はねバド! を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
インターハイ県予選準決勝、荒垣VS石澤。勝てば全国、負けられない試合…という勝敗の重たさ以上に、過去の因縁、才覚のギャップ、コーチングの差異がのしかかる。
シャトルはネットを超え勝敗を超え、光は心に届くのか。なぎさの天才を見せるエピソード。
というわけで、相変わらず明暗が色濃いはねバド! である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
綾乃が暗黒路線に全速力でぶっこむ中、なぎさは自分の力を信じ、周囲の助けにも恵まれ、対戦相手をより広く明るい場所に連れて行く。
光のバドVS闇のバド。今回の主戦場は実は、二人の主役の間にもあったりする。
綾乃の態度が最悪で、好きになれるポイントが一個もないのが凄い。主役をこんだけ叩き落とさないと描けないものに、ガツガツ踏み込む勇気。マゾヒズムと紙一重であるが、僕は好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
相手の限界を勝手に見切って、体を壊して勝敗をつける。なぎさが倉石コーチにやられてる戦いを、自主的に背負う綾乃
ウザくエゴく強圧的に描かれる倉石コーチは、明瞭に"敵"である。選手の自主性を塗りつぶし、自分の理想を押し付ける。心を通わせず、上から目線で孤独。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
そんな倉石コーチと同じ場所に、今の綾乃はどっかと腰を下ろしている。浄化の気配もなく、真摯さもないぶん"敵"よりタチが悪い。
汗まみれの震える手で、勝者としてサインをする。石澤ちゃんがなんとか勝って手に入れた特権を、綾乃は涼しい顔で踏みにじる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
誠実さがない。真摯さがない。切迫感がない。
そんな綾乃のバドは、誰かに感銘を与えず、闇の中から引っ張り出すこともない。誰かを闇にも染めない。
シャトルを交わして交換されるのは、ドライな点数だけ。熱い感情や人生を動かす波なんて、暑苦しくて邪魔なだけ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
綾乃の傲慢なプレイは、スポーツの真理を一つ、えぐってはいるだろう。だがそれだけが真実ではないから、人はシャトルに必死に食らいつき、スポーツをする。
綾乃の冷たいプレイに何らか、人の心を動かすものがあるのなら。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
綾乃に感化されスタイルを変えるキャラも出てきそうなもんだが、そういう気配はない。理解者だったはずのエレナも、綾乃の傲慢と無感動に違和感を覚え、なんとか矯正しようとする。
しかしそれは、シャトルを持たないエレナには荷が重い
勝ち負けが全て、バドミントンはただの競技。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
綾乃はそう思い込むことで、母がそう教えてくれた時代を再獲得しようとしているし、母が去っていった事実を塗りつぶそうとあがいている。
何も感も有千夏が悪いが、マザー・コンプレックスと勝者の傲慢が絡み合った最悪を、切り崩すには資格がいる。
同じ競技、同じルールに身を置き、勝敗を問う資格。ラケットを握り、シャトルで相手を叩き潰す(そして相手に叩き潰される)資格。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
勝てば官軍な綾乃の態度は、その資格を前提にしている。勝ったやつの話しか聞かないし、自分は勝ち続けている。勝ち続けなければいけない。
強迫観念の檻に、綾乃は潜る
負けたらお母さんはいなくなってしまったし、もし勝ち続けたならお母さんはいなくならなかったかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
綾乃の不貞腐れた態度の奥には、帰るはずもない過去と母を追い求める歩みと、そこに縛り付けられる苦しみが宿っている。可能ならば出たい。勝ち負けと母の檻から出たい。
だがあまりに強く刻まれた、『勝ち負けしかないバドミントン』という檻は、簡単に綾乃を開放しない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
単純に数字で負ければ、態度を改めるというわけでもない。綾乃が言い訳しいな描写が、ここで効いてくる。
負けたのは私が悪いからじゃないし。別に本気だったわけじゃないし。
そういう逃げ道が機能しないほど本気で、全力を出し尽くすコートに綾乃を引っ張り出すこと。冷めた昆虫の目を燃やして、内臓から汗を絞り出させること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
そうすることが、綾乃を縛り付けている勝敗の檻、バドミントンをただの数字としてみる視座を叩き壊すためには、必要となる。
その戦いはクライマックスに約束されていて、今解決するわけじゃない。それまで綾乃は性格極悪のエゴの怪物であり、好きになれない主人公のままだ。融和したように思えた"部活"からも孤立し、闇の中でまどろみ続ける。ほんま最悪やな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
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綾乃がガキっぽくふてくされているのは、傷の深さの証明でもある。母が出ていった瞬間から前に進めていない彼女の情緒は、年不相応に幼い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
ちびっ子な体躯よりも劣悪な魂は、より広くより強い光を前に、工程でも対立でもなくヒネた自己防衛を選択させる。
他人に本気で向き合うためには、自分もある程度の足腰と身の丈を要求される。誰かの苦しみを背負って、責任を自覚して、自分と他人の尊厳に恥ずかしくないプレイをする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
そんなことは、お母さんは教えてくれなかった。だから、足踏みを続け砂をかけるしか方法を知らない。
誰かが横っ面を張り倒して、もう少し実りの良い向き合い方を教えなきゃいけないわけだが、重ねて言う通りそれは先の話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
今は自分が踏み潰した非才を、虫の視線で冷たく見下ろす。そこが綾乃の身の丈である。ほんま最悪やな…。
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石澤ちゃんと倉石コーチは、綾乃の遠い救済を先取りする立ち位置とも言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
推薦を巡りねじれた関係性、乗り越えられない過去。石澤ちゃんは自分も他人も巧くみえないまま、コーチという"父"に言われるまま、勝ち負けだけを追いかけてバドをする。
しかしそれを本気で飲み込んでいるわけではなく、圧倒的な才を誇るなぎさに自分を見てほしいとも思っている。シャトルを通じてコミュニケーションをしたい。他人と繋がりたい、という意志。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
『友達欲しくてバドやってるわけじゃない』という綾乃の言葉は、ヒネたガキの本音隠しか、はたまた真実か。
おそらく綾乃自身にも判っていないのだろう。石澤ちゃんは判っている。判っているが、付き合い方がわからない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
そんな状況を打破してくれるのは、バドミントンしかない。個のアニメはバドミントンのアニメだからだ。全てを解決し、濃厚な体験の中で理解し合う特権は、全て競技にある。
今回光を見るのは、コートの中の石澤ちゃんだけでなく、外でギャーギャーうるさい倉石コーチも同じだ。ホンッとうるさくて最高だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
倉石コーチは勝ちたいと願うし、勝たせたいとも思う。勝利は指導者のものか、競技者のものか。その境界線に迷いはするが、競技と勝敗には真摯だ。
それが超うざい支配主義と、過剰な声掛けにあふれてしまう。石澤ちゃんがそうであるように、コーチも『自分のバドミントン』を見失っている。それはなぎさも同じなんだが、こっちのコーチは境界線をよく見ている。壊れた膝は俺の膝、壊れそうなのは生徒の膝。適切な区別を付け、アドバイスをする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
勝つための答えだけを、途中式なしで石澤に叩き込んだ倉石コーチ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
謎掛けのようなアドバイスで、『自分のバドミントン』を取り戻させた立花コーチ。
二人の試合は教育者の勝負でもあり、そこに結果はあっても優劣はない。ただ、少しバランスを失ってしまった側が、負けという結果にたどり着く。
そこで素直に、己の至らぬ部分を顧みて、『何のため』を問直せる所が、倉石コーチの立派なところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
『強くなければ意味がない』とうそぶいた綾乃に、エレナは更に問う
『なんで強くなるの?』と。
そこに答えを返さ(返せ)なかった綾乃に対し、倉石コーチは『勝ち負けに拘り過ぎた』と反省する。
勝ちたいと願うのは、無味乾燥な数字を埋めるためではない。勝たせたかったのは、生徒の個性を殺すためではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
真剣に勝敗を競うことでしか、手に入らないものを掴み取ることで、より自分であることを見つける。己をより強く実現し、先に進んでいく。
そういう綺麗事のために、バドやってた。
人形と支配者の師弟は、なぎさとの試合の中でそういう場所に帰還していく。綾乃が囚われている檻からひと足先に抜け出して、コート越しに手を取り合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
ちゃんと向き合ってくれてありがとう。大事なものを教えてくれてありがとう。
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そういう誠実な感謝を込めた握手を、綾乃も出来る立場にいる。鎧袖一触ぶっ飛ばした準決勝の相手だって、ちゃんと競技者だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
真摯に向き合い、目を見てプレイすれば、手に入るものも多いだろう。だが、綾乃はサインを勝手に終わらせる。うずくまった存在を、ただただ見下ろす。光は遠い。
倉石コーチが弱点と見限ったフィジカルを、なぎさは存分に振り回して勝機を掴む。選ばれなかった過去を、筋肉の躍動で張り飛ばしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
『自分のバドミントン』を存分にやり抜くなぎさから溢れた光は、数字のやり取りを超えて感情を動かす。広範な感動を生み出せることが、天才の証明だ。
第2話で退部組に、第6話で理子に、強烈に焼き付いたなぎさの光。真っ直ぐで力強く、嘘がない魂がプレイに乗っかり、他人に届く奇跡。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
なぎさは今回、そういう光を存分に発する。スマッシュが強い、点が取れる。才覚の光は、他者に感染していく。
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至近距離で、真剣勝負の中でなぎさのプレイを浴びる石澤ちゃん。彼女の変化はコーチにも伝わり、彼もまた光の中に歩み直していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
信頼関係を築けず、『自分のバドミントン』を見失って二人は負けた。一回の敗北で、すべてが終わるわけじゃない。
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今回であった光は、歩き直す師弟の道標になるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
過去と勝敗とコンプレックスに凝り固まっていた道より、もっと歩きやすくて真正な道。自分に嘘をつかなくても良い、自分すら気づいていなかった『私のバドミントン』を、二人は見つけられるだろう。
そういう圧力のある試合をしたことが、なぎさ自身に反射し、それを導いた立花コーチの未来も照らすだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
自分が失った膝の代わりに、あいつが今走る。あいつだけの勝負を勝たせるために、俺に出来ることがある。
その事実が、立花コーチをどれだけ救っているのか。みな、光に飲まれていく。
綾乃以外は。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
左右に振られ膝にダメージが入ると判っていても、シャトルに食いつくなぎさ。それは『誰よりもバドミントンが好き』という初期衝動が、彼女を突き動かした結果だ。
同じものを綾乃も持っているはずなのに、そこに帰還できない。潰して、踏みにじって、拒絶することしか出来ない。
石澤ちゃんに、なぎさのシャトルは届いた。過去の因縁を乗り越え、今まさに試合をしている自分たちを肯定できるプレイが、二人の間で、そしてそこを超えて共有された。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
その力強い波が、過去と母と勝敗に雁字搦めの主人公に、果たして届くのか。
今回は『なぎさのプレイは、そうするだけの強度がある』と証明するための、エピソードでもあったかなと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
無論石澤ちゃんや倉石コーチの人生のドラマであり、彼らが主役として変化していく話ではあるんだが、それと同時に複雑にこじれた現状と、それを突破する希望を暗示する話でもあった。
綾乃は不幸に勝ち続ける。なぎさは幸福に負けさせ続ける。どちらも才能があり、しかしその現れは光と闇、正反対のままだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
『人間らしい』感情とドラマを背負って、幾重にも重ねられる敗者の描写。『負けてもその先がある』という真実は、しかし唯一主役からは遠い。
一旦勝敗を競うインターハイは歩みを止め、インターバルが挟まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
綾乃と同じ母、同じ過去、同じ価値観に囚われたコニーは、綾乃の狭い世界に分け入る鍵を持っているのか。昆虫の目をした冷たい主役が、少しでも好感度を稼げるか。
来週も楽しみですね。しかしホントすげぇ運びしてんな…。
追記 今期は崩壊家庭とその先を書くアニメの豊作期だなぁ……。
はねバド追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
『自分のバドミントン』を求める石澤ちゃんの動きは、心が整えば勝利が近づくスポ根文法だとそのまま勝てるムーブなんだけども、彼女は負ける。
それを見つけるために適切な練習を積んでこなかった以上、そこに中身はない。付け焼き刃では勝ちきれない。
『自分のバドミントン』ではなかったコーチの指導。血が滲むほどの鍛錬はしかし無駄ではなく、そこにいる石澤ちゃんをしっかりなぎさに届けてもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
正しく思えるもの、間違って見えるもの。それぞれが単純に結果には結びつかないねじれは、このアニメらしいな、と思う。
数字上勝ってる綾乃はとにかく苦しそうで、破れていく敗者達は開放され自由に思える。そういうねじれもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月22日
アニメ版の描写は、ネグられて適切に育つことが出来なかった綾乃の悲哀が、色濃く出ているように思う。分を思い知らされなかった子供は悲痛だ。なんもかんも有千夏が悪い。