キャロル&チューズデイを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
大失敗に終わった、初の大舞台! 芸能界に燦然と輝く星を目指し、次の手立てはオーディション番組!!
玉石混交有象無象から抜け出し、デッカいチャンスを手にする。でもそれって、チューの素性がバレちゃうってこと?
そんな感じの火星芸事ど根性ストーリー、光と闇が交錯するマーズブライテスト予選である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
今までみっしり至近距離で突っ走ってきたキャロチューが、カメラに晒されることでお互いの過去、知らない事情に目を向けて、より強い絆で結ばれるまでのお話。相変わらず、友情が濃い…。
同時に頼れる相棒を持たないアンジーが、約束された冷たい勝利に向かって歩みを進める話でもあり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
明暗に分かれていた二つのパートが、マーズブライテスト決勝にお互いの生き様を乗せ、ぶつかり合う。その前駆としても、なかなか鋭い表現になっていた。
”家”という牢獄に息苦しさを感じているのは、アンジーもチューズデイも一緒。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
しかしチューにはタフなキャロルがいて、家からも出ている。純粋培養のヤワなハートがプルプルしたりもするけど、その震えを一緒に抱きしめてくれる同年代の仲間がいる。
アンジーは冷たい商業主義の舳先に経って、一人暮らしはしてるけどママからの影響力は否定できず、幼い自分から飛び出したくても、隣り合う相棒がいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
マオはあくまでクールに冷たく、ビジネスパートナーとしての距離感を崩そうとはしない。年上で異性だしね。
20万人のどぶ板からのし上がるキャロチューと、最初から”八人”に選ばれているアンジー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
一見恵まれてるのは後者だけど、猥雑で自由なオーディションに飛び込まないことは、結構苦しく不幸なんじゃないの? と問うてくるエピソードである。アンジーがかわいそうだよねぇ!(キャロチュー刃皇)
お話は光と笑いに満ちたキャロチューサイドと、闇と冷たさに満ちたアンジーサイドを行ったり来たりしながら進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
キャロチューがトンデモ素人祭りに目を白黒させたり、過去を問われて『あ、私マブダチのことなんも知らない…』とガン凹みさせたり。多様で愉快な経験から、アンジーは隔絶されている。
過程をすっ飛ばして、いきなり結果を手に入れる。与えられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
それは子供にとって幸福なのかと、明暗二組の歌姫を切り取るカメラは問うてくる。
クールに分割されたタオの仕事場と、雑多ながら距離が近い予選会場。そこに宿る体温の差。
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髪をアップにしたアンジーがとても”良い”けども、彼女を取り巻く環境は徹底して重たく冷たい。天上、あるいは夜空で覆われて出口がない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
それはママの愛情、支配、暴力の暗喩でもあり、そこから抜け出したいけど愛してもいる桎梏が、アンジーを捉えて離さない。
疾走する密室の中で、ママはアンジーを思いやる。自分の目と手が届く範囲に捉えようとして、アンジーは静かに拒絶する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
ぬいぐるみ、トロフィー、毛布。幼い自分を柔らかく包む愛情に、窒息しそうな子供部屋。シルク製の牢獄。
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アンジーは母なる暗黒を、完全に拒絶できたわけではない。身バレを怖がるチューズデイと同じように、離れたはずでも血は家に繋がり、少女たちを縛る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
ママの顔が車窓に遮られ、漆黒のシルエットに変わる。アンジーの内面を照らした、鋭い演出
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アンジーとママとの距離感は、非常に複雑で捻れている。世の母子全てがそうであるように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
背中を向けて、形だけ手に入れた自立の箱に自分を押し込めても、答えは出ない。AI仕掛けの兎は、アンジーを不思議の国には連れて行ってくれない。
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アンジーが子役を脱して、歌手として独り立ちしたいと願うのは、この息苦しい場所から脱出したいからかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
一人暮らしを始めても、広くて空疎で冷たい富に囲まれていても、アンジーは満たされない。トロフィーがたくさんあっても、それはママの望みを叶えただけで、アンジーに自由はない。
”Show me the way”と問いかけたいのは、光の中騒々しく、自由に道を探せるチューズデイだけでなく、アンジーも同じこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
”家”から抜け出しても母の影響から抜けきれない彼女は、もっと強く”道”を求めているのかもしれない。それは、タオの引いたレールに乗っかることとイコールなのか?
次回決勝、明暗が交錯する舞台で、ここらへんもよく問われそうだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
金持ちでコネ使いまくりで友情を知らなくて不自由。タオ&アンジーは綺麗に主役のシャドウで、しかし彼女たち独自の尊厳を忘れず描写もされている。
決勝まではエスカレーター、でもそこから先は実力勝負。観客もバカじゃない。
タオのプロデュースは最適効率で冷たく回っているが、どこかに音楽へのリスペクトと情熱が宿っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
その氷の熱量が、アンジーの暗い世界に風穴を開けるのか。光の双子と違い、闇の凸凹コンビはまだ向き合っても、手を取ってもいない。だからこそ、交流への期待も高い。
やっぱアンジー周辺の闇の深さ、それを単純に光の対比物にせず、闇の中だけの温もり、寂しさを大事に切り取るカメラが、僕は好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
素直に真っ直ぐ走るだけじゃ、描ききれない陰影の深さ。その真中にいる少女が母と、家と、己の幼さとどう向き合い、誰がどう助けるか。
期待は高まる。
”タメ”が続くアンジーサイドに対し、キャロチューはちょっと闇を濃くし、キャロルとチューズデイを個人として分割してきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
生まれも育ちも肌の色も違う二人が、出会って一つになる。その多幸感を描いてきた筆先が、ちょっと別のものを描きに来た。そんな感じだ。
チューズデイは審査員という”他人”に聞かれるまで、相棒の過去を知らなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
父母の顔を知らず、一人でタフに生き抜くのが”普通”な少女。ストリートの匂いを嗅いだことのない自分に、銀の匙を咥えて生まれてきた少女は悩む。
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これまでアンジーが背負ってきた不安や孤独の闇を、チューズデイにも分け与える展開(と演出)と言えようか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
(まだ)縁も接点もない二人の少女は、母なる存在から距離を置いて、自分を見つけたい願いで繋がっている。しかしそんなふうに自分の足で立つには、経験も実力も足りない。
アンジーは一人闇の中悩むことになるが、チューズデイはオープンエアで光の下、沢山の人と触れ合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
そういう正常で正当な発育過程から、アンジーは切り離されてしまっている、とも言える。そんな”悪役”の孤独が、チューズデイの幸福、キャロルと出会えた幸運を際立たせもする。
アンジーが過去の自室を思い出したのと同じ、天井からの狭苦しいアングル。チューズデイはバスタブの子宮で羊水に浸かり、幼く何も知らない自分と向き合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
その不安を、タフなキャロルは見落とさない。ちゃんと側により、孤独に寄り添う。
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肩を並べて同じ輝きを見て、一つの夢を共有する。やっぱりキャロルがまず独り立ちして、それを追いかけるようにチューズデイが自分の足で立つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
一人なら沈み込んでしまいそうな泥濘からも、二人なら立ち上がれる。一人でしかないアンジーは、まだ闇に沈んでいる。
チューが自分の弱さ、抱え込んだグジグジを告白し、キャロルがそれを受け止める対話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
カメラが上がって、より高い場所を照らす。自由に駆け抜ける、幼い子どもたち。二人の心の中にまだある自由な子供の象徴か。金髪と褐色だしねぇ。
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過剰に身の丈を伸ばさないこと。自然体の自分を、自由に見据えること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
家なく、そうやってタフに生きるしか選択肢がなかったキャロルの助けを借りて、チューズデイはバランスを取り戻す。
そんなキャロルの寂しさ、薄暗さも今後掘っていくのかな。『無敵のタフガール』に固定しちゃうのは不公平でしょ
そこら辺は今回の交流を経て強くなった、未来のチューズデイに期待するとして。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
知らないおじさんの教導を受けて、ハンドサインで自分を表現する術を学んだ少女たち。決勝進出の知らせに、もう自分を隠すサングラスはいらない。
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そこで『知らない人』と偶然ふれあい、何かを与えてくれるチャンスが許されていることに、”陽”の歌姫の特権を感じもするが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
常に暗く天井がふさがった場所にいるアンジーには、そういう交流のチャンスがない。ママ、タオ、自分。閉じたトライアングルは、いつ破綻するのか。闇が光に溢れてくるのか。
今回チューがちょっと苦い道をたどることで、キャラ描写は深まった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
ただハッピーなサクセスストーリーを進むだけでなく、人間なら必ず囚われる深みをちゃんと持っている子なのだと鮮明に見えた。
(これまでもそういう陰影を前提に描いてたけど、主題にはしなかったわけで。結構デカい変化だと思う)
現状アンジーの側に閉じ込められている陰りが、おそらく決勝の舞台で衝突する中、キャロチュー側にも漏れ出してくるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
それは多幸感に満ちた『二人の話』に陰影を添え、より広く深い展開を可能にする。そういう薄暗さも、いい感じに描けることをこのエピソードが証明してもいる。
そしてキャロチュー側に閉じ込められている光に出会うことで、アンジーの閉塞感にも風穴が開くと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
アンジーを描く筆は、主役の”裏”を太く描くと同時に、キャロチューと同じように繊細で、希望と震えに満ちて思春期を泳いでいる少女なのだと、一人間なのだと力強く吠えている。
過剰な思い入れをしてると自分でも思うのだが、それでもアンジーにも光を見つけて、隣で同じものを一緒に見てくれる誰かに出会ってほしいなぁと、それをキャロチューだけの特権にはしてほしくないなぁ、と思うのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
タフな自分を装うことでしか、自分を維持しきれないアンジーの繊細さは本当刺さるね
妖怪変化が蠢く火星の音楽シーン。20万のボンクラをなぎ倒し、スターへの階段に足をかけたキャロチュー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
タオの冷酷な戦術に乗っかり、栄光へショートカットをかけるアンジー。
二つの運命が衝突し、”火星の一番星”が決まる決勝は次週。
星の導きは誰に宿るか、来週も楽しみ。
追記 マージでアンジーサイドが爆裂する日を待ち続けてる。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
チューが今回直面した”家”の問題は、お兄ちゃんが共有する問題でもあり。それをお兄ちゃんが優しく見守ってくれる”予言”みたいのが、既に五話でなされてる所も、ある種の特権を感じる部分でもある。
『まぁお兄ちゃんいるし、どうにかなるだろう』的な。
アンジーとママの問題も、ただ憎い、離れたいってだけでなくむしろ愛していればこそ束縛し、離れきれない愛憎なんだと、見てれば判るわけだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月22日
やっぱ”孤独”なんだよなぁ…アンジーは自分を受け止めてくれる相棒がいない! タオ、お前にかかっているんやぞ!!!
https://twitter.com/lastbreath0902/status/1131321317955735552
追記 ”希望に満ちた絶望と 罠が仕掛けられてるこのチャンス 何がよくて悪いのか コインの表と裏みたいだ ”ってことです。
キャロチュー追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月23日
オーディションに勝ってメディアに露出するのは、チューズデイにとっては”身バレ”というネガティブな要素。
しかし孤児であるキャロルにとっては、自分のオリジンと繋がる可能性を深めるポジティブな要素…になりうるっつー対比は、結構面白い。今後拾うか分からんけども。
話も安定軌道に乗ってきて、二体一心の気持ちよさを全面に押し出してきたキャロチューの描き方も、二人の間の差異にクローズアップしてきた感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月23日
ここで”親”を巡る二人(アンジーも足して三様)のギャップを際立たせていくと、より面白い陰影が出てくる気もする。
”家”が元々あって、そこと縁切りすることで自由に漕ぎ出したチューにとってはリスクでしかない(けど、サクセスする上で避けれない)メディア露出が、望むと望まざると”家”と切れてる(事が普通で、その不幸とか不足とか考える贅沢すら無い)キャロルにとってはチャンスになりうる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月23日
”家”が無いことが当たり前で、自分の足で立つしか無いキャロルのタフさは、相棒であるチューの弱さを受け止める器になった。良いものだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月23日
でもそこにある種の哀しさ、選びえない存在の不自由と尊厳を見出すのであれば、カメラの意味も反転しうるのかな、と思った。
僕はキャロチューの陰影同居する部分、メインに強く光当てつつもその影になる部分を大事に進めてる足取りが好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月23日
モブに存在感と息遣いがあること、シャドウであるアンジェラサイドが丁寧に書かれていること。
その繊細なカメラワークが、キャロル(とその空白の起源)にも向くと良いな、と思う。