イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

コメット・ルシファー:第8話『道』感想

凸凹迷い路をでろでろと進んでいくアニメ、第8話目は筏造ってカレー食って回想。
すさまじい速度で存在感を増してきたドモンが怒涛の回想を繰り広げ、ソウゴはイモムシ(本当はケモ少女)と設定説明空間に飛び込み、色々因縁が分かる話だった。
キャラの過去がわかるのはありがたいんだが、今何話だっけか?

ソウゴにとっての石の意味とか、主人公サイドを狙ってくる敵との因縁とか、お話しの骨格になる設定がわかったのは良かったです。
問題があるとすれば、敵も見方も全ての因縁がドモンになだれ込んでいるところだがな。
ソウゴママンの研究がフィリアとソウゴを繋ぐラインなのだが、肝心のソウゴがママンに思い入れを見せる描写がないので、因縁と感情の線を切らずに握ってるのがドモンだけというね。
健太声のオッサンが主役ならば、早い段階からそれは見せて欲しかった……無論製作者サイドとしては主役のつもりはないんだろうし、来週退場しそうなオーラムンムンだしてるから今ドバっと全部出しておけってことなんだろうが。

冒険に行きそうで行かない、フィリアを大事にしそうで大事にしない、カレーは雑に扱ってたくせにドモンとの絆のフェティッシュとして描写される。
製作者が抱いて欲しい印象と、視聴者(と言うか僕)が受け取る印象がことごとく咬み合わなくて、そのズレが修正されないまま前に進んでいく語り口には、残念ながら変化がない。
元気に敵役をやってくれてるガズとの因縁とか、ソウゴが拾えば戦いに必然性も生まれる良いパーツなのに、面倒くさいホモこじらせ矢印伸ばす相手はドモンだもんなぁ……。
ついでに言うと、黒幕っ面で望遠鏡覗いてるオッサンとの因縁も、上司部下でドモンと直結だぜ 。
ソウゴはどんだけリソースが与えられない主人公なのか、はたまた主人公は物語的リソースを優先的に配分されるという僕の思い込みが大間違いなのか。
見ていると色々分からなくなってくる。


そんなソウゴはフェリアへの感情だけを杖になんとか立ち続け、体を張り続けてきたイモムシとのイベントを起こしていた。
SF関係の設定が公開され、なぜフィリアが物語の中心にいるのかってことが説明されたのは、お話が安定する上でいいことだろう。
かなり一方的に酷使するだけだったモウラとの感情が、何故かポジティブに裏返ったのも悪くはない。
つーかもう全体の2/3終わってんだから、仲違いを解消するギリギリのタイミングではある。

ただその原動力になるフェリアへの想いはあんま的確に描写されていないし、親代わりに自分を守ってくれてカレーまで持ってきてくれたドモンに、あんだけの口聞く理由になるの? と自問すると、やっぱ首は捻らざるをえない。
フェリアが不用意に育ってしまったので、擬似家族から恋人候補へと関係が変化し、一度気持ちのリセットが(少なくとも見ていた僕の中では)起きているので、蓄積に説得力がないように思うのだ。
そこら辺の変化に対応して、気持ちを整理するシーンとかも無かった(と僕は受け取った)しね。
強すぎる思いが暴走して無茶苦茶やるのは、いつもイモムシだったしね……軍隊に捕まって殴られたりしてたけど、ロボ戦でボッコボッコにされてるガーディアンに比べると、『俺が一番のフ ィリアキチだぜ……』っていう圧力は薄い。

感情的内圧を測定するためには他のキャラクターが壁になってやるのが大事で、例えば今回で言えばロマンがフェリアの聞き役になって状況を整理していたようなシーンが、お話には必要になる。
しかし親代わりのドモンは気のいい料理屋のオッサンのままでずっと来てたし、カオンもソウゴへの好意は見せるくせに及び腰で、ソウゴの内面には踏み込まないまま物分かりよくヒロインレースから降りる。
結果、ソウゴの内面は全然見えないまま第8話になってしまった。
回想を通じて秘密を公開することで、ドモンがまとっていた余所余所しさというものは少し剥が れ落ちたし、それ故の愛の鉄拳パンチだとは思うのだが、何しろもう8話である。


肉体的にしろ精神的にしろ、追い込まれず血も涙も流さないキャラクターは、やっぱ物語のエンジンとしては弱い。
『死ぬような目に遭う』のは創作物の中では美味しくて、それだけのリスクを背負うリターンを、対象(この場合はヒロインであるフェリア、ドモンで言えばソウゴ)に感じているという説得 力に繋がるからだ。
しかしこの話で追い込まれるのはオッサンとイモムシであり、主人公は必要なタイミングで安全圏にい続ける。
もったいない話である。
もったいないといえば、キモいイモムシなのに健気に体を張って好感度を稼いできたモウラのギャップは好きだったので、分かりやすく可愛いケモ少女にしてしまったのは、まこと勿体無い。
キモいイモムシのままソウゴと分かり合い、フェリアを支える絆を造ってくれれば、美醜にとらわれない友情という、古臭いが強力な見どころになってくれた気もするのに。

安全圏にいるのはフェリアも実は同じで、今回ゆるっと垂れ流された設定では『パワー使い過ぎると死ぬ』となっているのに、平和にキノコ食ったりカレー食ったりしている。
『あの黄色の光にフェリアをぶっ込まねぇとマジやべぇ!!』という切迫感を共有するためには、苦しそうな顔で気絶したり、腕の一本も失ったりするわかりやすいアイコンが必要だと思うわけだが 、そういう気配はない。
あえて強い言葉を使うと、『主人公とお話が核心に迫っていく、モチベーションの強化』というヒロインの仕事していないのだ。

八話にしてようやくテコが入り、話が転がりだして解ったのは、この話は『追い込み』が足らないということだ。
理不尽な重圧、乗り越えなければいけない危機、洒落にならないダメージ。
それは不愉快な要素であると同時に、それを乗り越えることで成長を見せる不可欠なパーツでもある。
製作者サイドが意図的に圧を弱めているというよりは、ここでもやはり見せたいものと受け取るもののギャップがあって、『こんぐらいでピンチってなるでしょ?』と問いかける製作者側と、『いや、全然。これってヤバいの? ヤバくないの? 判んない』と答える視聴者側(と言うか 僕)の間には、いかんともしがたいズレがある。

そのズレを、残り4話(か5話か)で修正し切り、放送前のPVやイメージボードからこっちが勝手に膨らませた印象(期待と言ってもいいだろう)に追いつくことが出来るのか。
それは先を見てみなきゃ分からない。
中身を見る前から身勝手な期待をふくらませていた僕が悪いといえばそうなのだろうが、ワクワ クした気持ちを寄せられない創作物、『まぁこんなもんでしょ……ああ、だいたいそんな感じだ よね、知ってたよね、嬉しくもないけど悲しくもないよね』という態度でアニメを見る行為はた、哀しいし不誠実だと僕は思う。
はたして逆転ホームランはあるのか、預言者じゃない僕は断言できないけど、あると良いなぁと思います 。