ヴィンランド・サガを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
悪鬼の如き略奪者(ヴァイキング)も、故郷に帰れば英雄。今年も人を殺し、冬越の財宝を奪ってきた。
肉、金、女。
祝宴にうごめく人の欲。
あらゆる人がなにかの奴隷だと、アシェラッドがうそぶく。
そこから自由になれる”何処か”を、トルフィンは夢見る。
そんな感じの、戦争と戦争の合間にある平和のお話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
血で血を洗うイングランド修羅界に比べると、フッと息が抜ける状況…ではあるのだが、欲望の虚しさ、カルマの重たさは平穏の中でも変わらず、じっとりと画面を濡らしている。
何処まで行っても殺し殺され、奪い奪われ。三界に家なし。
イングランドでは大暴れだったヴァイキングが、故地に戻ると英雄扱いなのが意外でもあり、納得もした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
誰かから殺して奪ったものは、誰かの懐を潤す。”平穏な日常”が足元で踏みつけにしている、世界の残酷なルール。
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アシェラッドは窓辺(光と闇、内と外、栄達と欲望の境界線)に腰を下ろしながら、女達に首飾りを振る舞う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
外面のいい笑顔だが、女色に溺れる気配もなく、叔父が魅入られる銀貨にもしかめ面…どこか軽蔑を匂わせている。
殺人すらも当たり前、金も肉も心を踊らせない。軽薄の奥に、濃口のニヒルが臭う
100人からの荒くれ者を食わせて、お山の大将でございとふんぞり返れる現状に、アシェラッドは満足していないように思える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
トールズに『俺が下に入る。一緒に生きてくれ』と切り出し、自分から『な~んちゃって!』で崩した時に見せた、火花のような情動の切迫が、”ヴァイキング”してる彼から見えない
部下たちは現世の利益を思い切り頬張り、殺し殺されの業を気にもとめない。相変わらず肉を噛みちぎる動物として、刹那を生き続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
そんな衆生の中で一人、凄く冷たく乾いた視線を”何か”に向ける。アシェラッドのそういう視線が、今回は良く見える。
ぞろぞろと気だるそうに、決闘の準備をすすめるアシェラッド。夕飯前の腹ごなし、当たり前の日常と嘲笑うかのように、トルフィンの伸びた背丈に驚く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
僕はこのお話、トールズとアシェラッド、二人の”父”による綱引きとして見ている。
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ふと気づいたように、自分の命を付け狙うガキの成長に目を向ける。一端の戦士に育った二刀を受けて表情を引き締め…道化の仮面を被って挑発する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
歯を食いしばり、燃え盛る憎悪に支配されたトルフィンと、悪辣な忘却を演じ、自分の思うように彼を操るアシェラッド。
”父子”の凶暴なじゃれ合い。
アシェラッドは尋常の手合だと命の取り合いにしかならないと、切り結んで気づいたからこそ、トルフィンの一番弱い部分を煽った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
過去とプライド。トルフィンを奴隷に落とす急所を突いて、判断力を奪って勝負を取る。
しかし、命は取らない。それは優秀な戦士に育った、手駒が惜しいのか。
それともまた別の何かを、トルフィン(の背後にいる、自分が殺したトールズ)に見ているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
行動に潜むものは見えずとも、トルフィンがまだ”父”の手のひらの上で踊らされる、余裕のないガキだというのは判る。
まぁ幼少期に家族から切り離され、憎悪だけ詰め込まれれば、こうもなるけども…。
己の武勇を示した後、酒池肉林の宴をひどくつまらなそうに、アシェラッドは”こなす”。肉の感想は”まぁまぁいける”である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
退廃の瞳で、過去とプライドの奴隷、奴隷制の奴隷、金の奴隷を見つめながら、人間の不自由を嘲笑う。
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愚かしい業の鎖が、自分にも及んでいることを自覚しているからこそ、楽しい宴でこの表情なのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
トルフィンを奴隷に貶める、トールズという鎖。それを利用し、望む結果を得た彼は、一体どんな鎖に縛られているのか。
”父”はまだ、その仮面を外さない。
実父を殺し、自分を復讐に縛り付け、血に汚れた殺戮者に落とした憎い”父”。アシェラッドから背中を向けるように、トルフィンはトールズの船で眠る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
舞う雪風は故郷の気配。揺り籠での微睡みで、トルフィンは”父”と出会い直す。
一瞬の夢、手放した幻想
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トルフィンが殺戮者の鎧を脱いで、素裸の子供に戻って泣きじゃくれる場所は、”ヴァイキング”の館では当然ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
アイスランドに吹くのと同じ、冷たい雪と風。ゆらゆらと揺れる、想い出の揺り籠。
トールズの船で死者に出会うことで、トルフィンはようやく泣ける。悪鬼ではなく人間に戻れる。
父は夢の中で、己の言葉も腕ももう我が子に届かないことを嘆く。何しろ、死んでしまっているのだから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
”戦鬼”として血に塗れて、ようやく気づけた世界の真理。それを我が子が学び取るためには、同じだけの血を浴びなければ不可能だと。
しばらく、悪しき”父”に預けて”ヴァイキング”させるしかないと。
苦笑交じりに納得しつつ、それでも言うべきことを伝える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
『本当の戦士に、剣は必要ない』
その真理は、あまりにトルフィンからは遠い。優しく差し伸べられた手を剣で振り払い、獣のように命を繋ぐ。
過去とプライドの奴隷。戦争の奴隷。何も自由ではない”今”を抜けて、ここではない何処かへ。
かつてレイフおじさんが語ってくれた、彼方なるヴィンランド。あまりに不自由な戦士と、あまりに不自由な女奴隷が夢見る、遥かなるカナーン。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
戦争も奴隷もない平等なる大地を夢見つつ、現実は戦争へと突き進む。
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緑なすデンマークでも、”父”と子の桎梏は重たく渦を巻いていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
スヴェン王とクヌート王子。血で証を立てなければ王とは認められない、ヴァイキングの習わしを前に、戦乙女のような少年が戦場へ向かう。
彼らを縛り付けるのは、いったいどんな鎖か
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金ピカの王冠に”イングランド”を付け足すために、人間の情を置いて突き進む戦争。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
クヌートを一人心配する家臣のおじさんを放っておいて、顔を無くした戦士たちがザッザと進む姿が、時代潮流の重たさ、個人の無力化を戯画して面白い。このおじさんも、ひどい目に合うんだろうなぁ…。
デンマークから溢れ出す軍船に乗って、”父子”は再びイングランドへ赴く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
兜と外套を脱いだクヌート王子がどういう人物で、トルフィンたちとどう絡むか。なかなか楽しみである。
そしてロンドン攻防戦。のっぽのトルケル堂々登場!
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急に史実が大塚明夫声で殴ってきたのでビックリであるが、投げ斧一発で死体量産、なかなかの無双であった。コイツもトールズ父さんと同じく、一人北斗の拳か…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
『戦場の矛盾に気づかなかったトールズの可能性』と考えると、また別の形でトルフィンは”父”と向き合うことになるのだなぁ…因果だ。
一時の休息を終えて、ヴァイキングの日常が動き出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月27日
殺し殺され、奪い奪われ。刹那的に自由であるように見えて、その実奴隷のように業に縛られた修羅の道。
そこから抜け出す手立ては、たっぷり血に塗れないと見えてこない。
まずはロンドン、戦鬼狩り。次回、トルケルやクヌートの描写が楽しみです