BEATLESSを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
流れ流れて名古屋の空港、燃える火赤い火緑の火。レイシア級の思惑が複雑に絡み合い、紫織の限界点が大炎上する決戦エピソード。
盤面の設置場所自体を巡って綱引きするレイシア級と、流されるまま決断だけはしている(ように自認している)アラトさんの逆転対置が面白い。
というわけで、移動と戦闘のお話。あれよあれよという間に大規模テロルの当事者になってるアラトさん、流され系にも程があるだろ! という回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
政略結婚を押し付けられ、企業政治の道具に使い潰されるのが嫌で道具のオーナーになったのに、その道具に謀殺されかかる紫織も、流されといえばそうだが。
アラトさんの認識としては、『かわいそうなレイシアとこのままじゃ引き離されちゃう。僕も頑張らないと!』という、主体性のある展開なわけだが、ヒキの視線で見ると列車からレンタカーから、用意された移動手段に乗っかり、決断と責任だけアウトソースされているようにも見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
そこら辺のヤバさを客観で見れているのがリョウであり、彼の言葉を思い出してはしても、人間≒自分の主体性を無批判に信じ切って行動できてしまうところに、アラトさんのチョロさと愚かさ、奇っ怪なエネルギーがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
そこで普通は踏み込めないモンだが、踏み込めちゃうから主人公であろう。
レイシアさんとアラトの間にある、恋とも信頼とも契約とも利用ともつかない、不可思議な関係。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
アラトはその複雑さを見ないし、見ても理解できないくらいややこしいそれを、レイシアさんはどう見ているのか。恋心のように見えるものは、冷たいアナログハックだと断言されてるけど、ほんとにそうなのか
カタチをカタチのまま受け止められず、余計なことをいろいろ考え貼り付ける人間のサガが、『本当のレイシア』を疑い、また信じたくもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
行動だけが高速で積み上がり、その根源にあるロジックが公開されない状況が、アラトさんが流されても構わないと判断する気持ちと視聴者を、ゆるく繋げる。
恋に落ちたアラトさんは、頑張って恋人を疑わないようにしつつ、自分の気持を固定しようと頑張る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
それはレイシアが人に譲歩する(ふりをすることで、公平な関係性を捏造し、パワーバランスを握り込む)hIEだからこそ生まれる気持ちでもある。『なんか話は通じそう』なムードを出すのが巧いのだ。
メトーデにしても紅霞ちゃんにしても、戦闘特化型はここら辺の機微がヘタである。謀略や利害は計量できても、あやふやで曖昧な人間心理を手玉に取るのは、そんなにうまくない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
片やオーナー不在、片やオーナー殺害。そしてオーナー籠絡。機械のパートナーシップ構築には、いろいろな形がある。
人間たちが成り行きに身を任せる中で、機械は生存のために交渉を積み重ね、謀略を張り巡らせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
戦闘と会話を別々のレイヤーで同時進行させるアクションは、彼女たちが人間よりも遥かにマルチタスクに長けた、目の前の一つごとだけに縛られない機能を有していると教えてくれる。
今回の戦いは『レイシアの唯一性確保(捏造)』というジュブナイルな表面と、その奥で渦を巻く複雑な利害が多層になっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
アラトさんはその表面しか見ない(し、見れない)ラノベ主人公のポジションに取り置かれ、同じ子供である紫織はその複雑さに噛み砕かれる形で、火宅に取り残される。
レイシアは偽造IDをエサに、紅霞を盤上に置くことで状況を動かした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
それは冒頭描かれる、アラトさんからケンゴへの連絡で生まれたように見える。
けど、機械はオーナー(候補)の熱血友情より先んじて、怜悧な利害で繋がって、駒を張るタイミングを先に決めていた。なかなか残酷な絵だ。
レイシアさんは嘘をつく(正確には真実を全て言いはしない)し、メトーデはオーナーを殺せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
シンギュラリティ以降の機械は、道具が無邪気に使われるだけの甘い夢を、実力で排除してくる。レイシア給は巨大企業や腹黒な大人と、対等なプレイヤーなわけだ。
紫織が流されかけ、無様でも抗いたかった大きな流れ。ミームフレーム社内部の、AI派と人間派の対立。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
アニメの範囲だと相当見えにくい描写になっているが、この大きなうねりは機械であるレイシア級にも強く接触していて、今回の戦いや決断もそこを見据えた立ち回りだったりする。
人類が自ら作りえた、人類史初の人類以上。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
高度AIとその娘たるレイシア級は、人類社会を決定的に変質しかねないその能力ゆえに、人間社会から恐れられ、首輪をつけられている。
従順な道具たるを良しといしないレイシア級にとって、『AI以前』への揺り戻しの波は、直接生命を取りに来る危険な刃だ。
そこら辺のパワーバランスが、レイシアが『道具』として確保されかねない番号確認が通ると崩れる。だから自分自身(とアラトさん)を囮にして、名古屋でコトを起こすことで牽制を入れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
そのためには、経済の長い手をひっそり伸ばし、地球の裏側にあるエジプトから状況を握るのもためらわない。
ボーイ・ミーツ・ガールなほんわか日常の範疇を、レイシアさんの働きかけは遥かに突破している。そしてアラトは、その事実に気づかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
彼の想像力は、経済や政治、欲望や信念が複雑に衝突する世界には伸びないわけだ。それが自分の足で歩くのではなく、加速する状況に乗って流される感覚に繋がる。
自動運転を切って、車を自力で運転しているように見えても、それはレイシアが用意しケツを持った盤面に乗っけられているだけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
今回ぶっ壊れた空港の責任は、機械たるレイシアには取れない。それは事前に幾度も説明され、アラトが頷いたとおりに、彼が取る。アウトソースは巧く使うと、世界が広がる
そんな状況でも、アラトは体を張って紫織を助ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
ケンゴに続き、不利益を恐れず鉄火場に飛び込める勇気(あるいは愚かさ)は、流されるばかりの少年をギリギリ主人公たらしめている。チョロいから良いように使われて、チョロいから迷わず助けて。ヘンテコな主人公だが、僕は好き。
紫織を崖っぷちに追い込んだメトーデは、道具的存在として使い潰されかねない状況をひっくり返すべく、状況を作る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
ハードな状況にオーナーを追い込むことで性能を試験し、使えないとなれば切り捨てる。そのために動員されたhIEは、お飾りとして社内政治に噛みつかれた紫織の、残酷な戯画だ。
『お前に求められているのは、しょせん人形で代用できる程度』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
それは無力な子供である紫織にだけ、投げかけられた侮蔑ではない。メトーデが代表する機械時代の冷たい価値観は、人間存在を不完全な道具、石器時代の遺物として排除しにかかる。人命チェスをやるには、不出来な指し手だと。
アラトへの愛おしさ、レイシアへの反発。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
人間的な、あまりに人間的な感情に押し流されて、役が成立する前に手札を晒した結果、紫織はメトーデに見限られ、炎の中で死にかかる。感情を制御しきれない子供を相手に、冷徹な機械は容赦がない。
その未熟さは紫織の傷なわけだが、それは主人公・アラトも同じこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
無様に間違え舞台から降りる紫織と、生存し主役で在り続けるアラトとの間の差異は、一体何か。主人公補正以外に見えているのは、やはりレイシアという庇護者であり、利用者でもある存在の有無だろう。
同じレイシア級でも、メトーデはオーナーの子供を補佐しない。試し、生存という目的に使えない道具だと見れば切り捨てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
それがメトーデ固有の傾向なのか、紫織の実力不足ゆえか、はたまた機械の知性はそういうものなのか。なぜアラトとレイシアは『上手く行っている』ように見えるのか。
そこら辺への疑問が深まる、空港大炎上であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
残酷な経済ジャングルの中で、どうにか生き延びようと手を講じ、当然子供の浅はかさでは追いつけず傷つき、退場した紫織の無念のバトンは、リョウが継ぐことになる。
『子供の失敗』を一回描くことで、そこを超えていく特別な存在を際立たせる形か。
恋には勝てない、謀略には負ける。まさに踏んだり蹴ったりな紫織はしかし、『ただ生きたかった』だけだと考えると、実はメトーデとよく似たキャラなのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
結びついて、しかし離れるしかなかった二人。人間は去り、機械は残る。加速する謀略が、生きることに懸命だった子供を忘れないでほしいとは思う
そういうめんどい事情に、ウェスタンルックで殴り込みをかける紅霞ちゃん。オーナーも組織のバックアップもない彼女が、今一番欲しい偽物の身元をちらつかせることで、彼女は盤面に乗った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
相手の『欲しいもの』を見据えて、必要なタイミングで出す。ネゴシエーター・レイシアの業前が光る。
『欲しいもの』をぶら下げているという意味では、アラトさんへのアナログハックも同じなんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
銭金や利害で動かない(動かなくても良い特権を持っている)ラノベ主人公相手には、真剣なお願いや危ういよろめきを演じてみせるのが、一番の報酬になるのだ。人間行動の多様な極を知悉している。
人間は銭金や生存でも動くし、形のない曖昧な信念や愛情でも動く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
メトーデが怜悧に踏みつけ、紅霞が巧く接近できない領域に、レイシアさんは、鼻が利きすぎるくらいに利く。
すり替えを可能にした長い手は、ゼニが人間にどれだけよく効く薬(あるいは毒)かを、よく把握しているから機能する。
ワイロを運用できるくらい経済的に自立していて、冷たい利害交渉も笑顔の裏でこなして。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
アラトさんの『ボーイ・ミーツ・ガール』の相手は、男がマウント取れるか弱いヒロインなどでは当然なく、価値観も行動力も怪物級の異質存在だ。
そこら辺を、ギャルゲの夢に溺れたアラトさんは理解できてない。
まぁそれは、追々きっつい足払いを食らわすべく積み上げられている、意図的に不安定な足場なわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
ボーイ・ミーツ・ガールを真実問うためには、それが全然ロマンスじゃない真実をフルスイングで叩きつけて、それでもなおロマンスする実力と信念があるか、試さんとあかんしな!!
あ、かなり強引に筑波の実験を挟み込んで、遠藤家の家庭事情と世界観の広がり、今後の展開の足場を作ってきたのは良かったと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
空港での激しい衝突、渦巻く謀略とはまた違う形だけど、二万体の社会実験もまた、『人類以上』と人間がどういう間合いでさし合うか図っている。
ヒトとヒト、ヒトと機械、機械と機械。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
相互に交渉し、衝突し、利害と感情を交換しあう(あるいはそれが出来ない)巨大なうねりが描かれる、名古屋大決戦でした。
全体的に楽しかったが、やっぱアクションやデザインにもう一手『圧』があればなぁ…とは思う。望んでもせんないが。
そこら辺の苦しさを反映するように、来週は総集編その2である。力をタメて、加速する状況を描ききれるスタミナを回復して欲しいところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
紫織が贄になることで、機械は無邪気な隣人ではないことが明らかになった。鋼鉄のロマンスは、打算と陰謀を孕んでさらに熱量を上げる。次回も楽しみ。
追記 恋じゃお腹は膨れないけど、利害だけじゃ寂しいよね
BEATLESS追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
紅霞が動く理由が、熱血ボーイの熱い説得ではなく(いや、少しは効いてんだろうけど)『社会的立場の偽装』であったのは、hIEが置かれている状況の冷たさを巧く示していて好きだ。
同じく身分偽装のために名古屋くんだりまでテロしに行くレイシアさんも、そこは同じだ。
アラトがどんだけレイシアを家族(恋人)扱いしても、あの世界の法制度も社会通念も、モノはモノとして扱う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
それは線引を間違えると崩壊するほど強い圧力を、モノがもう獲得しているからこその区別でもある。しかし生存欲求を手に入れてしまった機械は、その線引を跳ね除ける自主性も獲得した。
その生っぽい生存競争を前に、甘ったるい『ボーイ・ミーツ・ガール』の感傷は無力に見える。それでも、ロマンスは世界を変え、ヒトを救いうると語る前段階としても、そういう硬いリアリティをひっそり物語に入れ込んでいくのは、大事だし好きな運びだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
追記 高度に編集された恋は全世界流通して、関係者のお腹をふくらませるし、他人の脳髄を好みの色で洗いもする
そういう意味じゃ、甘ったるい『ボーイ・ミーツ・ガール』を広告戦略に乗せて、凄く冷徹な経済社会活動として世界全体をアナログハックしようというファビオン、そのオーナーたるエリカの立ち回りって、かなり恐ろしいよな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
『利害だけじゃ生きられないくらい人間弱いだろ』ってのを前提に利害を組む
冷たい実像を追い求め続けながら、どうしてもそこに深甚な意味を幻視したくなるヒトのサガを、綺麗に逆手に取ってパッケージし、ゼニと影響力をかっぱぐ戦略。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月16日
そこにエリカが、何を投影しているのか。世界へのアナログハックで生まれる利はなにか。そこらへん伏せ札か。