イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 15/05/07

俺物語!!:第5話『俺はニブイ』
美女と野獣の純愛ストーリー、第3エピソードは再びペースをゆっくり使って、砂川姉を軸に回すお話。
相変わらず原作の美味しい所を殺さず、アニメ独特のアレンジと追加を巧く使った料理法で、大満足の前半でした。
ほんとなー、いいアニメ化だよなぁ俺物語!!

第3話でちらっと顔を見せた砂川姉ですが、順調すぎるほどに順調な恋路にスパイスを振りかける、下手な扱いだと嫌われる立場。
しかし登場即敗北の負け犬っぷりとか、常に猛男のことを案じ続ける姉っぷりとか、嫌な気持ちにならないキャラの見せ方をしっかり維持していて、好感の持てる登場になりました。
姉さんが色々突っついてくれるからこそ、このお伽話に現実的な足場が生まれるわけで。
必要な仕事をしっかりやっているキャラをこそ、愛されるように描写するっていうのは凄く大事だし、巧いなぁと思います。

そんな姉さんが引き立ててるのは、凛子と猛男の間に漂う秘密と不穏なムード。
とは言っても解決に向けての地ならしはしっかりしてて、不器用ながら天真な猛男は頼りになる男だし、凛子はいつもの様に発情してた。
凛子が兎の革を被った狼系女子だってのはかなり早い段階から見せているので、今回だけではなく
シリーズ全体を通した地ならしと言えるでしょうか。
キャラクター描写に統一感があるのは、視線がブレないので見ていて極めて有り難い。

姉さんが言葉にすることで、恋愛を物語にする上で必要なサスペンスが生まれているわけですけども、同時にこの世界は極めて優しい世界であり、波風は基本穏当に解決されるために起こる。
同時にあまりに平穏無事に過ぎると物語的起伏に欠けるわけで、そのバランスを上手く取りつつ、『こうあってほしい』所に作品全体を巧く安置する手腕は、原作をよく理解していなければ出来ないと思います。
追加されてる要素の選択や置き方を見るだに、増えた時間を効果的に使ってるなぁと感じますね。
オスに愛されすぎな猛男とか、姉さんのGPSストーキングとかね。

今回は第1エピソードに引き続きの回跨ぎであり、『凛子の秘密』という解りやすい引っ張り要因を持ち越して終わりました。
フツーの少女漫画アニメだと姉さんの言うとおり浮気だのなんだのを心配しますが、構成が巧いので気持ち良く待てる作りになってます。
第1エピソードで優しくて強い世界をしっかり見せたこと、順番を入れ替えての第2エピソードで凛子が猛夫に惚れ込む理由を強く見せたことが効いてる印象。
様々な手腕を駆使して、僕達の好きな物語をしっかり届けてくれる制作スタッフには、強い信頼と敬意を抱けます。
ほんといいアニメだなぁ……。

 

血界戦線:第5話『震撃の血槌(ブラッドハンマー)』
狂った街でドンチキ騒ぎアニメの第5話は。狂ったカップル(?)のはた迷惑な痴話げんかと、初々しいカップルの接近のお話。
アリギュラ役のこおろぎさんといい、ハマー役の宮野さんといい、ゲスト声優がドンピシャで素晴らしかった。
アリギュラの天真爛漫な狂気とか、ハマーの凶悪犯すら変えてしまう器のデカさとか、声で伝わってくる個性というのはほんとうに良い。
このアニメの声優ラインナップ、最新鋭の売り出し中メンバーより、少しだけ落ち着いた並びなのが、オッサンとしては心落ち着くところであります。

お話の方はスケールのデカいモンスタートラック暴走を、ライブラ全員でどうにかするお話。
相変わらず見せ場の分担が的確で、ぼーっと見てるメンバーが居ないのは群像劇として見事。
新キャラであるブラッドハンマーも、ライブラ最大火力として面目を、インチキパンチ一発で主張してたしね。
印象的でアッパーテンションなシーンを手早く展開し、気づけば体温が上がるような流れを作っていたのはさすがです。
アクションも派手は派手なんですが、合間合間のコメディなシーン、シックな関係性描写でキャラを見せているので上滑りしてないし。

手際よくアクションを詰め込んだ隙間に、ホワイトちゃんとの甘酸っぱいロマンスを入れてくるのも今回の特徴でして。
レオくんとデートするシーンは、松本監督のセンチメントな感性がフルに迸った、しっとりした良いシーンでした。
狂ったカップルを前半で見せておいて、レオ&ホワイトのフツーで柔らかな出会いをじっくり見せる落差の作り方とか、とても好きです。
……どう考えても悲恋の見せ方だがな!!

キャラを見るのも好きですが、アリギュラトレイラーのヘンテコな内装であるとか、HLの町並みであるとか、やっぱり雰囲気のある背景や美術がとても好きだ。
こうして異世界の中に腰まで浸れるファンタジーってのは、やっぱ素晴らしいっすわ。
アッパーテンションなアクション、しっとりとした掛けあい、魅力的な世界観。
色んな角度から楽しませてくれる、いいアニメですね、血界戦線は。

 

・響け! ユーフォニアム:第5話『ただいまフェスティバル』
青春と音楽が交錯する吹奏楽カレイドスコープ、第5話目は細やかな関係性の描写と、これまでの物語的蓄積をひとつの成果としてみせる回でした。
4話まで回を跨いでやっていた、問題点の提示→それを克服するための練習・変化→結実する成果という基本的サイクルを、1話の中にダウンサイズして落とし込んだような、起伏が解りやすい構成が目立ちます。
三好一郎渾身の細やかなカット割りと、TVレベルを遥かに超えた美術が冴え渡り、鮮烈な印象を残す話となってました。
いやホントね、背景別格に凄いすぎる。

ただ単純に背景が凄いだけだと何の意味もないわけですが、このアニメは高校1年生の女の子の小さな世界を切り取るアニメ。
フィルターを効果的に使った美麗な背景は、彼女たちが青春まっただ中に飛び込んでいる世界を『生っぽく』見せることに成功していて、劇作的に意味のある凄さになっていると思います。
彼女たちが歩き演奏し日々を過ごす駅、道路、公園。
それらが燦めいて見えること、羨ましくなるように描かれていることは、作品に対しての微熱のような憧れ、『この世界に行ってみたいな』と思わせることに、無言で寄与していると、僕は思うわけです。

京都宇治という泥臭い場所を舞台にしながらも、一種の壺中天めいた別格の空気を出し、清潔なテンションを作品に常時維持させていることに、一切抜きがない背景が果たしている仕事は、見かけよりも大きい。
現実の宇治(もしくは豊橋、出町桝形、岩美町)に徹底したロケを行い、実在の場所をアニメの中に埋め込むために払われた多大な努力は、奇妙な浮遊感と地面に足のついた現実感を両立させ、ファンタジーに必要な憧れを産んでおるわけです。
こういう所、本当に京都アニメーションの強い所だと思います。

おっぱいネタの扱い方とかね。
生っぽくなりがちな胸ネタを空想の世界に一回飛ばし、セリフで明言させずに流すことでキャラクターと視聴者の間に距離を作る手法とか、凄く面白い。
視聴者は『うっひょー副部長のおっぱいだー!!』ってなってんだけど、作中では気にしてんの久美子だけだから、欲望を煽りつつ作中では清潔感が維持できてんのよね。
ファンタジーとリアルの自在な線引と、それを可能にする映像・演出技術は、ホント京アニの武器だと思います。


無論背景(に拘ることによって表現される世界という箱)はあくまで外側であって、それが持つ意味は大きいですが、中身の方も重要。
今回のお話は前半久美子と部活の変化を見せ、後半のフェスでその成果を確認させる作りになってました。
部活について語る時は距離を取った冷静な視線、久美子について語る時はクローズアップを多用した情緒的な見方が強調されており、この落差が気持ち良かったです。

空気の抜けた風船のような気合の入っていない状態から、滝顧問という劇薬の投入を経て、ついに第4話の『海兵隊』合奏で結実したより良い変化。
この物語的な上げ下げは、登場人物すべてが所属する北宇治吹奏楽部だけではなく、主人公である久美子、そして視聴者にとって共通です。
吹奏楽に対して本気になれない』という久美子の中途半端な状態は、集団としての北宇治とシンクロしており、『やる気のない中にも、本気でやりたい奴がいる』という北宇治の実情は、同時に久美子の心情でもある。
けして均一にならない問題児集団・北宇治吹奏楽部は、群像劇としてのダイナミズムを担保しつつ、主人公のややこしい内面と群像を重ねあわせる装置にもなっています。

色んな奴がいて、色んな気持ちがあって、吹奏楽の練習を通してそれがまとまっていく(もしくはまとまっていかない)という運動がこのアニメ全体を支配しているのであれば、今回は4話までで一つの纏まりを見せた後の、フォローに当たります。
滝顧問の指導によって、吹奏楽部(と久美子)がどう変化したのか。
その変化が、周囲にどう受け止められているのか。
4話まででみせた問題点と変更点を御浚いするような構成になっており、同時に次回以降の火種となるポイントも的確に撒いた、統制の取れたお話でした。

さすがにフルではありませんでしたが、可愛らしい衣装で凛々しく更新する北宇治の面々を、際の立った作画でしっかり見せた達成感は、集団競技物として大事な所。
『成果が出ればいい気持ちになる』のは何も作中のキャラだけではなく、視聴している僕らも同じことであり、ナメられてる北宇治がバッチリ決めて評価される姿は、やはり気持の良いものです。
こうして問題点の説明とそれを乗り越える練習、その結果としての達成感のループというのは、単純かつ基本的ながら、それ故に強力な物語の快楽を持っています。
そういうお話の骨格をしっかり作っているからこそ、細やかで美麗な付随物が生きてくる所もあるわけで。
両方しっかり出来てるこのアニメは、とても贅沢だなと思います。

内面吐露としてのモノローグではなく、状況説明のためのナレーションの多様は、今回目立ったポイント。
吹奏楽というジャンルよりも、北宇治吹奏楽部という集団、その中心としての久美子を見せることに注力した結果、1話から4話までは『吹奏楽ってどういう競技なのか』『どういう所が難しく、乗り越えることで達成感が生まれるポイントなのか』という解説は最小限でした。
競技フィクションとしてはこれらの点を門外漢にしっかり見せることはとても大事であり、ドラマの流れに一つの落ち着きが生まれたこのタイミングでやっておくのは、重要かつ必須でしょう。


世界観という大きな箱、その中にある北宇治吹奏楽部という小さな箱は巧く描かれているわけですが、その中心にいる久美子も、二つと同じくらいかそれ以上の情熱を持って描写されていました。
いや、『女子高生のリアルな下半身をもっちり書き込みたいッ!!!』という欲望がダダ漏れだったっていう話ではなくてね。
けいおん!』でも『たまこまーけっと』でもそうだったけど、山田シリーズ演出は生っぽい女子のボディに情熱持ちすぎ。
トワリング衣装も、北宇治だけミニスカ脇出しだし……。
ありがとうございます。

さておき、久美子の世界にとっての関心事は、吹奏楽よりも高坂さん重点。
今回も中学時代のことが尾を引いて巧く掴めない距離感を、半歩ずつすり足で詰めていく様子が、丁寧に描写されていました。
白昼夢めいた美麗さを誇る背景も生きて、駅降りてからの描写は非常に情緒的に仕上がっており、久美子の小さな、しかし大事な一歩をしっかり伝える、良いシーンでした。
高坂さんが超絶美少女として描かれているのは、客観的な事実という側面もあるんでしょうが、世界を切り取るカメラたる久美子の内面が、大きく反映されてんだろうね。

良いシーンという意味では、かつての仲間と健全に離別し、北宇治に帰っていく一連のシーケンスは久美子の成長をよく伝えてくれる、情緒的な見せ場でした。
第1話では『何故北宇治なのか』という問いへの答えをごまかしていた久美子が、はっきりと言葉にして気持ちを伝えるこのシーンは、横長のレイアウトと人物配置の妙もあって、気持ちに届く仕上がり。
こうして明確に届くシーンを入れ込むことで、キャラクターの物語をはっきり視聴者に伝え、物語の内部に引き込んでいける強さってのは、凄く大事だと思います。


とびっきりの作画でかかれた見返り笑顔や、緊張を一吹きで飛ばす頼もしさ(と空気読めなさ)が強調されていて、今回の高坂さんは目立つ位置でした。
志も技術も高い位置にいる高坂さんを、下から眺めつつ追いつこうとしていく動きが、この作品での久美子の動線であり、彼女が主人公である以上、それは物語全体の動線にもなります。
なので、高坂さんが高嶺の花として『遠く』描かれ、時々見せる茶目っ気や溢れる才気によって『近づきたい』存在として描写されているのは、視聴者を作品に近づける重要なポイントだと思います。

高坂さんとの距離は縮まりましたが、次回以降に活用されそうな危うい描写もチラホラ。
魂を入れ替えた北宇治に馴染めない様子を見せていた翠ちゃんとの距離感や、カリスマと能力がありつつも他人への興味が薄い副部長の描写なんかは、今後への導火線でしょう。
滝顧問への反発心を燃料に前に進む現体制がどうなるかも不安だし、完全に問題を解決しきらず、物語の推進剤を残して時間を作っていく劇作は、期待が高まって良いですね。

24分の間に試練と克服、変化と理解のドラマを手際よく入れ込み、細やかな心配りも欠かさなかった見事なエピソードでした。
シリーズ全体の見取り図やキャラクターの長期的成長といったロングスパンの巧さ、作画の美麗さやキャラクターの印象的な見せ方といったショートレンジの強さだけではなく、一話の中でどれだげ話を上げ下げし、確かな満足感を与えるミドルレンジの逞しさも感じ取れ、非常に頼もしい。
やっぱイイなぁ、このアニメ。