イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 15/03/30

・デュラララ!×2承:第12話『艱難汝を玉にす』
ヤクザとロシアとゾク・トライブが狂ったダンスを踊るアニメも、ひとまずのラスト。
調子に乗ってた人が怖い人達にキッチリ仕置きされ、混乱してた状況が収まるところに収まる快楽はやっぱ独特だなぁ。
帝人くんは全然収まっていないっていうか、こっから何処までも落ちるわけだがな!!

いやね、ぶっちゃけた話、あのシーン、帝くんが嫌なやつ(新)こと青葉の貫通式するシーンを楽しみに承見てた部分、僕的には大きいわけで。
一期の間全ッ然スッキリしない、ウジウジダラダラしてた帝くんですが、こっから吹っ切れたサイコ野郎として大暴れする負の気持ちよさって、原作読んでた時凄かったんすよね。
なんで、こっから超人になりたい一般人と自分では思い込んでいる作中一番の人格破綻者っていうNEW帝人の活躍が見れるわけで、転楽しみっすね(早い)

そんな帝人くんに致命打入れた千景くんは、ドタチンと友情を育んでいた。
超強いヤクザもそうなんですが、どんなに混乱してる状況でも収める時は一気に収めるのが、このシリーズ独特の快楽を産んでんだろうなぁ。
その収まった状況も次の混乱の種をはらんでるってのが、ややこしいと同時に面白いやね。
あ、嫌なやつ(旧)こと臨也が、次の混乱の種のためにぶっ刺されてたのはマジザマー!!! って感じでした。
アイツホントやなやつだからな……時々ひどい目にあって、不幸の天秤を直してくれんと割に合わん。

今回は久々にしずちゃんの超暴力演出が冴え渡り、しずちゃんが大暴れしてるだけで気分が良くなるマンとしては大満足でありました。
絵にされると超こええな、軽自動車サッカー。
トンチキな超人演出で日常の枠をぶっ壊し、カタルシスを生むことを期待されてるって意味じゃ、しずちゃんってスプラッタの超人殺人鬼と立場同じなのね。
『新作ではジェイソン(フレディ、スクリーム等など)は、どんな珍奇な切り株作るのかな?』みたいな。

時々作画がヘニょったりしたけど、ゴチャゴチャした混乱を整理して流し、最後の最後でピタッと纏める気持ちよさは、しっかりあるアニメでした。
暗黒のパワーに目覚めたDARK帝人くんが大活躍しそうでいて、能力的には凡人のままなので精神的な凄みを見せつけることで超人力を発揮する転も、凄く楽しみにしてます。
いやーホントね、こっからの帝人くんは凄いんだよホント(帝人くん大好き繰り言おじさん)

 

ミルキィホームズTD:第12話『The detective of the Opera
ミルキィシリーズリブートとして、新たな伝説を地道に紡いできたこの番組も最終回。
全開でマリネちゃんのお話し終わっちゃったし何やるのかな、と思ってたら、ミルキィホームズの個人回だった。
今までストイックに禁じていた『ミルキィホームズが主役になる』展開を最後の最後で出してきて、カタルシスと爽やかな読了感を得られる、とても良い最終回でした。

ミルキィホームズというシリーズはまぁ色々あるシリーズでして、二期で過度にパロディに寄って『少女の成長物語』という二本目の軸を見失ったり、二人はで真面目にやり過ぎて『ドタバタコメディ』という一本目の軸を見失ったり、ぶっちゃけ足元がふらふらしながら進んできたアニメシリーズだったと思います。
TDではマリネちゃんというシリーズゲストを主人公に据え、彼女の物語は堅調に進めつつ、そこと絡んでいるのか絡んでいないのか、イマイチ判んない距離感なんだけどやっぱ確実に影響を与えているという絶妙なラインにミルホの四人を置くことで、『少女の成長物語』という軸を崩さないよう、細心の注意を払いながら進めています。
『ドタバタコメディ』という軸にマリネちゃんを寄せすぎると、今回のフェザーズよろしくバカ時空に取り込まれて、シリアスな問題解決の小さな蓄積が達成できない危険があるわけで、『ミルホがボケる、マリネちゃんは呆れ顔でツッコむ、たまにボケる』というバランスを維持し続けたのは、そしてそれを視聴者にあまり感じさせないよう、勢いのある笑いを提供していたのは、凄いことだと思います。
いや、TDのフェザーズは投獄芸というキラーシュートを手に入れ、コメディエンヌとして開花したと思いますけどね。

TDがもうひとつ気をつけていた(と僕が感じた)のは、『過去の成長を無駄にしない』ということです。
細かく過去エピソードの小ネタを拾っていたのは、なにもオールドファンへの目配せのためだけではなく、『今ここでマリネちゃんに寄り添ってるミルキィホームズは、何を経験してきてどう変化してきたのか』という変化を、しっかり見せるためでもあったと思います。
このことは『経験を積み重ねてミルホが変われたんだから、このシリーズで経験を積んでるマリネちゃんも変われる』というシリーズ全体を貫くメッセージになっていて、軸を補強する仕事もしていた。
その上であくまで直接的にではなく、ミルホの隣に立って、背中を見てマリネちゃんが変わっていく関係性も維持できるという、結構テクニカルな扱いだったんじゃないでしょうか。


今回のお話、ミルキィはドジでダメダメながら、プロフェッショナルらしいところを見せます。
彼女たちはアイドルではないので、事件を解決した後もマリネちゃんにベタベタひっつくわけではない。
彼女たちなりの小さな、しかし大事な探偵への誇りを抱いて、くっだらない依頼を優先してコンサートは後に回すわけです。
それはやっぱり、過去のお話を経験してきたミルキィだから出来る、背筋の伸びたキャラの立ち方。
そういう背中を見てマリネちゃんも話しの終わりに辿り着いたわけで、今回の『コンサートに行かない』という選択肢は、凄く気の利いたチョイスでした。

そして、怪盗と幾度も追いかけっこをする彼女たちの姿は、TDでストイックに抑えこんできた『これがミルキィホームズのお話』という絵面であり、尺をたっぷり使って描かれるヨコハマの風景は、リリカルでとても良かった。
ああいう雰囲気のある場所で、永遠にじゃれあっている少女たちを、じっと見守っている多幸感というのは、ミルホを見る楽しさの大きな部分だと思います。
しかしマリネちゃんを真ん中に据えた以上、ミルキィホームズが持っている風景は前面には出せない。
それでも見たいなぁというシーンを、しっかり入れ込んできたのは、単純に過去作の引用や過激なパロディに頼っていない、TDらしいファンサービスでした。

その上で、TDが積み上げてきたことをラストのステージで開花させた終わり方は、もう文句がない。
アホでバカでボケっぱなしだったけど、ミルホはマリネちゃんにとって大事な仲間で、復帰のステージを捧げる相手として十分だという繋がりを、しっかり見せてくれて大満足でした。
TDで幾度も繰り返した『私達はアイドルじゃないですから』という台詞は、『私達は主役じゃないですから』というのと同義。
それは『ミルホの成長物語はかなりの部分終わっているんだ』『見せるとしたら成長した後の姿なんだ』という自意識が見える、ストイックな台詞です。

でもアイドルの話であるTDを〆るにあたって、やっぱミルホがステージに上がらないっていうのは、収まるところに収まってくれない。
だから、マリネちゃんのお話が終わり、ミルホが主役になる回を最後の最後に持ってきて、最後の最後のシーンでやる。
視聴者が見たい部分を最後の最後で一気に開放して、達成感と満足感を両立させる見事な手腕でした。

最初の滑り出しに軽い不安がありましたが、製作者達がミルキィホームズを愛し、良く考えたことが見て取れる、見事な四期でした。
ミルキィホームズって何が面白いんだろう』『視聴者はミルキィホームズの何が見たいんだろう』という疑問をしっかり掘り返し、その上でミルキィホームズに頼り切りにしないストーリーを、しっかり組んでいました。
各話製作者がやりたい事を放り込む作り方も、シリアスありコメディあり、分かり難い文学ネタありギリギリコースアウトなパロディありと、ヴァラエティ豊かなラインナップに繋がってて、オムニバス青春コメディとして凄く良かった。

TDのシリーズゲストたるマリネちゃんは、シリーズ中に成長する主役を引き受けることで、お話の屋台骨をガッチリ組んでくれました。
ミルホとの仲良いんだか悪いんだか判んない、でもやっぱ仲良しな距離感とか、俺すげー好きだった。
母娘関係拗らせたゲストばっか出てきたのも、TDマリネちゃんがお母さんを克服するまでの物語であり、テーマの強化という意味合いがあったに違いない。
脚本担当の性癖かもしんないけどさ。

長い道を歩いてきたミルキィホームズが、もう一度歩き直すのに十分な、と言うかそれ以上の、面白くて素敵なアニメーションでした。
いやー、良いアニメだった。
ありがとう、ミルキィホームズTD。

 

アイドルマスターシンデレラガールズ:第11話『Can you hear my voice from the heart?』
01)はじめに
シンデレラプロジェクト個別ユニット、最後の核弾頭『*』、アイドル戦国時代にただ今着弾!! と言う塩梅の、前川&多田が仲良く喧嘩しつつ心の友になるまでのお話でした。
1~7話がNGのデビュー直前・直後、8話が蘭子のデビュー前、9話がCIのデビュー後、10話が凸のデビュー後という並びの中で、なかなかデビューできない二人の焦燥なども描きつつ、ユニットとして人間として何処に落ち着きどころを見つけるかを、丁寧に描いてくれました。
CPは相手の顔色をしっかり見て、落ち着いて受け止める子が多いので、今回のようにぶつかり合うのは、なかなか新鮮でした。
ラブライカという百合業界震撼のユニットを発掘したり、あんきらを解体し新たな魅力を引き出した9・10話の見せ方だったり、デレアニの『新しい組み合わせの魅力引っ張り上げ力』は凄まじいですね。


02)通時的な感想
24分という時間の使い方が回ごとに異なるのがデレアニの大きな特徴ですが、今回は徹底的に前川みく多田李衣菜のお話であり、時間の殆どはこの二人に使われます。
しかしながら、二人の間に起きた変化は、実はそこまで大きくない。
アバンでも、いがみ合っているように見えてお互い向い合い、相手の中に入って行きたいという欲求が既に見て取れるわけです。
これがお互い背中を向け、無視しあっているような関係から変化していくのであれば、その変化量は劇的かつ大きい。
しかし今回のお話は、お互い向かい合っているのにすれ違っていく、分かり合いたいのに素直になれない。
そういう微妙な関係性からどう変化していくかという、小さく細やかな心の動きを徹底的にクローズアップするお話なのです。

まず前提として、前川みく多田李衣菜のロックを、多田李衣菜前川みく猫耳を、それぞれ認めないところから始まります。
「ロックなんてお断りにゃ~!」と絶叫し、お互い背中を向けるシーンを見れば、お互い譲りあい尊重しあう大人の関係なぞ、望むまでもないというのは、一目瞭然です。
同時にこのアニメでは、『譲ることの出来ない個性を活かすことで、プロジェクト内部の関係も、アイドルの活動もより良くなっていく』ということが何度も描写されており、『猫耳』も『ロック』も簡単に譲ってしまってはいけないものだというのは、既に了解されている。
簡単には譲れないものを、どう譲っていくのかが今回の話しの軸であり、譲れないものを譲ることの難しさと貴重さを描くために、ほぼ全ての時間が使われるわけです。

ぎゃんぎゃん喧嘩しながら始まる*の物語ですが、同時に彼女たちが似たもの同士だということも、早い段階から見せています。
CP内部でも自分の意見をはっきり言える方であり、反発する相手と一緒でも仕事はしっかりやり通す真面目さ。
後の合宿展開ではこうして見せられた共通点を足がかりに、二人の心が距離を縮めていく過程が描かれるので、バチバチしつつも似たもの同士という相反を、キャンディのプロモーションで見せているのは流石です。
表情や動きがシンクロするシーンが多いのも、二人が根っこの部分では似たもの同士であり、かつ歩み寄りを望んでいることをコミカルに暗示していて、巧い演出ですね。


アイドルフェスという具体的なリミットが切られ、どんどん切実さが増していく二人ですが、根本的な解決法にまだ気づいていないので、事態は好転しません。
ここで『女と女はなー、寝りゃ仲良くなんだよ寝りゃぁ!!』と言い出す莉嘉のロックさは凄いことになってますが、同時に第9話で見せた彼女のストロングポイント、正解を引っ張りだす直感力の強さが見えるシーンでもあります。
結果として合宿をすることで二人はお互いをよく知り、何処で譲って何を大事にすればいいのか見えてくるわけで、『原宿ブレーメン音楽隊』といい、莉嘉はホント間違えねぇな。

生活を共にしながら、まずは差異点を確認していく二人。
目玉焼きにソースをかけ、朝はしっかり起き、夕飯は30品目用意するクソ真面目前川と、他人の家に画鋲でポスターぶっ刺して気にかけることもねぇロックンローラー多田。
『まぁ合わねぇわ』という気持ちを共有できる、いい畳み掛けです。
今回パパっと時間を飛ばし、高速でカットが切り替わるシーンが何個かあって、コメディに必要な歯切れの良さを生んでますね。

差異点を見せたら今度は共通点を見せる番ですので、先輩アイドルとの絡みで梨衣名がミーハーである所だとか、緊張するオーディションで励まして気を使ってもらったり、今まで知ろうとしなかった側面が、二人の中に入っていく。
その結果梨衣名はカレイの煮付けで、前川はミントキャンディで距離を詰めようとするものの、それはすれ違ってしまう。
ここの上げ下げは細かい付いたり離れたりを繰り返し、複雑に揺れる間柄を丁寧に見せるシーンで、凄くのめり込むし、気持ちがいいし、良く出来ている名シーンだと思います。
お話の構造的にも、ここで成功の予感をさせておいて一回外すことで、終盤の大成功のカタルシスが上がっているわけで、重要なシーンです。


『離れた両親』という大きな共通項で心をつないだ後は、大きな開放感のために大きな圧力を掛けるシーンになります。
プロデューサーに持ち込まれた歌の仕事を、準備も整っていないのに前川が独断専行して受けます。
仕事を受けてから歌詞を仕上げると決意するまでのシーンは、このアニメの十八番であるライティングによる緊張感が有効に使われ、『此処でで強い圧力がかかっている』と言うメッセージが、視聴者に的確に伝達されています。
前川もにゃ語尾無くなってるしな! 緊張するとこの子はいつもこうだよ!! 可愛い!!!

5話を見ても解る通り、アイドルに対する強い期待があればこそ焦り、先走る前川みくという女の子。
他方、梨衣名は何処か余裕があるというか、あくまで自分を守ったまま事態を解決したい気持ちがどこかにあるように見えます。
此処の差が、目の前のチャンスに準備不足でも飛びつく/飛びつかないという差に繋がっている。

焦りつつもスジを曲げられないのが前川という女なので、自分が死ぬほどデビューしたいのを置いておいて、上手く行かなかった場合の単独デビューを梨衣名に譲るという条件を提示して、独断専行のツケを払う形にします。
カレイの煮付けで見えたように、軽いように見えて責任感があり、他人を慮る優しさも持つ梨衣名としても、デビューを焦る気持ちから喫茶店占拠まで行った前川からこの言葉が出る意味は判る。
だから息を呑む。
『もういがみ合ってる場合じゃない、どうにかしなきゃいけない』という気持ちが二人の間で、そして二人を見てきた視聴者にも共有される、優れた見せ方です。

こうして切羽詰まった二人はなりふり構わず時間を共有し、二歳下なのに前川が主に面倒を見る形でお互いを尊重しあっていく。
前川が「李衣菜ちゃんに先にデビューしてほしい」と言った時点で、歩み寄りは完成し勝ち筋は見えているのですが、そこに従って描写を積み上げていくことは、とても大事です。
二人だけではなく、彼女たちを信じて舞台を整えるプロデューサーの『頑張り』がインサートされているのは、彼の成長物語でも有るこのアニメでは大事なところだと思います。
事態が好転するに従って雨上がり日が射してくるのは、運命を解りやすく予見してる演出ですね。


こうして辿り着いたステージですが、レスポンスの甘さに不安を感じつつも、『二人を信じる』と強く宣言したプロデューサーを見て気を取り直し、にゃーにゃー言って切り抜けます。
此処で*というアイドルユニットの強さ、何を持って観客を引きつけるのかという魅力をしっかり見せているのは、10話にひき続いてアイドルアニメとしてとても大事なシーンです。
彼女たちの武器は、真摯さと繋がりの強さです。
クソ真面目な二人が本気でにゃーにゃー言うからこそ、観客は心を掴まれ、一緒ににゃーにゃー言ってしまうのです。
やや寒めな観客の反応に梨衣名がひるんでも、前川が前に出るのを見て二人で続けられるから、彼女たちは強いのです。

「ホント気が合わないね」「そこがこのユニットの持ち味にゃ」と二人は言っていますが、ここまで彼女たちの物語を見てきたのなら、気が合わないどころの騒ぎじゃないというのは分かっている。
表面的にどんな波風が立っていても、共通点のない衣装を着ていても、そんな枝葉のことではないぶっとい幹で繋がった関係こそが、*の真の持ち味なのだということ。
相手を認めても失われない自分たちの個性、個性を尊重するからこそ築ける関係が、どれだけ繊細で貴重な交流から生まれるのかということ。
それらをしっかり見せることで、今後絶対に来るであろう*の躍進に説得力を持たすのも、今回のエピソードの大事な仕事ですね。

かくして雑誌に載るほどの大成功を収めた*は、物語の最初と同じようにいがみ合いますが、その理由は全く逆になっている。
前川の中に梨衣名の『ロック』があるからこそ、「これの何処がロックにゃ!?」という言葉が出てくるし、梨衣名の中に前川の『猫耳』が入っているからこそ、猫耳衣装も可愛いと素直に言える。
「お互いの個性を尊重しながらやっていける」という結論に達するまで、細やかに揺れ動きながら時間を共有してきた彼女のエピソードは、こうして終わります。
素晴らしいの一言です。


03)個別の感想
今回だけではないのですが、デレマスは『語らないで語る』演出がうまいアニメです。
明暗やレイアウト、色彩といった画面による語りかけもそうなんですが、今回は一見なんてことない描写の積み重ねで、セリフ以上の結果を出す演出が非常に巧い。
買い物上手で口うるさく、世話焼きでアメちゃんくれる前川みくの出身地が大阪であるところなど、積み重ねの妙味極まる所です。
『アイドルが大阪おかんなんですけど!』って感じだな。(僕は『僕の妹は「大阪おかん」』超好きな人間であり、浪花はベスト二次元妹キャラだと思っておりますので、この言葉は最大級の褒め言葉であります。)

こういった端っこの演出だけではなく、大きく心がうねる話の心臓部分も、言葉ではなく描写を積み重ねることで今回は描いています。

・何故多田李衣菜はカレイの煮付けを作ったのか。
心配した親がわざわざ電話をかけてくるくらい温かみのある家に育ち、前川は時間が遅くなると惣菜を買ってしまうとスーパーの看板を見て思い出し、そんな前川に歩み寄りたいという気持ちがあったからです。

・何故前川は目玉焼きにソースを掛けるのか。
お互いの距離が詰まり、個性を尊重したまま相手を心のなかに入れる方法が見えてきた時、今度は気を使って醤油をかけるシーンを画面に捉えるためです。

・何故前川は梨衣名の電話で心が変わったのか
大阪から家族を置いて(この情報も暗示されたもの)寮生活をしている前川が、母からの電話に優しく受け答えをしている梨衣名に強いシンパシーを抱いたからです。
前川にとって家族が大きなものだというのは、写真を見つめるカットで強調されています。
年下のくせに責任感が強い前川としては、自分たちの不仲が原因で寮に引っ張り込み、心配の電話
をかけさせてしまったのは心苦しいというのもあるのでしょう。
携帯電話を見つめる梨衣名と、思い出の写真を見つめる前川の瞳が、同じ効果で揺れている所も、彼女たちに共感が生まれているのが強く感じられる所です。

・何故アーニャ蘭子の差し入れはたい焼きなのか。
あのタイミングで二人の心は既に答えを見つけており、カレイの煮付けとミントキャンディの時は食卓を一緒にできなかったけど、『甘くて魚の形をしている』たい焼きなら、お互い一緒に食べられるからです。(福田里香のフード理論参照)

これらのシーンで心情を説明する台詞はないけれど、彼女たちが何を考え、どうしたいかは伝わります。
事程左様に、今回のお話は徹底的に計算された積み重ねと呼応で作成されており、結果としてセリフを省いても微細な心の変化が良く見えるように作られている。
言葉で説明されるよりも、描写の中から視聴者が気付いたほうが、より深く心には刺さる。
前川みく多田李衣菜の小さな、しかし大事な変化が視聴者の心にしっかり染み入るよう、良く考えられたお話だと思います。


そもそもの話をすると、なんで今回前川みく多田李衣菜の話なのか。
作中梨衣名が尋ねるように『余った物同士をくっつけた』と言うよりは、それに対するプロデューサーの返答『相性の良いユニットだと思った』の方が強い気がします。
特に前川は頭が良くて周囲に気を使う真面目な子なので、自分の気持を加工せずにぶつけ、しかも避けられず反応が帰ってくる相手は貴重です。
CPメンバーは自己主張が弱く相手に合わせる優しい子か、相手の主張を絡めとって上手く切り返せる賢い子が殆どなので、梨衣名以外が相手だと、今回のように120%自分を出していく展開は、なかなか難しかったのではないでしょうか。

梨衣名と常時いがみ合うことで、『ああ、前川も誰かを疎むんだなぁ』と安心出来た部分もあって、ある種の公平感が生まれる、良い組み合わせだと思います。
やっぱキャラクターが傷つき、精神的な血を流す弱い存在、見ている僕と同じ人間なんだというのを何度も見せるのは、共感を製造するためには絶対必要なんでしょうね。
『選ばれなかった奴ら代表』として出番が多く、クソ真面目キャラを既に理解されてる前川に絡むことで、あまり目立たなかった梨衣名がどういう人間なのかよく分かるという要素も、もちろんあるでしょう。

その上で、『*』という仮名称を二人が良いものだと受け入れるやり取りを挟んで、『余った物同士をくっつけた』ことがむしろ良い結果を呼び込んだとも取れる流れにしてあるのは、なかなかリッチな展開です。
『*』のように都合でくっついた二人だけど、それは必ずしも悪いことではなく、素晴らしい結末に辿り着くことだって出来る。
偶然と必然、両方を含意出来ているメタファーの操作は、非常に豊かな表現だったと思います。


今回はカメラが*に極端に寄るので、CPメンバーはそこまで目立った仕事をしていませんが、二つ重要な役割があります。
一つは『真実に気づかない解説役』で、*の二人(と、彼女たちにクローズにカメラを通じてそれを感じ取っている視聴者)だけが感じ取っている微細な変化を、あえて的外れに解説することで強調する仕事をしています。
はたから見れば「喧嘩ばっかしてるねー」と言う印象を受けんだろうけど、緻密な時間を共有することでじわじわと変わってきているんだということが、外部の視点を導入することでより見やすくなっている。
小さくて決定的な変化を追いかける今回では、とても重要な仕事だと言えます。
その中で「仲良しさんだにぃ~」という真実に気付く仕事がきらりなのは、色んな意味で流石だなと思いました。

もう一つは『先に行ってる役』です。
今回の話を先に進めるエンジンは、『*が余り物の置いてけぼりユニットである』という焦燥感です。
この焦り、置いてけぼりにされている距離の絶望感を強調するためには、先発デビューしたCPメンバーが先に進んでいる様子を見せるのが、手っ取り早く効果的です。
なので、NGはお揃いのアイドル衣装を着て撮影を行い、新田美波はCDにサインをする。
それを画面に写すことで、未だにギャンギャンいがみ合ってる*との間に有る距離と、これを埋めようとする焦りが、真に迫って見えてくるわけです。
これは今までの個別会の蓄積がなければ見せられない表現であり、話数を跨いだロングパスと言える演出です。

物語的役割の話からは離れますが、アイドルフェス準備のシーンは、デレマスの強みである『シリーズ全体を貫く統一感』が良く見え、好きなシーンです。
*の結成理由をすぐさまプロデューサーに聞きに行く子供チームといい、アイドルフェスの新着を過不足なく伝えるプロデューサーといい、かつての不器用で不信感漂う空気とは、大きく変化したのを感じ取れます。
こうした変化それ自体が物語のダイナミズムを感じさせて気持ちいいですし、コンパクトに変化を積み重ねることで、大きな飛躍に説得力がついてくる部分でもあるので、目立たないながらも大事なところでしょう。


04)最後に
画面に写す人数を絞り、あえて劇的な展開を避けることで、小さく丁寧な心の動きを接写した、非常に巧妙かつ柔らかなシナリオでした。
反発を軸として進む物語がシリーズに一本あることで、甘いばっかりじゃない世界が強調され、作品全体が引き締まった印象もあります。
その上で、お互いの心がお互いの心に滑りこんでいく隙間を作るということ、同じ時間を共有し、相手の顔をしっかり見る優しさを持つということが、問題解決の根本に有るお話の作り方は、凄く真摯かつ優しい展開で、とても素晴しかったです。

かくして14人全員の個別エピソードが終わり、この女の子たちがどんなに素敵な子達であるか、胸に届きました。
そう言う状況で、次回は合宿。
自分がアイマスアニメを正座して見るようになった5話(布団の中で未来のことを語り合うシーンが、同時に物語全体の設計図を視聴者に公開するシーンにもなってる作りの巧さにビビった)とも重なりあうセッティングなので、興奮はうなぎのぼりです。
いやー、凄いなぁ、モバマスアニメ。