イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

91Days:第3話『足音の行先』感想

銃弾と死体が織りなす暴力のマフィア・タピストリー、さらに複雑化し加速化する第3話。
セルピエンテの死体が消えた悶着により、ヴァネッティもオルコも内部の武闘派が顕在化し、戦争の季節が近づいてきていた。
新しく『家族』となったロナルドの横車でファミリーを追い出されることとなったネロの側には、事態を乗り切って信頼を勝ち得たアヴォリオがいた。
差し向けられる刺客、戦争の予感に胸を高鳴らせるファンゴ、腐りきった連邦捜査局
ヴァンノ殺害にまつわるゴタゴタは落ち着きつつも、それは全面戦争への序章にすぎないって感じの展開でしたね。

この話は複数のアクターが独自の判断で動いており、状況が結構複雑です。
ネロもファンゴもファミリーの武闘派として疎まれていること、腐敗した連邦捜査官が第三極として存在していること、オルコファミリーがクズの集まりであること、ロダルドを代理人としているガラッシアは穏健派であること辺りが、今回強調された新情報でしょうか。
『メシを粗末にする奴は、主人公と分かり合える立場にいない』というフード理論の基本法則を忠実に守り、ラザニアにいちゃもんつけて料理人殺すオルコの小物っぷりは、クズがクズ鍋で煮込まれるマフィア抗争モノとして、なかなか良い味が出ていました。

部下であるヴァンノがセルピエンテを迷わず殺ったところを見ても、ネロが過激な行動主義者であるのは間違いありません。
己の望む強い生き方を貫くためなら、父親と対立しても、オルコ・ファミリーと全面戦争になってもお構いなしという彼の強さは、それゆえに疎まれ先手を打たれる。
ここら辺は婚姻関係を利用してガラッシアが打ち込んだ、ロナルドという楔が今のところ効いているところでしょう。
主戦派と穏健派の対立は、マフィアモノにかぎらず攻勢組織をネタにするなら必ず見たい対立であり、しっかりやってくれるのは嬉しいね。

『疎まれる武闘派』って意味ではオルコにおけるファンゴも同じなんですが、こっちは狂犬を抑える実力者がいないので、好き勝手絶頂に大暴れ。
セルピエンテの死体をファンゴが抑えたことで、オルコが問題にしていた『証拠』が出てしまって、全面戦争へのブレーキが完全に外れた感じ……。
ファンゴは血が見れればなんでも良いタイプのサドマゾ野郎なんで、火に油はおもいっきり注ぐだろうしね……なにしろ股間にデリンジャーだからな。
ファンゴが火付け役になってオルコ側から戦争を仕掛けてくるなら、ネロが街を離れる理由がなくなってしまうので、一旦外に出て鉄火場に武闘派が戻ってくる展開になんのかなぁ。


そんな感じで戦争に向かいひた走るロウレスの街ですが、その引き金を引いたのは主人公アヴィリオの復讐。
アヴィリオ自身は仇が取れればなんでもいいやって感じなんでしょうが、彼がヴァンノを殺すことで、巧くヴァネッティとオルコが正面衝突する状況が生まれていて、抗争を望む誰かの意志を強く感じます。
連邦捜査官がセルピエンテの死体を隠したことで、状況はさらに複雑化し衝突が起き戦争が近づいているわけなんだけど、それは彼の独断なのか。
アヴィリオが手紙をもらったように、状況を戦争に導くべく誰かが情報をリークしたと考えると、捜査官の妙な手際の良さにも納得がいきます。

んじゃあ誰が糸を引いているのかって話になるんですけど、現状は手探りのドンパチにクローズアップしている状況なので、推測しかできませんね。
利害関係を考えると、地元でウダウダやってる二つのファミリーを同士討ちさせて、空いたスキマにガラッシアが直接支配体制を打ち立てるってところかしら。
一見主体的に復讐に走っているように見えるアヴィリオも、誰かが描いたゲームの駒にすぎない矮小さは、暴力や欲望といった人間の愚かしさをメインに据えるマフィアモノと巧く響き合っていて、好きなポイントです。
頭が良ければ、そもそも何の益もない復讐なんてやりゃしないしな……それでも空疎さを埋めるためには、怪しい手紙にすがって復讐者アヴィリオの仮面を被んなきゃならなかった辺り、カルマが濃い主人公だ。

アヴィリオの復讐って自発的なように見えて、手紙という外的要因が届くまでは動き出さなかった、錆びついた欲望なわけで。
実際動き出してみると、ネロを巧く騙しつつ懐に滑りこむ狡猾さを持っているんだけど、肝心な所で詰めが甘く、どことなく危なっかしいってのもちゃんと描写されています。
臆病な自分も優しい自分も押し殺しつつ、誰かの描いた絵の中で踊る主人公の危なっかしさは、その先を見たいと思えるフックとしても機能しているので、なかなかうまい作りですね。


と言うわけで、ヴァンノとセルピエンテの厄介事を巧く乗り切ったと思ったら、戦争の火種が本格的に発火を始める回でした。
つまらないチンピラ同士の命の取り合いに組織のメンツが巻き込まれて、取り返しの付かない状況がゴロゴロ転がり出すヤバさが画面に満ちていて、ワクワクしながら見ることが出来ました。
見てて『あー、ろくでもない事にしかならないんだろうなぁ……』と思えるフィクションは、破滅願望を安全に満たしてくれる背徳のカタルシスがあって、やっぱ見てて楽しいですね。

仇を楽に殺せる状況をうまく作ってご満悦のアヴィリオですが、『楽しい男二人旅とかさせねーから』とばかりに登場した殺し屋が追いかけてきそうです。
ロウレスの街もボーボー燃え上がるだろうし、各ファミリーも一枚岩じゃないし、全てが危ういこのお話。
今後どこが崩れ、誰が巻き込まれるのか、薄暗い楽しみがじくじく燃え上がってきてます。
いやー、面白いなぁ。