イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

魔法つかいプリキュア!:第3話『魔法商店街でショッピング! 目覚めるルビーの力!』感想

素敵な不思議に出会って変わっていく戦闘少女ライフ、今回はマホウ界編第2回。
学園の外側である街の描写を入れ、リコの人格掘り下げを交えつつ早くも新フォームお披露目って感じでした。
敵さん側の踏み込んだ描写がまだない所見ても、やっぱ意図的に対象年齢と視野を下げ、お話のテンポと解像度を落としてる感じやね。

今回重要かなぁと思ったのは、街の人に愛されつつもどこか所在なさ気なリコと、そんな彼女に空虚な夢を託すみらいの描写です。
リコがくっそポンコツなのはこれまで見ていれば判るわけですが、それでもポンコツを脱して立派な魔法つかいになりたい夢をもって、ポンコツと立派の間で悩んでいるキャラだというのも、良く伝わってきます。
このガムシャラな目的意識に対応する形で、特にやりたいこともない、夢に名前をつけられない今風なみらいの姿が、今回切り取られました。

この対比から一歩踏み込むためには、リコの無軌道な努力がどこに向かうか、その焦点が明らかではない問題だとか、みらいの前向きさと空疎さのギャップだとかに踏み込むものかなと思いますが、今回そこまではいかない。
正確に言うと、『立派な魔法つかいって、具体的には?』と聞きかけるところで、タイミング良く襲撃があって会話が中断します。
この流れはテーマを一気に掘り下げて問題を多数表面化させるのではなく、一個一個じっくり付き合っていくことを選んだ結果だと思います。
そのゆっくりとした歩み、小さくて丁寧な問題との取り組みってのが、魔法つかいプリキュアというシリーズ全体を貫通する演出の哲学なのかな、と今回思いました。

歩みが早い/遅い、テーマや問題点を捉える視点が遠い/近いというのは良し悪しではなく、選び取ったスタンスの違いだと思います。
憧れの魔法世界を前のめりに堪能するみらいと、そんな彼女の積極性に一歩遅れてしまうリコの対比とかは、近くて遅いスタンスを選んだがゆえに切り取れるシーンでしょう。
『街を壊すことは良くない』という真実にみらいは最速でたどり着き、リコは乗り遅れるわけですが、しかし二度目はちゃんとリコも気後れせずに正解にたどり着き、強さを手に入れる。
状況を打破するルビーの力が、常に正しいみらいではなく、ポンコツだからこそ魂を燃え上がらせなければ頑張れないリコを切っ掛けに宿ったのは、とても好きな流れでした。

設定年齢よりも少し幼い二人が、複雑な感情を横において出会い、友情の証として初めてお揃いのものを手に入れる素朴さ。
飾り気と作為の薄い展開は、こういう感情をストレートに捕まえるために選び取られているんじゃないかと思います。
無論ここら辺は、差し出された映像と演出に何らかの意図を感じたくなる頭でっかちの妄想であって、製作者の意図とは色々異なるんでしょうけども、まぁ『僕はそう見た』ということです。

キャラクターの目線を小さく低い問題に合わせ、ゆっくり解決していくことで、より親密な感じを出していることは、とても良いと思います。
そういう強みを活かし、スタンスが必然的に連れてくる弱みをどう乗り切るかってのが、一年間の長いシリーズを走り切る上で大事になってくるわけで。
今後必ず出てくるであろう、スタンスが生む必然的な瑕疵をどう誤魔化したり、魅力的に変えたりしてくるのか、手管捌きに期待大であります。

わりと現状『持ってる』みらいと『持ってない』リコという基本的構図はブレてなくて、今回もおそらく友だちいないことがバレたり、まーた見栄坊張ったりと、リコの弱い部分描写は元気でした。
戦闘シーンが毎回ある関係上、ここら辺の傷は『持ってない』奴が頑張っていい事する足場になるわけですが、そういうギャップの美味しさがリコにばかり適応されてるのはやっぱり惜しい。
今回少し見せたみらいの空虚さは扱いのが難しい傷だと思いますが、リコに対してそうしているように、柔らかく優しく細かく扱い、ギャップの魅力をみらいにも別けてやってほしいところです。


とにかく『ふたり』の関係性にフォーカスを合わせ続けているブレなさは、このアニメの強さだと思います。
今回は魔法商店街という世界の広がりを見せる回なんですが、そこは常にリコ個人と強く結びついていて、彼女を気にかける人々の目線が客観的な描写の中に入り混じっている。
それを足場にして、リコと『ふたり』であるみらいが見知らぬ街に入り込んでいく展開は、このアニメらしいなと思いました。
ダイヤんときはモフルンとも繋いでいた手を、ルビーになるなり速攻両手握りだったしな……来週出てくる学友が、いい塩梅に風通しを良くしてくれるとなおグッドだ。

針やハサミが勝手に踊って服ができたり、魔法で解凍や植物の育成を行うのが普通な街の描写
は、非常に良いエブリデイ・マジックでした。
自分がこのジャンル好きなのもありますし、まほプリが出しているファンシーな空気が嫌いじゃないのもあるんですが、魔法の町がなにか楽しそうな場所として描けていたのは、みらいの感じているワクワクと視聴者の気持ちを知覚する、良い描写だったと思います。
魔法の絨毯タクシーとか、想像力が豊かに花開いたガジェットがずーっと続くと有り難いんですが……ここら辺容易に枯れるからなぁ。

学校に引き続き街にも敵さんが襲撃かけてましたが、マホウ界のセキュリティ甘いなオイ!
校長はボケ老人みたいな動きを早速始めるし、戦闘系の魔法はプリキュアしか使わないし……今後が少し不安になる。
まぁ街の大人が怪物ぶっ倒しても当事者性がないので、正体不明の正義のヒーローとしてしばらくプリキュアしてくのかしらね。


そんな感じで、女の子二人が初めて一緒に街を彷徨い、お互いピンチを乗り越えて少し仲良くなる、コンパクトな話でした。
この小さくて細かい視点が、まほプリの選びとったアングルなんだろうなぁ。
そこから何が切り取れるのか、ここまでの描写で見えるものもあるし、見きれない部分も当然ある。
これから先何が見えてくるのか、さらに期待したいところです。