イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

GANGSTA:第3話『ERGASTULUM』感想

血と硝煙のおじさんゆるふわ日記、今回はノー・ヴァイオレンスでお送りする過去チラ見せ回。
自分たちが血を流さなくても街は赤く染まってるし、普段の仕事も劇薬運びと男娼だし、昔も今もドブで出来た檻みたいな毎日だがな!!
抑え目でしっとりとしたトーンが徹底され、非常に雰囲気のある回だったと思います。

今までは結構派手目に便利屋と街の説明をこなしていたこのアニメですが、今回はギアを落として昔の話とかもするフェイズ。
このスローダウンが作りこまれた町や便利屋たちの気だるい日常、異邦人アレックスの戸惑い、空気のように世界を埋めている悪徳など、色んな物をしっかり見せる効果を出していました。
BGMの使い方(と使わない方)が非常に良いのもあって、じわっと世界の雰囲気を滲ませる結果になっていたと思います。

今回メインになっていたのはウォリックのジゴロな日々ですが、女とズコバコやってるのにあんま羨ましくないというか、セックスすらも疎ましい日々の一分というか、ダルい感じが非常に良かったです。
片目を失った経緯や体を切り売りした過去なども匂わされて、木っ端犯罪者として悪徳の街の濁流に流されるまま、楽園の果てに行き着いてしまった男のどん詰まりが、良く見えてきました。
結構軽妙洒脱なことも行ったりやったりしてるんだけど、キャラクターの地盤に強烈な『飽き』があるのが、ペシミスティックで良い。
気怠さに塗りつぶされた日々の中でも、色んな事があったっぽい相棒のことでは一気に本気になるところも、コントラストがハッキリしていて魅力的だ。

ウォリックに対比する形で示されたニコラスの過去と現在もまた、『タグ付き』の地獄めいた宿命もあって気怠いもの。
かつて所属していた組織、意味ありげな運命の女と、ハードボイルドに必須な過去がちらほら見えてのが、いい感じに想像を煽ります。
荒事担当と思いきや、結構社交性と常識があってフツーの日常も送れるところが、多角的な見せ方で良い。
マフィアのおじさん相手に、丁寧に仁義を切ってるところ好きだなぁ。


悪徳の支配する街の泳ぎ方に、良くも悪くも慣れきってしまった二人とは対照的に、アレックスはまだ殺しにはなれない。
ジゴロというウォリックの本業、劇薬をかじりながら生き延びる『タグ付き』の宿命、耳の不自由なニックとのコミュニケーション。
出会う全てのものとの距離を測りかねつつも、背中を向けて逃げ出すことも出来ない彼女の半端な位置が、しかしゆったり進む今回はとても気持ち良かったです。

彼女は戸惑いつつ二人に興味を持ち、街に興味を持ち、まだこの作品に慣れていない視聴者の代理をしてくれるキャラクターなわけですが、ワケありなおじさん達に上手く踏みこねない逡巡の描写が今回とても良くて、奇妙なシンパシーを懐きました。
いや、俺は声が能登麻美子でもないし、ボディコンシャスな服をバッチリ着こなせるグンバツスタイルの持ち主でもないけどさ。
妖しくて危なくて、しかし目が逸らせない彼らとこの街と対峙して、前に進むか後ろに引くか、態度を決めかねつつも巻き込まれている彼女の立場が、無言のうちに視聴者に擦り寄ってくるわけです。
そういう形で視聴者が作品に飛び込んでいく窓を、魅力的にさり気なく用意できるってのは、こういうお話の、キャラクターの、作品世界の空気が大事な物語においては、大事で強いことじゃないかと思います。

血沸き肉踊るヴァイオレンスや、思わずムクリするエロスとか抜きでも、グッと胸に迫るスケッチは描けるんだなぁと痛感する見事な小品でした。
悪徳の箱庭を舞台にし、過去と身体に傷を追った男たちの気怠い日々を追いかけるアニメーションとして、こういう話があるってのは良い。
スンゴク良い。
このアニメ、凄く面白いぞ。