イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

甘々と稲妻:第4話『きらいな野菜とコロコログラタン』感想

元気幼女がガブガブメシを食うアニメ、今週は好き嫌い対策。
ピーマン苦手なつむぎにあれやこれや、色々手をつくしておいしく食べてもらう話……なんだけど、早々簡単に好き嫌いとか治らないよね~(だよね~)っていうお話。
グラタンを安易に万能の解決策にしなかったこと、結果に結びつかない過程を愛おしさを込めて描いたこと、つむぎも参加可能なエンターテインメントとして料理を描いたこと。
このアニメらしさがグッと詰まった、良いエピソードでした。

今回は好き嫌いのお話でしたが、『嫌いな食べ物があることは悪い』という頭ごなしの結論に、最初っから飛びつかないのが僕は好きです。
形通りの正しさに立ち止まってしまうのではなく、目の前のものをしっかり見て、その内側にに分け入って良し悪し両方を探っていく姿勢というのは、おとさんとつむぎの関係にも通じていると思うわけです。
形通り食事を用意して腹を膨らませて、しかしそれだけでは足らなかったから二人は小料理屋に足を運ぶことになったわけで、足を止めてしっかり考える姿勢をおとさんが見せたのは、非常に良かったと思います。
娘に対する対応を見ていると、描写されなくても生徒に歩み寄る良い先生なんだろうなって想像できるのも、非常にグッドね。

歩み寄る姿勢は料理シーンでも濃厚に描写されており、包丁も火も使えないつむぎをどう『調理』という体験の中に飛び込ませ、グラタンを『作ってもらう』客体から『自分が作った』主体に変えていくのか、色々努力していました。
料理それ自体が魔法ではありえないってのは、結局ピーマン好きにはならない結論を見ても判ることで、大事なのはとにかく過程、もっと言えば過程を生み出す真心。
『みんな』で作って、『みんな』で食べる経験の総体が、この作品で肯定されるべき料理なわけで、飽きっぽい子供の興味を繋げるよう、本気の茶番を交えつつ楽しく作る料理の描写に、大人の真心が見えてありがたかったです。

料理アトラクションへの積極的な参加だけではなく、グレープフルーツジュースという『苦くて甘い』ものを『ピーマン型のグラス』に入れているところとか、細かく『どうにかピーマン食えるようになろう! そのために色々アイデアだそう!』という意欲が垣間見れて、非常に良かったです。
大人チームが色々苦労しながら作る様子を追いかけることで、つむぎを楽しませると同時に、自分たちも楽しんでいる姿が生き生き描かれていたのも、相変わらず強い点。
『正しくない』つむぎに大人が一方的に与えるのではなく、同じ場所で同じ楽しみを共有する仲間意識が、年が離れた三人を繋げているのだと見てて判るのは、気持ちの良い風通しの良さだと思います。
そういう意味でも、つむぎを見るだけ・食べるだけの立場におかず、作る側に引っ張りこむアイデアをどんどん出すのが大事なんだな……茶番それ自体も楽しそうだしな。


あとまー、つむぎの表情豊かな幼児ムーブを見ているだけでも、相変わらず最高に楽しいね。
ズルかったり調子に乗ったりバカだったり、つむぎが色んな表情や人格を持っていることは、つむぎを全人格的に肯定する『正しさ』であると同時に、映像表現としての『楽しさ』でもあるのが、凄く良いと思います。
物語としての、もしくは絵としてのシンプルな『楽しさ』を大事にすることで、ストレートでシンプルゆえに飲み込みにくいこのお話の『正しさ』が飲み込めるって部分は、確かにあるわけで。
ヘンテコな踊りをしたり、小賢しい策を使ってみたり、突拍子もないけどそれゆえに『生きている』つむぎの瑞々しさは、確実にこの作品の強さの一つだ。

料理の話をすると、おとさんの着実なステップアップが随所に見られ、変化の楽しさを感じることが出来ました。
ベシャメルソースという見ただけで面倒くさいネタの扱い方だけではなく、一汁一菜という基本形をそつなくこなせるようになってる朝食とか、先週学習した『ハンバーグ』と『たっぷり届いた野菜』という追加要素を合体させ『ピーマンの肉詰め』を独自に編み出しているところとか、成長描写がさり気なくて細かい。
ほっこり人情要素が目立つ今作ですが、シングルファーザー家事修行物語として必要な、『困難→対決→習熟→達成』という段取りの描写がしっかりしていることも、満足度の高い視聴感につながっているなと感じました。
まぁかぼちゃ切る手つきはマジ危なっかしいがな!
硬いものを切る時は力がはいるので、滑ってスパっと行かないか気が気でなかった……小鳥ママンが菜ばしシステムを書いておいてくれて、本当に良かった……。

戸松声の新キャラちゃんも顔見世していましたが、今後三人の料理回に切り込んでくるんでしょうか。
先輩先生やママさんたちといった『名前の無い他者』描写が非常に切れ味鋭いので、名前あり
の新キャラクターをどう料理するのかは、かなり期待して待ってるところでもあります。
小鳥ママンと犬塚親子も、まだ対面で話たりしてないしね……思いの外ネタ多いな、このアニメ。
小鳥ちゃんも現状ぼっち飯であることが描写されてたけど、周囲の人達は優しい目線を向けてくれていて、見せかけの孤独をグイッと乗り越えて仲良くなっていく描写も、今後あるのかなぁ。


というわけで、色々やったけどピーマンは苦手、でもそれでいいじゃないか! という回でした。
『一足飛びに結論に結びつくわけじゃないけど、真心込めて一回一回を積み重ねることに尊さがある』という、作品の価値観を穏やかに語るエピソードでしたね。
声高に『正しさ』を叫ぶのではなく、静かで楽しい描写の中にしっかり埋め込んである所が、ストイックかつスムーズでこの作品らしかったと思います。