宇宙よりも遠い場所を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
さらば母。さらば追憶。さらば旅路。さらば極地よ。慣れ親しんだ『南極』の日常、特別な風景を心に刻んで、少女たちは日々に帰還する。
旅に出たからこそ見れた景色、埋もれていた思いと匂い。何よりも重たかったものが、今はもう軽やかに感じる。
そして、また旅に出る。
というわけで、見事な物語に相応しい、見事な最終回だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
物語のピークを前回に持ってきたおかげで、高く高く飛び立つがゆえの喪失感ではなく、それをゆっくりと着地させ新しい旅路を見据える余韻が、豊かに広がった。
エピローグに一話取れるよう、圧縮率を極限化した強さであろう。
無論、ただただ余韻があるだけではなく、この旅で少女たちと、少女を受け入れた大人たちが手に入れたものを丁寧に描写し、これまで描かなかった『観光地としての南極』に飛び込み、このエピソード独特のコクも出してくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
最後のオチも含めて、強い満足度と充足感のある、良い最終回だった。
思い返せば第9話、初めて『南極』に足跡を刻む話は、『案外夏の南極はハードではなく、そこには「日常」がある』と見せるところから始まった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
館林の穏やかな揺籃の日々とは少し違う、しかし食って出して掃除してな当たり前の日々、流れる毎日に輝く喜びは、極地でもしっかり存在する。
離れていても繋がっていて、別に思えて同じである。日常から極地を追い求め、極地に行って帰ってくるこのアニメは、『南極』を特別なファンタジーとしては描いてこなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
頑張れば手が届く、しかしその道程は大変で、だからこそ輝いているような、当たり前の奇跡。そういう描き方をしてきた。
なので、今回のお話も当たり前にはじまる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
目覚ましを止めて、食事を用意して、ゴミとクソの始末をつけて、特別なイベントがある。
第1話冒頭で描かれた東京出立未遂、それを包んでしまう学校と日常と同じように、南極にも当たり前の生活がある。だからこそ、少女たちはとても特別なものを学べた。
『すっかり慣れてしまった』と結月は言うが、それはボーッと座っていたから慣れたわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
旅立つために苦労をし、旅路でもアクシデントがあり、心と心が激しくぶつかり、お互いを受け入れあって始めて、『南極』が『日常』になったのだ。藻掻いて歩いた末の、充足された平穏。
それはとても心地よいし、特別な色合いがある。館林のホームで一歩も進めなかった時代からは想像も出来ない、開放された地平線。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
でもそれは、まだキマリの景色ではない。そこにもう一度たどり着くためにも、慣れ親しんだ日常を離れ、もう一度特別な日常に帰還する必要があるのだ。
キマリが『もう一度、四人でここに来よう』と尋ねるとき、声を荒げたりはしないし、アツく語ったりもしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
ちょっと柔らかい感じで頬を掴みつつ、でも思いは真剣で。そんな書き方が、非常によりもい『らしい』なぁと思えて、非常に良かった。
それを受ける報瀬の、柔らかい本気も。
そういう静かな激情は、報瀬の中でも渦を巻いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
母を求めて『宇宙よりも遠い場所』へたどり着き、自分の決意と努力、それが巻き込んだ友の助けにより、ノートPCとメールを手に入れ、時間を越えた自分の思い、母の不在を確認した彼女。
『南極』を去る前に、報瀬はどんどん捨てていく。
溶けて水になってしまう氷以外、何も持ち帰れない南極。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
そこに報瀬は、母と同じ髪型も、亡霊に取り憑かれたような険しい表情も、思いを受け取った抜け殻としてのPCも、何もかも置いていく。
ここまで自分を進めてくれた燃料(あるいは重荷)をデポすることで、その先…母のいない館林に帰っていく。
命金のしゃくまんえん、どう使うかずっと楽しみだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
そして今回、『置いていく』というベストな答えを見せてくれた。
元々、しゃくまんえんは100万円ではない。それは銭金を超えた執念であり、年月であり、それを打ち捨ててでも助けたかった仲間の重さであり、母への愛である。物理を越えた価値だ
だから、何かと交換してその価値を固定してしまうより、母への思いの道標のように氷に突き刺して、別れを告げる終わり方は、これ以上ないほどに相応しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
今回最終話、描かれるもの全てが『これしかない』という納得と必然に満ちていることに、作者の慧眼と物語の蓄積を感じ、敬服してしまう。
置いていくからこそ、旅立つからこそ、見える景色がある。生まれる表情がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
いしづか監督がコンテ演出を担当した今回、圧縮率の高い象徴画は、実はそこまで多くない。むしろど真ん中、最高の笑顔を幾重にも連ねることで、少女の到達点(とその先)へ、視聴者の想像を誘う。
キマリの、報瀬の、めぐっちゃんの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
旅立ってたどり着き、傷ついて学び、だからこそ最高に笑える少女たちの輝きを、最後の最後でズバズバ入れてくる。
それは圧縮と屈折が巧すぎたこのアニメが、最後にストライクを取る直球にして魔球だ。伝家の宝刀は、最後に抜く。演出プランが巧すぎる。
同時に、ずっと泣けなかった大人が泣く表情も、しっかり切り取ってくる。旅の仲間として、優しい保護者として、時に笑わせ時にココロを揺り動かしてきた彼らは、僕らの気持ちを代弁するように、去っていく少女に涙を流す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
ありがとう、頑張って、忘れないよ。
奴らの声は、俺たちの声だ。そうだろう?
そんな真正面の涙と、あえて吟の慟哭を映さない繊細さの同居。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
魔球を場外までかっ飛ばされ、立派なスピーチで思いを告げ、かつて魂を分け与えた報瀬は、吟の想像の外側に出た。
見守るべき『子供』から、いつか対等に肩を並べ追い抜かれる『大人』へ。その成長が、吟を哭かせる。
貴子を殺した重荷を、孤独に追い込んでしまった幼子への罪悪感を。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
ようやく南極にデポできた親友を見て、かなえも泣き笑いだ。
人当たりが柔らかく、しかしタフで賢く、弱音は吐かず元気に歩く。青春の迷い路ど真ん中の子供たちが目指す『大人』のロールモデルとして、本当に立派な人だった。
三年前の忘れ形見を、どうにか『南極』まで届ける。そして、今度は帰還し、また訪れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
あのボロッカスの車中で固めた決意が、大人たちを極地に連れてきた。そこで子供たちが見せた輝きが、大人たちにとても大事なものを届けた。
そういうリレーが密かに、しかしちゃんと描かれていた。素晴らしい
『南極でやりたいこと』を全部叶え、それでも残った心残り。美しき極光を見たいという願いが天に届いて、旅立つものと残るものは同じ空を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
そこで、少女が気づかなかった母の手紙が、親友の手を経て届けられる。
それは、過去からの手紙。少女がまだ母の腕に抱かれることが出来た時代の残滓。
失われた母と、それがもぎ取った自分自身を取り戻すべく、報瀬はしゃくまんえん貯めて、『南極』へ来た。自分の目でオーロラを見た。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
写真より一万倍綺麗な、本物の極光。あのとき母が、娘に見せたかった世界に、ゲロと友情で鍛え上げられた娘は自力でたどり着く。
ありえないほど綺麗な親離れだ。
それは報瀬の心に住み着いた母の亡霊(であり、娘に囚われた貴子の亡霊でもある)から、彼女が開放される、ということでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
ようやく菩提を弔って、報瀬は仏壇に正面から向かい合い、祖母と一緒に手を合わせる。死者はあるべき場所に帰り、時計の針が動き出す。短くなった髪は、弔慰の尼削ぎか。
かくして羽田に付いた少女たちは、館林を待たずに別れていく。離れていても一緒にいて、別々に見えるものが同じだと、長い旅の中で判ったから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
お別れは分断ではなく、その先につづ区道は、またいつか交わる。このアニメを見終わっても、『終わり』ではない、と言うかのように。
旅路の果ての『南極』は、すべてが終わる約束の地などではなく、色んな疑問と宿題、願いと夢を新しく生み出す、出会いの場所だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
このアニメを見終わったあなた達もまた、視聴体験から何かを引き出して、自分たちなりの『南極』に向かい合うエネルギーを、獲得できたのではないか。
そう語りかけてくるような、静かで靭やかな終わりだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
それぞれの日常に帰還し、これまで自分を支えてくれたものと向かい合う少女たち。
家族、ファン、友人、あるいは職場の仲間。
コンビニ店長があまりに高徳過ぎて、一瞬のカットで完全に持ってかれた。アンタが日向の上司で、ほんと良かった…
結月も南極で、あるいは故郷で『ファン』に出会い、巧く距離を掴めなかった『仕事』との間合いを見つける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
それは求めつつ遠すぎた、固体であり流体でもある『友情』に首まで使って、色んなものを学んだからこそ可能な発見だ。『南極』は、仕事にも役立つようだ。
そしてキマリは、存分に『家』を堪能した後、ベットの上で親友にLINEを送る。小淵沢母娘が過去から現在に届けたメールとは真逆の、でもよく似た重さの感情を運ぶ、現在から未来に続くメッセージ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
しかしここで、めぐっちゃんがきっちり逆転ホームランをスタンドに叩き込む。
お前が南なら、私は北だ。
キマリならずとも『なんでぇ~!』な展開だが、あの子もまた、置き去りにされたままデカくなった友を迎えるような、しおらしいキャラじゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
胸に溜まった水が溢れ出すのを、黙ってみていられなかったから、自分の足で駆け出した。絶交無効に似合うような、デカい女になるために旅立った。
第5話でキマリを過去から開放し、自分の中の淀んだ感情の堰を切ったとき、めぐっちゃんは自分自身もまた、開放したのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
それは溢れ出す。騎虎の勢いで飛び出して、宇宙よりも遠い場所を目指して駆け出す。
四人の少女が背中を押されたのと同じ青春の息吹が、めぐっちゃんを寒い場所へ連れて行く
報瀬が吟の想像を超えたように、めぐみもキマリの(そして視聴者の)想像を遥か高く超えて、遠い遠い場所に着弾した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
二つのホームランが天を飛び越えて、物語をとても気持ちの良い、高くて遠くて、近くて暖かい場所へとぶっ飛ばす。
心地よい裏切りを残響させながら、よりもいが終わる。
いいアニメだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
いしづかあつこの繊細で鮮明な『絵』の感覚が、全ての局面で唸りを上げ、圧縮率が高くテンポの速い物語の進行に、分厚さを与えていた。
そこに宿った感情が、しっかり青春の物語を駆動させ、キャラの実在感と『南極』の遠さ、それでも突き進むエネルギーを生み出した。
小気味いいけど手触りがあり、借り物ではないダイアログ達が、キャラに息吹を与えていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
笑いと涙と喜びのバランス感覚。大人も子供も輝きも陰りも、なんでもぶち込んで破綻させないセンス。むしろ色々なものがあるから輝く人生曼荼羅を、色彩豊かに描ききった。
草薙の美術が良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
当たり前にあって、その価値を忘れられかけている館林の『日常』に潜んでいる不思議な光を背景に込めることで、『南極』に旅立ったからこそ再発見できるそれが、ちゃんと実在していることを密かに証明し続けていた。
目指すべき場所としての『南極』をスペクタクル満載に描ききることで、物語とキャラがそこを目指す動機にシンクロできた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
『あんな綺麗な場所なら、俺も見たい』と思わせた。
そしてそんな憧れの先にある、当たり前の『日常』もまた、非常にスマートに描いて届けた。相反し一体であるものを描ききった
環境音と声優の演技含めた、音響が良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
鮮明で意味を多様に含んだ構図、複雑な色を込めた色彩、時にコミカルで時に重たい芝居。アニメーションを構成するすべての要素がハイクオリティで、なおかつ明瞭な一つの意図に貫かれて、巨大なまとまりを最後まで維持し続けた。
欲しいところに欲しい玉が、欲しいタイミングできっちり飛んできて、しかもそれを超える心地よい裏切りに満ちていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
先は期待できるのに予測不能で、でも納得と満足があって。起伏と安定が同居する見事な運びが、最初から最後まで力強く流れ続けた。
それぞれの立場で、それぞれの強さと欠損を抱えたキャラクターたちが、生き生きと脈を打っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
どうしようもなく胸を打つ衝動に突き動かされ、必死に走る少女(とオッサンオバサン)が、とても愛おしく思えた。一歩ずつの成長と変化、お互い混じり合う影響が、シーンごとにはっきり感じられた。
良いところが山のようにある、圧倒的にテクニカルでチャーミングなアニメだった。毎回いい最終回で、満足感と期待感を一切裏切られず、楽しく見続けることが出来た。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
宇宙よりも遠い場所、素晴らしい仕上がりでした。圧倒的な完成度と、それを使いこなすセンスと情熱が、あらゆる場所で唸ってました。
一つの旅が終わって、その先にまだ旅があること。幕が下りた物語の『これから』を、心から信じられること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
それはあらゆる物語が目指しつつ、真実到達するのが難しい極地ですが、センスと才能と熱意と、動員できるもの全てを振り絞って物語をそこまで引っ張った、腕力と洒脱のあるアニメでした。
兎にも角にもパワフルで巧妙で、いしづかあつこ監督の才能を300%増しで確信させられるような、素晴らしい出来でした。他スタッフの方々も、ホント最高でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
視聴者を静かに送り出してくれる最終話の誠実含め、非常に優れたアニメだったと思います。ありがとうございました、お疲れ様でした。