イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

TNXサプリメント『ビハインド・ザ・ダーク』レビュー

NOVAのサプリメント『ビハインド・ザ・ダーク』を入手したので、レビューを書くよ。


●世界観
サプリメントの狙いは『縦の拡充』ということで、良いシナリオネタになりそうな、コアでディープなNOVAネタが山盛りになってるサプリです。
世界観のうねりが安定するとシナリオが作りにくくなるので、ストリート・企業・アストラル全てに変化が仕込まれた今回の世界観は、とても良いと思います。
投稿サプリでもあるので、新組織や新ゲストも沢山追加。
これをどう活かしてニューロエイジを豊かにしていくかはユーザーに委ねられており、あとがきでも社長が触れている通り、当事者性と世界観のバランスがNOVAはイイなぁと思います。

どちらかと言うとストリートが賑やかな印象を受けましたが、大ネタとしては久々に表に出てきた浄化派の元締めカオス先輩でしょうか。
旧版だとあんま太らされなかったネタなので、今後転がしていくんですかね。
最近存在感のない日本もひっそり強化されてる感じがするので、SSSとかの布石かな。

ゲストに関しては、ついに三十路に到達した天鳳院悠羽が、年を考えない中二病スタイルな外見になってて、ひとしきり爆笑。
他のメンバーも、世界観パートで『コレ使ってね』と言われた組織に関係する、使いドコロのあるヤカラばかり。
劉金武先生の『そのでっぷり太った腹に、ワンパン決めたるぜ!』感は異常。
いいゲストだ。


●追加ルール
ダブルハンドアウトは旧版からの復活と言えますが、進んだ時間に相応しい適切、かつ詳細なプレイエイドが付いてきており、実プレイへのハードルが大幅に下がっています。
ダブルハンドアウトはかなり難しい遊び方なので、今回のようにしっかりサポートし、難しさと楽しさを的確に伝える文章が追加されているのは非常にグッド。
サマリーまで付いてきて、抜かりのない仕上がりと言えます。

ランダムシーンに関しては、ぶっちゃけめくる意味が薄くなってきたシーンタロットに、ゲーム的な意味を持たすルール。
ちょっとシナリオジェネレーター的な要素も兼ねていて、演出に迷った時に採用するといい感じかな、と思いました。
『実データを伴わないルールは、即座に忘れ去られる』という原則に伴い、ランダムなシーンごとに軽いサポート効果を付け、リソースを払わせる処理の仕方はとても良い。
カブトワリやカタナを引いた時のメガバイオレンスっぷりはなかなかのもので、『神は銃弾』って感じ。


●データ
全体的にインフレを抑圧しつつ、今まで触ってなかったレイヤーを掘り返す手腕は健在。
セットアップ行動が強化され、BSが通しやすくなったのが、全体的な傾向かなぁ。
強さもあるけど、新しいこと出来そうな感じとか、キャラ表現が広がりそうな感じとかがグッド。
追加クイックスタートも、割と攻めヨリだった今までのラインナップを補う作りで、凄くいい。
つーか「地上の天使」が半端なく強え。

●特技
・カブキ
<グローリーパス>やら<勝負服>やら、芸術の達成値を伸ばす手段が豊富に。
スタイルレベル&ウェット縛りだが、手札が腐るゲームであるNOVA-Xにおいて、スート書き換えを可能にする<フール>は強い。
<青天の霹靂>は攻防両面に活用できる、汎用性の高い強特技。

・バサラ
マジックアイテム専用のマイナー増加<符術>は、使うもんがなければ<呪物作成>取ってシナジー生成。
アウトフィットを破壊して火力を上げる<破壊魔術>は、最大火力+20という性能もさることながら、サイコアプリやサイバーウェアまでぶっ壊せる表現力が魅力。
個人的にはライフパスや通信教育をガンガンぶっ壊して取り返しがつかない感を出したかったが、サービスは破壊できないんだよね
<崩壊>は『AR消費がない』ダメージ追加であり、奥義に相応しい超性能サポ。

・元力
元力もアップデートされ、色々追加効果が。
痒いところに手が届くアップデートが多く、<重力><時間>によるサポート、<生物>によるディフェンスと、行動の幅が広がる特技が嬉しい。
攻めを強くする特技の中では、<電磁(正)>と<乱気>を組み合わせた気絶コンボに可能性を感じる。

・タタラ
BSが強くなったので、<オーバーホールⅡ>は嬉しい。
<メカニック><ツールアシスト>による汎用性の強化は、ミドルでの判定やFSがあるシナリオで生きてくるのではないか。
<イミテイション>はD時代より装備が弱くなったXでは、そこまで炸裂はしないと思う。

・ミストレス
相変わらずの支援スペシャリストっぷりで、<乙女の喝采><希望の果実>といった地道なサポートから、CSを無視する<刹那の刻>まで、優秀な特技が揃う。
破格のAR補佐<パワーボイス>のために、ミストレスを二枚にする勝ちが十分あるレベル。
高レベルの<売り上げ>を前提にする<千客万来>は、情報収集も強化できる良特技。

・カブト
受け値カブトの夢が詰まった<鉄壁Ⅱ>だが、<パリングショット>使いだとコンボが成立しないので注意。
受け値がダメージ軽減に関係する<堅牢なる盾><ブレイクヒット>の存在も相まって、パリィカブトの存在感は増えていると思う。
<ドミナンス>は拡大可能なので、上手くねじ込むと敵の陣営をズタズタに出来る、危険な奥義。

・カリスマ
全体的にセットアップの攻防が激しくなっているので、それを潰せる<圧迫の尋問>は強い。
<神の御言葉>を防御系としてカウントできるようになるので、<解体屋>は有り難いなぁ。
そういえば、『解体屋外伝』は昔参考資料としてルールに乗ってた気がする(唐突な脱線)
<信念剥奪>は通ればゲーム崩壊クラスなのだが、精神戦ダメージが出るならダメージで殺しちゃったほうが早いのも事実。

・マネキン
兎にも角にも<ファム・ファタル>の性能がぶっ壊れており、セットアップでゲームを決めれるレベル。
<笑顔でカバー>はドッジに失敗してディフェンダーにカバーしてもらい、そいつに使うと、ヒロイン力高くて素敵。
<シークレットタイム>は戦闘にはほぼ適応されないと思われるため、ミドルでどう使うか、センスが問われる。

・カゼ
同乗者に関係する特技が多いが、乗ってくれないと同乗型カゼは始まらないので、乗っかりやすい車を選ぶ所からキャラメイクが始まる感じ。
<デッドチェイサー>は効率のよいダメージ上昇なので、素直な殴り役をやるときに便利っぽい。
<マルチドライバー>は<操縦>だけで全てが賄われていた過去を思い出させ、カゼ導入を拾いやすくする良い特技だ。

・フェイト
フェイトの特技数を参照する<信念の剣>だが、汎用性が高いスキルがフェイトには多いので、+10くらいまでならそこまで無理なく使える気がする。
<逆境の灯>は汎用性の高いBS対策で、どんな仕事もこなすフェイトらしい使いやすさ。
タイミングがマイナーなので、ディフェンダーがコレ一本で凌ぐには辛いか。
<幻惑の閃き>はドラッギーな天才キャラが一発で立つ、面白い特技。

・クロマク
キャラの組み方に介入できる<裏帳簿>はなかなか面白い発想で、ペナがそこまできつくないのも良い。
何かとおぜぜを持っていかれるクロマクの特技を補佐する<調停者>も、痒いところに手が届く印象。
<暗闇の渦><闇からの声>など、報酬点を条件にサポートを行う特技も増えたので、<ブラックマーケット>の存在価値が膨らむね。

・エグゼク
エグゼク版<情報屋>である<企業の網>は、情報に先んじたいスタイルを補う良特技。
<試作品Ⅱ>は<二刀流><黒羽の矢>と組み合わせて使うのがいいのかなぁ。
達成値を固定する<ビッグプロジェクト>、判定なしで判定を割れる<セカンドプラン>など、今まで無かった発想の特技が追加されている。
実際使ってみて、どういう面白差が出るのを見たい所。

・カタナ
<粉砕剣>のお供<愛刀>の追加がとにかく嬉しく、カタナ単体でシナジーになっている所が高評価。
<肉薄>で間合いを詰めるか、<カマイタチ>で距離調整するかは、取るべきエンゲージポジションと表現したいスタイル次第かなぁ。
基本役割分担するゲームであるNOVAにおいて、ディフェンダーに手を出させない<疾風剣>は見た目を超えてヤバイ気がする。

・クグツ
<高性能武器>や<牽制射撃>といった、取り回しの良い特技が目立つ。
自発的に重圧を受けれる<滅私奉公>は、<絶一門>のお友達。
ダメージ量や達成値を無視してダメージを引っ張る<セルフサクリファイス>は強いが、死んだら元も子もないので<バンザイ>とか欲しいですね。

・カゲ
殺し屋や忍者ではなく、怪盗としてのカゲを強調できる特技が増え、表現力的にも性能的にもグッド。
カゲの弱みである情報収集も<盗品><影語り>で強化され、更に隙がない。
BSを任意タイミングで割る<スケルトンキー>の登場により、支援型カゲが現実味を帯びてきた。
<水鏡>は処理が面倒くさくなると思うので、自分がデータを把握してる特技をパクってくるのがいいかなぁ。

・チャクラ
CTLで強化されたウェットチャクラの恩恵を、サイバーアップしても受けれる<サイバーアデプト>が面白い。
コネ取得特技<古い傷跡>は、ミドルの進行をスムーズにするために使える便利な特技。
<鬼炎拳>はAR消費なし、組み合わせ不要、カードの数値不要と、負荷の少ない良特技であり、殺しきれない時のひと押しにも良さそう。

・レッガー
<ぶっこ抜き>に<ハイエナ>と、手札操作能力が強力になったレッガー。
<カウンター>と<イカサマ>を軸にしたパリー型レッガーカブトは、今後流行りそうな予感のある強力なアーキだと思います。
<サイドビジネス>は何取ってくるのがいいかなぁ……<非合法セクション>あたりかなぁ。

・カブトワリ
<アサルトムーブ>は単純に間合いを取るだけではなく、<キルゾーン>に相手を叩き込む意味でも強い。
ついに追加されたN体攻撃である<ダブルショット>だが、2体攻撃という慎ましさが現在のXを表しているようで良い。
いやつえーけど。
<ガンフーブレイド>のお友達は、「ブラックストリングス」「シャドウソード」あたりかな。

ハイランダー
精神戦をそのまま跳ね返される<空ろなる中心>の存在で、ハイランダーに生半な精神戦は死を呼びこむ環境に。
キャラ表現として優秀な<トランス>を使いやすくする<トランスⅡ><軌道兵器Ⅱ>は、継戦能力を伸ばす有り難い特技。
<透明な悪意>は単純に強く、<天の怒り>は味方の攻撃をフィニッシャーに変える奥義らしい奥義。

・マヤカシ
汎用性の高い達成値上昇<心紋>や、強特技をさらにブーストする<未来予知Ⅱ><調和Ⅱ>など、底力が向上した。
奥義級の性能を誇る<高速感応>は組み合わせる特技が制限されるが、<拘束><雷鳴破>あたりが面白いと思う。
単純に<高速感応><熱情>でも最速攻撃だもんなぁ……つえーわ。

・トーキー
<名解説Ⅱ><ヒーロータイム>辺りは単純に強い。
二の矢がそこまで必要なゲームではないので、<ディレクター>他回数回復系奥義が猛威をふるうか否かは、環境次第。
<ギョーカイスラング>は強いんだけど、ベース技能同士の組み合わせになる可能性が高く、ルール的に爆弾だと思う。

・イヌ
待ってましたと言わんばかりの<汚職警官><協力要請>は、効果もペナルティも慎ましやか、かつ表現力があって良い。
社会戦ダメージが入った相手に有効な特技が増えてきたので、PLサイドから社会戦を仕掛けてもいい頃合いになってきたのかも。
<降伏勧告>は攻撃を通すというより、スタン攻撃を成功させる意味合いのほうが大きいんじゃなかろうか。

・ニューロ
汎用性の高い面制圧<ストリームエフェクト>の登場で、アタッカー/サポーターとしての性能が更に上がった。
<ユニバーサルドローン>の存在もあって、万能選手としてのニューロの地位が上がった感じするなぁ。
手札が腐った時も<ウィザード>で安心だ!

・ヒルコ
BS強化に対する対抗策として、<しっぽ切り>は面白い。
ペナルティに関しては、<瞬間適応>でケアするのが一番素直かな?
<テイルバッシュ>は決まればゲームが終わるレベルの強特技であり、此処でもパリィ型ディフェンダー強化の波が見える。

・クロガネ
リアクション不可を叩き潰せる<迎撃システム>の追加が、何よりまず嬉しい。
困ったときに便利な<人形使い>、上げ下げ両面の数値サポ<高速演算処理>、情報強化の<通信機能>と、サポーターとしての能力も充実。
……AR1になって即座にメインプロセスが来るってことは、<リブート>代償の恐慌って実質機能しないんじゃねぇの?

・アラシ
待望のXダメージ<デッドリーピアース>だが、<死点撃ち>と比べると涙出てくる……あっちが強すぎるだけか。
<超長距離支援><急降下作戦>と、セットアップタイミングで勝負を有利に進める特技が増え、便利な感じに。
<戦神の采配>は見切り不可系特技で無効化出来ないので、コレ持っている相手を落とすのは大変そう。

・カゲムシャ
<潜伏Ⅱ>の追加で、<首吊り仕掛け><レッグアレスト>の地位が大幅に向上。
<完全看破>は新しい行動失敗型リアクション特技であり、ディフェンダーの公正に新風をもたらすかもしれん。
発動条件が「スタイル技能を組み合わせている」なので、常時特技だけでガッチガッチに固めた一発は止めれないけど……そこまでメタられたらしょうがねぇよな、正直。

・アヤカシ
なにはなくとも<腐敗の王>であり、これが一つ環境にあるだけでBSディーラーの地位が上がり、BS対策が本気で視野に入ってくるレベル。
結果として<闇夜の狩り><妖魔の狩人>も使いやすくなったので、環境を変化させる優秀な特技だと思います。
<黒の番人>は叙情的な使い方ができそうな神業書き換え特技で、凄くいい。

・血脈
元力と同じくアペンド効果が追加され、血脈自体も<海魔の一族>が追加。
セットアップの強制移動はまじ強いが、弱点の「水中以外」がルール的に定義されていないファジー領域なので、使用する際には注意が必要か。
血脈Ⅱは<龍の一族><鬼の一族><化生の一族><天使の一族><神の一族>あたりがエゲツねぇ。


●アイテム
全体的にお高めに設定されていて、バランス崩壊を防いでいる感じ。
アイテムは全体的に経験点効率が悪く、『とりあえずアイテム取っとけ』という状況にはなっていないのが良い。
共通リソースよりも、クラス個別のリソースのほうが強いほうが不公平感薄く、キャラの個性も出るもんなぁ。

・武器
懐かしい顔ぶれがチラホラ見え、ノスタルジーに浸るロートル
「ワン・オブ・サウザンド」の性能を見ても、設計思想が大きく変わったなぁと思うことしきりだ。
「ギガタワー」はペナルティ効果が選択可能ではないので、味方にもマイナスが乗る処理でいいのかな、これ。
単純な武器としては「訃死枝」「薄氷」「XP13」あたりが優秀。
「強装弾」は面白い使い方ができそう。

・サイバーウェア
既存のウェアの効果を伸ばす装備が軒並みお高く、費用対効果としてはあんま良くない。
ガッツンガッツンにUP2DATEしてる、エッジなキャラを表現する手段としてはグッド。
汎用的な達成値ブースト「アップベース」、全てを電脳で踏み倒せる『XXプロジェニィ』は、ミドルで猛威を振るいそうな予感がする。
「スペクター」の前提条件が煮えてるんだが、マヤカシ以外が無意識に入れる、いいサイコアプリが無いのが悩みどころ。
……「プリズナー」?

・INAUS
こっちにもスロットが付いたINAUS。
お値段は高く、他のウェアで代用できない効果も少ないので、リッチなサイバー野郎のおしゃれ小物ではある。
聖母殿の凄腕キャストを持ってる人なら、「電心聖歌」ガン積みしたくなるのかなぁ。

・トロン
直接的な数字というより、表現力重視のラインナップ。
「タクティクスアイ」やら「ブーストコード」やらを使うと、殴り系ニューロが輝く気がする。
絵面は間抜けだが、実は衰弱を割れるアイテムは少ないので「クールファン」は強い。
地味に吸血鬼や人魚のバックファイアも割れるので、超越者の間で扇風機大流行の予感。

・生体装備
<しっぽ切り>の登場により、装飾品系の生体装備にデータ的な意味が出来た。
殴り性能が単純に伸びる「剛拳」、生体トロンになれる「ベイビーエッジ」辺りは使い勝手が良い。
「Xエレメント」「パラスブード」は凶悪な性能をしているが、その分反動もデカい。

・ヴィークル
タップリ追加されたがやっぱ図抜けた性能のものは少なく、趣味で選んで大丈夫な感じ。
ドローンリガーのお友達「銭蜘蛛」や、男一発六尺玉「ロケットボーイ」など、ドローンに面白い装備が多い印象。
ヴィークルオプションは、「リヴィングヴィークル」「特務機」辺りが使いでがありそうだ。

・カルチャーウェア/その他
ようやく使いたくなる住宅オプションが増え、家をカスタマイズする楽しみが強化されて嬉しい。
<符術>の追加でマジックアイテムが面白くなったので、データを掘ってみる意味はありそう。
フーズに関しては、強さよりもミドルシーンの雰囲気作りとして強い気がする。

・サービス
種別に関係なく電制を上げれるジミニーは、キャラ表現だけではなく、今まで届かなかった領域に触れる良いアイテム。
「写し」「真打ち」に関してはアレだ、その、「フェイクバスター」とおんなじだ。
DMMバンザイ。
超人言い張り専用設定にも「機甲聖人」「牙の紋章」とデータ的裏付けが付いたので、ド厨房どもはチケット用意しておけ!(自分への呼びかけ)


コンセプトに違わず、NOVAを縦に深く掘り下げていく、実戦向けのサプリメントでした。
読み甲斐、掘り甲斐、遊び甲斐があるデータや設定がみっしりと詰まっており、すぐさまキャラを作り、遊びたくなるよう仕上がってんのは素晴らしい。
あぁあー、NOVAしてぇえええ!!(叫んで終了)