神撃のバハムート Virgin Soulを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
地上と天上、大人と子供、死と生。色々背負うものが別れつつ、主役たちが譲れぬものを賭けて決闘をする回。
バラバラになっていたものがまとまる変化の回なのだが、VSらしいハイコンテクストな演出が分かりにくくもあり、面白くもあり。
元々VSはアップテンポな冒険譚の勢いで押し込むのではなく、どっしり構えて色々盛り込んでいくスタイルなのだが、今回はとにかく語らない部分が多い。特に地上組。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
しかし描かれているモノには余韻があって、退屈ではない。色んな意味で凄くVSらしい回だなぁ、と思った。
今回は二つの対立(というには、天上組はのんきだが)が並行して進んでいく回で、ムガロもアザゼルも追いすがる仲間と向かい合う中で、こんがらがった因果を解していくことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
あまりにもムードが違うので別の話に見えるが、基本的な構図は同じ。アクションの中で気持ちを平らにし、真実に気づく
まずはのんきなムガロ-ニーナ&バッカス&ハンサ組。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
冒頭からして、酒瓶山盛り持ち込んで自分たちの領域を広げ、ムガロちゃんの心にズケズケ踏み入るアホバカ三人組。
せっかく救世主気取りの中二病患者になったムガロちゃんだが、懐かしきあの馬車の風景を再現されると、決意も揺らぐ。
先週『私が神だ』みたいな事言いだした時は『あ、ムガロちゃんもVSの無残な空気に当てられちゃったな…英雄の証明としてガンガン人間ぶっ殺して、もう帰れない道を墜落していく哀しいロードだな…』と覚悟したわけですが、ムガロちゃんはやっぱりムガロちゃんだった。ありがたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
色々あって声と記憶、過去と性別を取り戻したエルだが、ムガロだった時代の人間らしい温もりを忘れたわけではなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
一緒に食べて、笑って、服を選んだ、平凡な幸せ。神の尖兵となっても、あの時代の温もりはムガロの中にある。しかしムガロからエルになってしまった以上、素直に帰れもしない。
ニーナはバカなので、彼女がエルとムガロの間で悩んでいることに気づきもしない。ずーっとムガロムガロといい続けた態度が示すように、ちょっと尖ってみても、ニーナにとっては可愛い妹分だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
その揺るぎない愚かさが、道を決定的に間違える前に引き返させたのだろう。愚者は時に強い。
自分を捕まえようとして奈落に堕ちていくニーナに、ムガロは思わず手を伸ばす。本心と顔を隠していたフードがその瞬間はだけるのは、シャリオスが皇帝と人間の間で揺れる時使われる演出と同じラインだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
失われる命を見過ごせない自分に、ムガロはあの瞬間気づく。自分はエルでありムガロでもあると。
ニーナ達が乗り込んだせいで揺れる気持ちとか、そこから距離を取ってエルであり続けようとする決意とか、ニーナの無鉄砲さがそれを貫通してしまう様子を一切説明しないので、ちょっと分かりにくい感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
しかし、ムガロの変節/帰還自体は優しい彼女のキャラクター性に、嘘をついていないと思う
こっちの対決は血はでない、暴力は振るわれない、常時コメディのマヌケな空気が漂い、アクションも音楽の弾みに合わせて楽しく進行する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
それは話の中心にあるニーナの陽気さが、画面を染め上げた結果だろう。生き死にのシビアな問題は横において、仲良く楽しく行こう! という能天気で優しい生き方
冒頭、ニーナは天使の名前を知る。彼女がリドという、自我を持った一個人であることを前提に関係を作る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
弱肉強食の地上では、それは甘っちょろい理想論かもしれない。しかし、他人の命のやり取りを娯楽にしている連中よりも、まったくもって恥のない生き方でもある。
そしてニーナはだんだん、そういう生き方が実際には通用しにくいことを知りつつある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
夢の中の夢で、夢見ていた恋に抱かれる。明らかに現実のシャリオスよりも更に背の高い、優しいあの人。しかしすぐさま片目の皇帝となって、皆殺しを支持する。自分の都合よく、理想通りに世界は回らない。
あの夢を見ていると、ニーナは相手の顔を見て、相手も自分の顔を見てくれる相互対話的な世界を強く望んでいることが判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
リドともムガロとも成立させた関係性は、地上ではとんでもない贅沢品だ。自分の顔を映してくれる瞳を半分失ってしまったシャリオスに、今後それをどう突きつけ、機能させるか。
そんなシャリオスは、己の帝国を蝕む異分子同士を殺し合わせ、娯楽として消費していた…と切り捨てるには、何かを待ち望んでいたようにも見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
世界最強のトリックスター・ファバロの乱入により、反乱分子がコロッセウムという檻から抜け出した時、シャリオスは満足気に微笑んでいた。
観客席という安全圏から、欲望と殺意が渦を巻くコロッセオ。カイザルは飲み込まれつつも己を保ち、先達であるアザゼルは生きる意味を見失っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
カイザルの刃が命を貫かなかった時、アザゼルは『期待はずれだった』という。生きる意味が解らない状況を、死んで抜け出すつもりだったわけだ。
殺し、殺され、それが必要悪としての娯楽になる世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
アザゼルが膝を屈してしまったロジックに、カイザルは抗う。こっちのアクションは作画バリッバリ、受け流しでしなる刀身も鮮やかなガチバトルだ。
カイザルは血を流しつつ、アザゼルを殺そうとはしない。闘技場のルールには飲まれない。
無論それの無力さは幾度も語られてきた所で、ファバロの乱入までは死≒敗北まで追い込まれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
失っていた右手を取り戻し、アザゼルを圧倒するためには、道化めいた服を着た友の手助けが必要なのだ。ロッキーくんをちゃんと保管し、養っていたリタの愛情もな。ほんと、あの女圧倒的にいい女だな。
カイザルの、あるいはニーナが抱える『目を見ての対話』を求める生き方は、必要な助力を手に入れ、不屈の意志で真実を見据えていれば、何らかの結果を生み出せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
今回の脱出と、アザゼルの救命にはそういうメッセージを強く感じだ。重苦しい闇をまっすぐ見据えつつ、主役に希望を託すスタイルが好き
殺し合いの決着は、アザゼルの肉ではなく心を貫くことで決まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
殺し、殺され、暴力の優劣がそのまま意思を押し通せるか否かに直結する、修羅の世界。
色んな人の力を借りて、カイザルはそれを否定する。否定してくれたことで、アザゼルさんもようやく、やけばちではない道に足を踏み出せる。
あるいはそれこそ、シャリオスが待ち望んでいることなのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
人間の苦境をひっくり返すために、王として選んだ覇道。相手の目を見ず、名前も知らないまま殺し、殺されるルールを誇り高く刻みつつ、どこかで否定して欲しいのかな、と思う。自分からは歩み寄れないにしても。
カイザルは『王を止めたい』とは言わない。『王の真意を見定めたい』と言う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
自分が正義だという独善に支配されていないからこそ、世界と人間の真実を見定め、為すべきことに納得して命をかけたい。ド真面目な誠実野郎らしい、慎重で穏やかな結論だなぁと思う。圧倒的に遅くて、だから正しい。
カイザルがこういう男になれたのも、一期の冒険と喪失があればこそ。ファバロを仇だと思い込まなければ生きてこれなかった過去、アーミラを守れなかった痛恨が、綺麗事を極限まで突き詰めつつ、人には押し付けない生き方を産んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
オレこれ、すっげぇ良いなと思う。二期である理由が最高にある。
そんなカイザルの心は、かつて一緒に世界を救ったアザゼルにちゃんと届き、生きる意味を与える。先週虚空に『なぜ生きるのか』と問うた言葉は、空言とではなかったのだ。直接聞かないにしても、魂で同じく悩み、生き様で答えた友がいた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
既に答えを手に入れ(あるいはそれを失っ)た大人組、アツいな
そしてファバロ相手に言葉はもういらない。阿吽の呼吸をぴったり合わせ、去ろうとしても眼と眼が合えば一瞬で分かり合える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
やっぱなー、この二人の親友(マブ)感マジ凄い。あえて無言で押したのは大正解の演出だと思う。呆れてみてるリタかーさんで、しっかり落とすのも含めて。
というわけで、セリフで要所を補強しつつ、視聴者に解釈を委ねる作りのお話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
天と地、二つの対決は全ての意味で正反対であり、同時に人間性へのポジティブな信頼感で繋がって、バラバラだった人々を繋ぎ、新しい道を示す。
かなりいいターニングポイントになったと思います。
カイザルとニーナ、動きの中心にいる二人の人物が何を背負っているか、何を救えるかもハッキリと見えました。ムガロとアザゼル、かつて一緒だった二人が一話で同時に救済されるってのも、気の利いた構図やね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
しかし今回見えたのは、小さな灯火。世界の残酷さに、今後どう立ち向かいのか。期待大です
追記 ニーナが主人公であるということ
VS追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
VSは背景世界がハードで厭世的なので、主役の行動に説得力を持たせるためには、カイザルのように体を張って、血を流し暴力の真ん中にいた方が分かりやすい。
ニーナの気楽なコメディがムガロを救う流れは、一見すると浮いている。
しかしそこであえて笑いと日常の力を描いたのは、絶望的な世界に飲み込まれない…最初から闘技場に入らない強さというものを、ニーナが背負っているからだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
平和ボケして、優しすぎて、能天気な『当たり前』の生き方は、剣でぶっ刺して命を奪う生き方と同じくらい強いんじゃないの? という。
絶望的でシリアスな流れが押し寄せたとき、それに同化し『内側』から抵抗する方法と同じくらい、別の価値観を諦めず、気楽に持ち続ける『外側』の方法も大事なんじゃないの? という問いかけを、今回の二つの対決から、またニーナが主人公である意味から勝手に感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
それはタフでクレバーだとも。
そのテーゼの出し方に説得力が出るかどうかは、それを背負ったキャラクターの奮戦次第になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
闘技場のルールを捨てられないシャリオス相手に、ニーナがどれだけ恋し切るか。シャリオスを巧く書けているだけに、今後ここは巨大な焦点になるだろう。とても楽しみだ。
…恋愛をお話の彩り、ウキウキボーナスステージにするのではなく、キャラが背負う価値観の衝突場所になってきてるのも巧いし、ドラゴン変化の設定を重ねることでニーナの内面的成長/『破壊』の乗りこなしにもなってるの、なかなか凄いな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
女主人公じゃないと出来ない話に、ちゃんとなってる。
人間は殺し、支配し、奪うことで守る存在であると同時に、笑い、着飾り、食べ、恋をするイキモノでもあるという人間認識を、シャリオスとニーナが背負う形なのだな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年7月24日
二人が恋をすることで、これらは衝突し、あるいは和解し、交流する。さーて、メインタイトル背負う次回はどうなるかなっと。楽しみ