イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ハルチカ ~ハルタとチカは青春する~:第3話『退出ゲーム』感想

青春、ミステリ、吹奏楽
色んなジャンルを横断するアニメーション、今回は青春に重点したインプロヴァイズな回でした。
謎も部員集めも全面に押し出さず、成島さんとの関係の変化とか、マレンを取り巻く人々の視線とかを重視して、柔らかく描写された爽やかな回だったと思います。

いきなり時間が10月にぶっ飛んでビビりましたが、飛ばすところはザックリ飛ばして、変化していく関係や状況、流れていく高校生活なんかもどんどん見せていく感じなのかな。
前回は超辛気臭かった成島さんが今回、タレ目にデザイン変わるくらい柔らかいキャラに変化するので、時間をぶっ飛ばすのはそこに説得力を持たせるいい流れだ。
チカちゃんとの距離もいい具合に詰まっていて、『飛んだコマとコマの間で、まぁ色々あったんだろうな』という推測が効く描写は、想像力が刺激されて良い。

成島さんの事件ではパズラーが前に出され、ミステリ要素が強い人工的なお話だったわけですが、マレンの事件は感情中心で展開し、また違う味わいを持っていました。
ヘイハイズ問題を遠景におきつつも、ハルのクールでクレバーな心配りと、赤毛の演劇部長のキャラが良い味出していて、好みの味付けでした。
食わせ物の顔を維持しつつ、部活に誘うのも吹奏楽に送り出すのも全部マレンのためという名越部長の人間力は、お話にどっしりした安定感を生んでいて好きだなぁ。

もともと橋本監督作品はダイアログの切れ味とテンポに強みがあると思うわけですが、ミステリを真ん中に据えないことで説明シーンの時間が少なくてすみ、軽妙な掛け合いの中にある可笑しみと暖かさが、今回前に出てきた感じがあります。
前回ツンツンしてた成島さんが見せるオモシロ小娘っぷりとか、切れ者同志共謀してマレンの背中を押すハルと名越部長とか、演劇部のジョーカーマヤさんの奇妙な味付けとか、なかなか豊かでよかった。
こういう体温がつたわってくるお話が存在していると、シリーズ全体を好きになれるのでとても良いと思います。


ミステリ要素は今回添え物……というわけではないのですが、あくまでマレンの心の問題が重要であって、『2099』も謎それ自体よりもそこに込められたメッセージが重要、という回。
成島さんの『白いルービックキューブ』も心とミステリの融合体だったのですが、道具立てに凝った分逆に温度が伝わりにくかった感じもあり、個人的な好みとしては今回くらいのミステリ要素にして、青春重点でやってくれるバランスがありがたいですね。
いきなり部員が10人に増えてることから考えても、部活成り上がりストーリーや吹奏楽上手くなりまくりストーリーはそこまでコアな部分ではなく、やっぱミステリ要素を詰めた青春小説っていう足場が、この作品の軸足になるんだろうな。
そして、その塩梅は僕にとって気持ちが良い……多様性を盛り込むことで、色んなアプローチが出来る強みも活かして欲しいけどさ。

今回かなりの時間を使って展開された劇中即興劇ですが、個人的にはとても楽しく見させてもらいました。
想像の中に展開される演劇的空間と、制服で演じる現実的空間が行ったり来たりする絵面も面白かったし、インプロでお出しされる設定が役者を縛り、舞台を発展させていく勝負形式も、スリリングでよかった。
観客/レフリーを置くことで『劇中劇の何が面白いのか』を分かりやすく視聴者に伝えつつ、『マレンの背中を押す』という探偵&部長本当の狙いを覆い隠す煙幕に使ったのも、なかなかテクニカルな話運びだった。
チカちゃんが狙いに気づかない役を担当してくれることで、即興劇に隠されたトリックがかなり分かりやすくなってる所とか、探偵小説の構造を巧く活かした見せ方だったなぁ。

というわけで、小粋な男子がトモダチの背中を押す、爽やかで温かいお話でした。
クールボーイ・ハルくんが思いの外人情家だと分かったり、ハルちゃんと成島さんがなかなか面白い友情を育んでいる姿が見れたり、派手さはないがじっくりと青春に切れ込む、ドッシリとしたエピソードだったと思います。
時間経過の中で成島さんがとても良い育てられ方をしていたので、今回仲間に加わったマレンくんも、美味しいキャラクターとして育ってくれると見ていて嬉しい。
色んなジャンルを内包しているこのアニメの、僕が見ていて一番楽しい部分が出たお話でした。
面白いかった。