Free!-Dive to the Future-を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
過去と現在、異国と日本。様々に引き裂かれつつ、繋がる思いとすれ違い。
シドニーの凛が意外な客と交流を深める様子を主軸に、物語の全体像をステッチしていくエピソード。変遷する”水”の描写、遠隔地を繋ぐ携帯電話など、細かいフェティッシュの使い方が面白い
というわけでFree三期第三話、一人シドニーへ旅立った凛ちゃんへ、カメラを寄せるエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
ここで夏也とコンタクトし、弟の拗らせ方が他人事ではないと思わせておくことで、遠い日本での青春ネトネトに切り込んでいく入口を作る。そういうお話だっった…かな?今後見ないと言い切れんな。
後に夏也と出会い、親しく距離を詰め、事情を託される凛。冒頭時点では接触が一切ないが、夢から目覚めす様子は並列に描かれ、対比される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
水の中に閉じ込められ溺れていく、孤独な郁也。彼にとっての水は、窒息性の重たさを持つ。それは中学1年生の喜びと、それが奪われた苦しみを反映している
過去にとらわれて、出口が見えない。絡み合った愛憎を、自分ではけして解けない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
これはFreeが、ずっと描いてきた基本構図だ。愛すればこそ捨てされないものが、憎悪に変わって自分と他人を傷つける。適切な距離感を見つけられない。
すでにそういう賛同をくぐり抜け、ちったぁマトモな人間の間合いを学んだキャラクターたちは、そこには帰還しない。してしまえば、物語全体が自分自身を否定し、大きく後退することになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
なので閉じこもり悩み、身勝手に傷つき傷つける役は、三期では郁也の担当である。
幼い自分の呼吸を奪う、重たい羊水。悪夢から目覚めた郁也は、暗がりの中にいる。特権的孤独には、しかし一筋光がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
郁也の目覚めは、(他のカットがそうであるように)綺麗な具象のスケッチを超え、状況と運命と感情を絵に乗せている。
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窓から差し込む光…外界からのアプローチがいい結果を連れてくるかは、次回を見ないと分からない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
アバンとラストは日本で展開させ、真ん中はシドニー軸で回す。携帯電話で遠隔地を繋いで、エピソードとエピソードの連絡も作る。結構面白い物語さばきである。
さて、シドニーの凛は悪夢に悩まされることもなく、自分で起きて自分で食べる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
郁也を窒息させていたプールの思い出、そこに満ちている水は、様々な可能性に変化しつつ、凛の周辺を潤している。窒息性の悪夢ではなく、現実的な栄養補給源。
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顔を洗う水、フライパンの上で踊る卵、コップに寄り添う牛乳、溢れる黄身。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
流体が持つ自在な可塑性は、凛周辺で自在にアニメートしている。世界はそのように形を変えるものだし、凜もまた可変な世界を己の手で掴み、咀嚼する。飲み込んでも、窒息はしない。
今の郁也以上に感情を拗らせ、過去の愛憎を喉につまらせていた凛は、窒息性の”水”を思い出の領域に追いやれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
すでにある程度以上、自分の物語を終えているものの気楽さ。軽く、広く、正しくある特権を甘受できる、かつての主役の闊達自在。
シドニーの朝からは、そういうものが見えてくる。
同じ青と影を背負っても、凛の視線は未来へ向き、郁也の眼差しは過去にとらわれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
水から離れた空を見上げ、明るいほうへ進める凛。呪いのように水を背負い、薄暗い影に支配されている郁也。その差異と共通を、ザッピングしながら描く。
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凛と郁弥は似たもの同士なのだが、具体的な接点は薄い。これを補うのが水泳賞金稼ぎの夏也である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
遙の先輩であり、郁弥の兄でもある。凛が気づいていない接点を顕にし、なおかつシドニーにふらっと立ち寄ってもおかしくない存在。巧いこと、ジョーカーを切ってきた感じ。
夕日の中で対峙する、凛と夏也。二人の距離感はスルスルと縮み、境界線は突破される…ところで止めずに、肩を組む間合いまで一気に入る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
『お上品な距離感じゃ、間合いは縮まらねぇ!』とグイグイくる夏也。その体重を、今の凛なら受け止められる。
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夏也の接近を凛が受け入れたのは、凛が自分の足で立てる”大人”になったから…だけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
年下の誰かに、期待を託す祈り。過去に囚われ、出口が見えない閉塞感。
事情を知るほどに、凛にとって桐嶋兄弟の檻は他人事ではないのだ。自分が歩いてきた物語と、よく似ているのだ。
他人事じゃないからこそ、余計な口も出す。傷つくのを承知で踏み込んで、手を引いて連れ出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
かつて凛自体が差し伸べられた救いの手を、今度はよく知らない郁弥に預けてもいいかなという気持ち。それが生まれる奇妙な出会いと、不思議な距離感。
今回のシドニー紀行は、凛ちゃんが話の本筋に自発的に絡むための足場づくりであり、それが思い出と実感から生まれるものだと飲み込ませるためにある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
回想シーンのカットバックを的確に使い、夏也と郁弥の物語が凛の物語になっていく心理は、なかなか良く描かれていた。
成長した夏也は個人的に面白いキャラだ。作中唯一アルコールを飲む(そして溺れる)所とか、”賞金稼ぎのスイマー”である所とか、主役が描けない立ち位置から、共通する主題を掘りに行ってる気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
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ビールという流体を、大人の証明のようにガブガブ飲み干す夏也。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
しかし彼も弟の闇を払ってやる力はなく、己の無力に悩んでもいる。郁弥ほど溺れてはいないが、それでも水中で自在に呼吸できるわけじゃない。結果、酒に溺れて凛の世話になる。
しかしそれは、致命的な事件にはならない。
溺れたなら、助けてもらえばいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
夏也と凛の奇妙な交流も、郁弥の過去もそういう当たり前を、静かに照射している。しかし溺れている当人には、手を伸ばし体重を預ける勇気はなかなか生まれない。手を差し伸べるにしても、受け取ってもらうには”機”と”形”が大事になる。
日本の四人組が足踏みしていたのも、溺れる相手にどう手を差し伸べるか困惑していたからだろう。多かれ少なかれ、みな水には窒息させられるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
大事なのは適切に息継ぎし、出来ないなら他人に補助してもらうこと。その事実を、遙も凜も過去から学んでいる。次は、自分が誰かの息継ぎを助ける番だ。
”賞金稼ぎのスイマー”も、三期らしいキャラ付けだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
三期は”競泳”を取り巻く環境が、キャラとドラマの変化に従い拡大している。
リハビリ当事者や教育者、観戦者をメインに取り込むことで、”競泳”が特権的に競技の最前線で泳げる天才のためだけでなく、様々な人に開かれていることを大事にしている。
チームに属さず、己一人で世界を回り、泳ぐ。そういう”競泳”との向き合い方だって”アリ”だということを、夏也は静かに示している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
これは教育者を目指す真琴、怪我から復帰せんとする宗介の”競泳”を、別角度から支持する表現だろう。
凝り固まらず囚われず、いろいろあってもいいのだ。
チーム戦を泳がない郁弥の姿勢は、この光が生み出す影の中にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
過去に囚われ、自分に囚われ、狭く狭く窒息していく郁弥をどうにか、広い水に開放すること。水と過去に溺れるだけでなく、自在に泳ぎこなし、潤し飲み干す方法を学ばせること。
郁弥をヒロインに、”Free”とはどういう意味を持つのかを描き直すのが三期なのかな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
それは正直、一期二期の狭い視座では捉えきれなかったテーマでもあろう。それこそが”Free”の魔力であり、そういう正しいものに背中を向けたからこそ、ディープに踏み込めたものでもあったろうけど。
とまれ、三期の青年たちは様々な場所に旅立ち、そして繋がっている。孤独であることは閉鎖に繋がるから、コミュニケーション・ツールは大事だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
なので、今回は携帯電話の描写が非常に多い。みんなセルフォンを持って、情報を共有し感情を交換する。
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ここで遙にまでラインが繋がっちゃうと、郁弥とのすれ違いストーリーはあっという間に解決まで転がってしまうので、凛はシドニーでの奇妙な出会いを伝えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
今回やるのは、いつか問題が強くこじれたら、自分が介入しようというモチベを高め、自分の中に蓄えるまでだ。
いかにもヤンだ独占オーラーを出してる日和だが、夏也とはオープンに繋がっていることが判る。過去に囚われ、溺れている現状が悪いものだと認識していることも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
そんな日和の思いやりを、郁弥は当然受け取らない。どんどん深みにハマって窒息する。
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ゴーグルを外した素朴な表情が、思いの外幼く見えて意外だった。もっとこー、裏返った愛情で束縛してんのかと思ったが、日和は結構”いいヤツ”で、郁弥にも”良く”なって欲しいのかな、と感じさせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月25日
でも、OPでは濃厚な影のオーラむき出しなのよね…
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ここで日和の動向に反射している少年が、一体誰なのか。冒頭郁弥が囚われていたような悪夢に、日和もまた孤独にとらわれているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月26日
いろいろ想像をたくましくしてくれるカットだけども、これを公開・共有することで日和の迷い道も、ゴールを見つけられる感じなのかな?
おそらく郁弥だとは思うんだけども、もし全く別の人の影を郁也に重ねて献身・束縛してるとしたら、こりゃこじれにこじれた巨大感情の迷宮(ラビュリントス)であり、とっても俺好みではある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月26日
展開の都合上、日和の内面と過去はしばらく伏せ札になるだろうけど、ちゃんと描いて欲しいところよな。
そして郁也と直接対峙できる東京の青年たちは、グダグダいろいろ悩んでいた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月26日
夏也(を通じて郁弥、過去の自分)といい関係を結べた凛とは違い、現在進行系で難題に立ち向かう東京組。ボトルに閉じ込めらた”水”を、開け放ち飲み干す力は、まだない。
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凛ちゃんのジューシー&リッチなシドニー飯と、東京組の粗末なコンビニ飯の対比とかも面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月26日
今回ある程度物語に筋道を立てられる凛と、今回ようやく一歩を踏み出す準備を整えた東京組。
満たされたものの食卓は、豊かで自在。渇き求める者たちのテーブルは心境に相応しく、少し貧しい。
足りない、満たされない、自由に扱えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月26日
様々なフェティッシュが、遙たちの特攻が不発に終わることを示しているけども、それは必要な歩みだろう。間違えてみなければ、何が正しいかの気配すら掴むことは出来ないのだ。
凛が夏也と郁弥の体重を受け止められたのも、一回二回間違えているからだろう。
そういう意味では、自ら引っ張り上げる側に思える東京組もまた、不自由な水の中で溺れているのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月26日
背丈が伸び、離別を前向きに受け止めてもなお、”Free”は遠い。霜狼への特攻は、そういう現状を確認することになる。冒頭で郁弥を包んでいた闇と、一筋の光を。
その衝突を、どう鮮明に描くか。ぶつかりあい血を流す青春の心を、どう躍動させるか。そして傷ついた後に、それでも掴みたい輝きをどう見せるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月26日
あんま出番のない凛とワイルドカード・夏也をコンタクトさせて、話を広げると同時に未来に繋ぐ、いいエピソードでした。次回も楽しみ。