メイドインアビスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
未踏の大穴アビス。宝と危険、死と栄光が待つデスダンジョンを前に色々説明する回…なのだが、背景美術も物語の展開も一切停滞しないので、足踏みのはずなのに非常にワクワクする。
リコが死地に赴く理由である『母への憧れ』を丁寧に見せる、いいムードの回だった。
説明を最低限にとにかく世界を叩きつけ、ぐっと視聴者を掴んだ前回。これを補うように説明が続く回だが、おどろおどろしくも美しい映像を上手く使い、ただベラベラ喋るだけで終わらせないのはさすが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
ファンタジックなアニメーションで母の英雄譚を語るところなど、子供たちと一緒に興奮してしまった
笛の色による探索者階級制度。アビスの具体的なヤバさ。そこから発掘される遺物の具体的な扱い。街と社会が回る仕組み。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
色々気になっていたところが的確に補強され、ドラマに集中する足場ができた。こんだけ世界が太いとそれを叩きつけるだけで物語になるけど、丁寧に解説してくれるのもありがたい。
サラッと言っていたが、アビスでは人が死ぬ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
世界名作劇場めいたムードでボーイ・ミーツ・ガールして、さぁ冒険だ!というムードだが、他国の探索隊は殺しに来るし、下がって上がるだけで人間やめたり死んだりする。ハードコアな減圧症だなまったく。
そういう場所に、なぜリコは潜るのか。
白笛という遺骸が帰還しただけでも、あのお祭り騒ぎとなる社会の中で、リコは母を求めて深淵に潜る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
10年の時間を越えたメッセージを最後に渡して引くラストカットは、彼女(つまり物語)が停滞していられない理由を、非常に雄弁に物語る。
血、憧れ、祈り。全てがリコを深淵に誘っている。
深淵と人間の混血児とも言うべき出生。呪いを受けた眼。宝物や命と引き換えにして生まれ落ちた過去。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
主役の主役たる理由を説明しつつ、リコはちびっこい半人前探索者でしかない。なりたい自分、なるべき自分の大きさと、現実の自分とのギャップ。それを埋めていくことが、物語の根本となる。
この『半人前』っぷりを感得させるために、フェティシズム溢れる身体の描写が大事になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
リコは大きくて急峻な街をトコトコ裸足で歩き、小さな体で動き回る。生身の彼女はとても小さく、幼く、か弱い。その身の丈を分からせるために、日常描写は潤いたっぷりに、情緒を込めて描かれている。
母の遺骸が回収されたとき、リコはそれを遠巻きに見ている。生身の眼では何が起きているかを見れず、それが可能なのはレグのロボット・アイだけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
物理的距離はそのまま、精神的距離でもある。深淵の底で起きた母の死はリコにとって遠く、そしてあまりにも巨大だ。その影に否応なく飲み込まれるほど
白笛に熱狂する街をしっかり描けば描くほど、リコの孤独で特別な立ち位置が鮮明になる。世界にとって母はもはや伝説の死体だが、リコのちの中では未だ生きている。それを確かめるために、彼女はアビスに(そして物語に)潜っていくのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
そんな彼女を支える人々がちゃんと描かれているのがとても良い
実の家族のように優しくしてくれるハボさん夫妻。声も外見も頼りがいたっぷりだ。孤児院の仲間もいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
そしてリーダー。もっとクールな管理者タイプかと思ったら、冷静さの奥に情熱を秘めているナイスガイであった。レグのことを見透かしつつ保護下に入れてくれる優しさが嬉しい男よ。
リーダーもまた、ライザの引力に引き寄せられ、それに行き方を固定された子供であるというのは面白い。同じものに引き寄せられ、託されたからこそ、リコは放っておけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
しかし過剰にベタベタはしない。死を祝祭にすることでしか存続できない、深淵の縁。街の中の安心と、ヒヤッとする絶壁の同居。
降りて、上がって、財宝を回収し街を富ませ、死ぬ。もしくは死ぬより酷いことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
アビスを前提にしたシステムで回る街の異質さが、柔らかく温かい日常描写の中にしっかり埋め込まれていて、スッと飲み込めた。この鈍い刃がいつ具体的な牙を剥くか。恐ろしいが楽しみだ。
二ヶ月の時間を適度にスキップすることで、『ロボット』だったレグが帰る場所と日常の温かみを知り『人間』になりかけたのも、巧い運びだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
残酷と略奪は単品では機能しない。奪うものがあって初めて、苛烈さは最大限に発揮されるのだ。だからレグは孤児院に向かい入れられ服を着る。
怪物性の証である伸びる腕は、誰かを殺すのではなくオバサンを助けるために使われる。そういうことが許される場所。街。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
これからレグは深遠に降りる。腕は殺すために使われるだろう。人間性は剥奪されていくだろう。それでも、この暖かな記憶があればこそ、深淵に堕ちきることは許されない。
それはリコも同じで、オバサンやリーダーがいるこの場所に、彼女は帰ってこなければいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
偉大なる母が降り、死んだ場所。黒い母胎へと下り、己の起源と出会って黄泉路を戻る。このアニメはおそらく、ポップな外見をしたオルペウスによる、再誕の物語になるのだろう。
とても楽しみだ。
第1話で世界に引き込み、第2話で説明がてら期待を上げ、さて本番。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
否が応でも期待が膨らむ第3話であるが、どんな地獄が待っているのか。
正調ジュブナイルファンタジーとして圧倒的な強度とワクワクを盛り上げているからこそ、それを活かしてハードコアな残虐を見せつけてくるのではないか。
そういう不安と期待が、モリっと高まる。深淵に降りれば降りるほどまた景色も変わるだろうから、街とは違う最強美術が堪能できるのではないか、という欲望もある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月14日
リコとレグが再び生まれるために、世界が用意した痛みと輝きはいかほどか。さてはて、来週も見ない訳にはいかない。楽しみである。