イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

チア男子!!:第4話『壊したいもの』感想

山あり谷ありの王道スポ根男子チアー物語、今週は何ものでもない僕たちに名前がついた。
七人集まったけどまだまだ弾け切れないチア部の現状を、ガチでチアやってる女子と男子が教えてくれる回でした。
ここまで結構順当に仲間を集めてきたので初のタメとも言えるんだけど、前向きな姿勢は失っていないし、壁役のチアガチ勢も気持ちのいい奴らだし、このアニメらしい爽やかさはがっちりキープ。
一話使って問題を可視化しつつ、『Breakers』という『名前』に辿り着くことで『あ、なんか乗り越えられそう。マジ行けそう』という上げ調子で次回に引いた、いい具合のタメ回でした。

この話は非常にオーソドックスな『課題と克服、発見と成長の物語』でして、お話の起伏がとても判りやすいです。
前回までで『七人仲間を集める』『翔という即戦力を味方に引き入れる』という小さな山を登り切ったわけですが、そこからさらに上がるために『あくまで素人である自分たちの現状を知る』『それぞれが抱え込んだモヤモヤを確認する』という谷を歩くのが、今回のお話し。
谷を下ることで乗り越えるべき問題点ははっきりしてくるし、それと向かい合うことで昇るべき次の山も作られるわけで、下げるべき所でしっかり下げるのはやっぱ安定しますね。
特にスポ根というジャンルは、身体を使い心の力を振り絞ることで困難を乗り越える運動自体がとても大事なわけで、問題をしっかり顕在化させる下げの巧さは話全体の巧さに繋がると思います。
『仲間を集める』という段階が一応落ち着いて、『チアという競技に恥ずかしくない演技をする』『スタンツをちゃんと出来るようにする』という新しい課題が出てきたのが具体的で判りやすいのも、非常にグッド。

下げ調子の話は湿っぽくなりがちですが、各キャラクターが非常に前向きなこと、問題点と向い合っても諦めない軽い上げ調子があること、合間合間のコメディ要素が好みなことなどなど、下げ過ぎにならない要素がたくさんありました。
これまでの三話で『男子チアと出会って、どういう部分が良くなったのか』『キャラクターはなぜチアを頑張るのか』という部分がしっかりかけているから、ちょっと凹まされても諦めず、まだまだ頑張ろうという前向きな姿勢に説得力がある。
ちょっと凹む展開だからこそ、メインモチーフである『男子チア』がどれだけ人生に勇気をくれるかを見せることも出来るわけで、キャラもモチーフも両方株を上げる、良い展開だと思いました。

ハルの高所恐怖症とか、翔の過去とか、コミュ強者過ぎて『出来ない奴』を置いてけぼりにしてしまいがちなカズの強さとか、キャラの凹みポイントは個別に描写されたわけですが、そこをラストシーンでカズが『ぶち壊したいんだ!』というRockな結論でまとめ上げるところは、お話が収束するエネルギーを強く感じる良いシーンでした。
色んな奴が集まって、色んな問題があるんだけども、それは全部『男子チア』でぶっ壊せる、より良い場所に行ける。
カズの言葉は、今回描かれていた下げ調子のお話をどう上向きにするかというターニングポイントであり、個別の問題点を『チア部』という単位にまとめあげて解決できる、魔法の言葉でもあるわけです。
下向きで個別の物語が、Breakers命名のシーンを経由して一気に上向きで集団の物語にまとまる気持ちよさがあって、良い引きで終わったなぁと思いました。

この話は青春の話なので、『チア部』に『Breakers』という名前がつき、何ものでもない存在が何者かになっていく瞬間は、特別な魅力があります。
『名前』を手に入れることで、白紙の少年たちは自分たちが何ものであるか社会に突きつける武器を手にするわけで、そういう特別な瞬間をエモく描けていたのは、非常に良かった。
『ぶち壊したいんだ!』という短くて力のある願いと、『Breakers』という『名前』が名実ともに響き合ってるのが、


この気持ちよさを作ってくれたのは、凹むシーンであるはずの合同練習会だったと思います。
ミゾの大ボラにもキレることなく、クソ素人にもまっすぐ向い合って、具体的な指導をしっかりしてくれる高城コーチの仕上がった指導者ぶりは、見ていて気持ちよかったですね。
『信頼感』というメンタルな問題を一番大きく見せて、『心が繋がれば、演技は良くなるんだ!』というロジックを作るのも、細かい技術や身体表現を伝えるのがなかなか難しい物語メディア(小説にしてもアニメにしても)に適した話運びで、やっぱ細かい所上手いなと思った。
二次元の身体は実際のスポーツに宿る具体性をどうしても希薄化してしまうので、より描きやすい『心の力』を借りることで、競技とスポーツの熱を物語に宿らせていくわけだからね。
『信頼感』を軸に据えるのは、『出会って一ヶ月のデコボコ集団』というBreakersの現状にも巧くマッチしていて、そこから『ぶち壊したいんだ!』に繋がるのも、凄く巧い。

他にも『女子チアとか、スケベな格好してキャイキャイ騒いでんだけなんだろ=?』っていうパブリックイメージをキャラに語らせているところとか、凹みシーンの合間合間に甘酸っぱい恋を展開して下げ過ぎないところとか、上手いところはたくさんあったなぁ。
チアーはどうしてもセクシャルな目線で見られてしまう競技なんだけども、中身はガッチガッチの体育会であり、やってる当人は当然真剣。
そこら辺のギャップを巧く作中に取り込んで、キャラクターの行動を通して視聴者の認識を訂正していく作りになっているのは、男子チアへの偏見と同じ作りでしたね。
ここら辺の仕事が丁寧なのは、見慣れない題材に親近感を覚える大事なポイントなので、ちゃんとやってくれるのがありがたい。

ハルと千裕ちゃんのコイバナは第1話から仕込んでたネタなんで、今後も発展させていくんでしょうね。
部活のバカ男子ノリが好きなので、あんっま恋愛方面に寄って薄味になって欲しくはないけど……このアニメ根本的にスポ根だから、千裕ちゃんのほうがスパイスなんだろうね。
翔のトンチキ絵がウネウネ動くところとか、ミゾのズレた間合いとか、小さなクスグリの上品さも好きだからなぁ……大事にしてほしいポイントがいっぱいあるってのは、やっぱ良いアニメなんだろうな。


と言うわけで、お話の段階を第二ステージに引き上げつつ、まだまだ未熟なBreakersの課題を見せるお話でした。
乗り越えるべき山を巧く見せつつ、キャラが山を乗り越えられる理由を同時に見せ、期待を高める話運びがとにかく見事。
王道展開というのはよく効くからこそみんな使うのだという、当たり前の真理を思い出す展開でしたね。

気持ち良くタメるのはドカンと爆発させるためであり、次回はどうやらBreakers初の舞台となりそうです。
コーチに指摘された『信頼感』を、ユニフォームを着て望む公の場所で発揮できるのか。
スタンツという競技としての見せ場を、どうキメてくるのか。
色々楽しみなのは、やっぱタメが巧く出来ているからだろうなぁ……地味で普通のしっかりしたスポ根展開、やっぱ最高やな、ウン。