ルパン三世を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
ロシア郊外、雪と業にまみれた灰色の街に、怪盗が跋扈する。赤いジャケットのルパンと、その映し身のようなモニエタ。
"銭"一文字を背負った男の記憶が、盗みのたびに疼きやがる。白紙の記憶に刻まれたあの男の名残を追って、孤影、夜を駆ける。
さあ、ロシアより愛を込めて。
というわけでとっつぁん×西田シャトナー回である。赤ジャケ時代に巻き戻り、テレビも車もレトロな雰囲気。ルパン一味の空気も何処か懐かしく、五右衛門は人を切らずに車斬る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
ゴエちゃんが忍術大ジャンプしたり、据物斬りで大暴れしたりすると、赤ジャケっぽいなぁと思うね、ウン。
PART5は"ルパン"を構成するお約束を、あえて解体して再構築する試みが目立つ。アルベールを鏡に"ルパン"を問い直したEP2、不二子との恋を再構築している諸エピソード、次元に現代的狙撃戦をやらせた第19話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
銭形が"怪盗"をやる今回は、ルパンが"探偵"をやった第17話の逆写しと言えるかもしれない。
記憶喪失の銭形は、しょぼいルパン一味とも言うべき犯罪者に拾われ、泥棒となる。ロシアの隅っこのショボい街に似合わない、可憐なる略奪のアート。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
それは雪が記憶を覆い尽くしても、魂の奥底に"ルパン"が刻まれている証拠だ。銭形警部はルパンを追う。そういう生き物なのだ。
刑事というスタイルを忘却して残るのが、怪盗の作法なのは面白い。とっつぁんはルパンのスタイリッシュに対比される形で、泥臭い雰囲気が印象に深い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
しかし今回、泥臭さは街全体と二人の仲間に背負わされ、とっつあん自体は"ルパン"のように軽やかに、盗みを演じてみせる。
永遠のライバルとして、その背中を追いかける中で身につけたか。ハッカーが優秀なセキュリティ足り得るように、優秀な刑事は優秀な泥棒足り得るものか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
どちらにしても、怪盗モニエタのロールモデルはルパン三世である。警察手帳を奪われた銭形には、それしかないとも、それだけはあるとも言える。
あまりフィクションで目立つことのない、赤くないロシア。モスクワの喧騒を少し離れた、埃っぽい地方都市の美術が、とても良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
モニエタが背負えない茶色い色彩をそこかしこに宿して、適度にくたびれ、ギラついた活気があって、生臭い。怪盗が跋扈するにはショボいが、だからこそ映える舞台だ。
モニエタ一味も、次元や五右衛門には遠く及ばないものの、あの街によく似合ったキャラ立ちをしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
スタイリッシュにバッチリ決めるわけではなく、ジャージに歯抜けで普段着感覚。でも犯罪者としての手際は良いし、なんとはなしの絆もある。
とっ捕まってもギャーギャー騒ぎ立てず、去りゆくモニエタを鉄格子越しに思う。雪が溶けるのは当たり前、それでも怪盗ごっこ、楽しかったぜ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
犯罪界のスーパースターであるルパン一味には、どうしても担当できない渋い味わい。怪盗モニエタの相棒として、とても良い助演だったと思う。
怪盗に身をやつしても、銭形は"追う"存在である。ルパンが"盗む"存在であるように、銭形は雪に隠された自分を追いかけて、ルパンのマネをし続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
"ルパン"という物語に強く刻まれた、男二人の追いかけっ子。それは片方が立場を変えても、力強く継続される。
同時に変わった部分もあって、モニエタは見事に"盗む"。宝石や金品だけでなく、ルパン三世のアートを模倣し、ともすれば本家よりも可憐にやりきってみせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
怪盗が盗まれましたじゃ、格好がつかない。モニエタから"怪盗"を盗み直すのが、今回のルパンのミッションとなる。
いかにも"ルパン"っぽい、双子の宝石を最後のターゲットにして、男たちは追い、追われる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
手錠とお宝が行ったり来たりするトリック勝負は、"怪盗"としての年季の違い、関係をもとに戻そうとする二人の想いがよく感じ取れて、爽やかでよかった。手妻の比べ合いなら、まぁ負けないよね。
警官の不祥事は、泥棒にとっては悪名。ルパンはモニエタの仕事を盗むことで、"ルパン"の名前を上げる。モニエタに"ルパン"を盗まれた意趣返しとして、銭形から"モニエタ"を盗んだ形だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
それは一瞬の夢。雪が解ければ消えてしまう、刹那の夢。でも、面白い夢だった。
"ルパン"のDNAに刻み込まれた、追い追われの関係性。それを一瞬白紙に戻して、それでも浮かび上がってしまうものをすくい上げて、綺麗にもとに戻す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
可憐な怪盗のアーツを特等席で見るような、見事なストーリーテリングだった。後味が良く、コクがある。短編としての切れ味が鋭い。
何にもなくなって"警部"ではなく"ルパン"が残る銭形も、モニエタの悪行を盗んで"銭形警部"に傷を残さないルパンも、お互いが大事なんだなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
"ルパン"という不変のアイコンの中で、永遠に終わらない追いかけっ子を続ける二人。それは何処か、不二子との恋の決着にも似ている。
"ルパン"が"ルパン"である限り、永遠に続く一つの形。それを大事に、愛おしく守りながら、形の中にどんな内実があるのかを掘り下げていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
PART5は様々な形で、それに取り組んでいると感じる。その試みは、成功しているとも感じる。今回の銭形は、見たかったけど今まで見たことがなかった銭形だった。
これで短編が終わり、ラスト長編が始まる。いよいよPART5も終わりである。いろんな脚本家にいろんなルパンやってもらう試みは、とても面白かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月21日
野心と愛情をたっぷり込めて、いろんな"ルパン"を見せてくれた物語が、最後にどんなエピソードを選ぶか。非常に楽しみですね。