最終話を前にしてついにタイトル回収、10回目の奇獣狩りの相手は島根の妖怪。
毎回色んなホラーをやってきた影鰐ですが、今回は回想の形を借りて時間を巻き戻し、伝奇伝承と"JAWS"を掛けあわせたような、不思議な話でした。
奇獣の起源に関わるネタが出て来たり、奇獣を狩る一族が登場したり、色々ネタも増えたけど、これ拾ってる余裕あるのかな……。
これまで『人間社会の刺客に潜む魔獣』という感じで演出されていた奇獣は、強大な力を持ちつつつも一応物理的な存在で、感覚器を欺いて裏をかいたり、何なら火炎放射器で焼き殺したり出来る、典型的なクリーチャーでした。
しかし時間が遡り科学の威光が弱まるのと比例して、その存在には神秘が混じりだし、人間の理解を超えた奇っ怪な能力を発揮する。
『影を食うと人が死ぬ』『影を殺さないと影鰐は殺せない』という能力は原典リスペクトではあるのですが、同時に未だ明らかならざる奇獣の可能性を広げる描写でもあります。
そういう意味では、怪異譚っぽく仕上げた今回のお話は、ビジュアル的な説得力でもって設定の広がりを担保していて、なかなか良かったですね。
奇獣ハンターが登場したことで、『明確な特徴を持った奇獣を、対等な多ちばで追い詰め殺す』という展開になったのも、これまではなかった転がし方。
今まではわけも分からず殺されるか、ワンアイデアで難を逃れるか、"Arrival of Fear"流れるタイミングでボーボー燃やすかでしたが、ここに来て違う見せ方をしてきたのは面白いです。
きっちり腕一本を生け贄に捧げることで殺るか殺られるかの真剣勝負だというのもわかるし、それでも奇獣狩りを諦めないハンターの強さも描写できているしね。
『漁師が囮になって船の帆に影を写し、燃やして切り裂く』という決着方法も、影鰐らしいワンアイデアに満ちていて、ナイスな殺しだったと思います。
というわけで大満足だった影鰐ZEROですが、問題は(一応)主人公たる番場先生が足場を起き、これまで舞台になってきた現在にこの話がどう影響するのか、ということ。
見えていない部分を勝手につなぎ合わせると、猿楽グループの原型が奇獣ハンターなのかなぁという感じではありますが、そこら辺を公開している時間はあるのか無いのか。
そもそもどういう落とし方で終わるのかイマイチ判別しきれない部分もあって、今回のお話が今後どう活かされるのかは、どうにも読み切れない影であります。
しかしこれまでの手際を考えると残り3話でも十分風呂敷をたたむ腕前がこのアニメにはあるわけで、今回の話しの新奇さと読みきれなさは不安定感よりも、期待に繋がっている印象です。
更に謎を深めた影鰐世界をどう展開させ、どう落着させるのか。(はたまたさせないのか)
番場先生はスーパーセクシーヒーローとして超かっこいい見せ場を貰えるのか。(はたまた貰えないのか)
幕引きが見えてきた影鰐ですが、引き込まれる要素が更に増えて僕は嬉しいです。