バビロンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
迫る新域域議選と、届かない法の手。生まれた犠牲が肩にのしかかり、正崎の口から敗北宣言が出る。
大善のために小悪を成す覚悟。それを”正しい”と信じ、公開討論という蛇の巣に身を潜める刑事たち。
その上っ面を、政治の言葉が撫でる。自死に満ちた新時代を生む、毒を孕みながら。
そんな感じの、まーたお話の軸足が変わるエピソード。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
正崎さんは正攻法での齋攻略を諦め、権力と司法のバックアップのもと、白昼堂々の拉致を決断する。
人類の規格外を相手に、正当な手続きなど取ってられない。時間は出血し、全てが手遅れになる瞬間は迫る。
その決断が、何を取りこぼすのか。
それはこの討論会の行き着く先、齋開花の世界が新域に展開されて後、見える話であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
正崎さんはどっしりと、自殺者の重さを背負う。下っ端の気楽なバイタリティがかき込む、”悪”と戦うための燃料。活きる証。それもなかなか、喉を落ちていかない。
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タイムリミットは迫る。獣達の自然状態ではなく、秩序だった人間社会を維持するための規範が、単純な正義を執行する足かせにもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
先週陽麻に告げたように、常に己の正義を問い続ける男。シンプルな光の中には、なかなか立てない。
そこで一つの支えになるのが、プライベートな家庭である。
写真の中に刻まれた、暖かな家族の肖像。当たり前の幸福があればこそ、巨大な善を背負うことも出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
妻との対話、いつかの約束を支えに、正崎さんは一つの答えを出す。ブラインドを開けて、光の中に踏み出していく。
通常手段の敗北宣言と、非常手段の行使。
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新域構想に取り込まれた正崎さんには、政治と司法と産業、国家中枢のお墨付きがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
『国が”善”と言えば、拉致も殺人も合法の域内なんじゃい!!』というプラグマティズムが、情け容赦なく吠え声を上げる二次会。全員参加でレッツゴー!!
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果たして、それで良いのか。法を守るために法の埓外に飛び出す決断が何を生み出すかは、政治と世論が衝突する討論会が終わらないと、なかなか見えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
数をまとめることこそ政治。ふてぶてしく嘯く野丸先生と、司法を超えた正義を背負うことにした正崎さんは、それぞれ違う場所に立ち…同じ穴の狢か
『”数”こそが力』と吠える野丸先生と、全員一致の拉致二次会。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
正崎さんを支える”家族”の肖像が、怪物・齋開花の人間味と正義を支え、群衆の支持を引き寄せるラストカット。
今回は”悪”とされるものと、正崎さんが象徴する”善”が奇妙に接近するエピソードだ。
野丸先生は非常にこのアニメらしい、面白いキャラだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
骨の髄まで俗物なんだが、おそらく新域を足場にした日本改革の意志は本物だ。たっぷり利権を貪り、権力を私しつつも、五十年先の公益を見据える志士でもある。
巨悪であることは間違いないが、現実主義のやり手でもあり、汚れた理想主義者でもある
今回通常手段での立件を諦め、『公権力全てに認められた暴力』という非常手段を選んだ正崎さんと、その歩みは奇妙に重なる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
支持基盤は、政党組織が持つ。一個人の支持はあくまで形骸、その感情も欲望も、秩序の舵取り役たる政治家が握る。
野丸先生の確信は、この討論会で切り崩されていく。
その敗北が、法の埓外に出て善を守る正崎さんの決断を、どうにも先取りしている気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
野丸先生は、常識の範囲内で望める、最高品質の政治家だと思う。常識を弁え、私欲を満たしつつ溺れない。清濁併せ呑む政治の”ノーマル”を、突き詰めたスペシャリスト。
しかしそれでは、怪物には勝てない。
相手は社会規範に挑戦する異常者でもなければ、法と正義から逸脱した”悪”でもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
むしろ非常に先進的な人間概念と倫理を、先取りして持ち込む改革者だ。人類社会のあるべき姿を、純粋に考え抜いた結果、原罪の価値判断では”アブノーマル/反野丸”に立つ。
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野丸先生の政治的寝技を読み切り、きれいに逆転した今回の打ち筋。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
モニター越しに展開する家族のドラマが、この支持率をどう反転させるか。民主主義の精髄たる選挙…民意を集約するためのメディアが、”死”への価値観をどう変化させていくのか。
これも、次回以降に見えてくるだろう。
今回種まきが多い回なので、どうもフライング気味の言及が多くなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
各党大物が雁首を揃えた討論会で、自殺法への反論が並び立つ。露骨に共産党モチーフの政党が、『自殺が一般化した場合の実利』をまず持ち出してくるのは、なかなかブラックで良い。自殺キャピタリズムの話するの、お前らかいっ!
さておき、この話は自撮法にまつわる研究論文ではないので、徹底してツメた議論は行われない。微に入り細を穿ち、自殺法の論理的是非を問う精密と退屈に、エンタメ消費者は耐えられんからな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
齋の反論は一見形が整っているようで、結構穴があるようにも感じた。
『資本損失は起きない…可能性がある』と、賢明にも断言しない形で齋は反論する。つまり、バシバシ死んで人間社会がやせ細る可能性だってあるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
死という炎を弄ぶところまで来ても、死は未だ不可逆の過程だ。決断の重たさを考えれば『死ぬかも。死なないかも』で蓋を開けていいものではない…
って慎重論は、”ノーマル”の範疇に囚われた古臭い理屈だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
齋は野丸先生の用意した神輿に乗ることで、新域の巨大権力を手中に収め、それを利してシステムを組み上げた。
域議選のリミットは厳密な現実で、可能性を慎重に弄んでいる間に時間が来てしまう。それに追いつかれたから、正崎の敗北宣言がある
齋(の背後にいる野崎まど)は理論と現実を噛み合わせて、思弁の深さとアクションの切実さを同居させるのが巧い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
しっかり考えなきゃいけない問題なのに、時間は待ってくれない。一分将棋のように、タイムリミットを背中に思考は焼き切れ、現実的な拙手を打たされていく。
老獪な政治理論と寝きった野丸先生は、机上の空論をポイッと投げ捨て、現実的な爆弾を投げつける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
自殺法の成立がもたらすのは、すなわち子供の涙。豪腕とショーアップの上手さで、国民の感情論に訴えかける。
無私の義人、野丸龍一郎を男にしてください!
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巧い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
『難しい水掛け論なんぞ、選挙民は聴いておられん。大事なのは感情に訴えかけるドラマであり、用意できる最大のエモで舵をこっちに引き寄せる!』という、現実的でノーマルな判断だ。
相手が怪物と、その妻子じゃなければ妙手だったのだろう。嫁さんの微笑みが怖えんだけど…。
約束された仮面劇のように、齋は息子の本名を呼び、素顔をさらさせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
野丸先生がどうやってもたどり着けなかった、父親の正体。匿名の白々しさ。それを引っ剥がす特権は、血を分けた”父”にある。
感情に訴えかけるポピュリストとしても、齋は一流だ。
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『理屈より感情! ロジックよりドラマ!!』という、の丸先生が用意した劇場。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
それをハックする形で、齋は自分の正当性…というか物語性を強調する。
そう、人は感情で動く動物だ。子のため、父が死を覚悟する。公の立場のあるものが、私のために覚悟を見せる。
これから展開する自死のメロドラマは、全て野丸先生がやろうとした領分に乗っかって、それを上回る形で展開する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
衆愚を感情で動かすこと。慎重な水掛け論を蹴っ飛ばして、数に頼った政治の現実で世界を変えていくこと。
政党組織よりデカいものを、メディアを通じて一気に動員する。
モニター越しに蔓延する一瞬の熱狂を背中に、齋は勝利し、自殺法は肯定されていくだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
そこに慎重な判断はないが、それは野丸先生が政治に勝つために、長年の経験と常識から引っ張り出してきたメソッドである。
完全に、既存権力は逆手に取られている。追い詰める手筋が、相手の武器に変わる。
齋が持っている”ノーマル”さ…人類の未来を生真面目に考えればこそ、”生=善”という常識を疑い、あくまで民主的な手段、合法的な手法で、新しい価値観を提示する”正しさ”に目を据えないと、こうなるわけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
合法であって、合倫理ではない所がミソである。間違っていないが、確実に正しくもない。
これに対し、野丸先生は反論理の感情論をぶん回して逆手に取られた。適法な闘いを諦め、手っ取り早い合法的脱法を選びとった正崎さんの道も、おそらくは奈落に通じている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
相手は既存秩序を破壊するアナキストではない。そのシステムを遵守し、新しく書き換えるハッカーなのだ。
これに対し、『毒を食らわば皿まで』方式の”現実的な”回答を出すと、今回(とこれから)のように逆手に取られる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
正崎さんを支える”家族”が、当たり前に齋の隣にもいるって想像力を殺していたからこそ、仮面の下は衝撃の逆転劇たりうる。エグいなぁ…相手はあくまで”人間”なんだよね、怪物でもあるが
政治のフィールドで拙攻に踏み出した野丸先生は、自分が選び取った刃で死に体になりそうだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
預言のように『後詰めがいるとありがたい』と言っていた、その言葉を裏打ちするように、特捜本部は”拉致”という犯罪に踏み出すだろう。
『毒を食らわば皿まで』
いい合言葉だ。耳障りが良い。
だがそれで首根っこを押さえられるなら、野丸先生の”ノーマル”な戦術は政治家・齋開花を殺しきれていただろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
どうにも、目的だけでなく手段も含めた倫理的正当性こそが、”生≒善”という新しい価値観を相手取る時には必要とされそうだ。
理想を諦めたものに、怪物を殺す権利などない。
そう突きつけるような、”ノーマル”の敗北であった。さよなら、野丸先生…俺アンタのこと嫌いじゃないよ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
野丸先生と委員会が動員できる全権力を駆使しても、その裏を探りきれないくらい齋陣営のハックが巧い、ってことだろうな…。この精妙さが、一番の怪物性かも。
というわけで、政治家・齋開花の独壇場でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
旧世界の試しを余裕顔で受け流し、逆手に取って”生≠善”という新たな福音を垂れ流す。
相手は既存秩序と人類の尊厳をしっかり尊重し、徹底的に公平に考え抜いているからこそ、非常に手強い。
政治の領域での敗北に、司法の敗北は続くのか。
諦めを乗り越えた先にあるはずの現実主義は、死を弄ぶ大淫婦に突き刺さるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
ひたりひたりと迫る大災厄に、それでも彼らは突き進む。何しろ、シンプルな正義のミカタだからね!!
最悪が待ち構える次回、まーヒドイことになりそうだ。来週も楽しみ。
追記 理想を諦めないプラグマティストは、ホント敵に回すと厄介ね……。慢心もしないし。
あ、齋がノーマルサイドからのツッコミに反論する時、歴史的事実を持ち出して『現在の価値観として当然視されているものは、結構最近できたもので正当性を疑うべき』って手筋で反論してるの、賢くてズルいなー、と思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
自死を当然の悪とみなす価値観は、実は結構アブノーマルな例外。
そういう物語を編むことで、自身の真実性を相対的に浮かび上がらせる話運びをやっとる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
政治討論会って場所組だと、政策としての妥当性を問うのがメインになって、その後ろを支える根源的な倫理性、合論理性までツメて語りぬく余裕はないわけで、形が整えば勝ちは拾えるもんねぇ。
齋は『勝てば良し』ではなく、真実正義と信じた新しい価値を実現するために、世界に敵対を決めてる。自分が見つけた倫理と価値に確信がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
その上で、理解ってもらうことより実権を掴んで、実際に世界と人の頭の中を変えてしうこと、現実を理想が追認していく形を飲み込めている。
ここら辺、ノロマな既存の司法手順を蹴っ飛ばし、現実的なタイムリミットに追いつこうと非常手段に打って出た正崎さんと好対照なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
理想のために現実を握りつぶす怪物と、現実を実現するために理想を汚した人間。現状論理のぶつけ合いでも、主役サイドの旗色が圧倒的に悪いなぁ…。
しかし野丸先生、”感情論”を文字通り『感情の論理』としてしっかり捉えて自説を展開するあたり、やっぱクレバーなんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
普通『感情に支配された、非論理的な論理』の方で使われがちだもんな、”感情論”って言葉。しかし先生は『人間は感情の動物で、法と自死は感情で扱ってはいけない』と語る。
その上で、ロジックより感情に訴えかけるパフォーマンスを持ち出して、綺麗に逆手に取られている所が旧時代の政治家の限界点、って話なんだろうが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
理屈は理屈、現実は現実。そういう切り分けを、兇猛なる理想への確信で一気に踏み倒す所が、齋の怖いところだと思う。
『ワシが気づいた自殺法の穴、じっくり説けば国民は判ってくれる!』という正道に踏み出すには、政治家経験が長すぎたんだろうなぁ…。衆愚に絶望していなけりゃ、新域構想なんてやらないだろうし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
ある意味、現実と寝れる大人と、理想を諦めきれない子供の対決なんだな、このお話。
夢や理想を絶対に諦めない、キラキラな幼児性。それが怪物的な実務能力と、既存秩序をハックする知恵と異能にさらされた時何が起きるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月11日
美なるものにクローズアップし醜悪を映し出すのがグロテスクの仕事であるならば、非常に見事なグロテスクであろう。理想は時に、怪物の牙を持ちうるのだ。