イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

GANGSTA:第7話『BIRTH』感想

人生の掃き溜めに食い詰めものが集まるアニメ、雨が上がって第七話。
吉野声のドレッドと仲良くなったり、アレックスとニックがコミュニケーションに成功したり、色々と希望が見えるお話……って言いたいところだけど、やっぱコイツあの人生どん詰まりだわ!! っていうお話。
ニックとニナが楽しく遊んで、空に手を伸ばすんだけど絶対に届かない描写が最高に胸糞悪い未来を予知してて素晴らしかった。
アニメ化の範疇でどこまで行けるかはさておき、登場人物死にまくるだろうな、この作品のクライマックスは。

表面的には明るい要素満載なんですが、まず主役であるウォリックが暗い。
ニックとの因縁がだいたい明かされてましたけど、壮絶で悲惨な過去を共有しており、そら一筋縄ではいかない関係だなと納得した。
ウォリックにとっては初めての親友であり親殺しの犯人でもあるニックは、『タグ付き』という立場上主人になってやることでしか生存を許されず、拾った命も先が短い。
家族を皆殺しにされて屋敷からは追い出され、名前も変えてジゴロで犯罪者に身を落とす原因にもなっている。
愛憎半ばするってレベルじゃない因縁が、二人の間にはある。

ニックが父親を殺してしまったせいで、ウォリックは虐待の傷を乗り越え、父と和解して成長する機会を一生失い、半端者として生きることを決定されてしまった。
社会的立場としても、犯罪都市の汚れ仕事請負人として生きることを余儀なくされ、健全な自己実現なんて望むべくもないまま、流されて三十路まで生き延びてしまったのが、ウォリックという人間なのだろう。
だから彼はずっと子供のままで、大人になるためにはニックが死ぬしかない。
でも死んで欲しくないし、足枷抜きで死んで欲しくもあるという、ただの相棒でも、主人と奴隷でもない、血に塗れた間柄なのだろう。
ウォリックがゲイじゃないのが、逆に生々しいというか、なんというか。
セックスという理解を拒絶しているからこそ、毛筋とも進まない男と男のメキシカン・スタンドオフ


ご主人の鬱屈は他所にのけて、ニックは友達沢山作っていた。
捻くれまくったウォリックに比べ、いい意味でも悪い意味でも天真なのは、ニックの特徴だろう。
興奮に任せて殺しあって、事が終われば一緒に遊べるメンタリティ……殺しも遊びも、彼にとっては同じなのか。
それが『タグ付き』という特性に由来するのか、エルガストルムというこの世の果てに由来するのか、彼個人の人格によるものなのか、それらの複合なのかは、ちょっと分からんけど。

片目で過去を睨み続けるウォリックに対し、ニックはただ未来を見据えて走っている。
その先に破滅しか待っていないので刹那的にも見えるけど、人生をシンプルに考え行動するという意味合いにおいて、ニックの方がスマートな生き方ではあるだろう。
だから純粋で、子供は懐くのだ。
何度も言うが、その先はどん詰まりなのだが。
そういう場所でも一瞬の希望はあるし、それが一瞬だからで見せかけで偽物だからといって、無意味でも無価値でもないとお話なんだと思う、この作品。

雨の間の切れ間の晴れのような、一瞬の救いと大量の地獄のお話でした。
過去の地獄が見通せたと思ったら、『タグ付き狩り』という未来の地獄もちらほら見えてきて、どっちに転んでも息苦しい世界。
傷だらけのおじさん達と、その間に挟まれた女達に少しでも安息があればいいんですが……またろくでもなくなりそうね。