明確に示され、共有しやすい形になっていることは、作品としてとても強いと思います。

 

キャラクターたちの『らしさ』を見せ、困難に投げ込むことで『らしくなさ』が活きる状況を作り、そこで得た成長が何であるかをはっきり見せる。
3つの目的を完璧にこなしたお話は、『グッズ完売』という成果と、三人の飛び切りの笑顔(≒前半で幾度も描写されていた、凸レーションが持つ多幸感の源泉、『らしさ』)を写して終わります。
混乱に対する謝罪がオフで入っているのは、5話で前川が起こした騒動の処理方法と同じで、手間を取らず後を引かずに反感を削っていく、巧妙な手腕ですね。

ユニットとしての凸レーション、それを構成する三人、大人のようで子供なPちゃんと美嘉、頼れる千川ちひろと、多数のキャラクターに光を当てた、見事なエピソードであったと思います。
このアニメがアイドルアニメである以上、『こいつらのステージに行くと、どういうことが楽しいのか』を具体的に感じさせるのは大事だと思うのですが、すれ違いと混乱の中で手に入れた成果で、ステージを爆発させる展開は、それに十分答えていたと思います。

素晴らしいお話でした。
いやー、ゆにこには参るね……(天丼でフィニッシュ)

追記
先週に気にしていた『双葉杏諸星きらりから離れてアイドル出来たが、諸星きらり双葉杏不在でアイドル出来るのか』問題に関しては、一切問題なくっつーかパーフェクトお姉ちゃん+お姉ちゃんがやっつけられたら私達が出る!! ステージ上のキングコング妹!!! なコンビであり何も心配いらなかった。
そらー聖人きらりと、元気で素直な子供二人だもん、上手く行くわな。
逆に言うと、安定してるコンビで閉じさせないで、新しい可能性に挑むことで個別のポテンシャルが引き出されてる(絡んだキャラクターの魅力も引き出している)わけで、やっぱすげーわモバマスアニメ。