DOUBLE DECKER! ダグ&キリルを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
8年。
新米警官がベテランとなり、12歳の子供が酒を飲めるようになり、復讐心が胸の中で傷むには十分な時間。そして、エスペランサの復活と同調し、”グッドルッキング”ジョーが野に放たれる。
ダグラス・ビリンガム捜査官を作り上げた起源が解明される、重いお話。
というわけで、シリアスの後にバカエピ、バカエピの後にシリアス、グッピーなら温度差でプカプカ浮かんでる塩梅のダブデカである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
第5話で匂わせつつも、エスペランサの魁偉を掘り下げるのに忙しくて突っ込めなかった部分を主題にやってくれて、とても面白かった。気になってたんだよね。
この”気になってた”感覚を今回のエピソードは、とても巧く使う。ミステリに必要な印象づけと誘導、情報の開示と意外性の創造がとても上手い回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
チラチラ見せて引き寄せて、ショッキングな真実をぐっと叩きつける。ストリップの手管にも似た、物語的スケベ心を煽る語り口。
それが色んな場所、色んな角度からエピソードを貫き、統一感と深みを与えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
八年という時間、過去と現在の呼応、変化と相似。
かつて新米警官だったダグと、今の甘っちょろいキリル。かつての相棒であるパットとキリルは、同い年で同じく恵まれない境遇の子供で、正しさをとても大事にする。
喪われたものと手に入れ直したもの、死んだものと生き延びたものが呼応して、復讐の瞬間がやってくる。それを乗り越えてもなお、刑事の人生は続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
キリルが言った『相棒は復讐なんてしたくなかった』は、誰が守護なのだろう。
キリルの今の相棒であるダグか、かつてダグの相棒だったパットか。
それとも、暴発して復讐を止めたレディジョーカーか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
銃は警官の身を守るもう一人の相棒で、SEVEN-O捜査官である今のダグは、人殺しの道具は持たない。かつてパットが、不正な暴力を拒絶したように。
しかしダグは過去に立ち戻り、解毒のためのおもちゃ銃ではなく、軽くても人を殺せる道具を握る。
そこに四発の空砲、一発の信号弾、一発の実弾を込めたダグ。その心境は、結局表札にはされず視聴者が推測するしかない。色んなものを、効果的に顕にするエピソードなのに。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
その密やかな伏せ札が、とても良い感じだった。語る部分と語らない部分、そのバランスがコクを生むのだろう。
ミステリとしてみると、パットとジョー、二人のエピソードゲストが話を引っ張る形だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
デリック→キリルと、男に男で繋いできた”相棒”の系譜。そのパターンから行くと、刑事で男だろう、と思っていたところに、12歳の女の子で民間協力者というスカしが来る。
そも『死んだ相棒の復讐』というネタ自体が、第4話で盛大にスカされている。パットという本命を効果的にぶち当てるために、あえて一回外して、ガードを下げたわけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
ここら辺の構成のクレバーさは、渋い刑事モノに要求される味わいを立派に満たしていて、作品の強みである。
規律にうるさく、堅物で、貧困を憎む熱血漢。今まで僕らが見ていたダグ(表札)は嘘ではないが、それを生み出したオリジンはパターンからズレていて、想像してたよりもっと面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
ダグというキャラクターの謎の見せ方が良くて、色々知りたくなるキャラに育っていたのが、今回生きた印象だ。
僕はダグが大真面目に、『貧困と格差』というデケェ物を追っていると話してくれた時、彼が好きになった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
それは今の相棒の根っこにあるものだし、それを引き受ける覚悟があると解ったことで、二人が真実繋がり合う未来…バディ・ムービーで見たいものが見れると思ったからだhttps://t.co/8Dxo89wNmQ
その予感は今回、警察組織の外側にいたただの少女を『相棒』と呼び、8年間重たい感情を抱え続けた事実が顕になることで、より強くなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
パットはキリルじゃない。違う誰かを強く思い、暴発していく相棒に、バカは嫉妬したり心配したりする。心はすれ違い、バカの優しさは袖にされる。
それでも、どこか通じるものがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
墓に入って成長を止めてしまったパットに冒頭、ダグは酒を供える。(これがいいミスリードになっていて、『グラスが似合うタフガイ』を勝手に想像するよう、誘導される。その予断が、『健気な幼女』という真実が刺さる伏線になっているのだ)
もし生きていたなら、バカな今の相棒相手にそうしているように、酒が飲める年頃。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
それはどこにもない、ダグの心の中だけの幻像だ。銃やお酒より、ぬいぐるみのほうが似合った女の子。そんな少女は、キリルがいうとおり、復讐なんて望まないだろう。
だがダグは、自分の中の幻像に惹かれ、復讐を歩く。
そういう脆さと優しさが、今までタフガイとしての顔ばかりを見せていたダグの中にちゃんと同居していて、陰影のある男なのだとしっかり分かったのは、とても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
失われた八年間は、ジョーを殺さなかったこと、殺せなかったこと、殺させなかったことで、ゆっくり埋まっていくだろう。
その歩みに寄り添えるのは、パットの幻影ではなく、今生きて一緒に警官をしているキリルだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
そういう不思議が、これまでのダグの物語、これからの二人の物語には存在している。過去と現在、二種類のバディを描くだけでなく、作品世界の倫理全体を優しく肯定するような味わいが、今回静かに息していた
こういう息吹が感じられると、作品への信頼感は高まる。『刑事モノ』をジャンルに選んだ以上、なおさらだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
過ちは正すことが出来るし、正しさは突き詰めることが出来る。そういうルールで話が動いているから、ダグの”相棒”はSEVEN-0捜査官に、殺しをさせなった。
OPアニメを見れば判るように、SEVEN-0の銃は魔薬の犠牲者をもとに戻すため、居場所を間違えた不法を正すために存在しているからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
レディジョーカーは、ダグが握るべき銃ではなかった。でも、それを握り直すことでしか、ダグの時間は動き直さなかった。
そういう頑なさがダグの中にちゃんとあると描けたことも、非常に良い。ハードボイルドを扱うお話では、やっぱりそういう根源を描くのは大事だ。(他のジャンルでも当然大事だけど、”特に”ね。そういう意味では、”相棒”が時間軸的にも対象的にも多層なのは良い。Ex-Ex-Buddyへの屈折したキリルの感情)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
相棒の過去を知らない、教えてもらえないキリルの感情が、ねっとり重たく質感があるのが、ほんと良いんだよなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
今回ダグは今まで見せなかった闇を見せるんだけども、その濃さがキリルとパット、二人の無垢な光とよく呼応している。一人では闇に踏み込みすぎてしまう時、留めてくれる相棒。
それがいないと、ダグは『事件にのめり込みすぎ』る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
相棒が言っていたことを自分の言葉と引き受ける描写は、例えば『復讐なんてくだらない』というセリフにも重なる。手渡した銃の暴力性を、相棒/子供に教わる描写もそうだろう。
子供が大人に守られ導かれるように、大人が子供に学ぶときもある
アホバカキリルを、ベテランダグが頼もしく引き受ける基本形をずっと見ていただけに、今回キリルが『正しさ』を無邪気に背負って、色々走り回る描写は感慨深かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
やっぱ、その作品『らしさ』をちゃんと見せた上で、それが変奏される瞬間が好きだ。色んなパターンがあると、深さがあって面白い。
同時に若くてバカなキリルは、ダグが抱え込んだ、そして世界のあらゆる大人が抱え込んでいる重たさと暗さには理解が及ばず、のんきなヒーロー神話の中で、まだ微睡んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
かつてジョーの毒牙から守りきれなかった、そういう甘っちょろい夢。それを守るために、ダグは刑事でい続ける。
キリルがそういう、色々複雑に屈折した世界の実相を学び、『大人』になっていく様子も、このアニメの大事な足場なのだろう。ある種ジュブナイル的、というか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
分かりやすい『大人と子供』を主役バディに抜擢したことで、そこら辺の歩みも分かりやすくなってる気がする。
キリルがダグ好き過ぎ病で、駄犬のように後ろをついて回る感情のアンバランスが可愛いアニメ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
今まで感じてきた『らしさ』が今回は少し崩れ、ダグもまたキリルの幼さ、純粋さに失われた過去を投影し、警官としての理想を見ていることが判ったりもした。マジ”感情”だからよ…。
強い気持ちが片思いではなく、クールに受け流している側が実はズブズブだったと判る。関係性のドラマが一番盛り上がる瞬間でもあり、パットのキャラクター性を活かし爽やかに進めたのは、凄く良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
やっぱパットにまつわる予断と期待の作り方、その解決とスカしが洒脱で、良いエピだったな
敵役の”グッドルッキング”ジョーも、ミキシンの好演技を背に受け、いい仕事をしてくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
『顔がいい(グッドルッキング)』と言われてるから、こっちとしては顔が見たい。だがチラチラ匂わせつつも明瞭な描写はなく、ジョーの表情は全然見えない。ゴミクズ人間だってのは、ちゃんと分かるが。
引っ張って引っ張って、ようやく顕になる顔には深い傷があり、全然『グッドルッキング』ではない。(”ピンポン”のスマイルが『笑わないからスマイル』なのと、同じ文法だな。マジこのネーミングスタイル好き)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
この引っ張り方も、今回のエピソードを特徴づける”ちら見せと開放”の文法に通じている。
思えば、上田燿司のハイテンションダダ滑りナレーションでメタいツッコミしつつ、後々しっかり深掘りしてくるこのアニメ自体が、そういう構造なのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
つまり今回のエピソード、ダブデカ『らしい』仕上がりなのだ。アニメのアイデンティティが色濃く出た話は、やっぱり面白い。
ダメダメなボス・トラヴィスもシリアスな空気をちゃんと引き受けて、今までとは違う顔を見せてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
ダグの過去を嗅ぎ回る新米に釘を差し、しかし”相棒”代理として一緒に現場に来てくれるボスは立派に警官で大人で、『らしく』ないのに『らし』かった。カッコ良かった。
俺はこういう『道化役と思っていたやつが、実は一番シリアス』という落差にほんとにチョロくて、これが出てくるだけで作品が好きになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
ダグも結構面白いやつだと、しかめっ面の奥にちゃんと見せてくれたからこそ、その戯けの奥にどす黒い復讐心が視える今回が、意外だが納得できた。
コメディとシリアス。過去と現在。媚びと真面目。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
色んな対比が複雑に埋め込まれつつ、それぞれに呼応して魅力を引き立てる。それをしっかり機能させるために、自分たちが作り上げる作品をちゃんと制御し、良いタイミングで狙った印象を与える。
そういう事が、ちゃんとできるアニメなのだ。
正直ここまで上手いと製作者の手のひらの上で転がされてる感じもあるが、それは不快ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
ゴロゴロ転がされ、良いように感情を操られつつ、次は何を見せてくれるのかワクワクする。マジックショーへの期待感みたいなものが、今はとにかく楽しい。
大真面目で重たくて暗くて、陰影がはっきりついてる。今までのダブデカ『らしく』ない話なのに、凄くストンと腑に落ちる。今、この話をやっておく必要があったなと、見終えた後に満足できる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月11日
そういう話がこのタイミングで来るの、”強い”と思います。面白いアニメだ。来週も楽しみ。