3月のライオンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2016年12月26日
『わりー、前回はちょっと強く殴りすぎたわ、痛くない? こういうの暖かくて傷治るよね?』と、たちの悪いヒモみたいなムーブで叩き込まれる、零くんの年末年始。
ただ暖かいだけではなく、零くんと川本家が共有する欠落が随所に挟まり、ビターで硬い歯ごたえになっていた。
香子が代表する『冷たく厳しい家族』とあかりさんが代表する『アタタt描く懐かしい家族』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2016年12月26日
将棋の有無が2つの家族を真っ二つに割っていることが、家に上がり込んだ時雑に扱われる将棋盤からよく見えてくる。
それは前回、幸田父が零くんに送った選別の証であるが、川本家には関係ないのだ。
元々川本家はホスピタリティと衣食住の描写が太くつきまとってきたが、零くんが病気になり、『ケアしなければいけない弱者』以外の何者でもなくなった今回は、暖かい服を着せ、新鮮な食事を食べさせ、家を用意して住まわせる描写で埋まっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2016年12月26日
ここら辺の皮膚感覚には強く意識的だなぁ、この作品。
前回のような冷たい世界と、今回零くんを包む温かい世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2016年12月26日
どっちかが悪でどっちかが善と明瞭に分けてしまうと、単純化された物語はとたんに色彩をなくすわけだが、香子へのコンプレックスをしっかり描いたことと、川本家に漂う『死』の匂いを強調することで、巧くブリッジを架けていた。
優しくされながら零くんは死者を思い返し、年末年始という慶事の中で、あかりさんもおば様も、去っていった人に食事を供える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2016年12月26日
生者と死者の世界には常に橋がかかり、痛みと思い出、過去と現在、好意と拒絶は常に混ざり合っている。それは川本家だけではなく、将棋にまつわる描写でも同じことだ。
全体的なトーンを、色彩設定や美術引っくるめて明瞭に住み分けつつも、色んな色彩が混じり合うからこそ豊かな零くんの世界を忘れず、色んなテイストをいれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2016年12月26日
3月のライオンの演出は原作のテイストをよく理解して、巧く手綱を握っている印象だ。今回漂った『死』の匂いに、それを強く感じた。
おせちの中身を語り立てるシーンは、シャフトのへんてこなアニメ力が生きた場面で、列挙を退屈にさせず、人間にはなかなか使われないタイプのアニメーションを活かして見せていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2016年12月26日
まぁお話としてはあんま大事なところではないのだが、こういう変化球が見れるのは個人的には嬉しい。
ここの所、モノトーンの世界で頑張ってきた零くんと視聴者の乾きを癒す、良い下町ほっこり回だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2016年12月26日
ともすれば甘やかしになってしまうところなんだが、ビターテイストを巧く挟み込んで、傷ついた人に必要なケア、という塩梅で話を運べたのは、とても良かったと思う。