刻刻を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
世界で一番長い六時五十九分が、ようやく終わる。佐河との戦いに決着が付き、一人、また一人と珠璃の掌が人を帰還させる。成長と理解、打ち倒す以外の選択肢。その先にある別れと、人としての限界。
最後に力技でハッピーエンドをもぎ取った感じもあるが、納得もできる良い最終回。
そんなわけで、刻刻も終わりである。時間的密室ミステリ、渇いたギガヴァイオレンス、崩壊家族の再生物語、異能力サスペンス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
色んな顔を持っていたアニメだったが、最後はじっくり足を据え、止界の異常性と人間性を追いかける形となった。
最後に『停止した物語』で想像する形に持ってくの、凄いな。
ここまでは佐河が超ラスボスとしてしぶとく、分厚く話を支えてくれたわけだが、他ならぬ樹里の手によって理性の怪物は融解し、罪なき幼子として再構築されてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
なので、最後に樹里が戦うのは先に進まない時間それ自体と、そこで摩耗していく精神そのものだ。
もともと激しいバトル、異質な能力について描きつつも、非常にベーシックな倫理の一線を幾度も語ってきた、このアニメ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
ヤクザや狂信者のぶっ飛んだ線引と、人間で居続けようとする家族…を基本形にしつつ、『家族』の方に作中最強のサイコパスがいるのがミソだな。ホントオヤジは強烈だった…。
ハードなバトルが終わった今回は、そういう地面にどっしり足を据えて、一番キツい戦いを続ける展開となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
長距離走と短距離走、ハイジャンプとロングウォークの違い、というか。何しろ200日の完全独房監禁だもんな…長丁場だ。
そこで樹里が、何度も服を着替え、髪を伸ばし、飯を食い続けるのが、面白くも重たかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
自分のメンテナンスを続け、赤ん坊の面倒をみる。人間の形を保とうと頑張る。それは、腕が飛んだり人が死んだりするバトルとは違う形だが、もしかするとそれ以上にキツい。
超非日常のなかで展開される、長い長い日常。永遠の夕暮れを歩きながら、樹里は自分の支えとなる人をその手で、一人ひとり帰還させていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
ジジイが帰り、佐河が帰り、みるみる樹里の生活(つまり衣装と食事)が荒廃していく様子が、他人がどれだけ支えになっていたかを見せる。
樹里は静止した永遠の中で、誰かを支えに生き続けることも出来た。ジジイがそうなろうと決意し、佐河をそれに巻き込みそうにもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
しかし、鉄火場で彼女を突き動かしてきた思い切りの良さは、刃を収めたこの日常でも、正しい選択肢をその手に掴ませる。
正常な時間に帰還させるために、手を使う。
樹里最大の魅力である決断力が、バトルが終わっても彼女最大の武器であると確認する運びは、爽快感がありつつ寂しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
決断はどんどん彼女を孤独にしていく。それはとても正しく善いことなんだけども、だからといって樹里の寂しさ、静止した世界の狂気が止まるわけではない。
人が去り、ゼニが尽き、マトモな人間の形を維持するのが難しくなってくる。窃盗と狂気に苛まれて、それでも自分を維持するために、樹里は街を出る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
東村山から六本木へ。約35キロの徒歩行。精神を守る鎧のように、精一杯のオシャレをしている所が、心の荒廃を映してキツい。
物語の舞台だった郊外を離れ、人溢れる都心部に入っていく。楽しいことがたくさんあって、心を支えてくれる非日常。沢山の人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
しかしそれは荒廃を加速させるだけで、彼女はついにカヌリニへと変化する。佐河もまた、野望を叶えても同じ結論だったんだろうなぁ…。
ここで、物語全てを起動させた生き神様と偶然出会い、樹里は救われる。ハッピーエンドどんと来いであり、あんだけ苦労した樹里が帰還するのは正しいとも思うが、やっぱりちょっと強引だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
とはいえ、石の由来はブラックボックスながら語られてはいて、完全なデウス・エキス・マキナでもないが。
あれは樹里が止界のルールに蝕まれつつ、それでも必死に自分と家族を守ろうとあがいて、戦って、結果として救済を掴むこれまでの流れと、重なった終わりだったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
『家』を出て、世界に出る。それが逃避だったとしても、なんとか人間であろうとした奮闘が、偶然の出会いと救済を連れてくる。
飛野が変質したカヌリニ(変質してからは、完全に『犬』として描かれていた)が、六本木まで樹里を追いかけてきて、正気を一瞬取り戻す流れがなんか好きで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
赤ん坊の言葉、怪物の言葉。よく解らなくても、何となく通じる。戦いが終わったからこそ可能な、贅沢な時間。
そういうヘンテコなシンパシーが、止界の中の、そこから出た後の樹里を支えていくのだなぁと思うと、あのヘンテコ生物も樹里の『隣人』であったのだと感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
フツーじゃない家族の再生を描いた話らしい、変なペットの奉公であった。成仏しろよ…。
崩壊家族を超非現実密室に叩き込むための、舞台装置。マリヤの登場で、石や術にも一応の説明がついて、収まりが良くなったようにも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
しかしまぁ、ご都合だろうと必然だろうと、樹里が家に帰れてよかったよ。止まった時間が動けばこそ、ジジイも天命を真っ当できた。
エピローグはベタ足ながらど真ん中に、キッチリ『その後』を入れてきて素晴らしかった。佐河ベビーを背負うことで、樹里もどこかコンプレックスを抱えてきた姉のタフさ、真っ当さに接近していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
超非現実で異能バトルしたことは、家族を少し変えて、風通しを良くする。去る人がいて、増える人がいる
18:59で静止し続けた、古い時計。それが幾度も当たり前に時を刻んで、日常が帰ってくる。その当たり前の喜びは、とても静かで雄弁だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
それは、静止した世界のグロテスクな輝きを、ちゃんと描ききったからこそだと思う。最後を飾るのに相応しい象徴性があって、良いエピローグでした。
というわけで、刻刻も無事終わった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
『クソ崩壊家族VSヤクザカルト連合軍ッ!』という、キャッチーで暴力的な味付けで惹きつけておいて、ジワジワとキャラクターの内面、止まった世界の意味を見せる作りが、非常に良かったです。
凄くベーシックなものを根底に置きつつ、派手で楽しいフックも忘れない
止界の異質な物理法則を、ヴィジュアルで伝えてくれる場面を多数盛り込み、殺戮の興奮をアクションに仕込み、油断ならぬ強敵との対峙、相互の対話も忘れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
体温上げるエンタメ要素をカッチリ入れて、毎週楽しい運びにしてくれたのが、非常にありがたかったです。
その上で、郊外の夕暮れの寂しさを有効に使って情を出したり、メシと服に人間の生を刻み込んだり、派手ではない部分もしっかりやりきってくれて、良いバランスでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
ホロリとした落ち着きがあるシーンが、しっかり落ち着いてる所が強かったと思う。
キャラクターも個性豊か、かつ嘘っぽくない味付けでしっかり仕上げて、みな魅力的でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
理性の怪物・佐河の底知れなさ。樹里の決断力。迫の可愛げ。声優さんの演技もバッチリマッチして、魅力を高めてくれました。
異常な世界を背景に、人間と怪物、日常と非日常を隔てる線が非常に薄くて危うくて、だからこそ守る意味がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
そういう骨の太いメッセージがちゃんと込められているのが、作品への信頼を育ててくれました。そういうものを、アクションや芝居に盛り込む象徴性が、かなり巧かった。
グーッと引き込まれて、色々考えて、『ああ、終わった』と満足して見終わる。エンターテインメントに必要な要素を、バランスよくまとめ上げたいいアニメでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月27日
刻刻、とても面白かったです。こういうまとまりの良い、まっすぐに面白い作品があると、なんだか凄く安心する。ありがとうございました。