宇宙よりも遠い場所を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
南極は玄関叩いてからが遠いッ! 白い大地に降り立つ前の、少し弛緩した時間を追想が埋める。親友を亡くした女、母を失った娘。二人の心が不器用にぶつかり、氷床が今音を立てて割れる。
小器用に巧くやり過ごせるなら、こんな場所まで来ていない。似たもの同志の白い夢。
というわけで、吟と報瀬の微妙な間合いが、時に隠微な距離感で、時にダイナミックな正面衝突で、グッと近づくお話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
第4話、あるいは第7話でじわりじわり、二人の心の間合いを図っていた描写がしっかり生きて、同じ女を愛したが故の氷の硬さ、それをぶっ壊すカタルシスがしみじみ心に染みた。
髪型、超然とした雰囲気、クールビューティな近寄りがたさと、懐に入ってみると漂うポンコツ加減。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
吟と報瀬は似た者同士であり、幾度も同じものを見て、同じ言葉をいう。それは似たものな二人が大好きな貴子がハブとなって、二人を近づけるからだ。母としては親友と娘、魂で交流して欲しい。
しかしその母/親友を失い、二人をまとめ上げる結束点はこわれてしまった。出逢えば、失ったものを思い出す。だから、視界に入れないよう立ち回ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
でも、見ないようにしているものは心の一番奥にある、いちばん大事なものでもある。本当に無視することなんて出来はしないけど、耐えれもしない。
そういうアンバランスな状況を、黒髪美人は共有している。無理だと罵られ、バカだと煽られても『南極』にやってきたのは同じ呪いにかかっているからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
帰ってこないものを抱き続ける三年間。それを変えるためには、彼女が眠る白い場所へ、何としてでも辿り着かなければいけない。
自分の存在の根っこに強く突き刺さっているからこそ、当事者同士は動けない。そこで世話を焼くのがマブダチであり、報瀬の周りにも、吟の周囲にも、そういう部分を整えてくれるバカ達がたくさんいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
軽薄で興味本位。シリアスになりすぎれば、割れない氷に踏み込んでしまうから、気楽にやろう。
前半のバカパートが、そういう『あえて』のバカの力を巧く後押ししていて、とても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
ナチュラルに頭弱い部分もたくさんあるし、なんでも考えてやってるわけじゃない(特に高校生組)けど、深刻になり続けても極地じゃ死んじゃう。アイス食べて、運動して、おどけた取材に合わせて踏み込む。
先週散々ゲーゲー吐いて、バクバク食った結果、高校生たちは『クルー』となった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
『食べれるの別の人種だよ』と言ってた肉をガツガツ求め、遠巻きに眺めていた運動も自分らしく楽しむようになっている。タフになって、肩の力が抜けたのだ。ここら辺、アバン二分で見せるのが巧い。
館林で見せていたアホバカ力が回転し始め、『いつもの四人』を取り戻して。アホバカ元気に青春を楽しみ、シリアスな難しさに踏み込みもするいつものスタイルは、南極船でも健在だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
隊長と、あるいは自分の中の過去と。巧く向き合えない仲間の様子をしっかり見て、助け舟を出していく。
そしてその結束は、子供の特権ではない。吟にもかなえがいて、船長がいて、『クルー』がいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
出向前の邂逅を、仲間が見ているシンクロニシティは、吟も報瀬も同じだ。黒髪共が響き合うように、彼女たちを愛する仲間たちもまた、似たような行動を取り、同じように助け舟を出していく。
大人と共存し、共に氷をぶち破っていく『船』に乗り込んだこのエピソードで、そういう繋がりと支え合いは年に関係のない、人間の根本的な美徳なのだといい切ったのは、俺は凄くいいな、と思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
夢も友情も、あらゆる場所にあって、誰が手に入れてもいい、とても大事なものなのだ。
人間の海をわたるのが巧い名ネゴシエーター・かなえのスマートなアシストもいいが、ちょっとひょうげつつ隊長の背中を押す船長の、無骨な優しさが良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
あそこで柔らかい表情を見せたことが、砕氷シーンで指揮をとるピリッとした見せ場を、いい具合に引き立たせていたなぁ。
『いい大人』の肖像を捕らえつつ、そこになかなかたどり着けない『ダメな大人』も、敏夫を通じて描かれていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
松岡くんが残念力を全開に、『守って欲しい!』と吠えて突っ走るダメ野郎を好演。ともすれば重くなりすぎる展開から、うまーく空気を抜いてくれていた。
隊長の涙を見て恋から撤退するところは、『守って欲しい!』から『俺が守ってやる!』への相転移を果たせない、腰の弱いダメ大人を優しく描いて、好きなところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
変われない自分をアルコールでごまかしつつ、敏夫も弓子さんに支えてもらっている。色んな場所、色んな支え合いがある。
敏夫をコミカルに描きつつ、嘲笑はしない筆の使い方がとても好きで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
仲間の後押しを受け、分厚い氷に挑んだ黒髪達の毅然を輝かせつつも、そうはなれない敏夫の無様さもまた、ヒトの愛おしさと微笑ましく見つめる。答えを一つに絞らない、むしろ色々あって面白いと思える感性が、笑いの造りに出ている
規範に従わないもの。己の中の律動に逆らえないもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
そういうやつをバカにしてたら、氷を力技で割ろうとは思わないし、南極にだってたどり着けない。
アニメ史上最も気持ちのいい『ざまぁみろ!』を、言う側ではなく言われる側に落ちてしまう。
敏夫の描き方で、そういう足場を守ったのだ。
『ざまぁみろ!』もまた、報瀬一人のものではなく、『クルー』に共有され、不利な接岸点を用意された先達たちにも共有される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
『バカにしやがって…やったらぁ!』
黒い炎は、前進のパワーにもなる。綺麗な美少女にゲーゲー吐き戻させるこのアニメは、『醜』とされるもののなかの『美』を見落とさない
ラストの『ざまぁみろ!』は、今回のメインを張った繊細クールビューティ母恋しそれでも私頑張って自分の人生に決着つけるから見ててねお母さん系美少女・小淵沢報瀬を、いつものアホバカ残念美少女に戻す良い一手だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
つくづく全部本当のことなのだ。死の重さも、決意の尊さも、浅はかな愚かさも
ここで『美』のなかの『醜』を真実とは打ち出さず、『綺麗なものは綺麗だ』と見せるスタンスが、世界へのポジティブな認識にも繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
報瀬は残念だけども美少女で、それは過去も昔も変わらない。南極は母の死体を食ってなお壮大かつ美麗で、途切れ途切れの遺言でも、貴子はそう告げていた。
感情をせき止めなければ壊れてしまうほどの哀しさも、取り返しのつかない過去も、確かに存在する。分厚い氷は、いつでも世界を覆っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
それでも。
それはぶち破れるし、ぶち破るためには不器用に何度も、体を叩きつけていくのだ。その先に、綺麗な景色が待っている。海路が開いて、水が流れ出す。
このアニメが常々語ってきたそういうスタンスは、崩れることなく今回も徹底される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
その前向きさ、世界や人間の中にある輝きを肯定し、それがなかなか機能しないまどろっこしさや重たさを丁寧に描きつつも耽溺しない姿勢が、ずっとブレないこと。
それはやっぱ、作品の強みである。
真正面から思いをぶつけ合うしかない、不器用系黒髪二人。その思いが言葉の中で衝突した後、目の前に広がっている南極の歓迎を受け、現実でそれに反撃していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
重たい音響、巨船が持ち上がるスペクタクル。
言葉と心が作り出す空間から、問答無用で現実の質感に引っ張り込む演出力。
貴子の死が胸に突き刺さる痛みから、氷をぶち破る爽快感へ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
アホバカなAパートからシリアスな対話に繋ぐ運び含めて、メリハリの効いたエピソードだった。そのどれもが嘘ではなく、どれもが白い光へと繋がっているのだ。
死すらも。
あるいはそう思えるようになるために、貴子の女たちは南極へ来たか。
冒頭の何気ない二重跳びが、話が進むと別の意味合いを持ってくるのがいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
過去を回想し、『宇宙よりも遠い』と思っていた吟と報瀬の距離が実は強く結びついていたことを思い出していく展開の中で、小さな報瀬が描かれる。利発さ故になかなか打ち解けない感じが、非常に子供をよく見てる。
かつて飛べなかった二重跳びは、何度も何度も繰り返すことで、今は飛べる。かつては母が見守ってくれて、今は手に入れた仲間と一緒に飛ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
それは小淵沢報瀬が歩いてきた道、そこに深く食い込んで、悲しくも離れてしまった藤堂吟の人生を、巧妙にスケッチする。
報瀬が『南極』に挑もうと、バカにされながらしゃくまんえんタメたのは、無論母への愛、それ故止まってしまった時間をなんとか動かすためのあがきだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
だが、そこに藤堂吟との出会いが、言葉は少ないけど不思議に共鳴する一瞬が、大人が見せてくれた不屈さへの憧れが、確かにあったのではないか。
諦めず体を打ちつけて氷をぶっ壊してこれたのは、忘れようとしていたかつての交流があったからで、それを大人も子供も思い出すことで、約束の地にたどり着く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
その時はいなかった仲間、いなくなってしまった母と一緒に、白い大地に飛び降りる。
そういう思いを、報瀬が取り戻せたこと(つまりそれは、吟もまた取り戻せた、ということだ)は、やっぱ良かったな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
『宇宙よりも遠く』隔てられたと思ってた二人は、貴子を結束点に『南極』を目指す『クルー』なのだから。
あるべきものが、あるべき場所に戻る。カタルシスである。
そんな感じの、大人と子供のしみじみ回であった。第7話でもそうだったが、報瀬のガムシャラな叛逆を、大人たちも目立たず共有している所が非常によくて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
バカにされて、コナクソと奮起して、ボロボロになりながら進んで、キラキラ輝く。
それは青春の特権なんだけど、年齢には縛られない。
子供たちを保護してくれた『街』から飛び出し、同等の仲間として受け入れる『船』を舞台に進んできた、ここ三話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
ガキがいかにして『クルー』になっていくかを、非常に丁寧に追う話だったと思います。奥歯噛み締めて熱血うぉー! って感じじゃないけども、笑い混じりで成長の手触りを見せてくれた。
ここで育んだ繋がり、成長はしかし、人間を完全に書き換えるわけじゃない。キマリはまーた適当な嘘ついてるし、日向はソフトクリームをとっとと食べる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月28日
変わるものと変わらないものの意味は、『船』を離れ『南極』に降り立つ次回以降、より鮮明に描かれるでしょう。その為の準備は万端、来週も楽しみ