ヴィンランド・サガを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
心をへし折る敗北に、道を見失ったトルフィンは街を彷徨う。一方仇たるアシェラッドは、クヌート王子戦勝の宴に身を置いていた。
そこで告げられる、故郷ウェールズ焼尽の報。策士面に突き刺さる破滅の予言に、アシェラッドも道を迷う。
荒波果てなく、魂、何処へ向かう。
そんな感じの、最終回直前! 仇も復讐者も未来に迷うエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
先週までの激烈感情大衝突の雪原に比べ、やや静かなお話となったが、この休符が最終話に予測される運命の嵐を盛り上げると考えると、必要な整地であろう。
むしろこの静けさが、しんみりと人生のままならなさを飲ませる…
かは、ウェールズをめぐる政治的衝突、レイフおじさんの呼びかけにトルフィンがどう答えるかで…最終話に何を描くかで見えてくるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
剣戟や血しぶきはないが、否応なく人を飲み込む運命や感情はいい感じの顔面作画にしっかり刻まれ、食べごたえのあるエピソードであった。
華麗な戦勝の宴に、地位ある首領たちが集う横を、”決闘”に破れたトルフィンは進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
きらびやかな刃、地上の泥濘に汚れない馬上行。そういうモノに背中を向け、しかし確かな自分があるわけではない足取り。弱くふらついて、ひどく脆い。
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/JidBhi9xaU
人々は路傍の石のようにトルフィンの弱さを見過ごし、省みることはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
彼が父の仇討ちのために11年を費やしたことも、それが無駄な足踏み、用意された茶番であるとついさっき思い知らされたことも、知る由はない。
北風よりも、世間の風は冷たい。
まぁ、こんなもんだよ。
と人生を諦め飲み込んだ先に、日和見どもの囁きが待っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
王と王子の間に吹く、不和と利害の血なまぐさい風。それが何処に流れていくか、首領たちの目がギラつく。
金を掴み、権力で足場を支えても、待っているのは毒蛇の巣。うかつに頭を出せば…
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/Fw6FF1fchW
今回のお話は、そういう人生の両極が交わらないまま、同時に進行するお話だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
トルフィンは宴に赴かず、クヌートの手勢は牢屋を訪れない。どちらも冷たく薄暗い場所で、血が繋いだ”父”と”子”はそれぞれ、過去…に繋がる現在と未来に対峙することになる。
帰り得ぬアイスランド。希望溢れるヴィンランド。厳しきウェールズ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
絶望と奸智にまみれてなお、輝き続けるそれぞれの故地。守りうるのか、戻りうるのか、届きうるのか。
スヴェン王の征服、レイフの慈愛。差し出されるものは間逆ながら、”父”の問いかけが魂を揺さぶっていく。
泥に塗れ、痣と鼻血に汚れた顔で、トルフィンは女奴隷を見る。復讐に縛られ、自分を解き放てない少年と、奇妙に似通った誰か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
そこに感傷を寄せる間もなく、トルフィンは”父”の背中を幻視する。それしか、彼を進ませるものはない。
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/vLi39Fu0Qi
だが掴んだ背中は他人の空似で、仇はとっくに自分の戦場へ…蛇が渦巻く宴へと進んでいる。自分もいる資格があるのに、そこに背中を向けたのはトルフィン自身だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
何がどうあろうと、仇討の機会を狙い続ける。殺しさえすれば満足というトートロジーが焼き付くには、トルフィンには余計な荷物が多すぎる
なんのために仇と付け狙うか。身を”ヴァイキング”に落とし、決闘にこだわったのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
真の戦士たる父の誇り、胸に刻まれた暖かい日々が奪われた欠落を、どうにか取り戻したいからではないのか。
それを追いかけ夢中になって…すっかり見落とした自分に気付いたからこそ、トルフィンは呆然と自失する。
しかもよりによって、その虚しさ愚かしさを教えたのは仇本人である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
背中を追い求めて、突き刺したかったのは刃なのか、言葉なのか。はっきりしないまま、トルフィンはいるべき場所に背中を向け、その虚しさにへたり込む。
暴力ばかりが上手くなり…
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/wMsXsEThYT
行き着く先は光の届かない牢屋、暗い闇の奥である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
復讐心に滾っていたときには、無視していられた右手が痛む。
アシェラッドに厳しい一撃を貰って、トルフィンはただの少年でしか無い生身の自分に、ようやく気付いたのかもしれない。
間違え続けた11年。何もない。何も。
そこに、ずるりと立ち入るものがある。光の側に立ち、絶望と拒絶の分厚い壁を思い知ってなお、身を寄せて言葉をかける真の戦士。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
レイフ・エリクソン。
仇にも己すらにも見捨てられたものに、歩み寄るもの。
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/RgjzOAXYJi
レイフおじさんは、川辺の対話で見せたように、トルフィンの11年をしっかり見据えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
それが正しくないとも、虚しいとも言わない。ただただ、無垢な少年が”ヴァイキング”に落ちてなお、取り戻したかった傷の深さ、そのために進んだ時間の重さを見据える。
残骸になって、なお息づく無辜も。
救いはある。やり直せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
そんなものが牢屋の外側から投げられた、外野の寝言であることはレイフは十分知っている。自分が寄り添えなかった11年を前に、出来ることがない重たさも。
それを噛みしめるからこそ、その表情は複雑に、光と闇を揺れ動く。
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/XQCLjEkeJj
トルフィンの虚脱と拒絶を前に、自分が差し出せる真心を探す苦悩を追ったロングカット。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
超顔面アニメであったこの作品の真骨頂が、みっしりと詰まった長回しである。
子供が”ヴァイキング”になってしまう闇を前に、自分はなんと無責任で無力であろう。
レイフおじさんは悩み、苦しむ。
その虚しさと苦しさは、アシェラッドに”決闘”のからくりを突きつけられたトルフィンと同じである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
だが、それでも。
己しか知ることが出来ない人間存在の限界を真摯に見据え、自分の信じる”幸福”に子供をさらっていくことがエゴでしか無いことを刻んだ上で、レイフ・エリクソンは漕ぎ出す。
かつて荒海という戦場に、未来を見据えて漕ぎ出していったように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
わかり得ないトルフィンの11年を、それでも踏破しうる未来を差し出すために、牢屋にしっかり顔を寄せて、己が如何に戦ったかを伝えていく。
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/XC2vegwOZu
生来断絶し、愛が身勝手で矛盾した暴力にしかなりえない世界のあり方。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
ヴィリバルド師がアルコールに逃げた人倫の荒野を、闇の中背中を向けるトルフィンに突きつけられてなお、レイフは漕ぎ出していく。
冒険家である己の戦場は、ここにあると、迷いを苦く噛み砕き、飲み込んでいく。
希望と決意、未来と勇気を語るその表情は、とても暗い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
善良の明るい光が、闇の中にいる者にとっては身を焼く刃になりうることを知ってなお、彼の言葉は暗い牢屋に光をましていく。
ドラマの進行、キャラクターの働きかけにしたがって、ライトは精妙にコントロールされ、意味を刻んでいく。
氷に閉ざされた絶望を越え、戦乱の炎を見てなお、虚しさに歩みを止めず進み続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
美しい場所を夢見、道半ばに倒れたものの遺志を継いで、はるかなるヴィンランドを目指す。
その真っ直ぐな決意を、ハゲる前から刻んで生きてきた。
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/1UE1j3W1dm
”ヴァイキング”が民族や職業を越えた暴力とカルマの象徴であるように、”ヴィンランド”もまた見果てぬ希望の残酷と美麗をより集めた、具象を越えた存在だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
今、レイフ・エリクソンの顔をその光が照らしている。
11年の重さも、トルフィンの絶望もしっかり見据えた上で、身勝手を知りつつ踏み込む。
何故か。何が冒険家を、人倫の荒野に進ませていくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
愛である。思い出である。
愛子として隣に立ち、温かい時間を共有したつながりこそが、レイフおじさんを非常に厳しい戦場へと突き進ませる。
それは父トールズに武器を捨てさせ、日常という戦場に向き合わせた…彼を殺したのと同じ光だ。
未来はある。どこまでも突き進める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
世界の無常を知ってなお、まっすぐにそう言い切るレイフの強さに、トルフィンは目を見開き、瞳を伏せる。
光に飛び込みたい。故郷に帰りたい。
弱いガキの心に、そんな願いが残っていないはずがないのだ。
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/G2lcYduBiC
でも、帰れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
”ヴァイキング”となり、殺し燃やした日々。仇討の為と、誰かの日常を踏みにじった罪。瞳を閉じて、犬のように遺志を汚した生き様。
取り返しがつかないものを、あまりに分厚く積み重ねてきた。
その重たさが、トルフィンの背骨を折ったのだ。だから宴ではなく、この闇にいる。
『今更…』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
希望と絶望のぶつかり合う波が、光をより強くする。まだ、救いを求める気持ちが死んでいないからこそ、その言葉は出てくる。
ヴィンランド。全ての業から開放され、人が人として生きられる夢。
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/JoOK0CI5L5
お前が薄汚い”ヴァイキング”になっても、愚か極まる復讐の犬であっても。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
父も夢見たあの黄金へ、漕ぎ出しても良いんだ。刃を血に濡らし、仇に仇を重ねる場所だけが、人の戦場ではないんだ。
レイフの言葉は、暗い牢屋に光を呼び込んでいく。
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/M7mJHRYLWz
それはトルフィンの絶望、思い知らされた11年の現実にも差し込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
拒絶を前に諦めず、絶望を前に踏み込んだ、レイフ・エリクソンの11年。刃の代わりに帆を握り、迷い子を探し続けた戦場の重たさが、背を向けた子供に静かに、確かに刺さる。
偉い…Wikipediaに項目が出来るくらい立派だよ…。
光のあるうちに、光の中へ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
残された刃を人殺し以外に使う希望を、やり直せる可能性は、禿頭の善人から確かに伸びている。ニヒリズムの檻を突き破り、届いている。
しかしそれは、壁を突き破り全てを突破するほど、無条件に強くはない。
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/45stlbmEW5
トルフィンは泥の中を彷徨い、闇に顔を沈める道から顔を上げた。自分を愛してくれる人の顔を、ようやく真っ直ぐ見た。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
しかし、現実の壁は確かに二人を隔てている。
手を地に汚した事実。付かない決着。横たわる愚かさと無力。
そういうものを、理想の輝きでどう照らしていけるのか。
それが非常に難しい問いかけだからこそ、トールズ父さんは”ヴァイキング”の卑劣に殺されたのであり、トルフィンはこのどん詰まりまで追い込まれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
レイフの言葉と光は、確かに届いている。正しさを虚しく振り回すのではなく、時間の重たさ、己の身勝手な愛を見据えた上で、それでも絞り出した思いは
でもそれだけで、故郷に帰りヴィンランドを目指す未来へ進めるわけでは、当然無いのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
心の奥底に光る望郷を、身を投げる勇気。仇討ちを捨てて、新しい生き方を飲み込む決意。
血泥に首までつかった”ヴァイキング”の11年を、どう決算するかという難問。
そういうものが、壁となってレイフとトルフィンを隔てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
次回どういう結末が待つにせよ、道は長いと感じさせる描写だ。同時に、絶望し切ることを許さない光だとも。
レイフが差し出した故郷の思い出、父の遺志を継ぎ”ヴィンランド”を目指す未来は、孤狼に堕ちたと思われた少年を蘇らせる。
愛を諦めきれないことが、絶望の源泉となるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
確かに息づく希望が、運命の激浪の中どこへ流れ着くか。
物語は続く。もう一人の”父”たるアシェラッドの決着を見届けなければ、”子”たるトルフィンの未来もまた、定められないだろう。
闇を見てなお、力強く前を向く純愛…マジで報われてほしい。
”子”が闇から光を見上げるのに対し、”父”は栄光から焼尽へと転落していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
王子の側近として、謀略を張り巡らせて登った栄光の舞台。そこは笑顔の仮面、虚栄の鎧で身を飾る蛇の巣だ。
白々しい”父”の仮面を、隙なく被るスヴェン王。
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/1ds6WnBUgk
その愛を抱きしめる”子”の仮面を準備できないあたり、やっぱりクヌートも経験不足である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
腹芸、探り合い、情報戦。晴れやかな宴はその実、虚実が入り交じる戦場である。『刃を交えるだけが闘いではない』ってのは、レイフおじの”航海”と同じ視線だね…こっち真っ黒だけども。
アシェラッドは報奨という形で振るわれる王の差配を見据え、査定する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
一見しただけで人物を見抜く目の強さで、策略の比べ合い。傲慢な知性が牙を向き、こんなもんさと嘲笑う。
その思惑は、王の掌で打ち砕かれる。
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/NotqNIHRuG
今回は最後の障壁となるスヴェン王の器量がよく出たエピソードで、彼は非常に演説が巧い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
ウェールズを手中に収める決意を込めて拳を作り、それを臣民全てに布告するべく手のひらを広げる。
ボディ・ランゲージを活用して、如何に威光を言葉に乗せるか。良く知っている立ち回りだ。
『アシェラッド? 知らねぇなぁ…』と蔑される、百人ずれのお山の大将。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
知恵はありつつ、スケールの小さな奸智で世界を押し込めてしまったアシェラッドには不必要だった、上に立つものとしての立ち居振る舞いをスヴェン王は収めている。
そういう相手をナメてかかって、思わぬ角度で大逆襲。キチィな
劫略の炎を背負い、来春のウェールズ征服を宣言する王。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
その不意打ちに、思わず呆然と仮面を外すアシェラッドを、フローキは見落とさない。
『ハズレくじ引いてもらうぜ…』と侮った相手に、脆い素顔を見られる。それもまた、灰まみれの限界点なのだ
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/ISLQTUDqhW
ウェールズという急所を晒した、王子の側近。蛇の前で喉笛を明け渡す失態を、権力の亡者たちは見落とさない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
渦を巻く策略の中で、アシェラッドは仮面をかぶり直し、思考の荒波に潜る。
故郷を、母の思い出を守るために…。
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/RUvLBlYMTC
ここで背景に”海”を置くのは、人倫の荒波を乗り越えトルフィンに歩み寄ったレイフの旅路と重なり、とても面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
戦場だけが、命の置き場所ではない。荒波に向き合う生き方を、誰もがそれぞれの居場所で戦っている。
遠い牢屋で響く声が、アシェラッドの頭脳戦にも及んでいる。
人を騙して蹴落とし、奪って殺してきた。嘘をかぶり、知恵を使い、人間を見定め侮る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
”ヴァイキング”にしては賢く、だからこそ誰よりも”ヴァイキング”な男は、おふくろの眠る場所を守るためだけに、その知恵を使ってきた。
例え血の海だったとしても、それもまた”航海”だろう。
『知恵足らずの戦狂い』と、諸侯が侮るトルケル。しかしその隻眼は主神オーディンもかくやという鋭さを、ときに見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
なぜ、デーン人がウェールズに匿われたか。
追跡者としての疑問、同盟者としての質問が、アシェラッドに突き刺さる。
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/JbH7C9ocOE
敵として追われ、命を狙われた。戦団をぶち壊しにされ、同じ王を抱いた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
複雑怪奇な足取りで、同じテーブルに座る二人のヴァイキング。アシェラッドは己の秘密、生き方が湧き出る故郷を包み隠さず、トルケルに伝える。
命すら狙いあったからこその、裏腹な信頼感。
それが二人にあること…そしてそれが終わることを、最後の晩餐めいた構図が告げている気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
誰かが、アシェラッドがなぜ戦ったかを、父を殺し”ヴァイキング”に成り果てたかを知っている必要がある。
その重さを『ご愁傷さまね』でどっしり受け止める器量と絆は、やはりトルケルにこそ宿るのだ。
大ローマの叡智を継ぐウェールズの子として、トーガめいた白布で身を覆う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
”ヴァイキング”の汚れた装束など、誰が着るか。そういう教示が香る晴れの衣装は、同時に死衣にも見える。
報奨を賜る舞台は、首が乗っかる土壇場。諸侯が見据える処刑場。
©幸村誠・講談社/ヴィンランド・サガ製作委員会 pic.twitter.com/UjMf1m21BG
つくづくついてねぇなと嘯いて、唇の端を釣り上げて面を上げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
この首、落とすか活かすか。故郷と栄光が渦を巻く最後の舞台が、遂に幕を開ける。
迫る死の気配すら、しっかり見えてしまうアシェラッドの眼の良さが、なんとも皮肉である。
さぁ、最終話だ。
というところで、次回に続く、である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
いやー…非常に良かった。
血みどろのスペクタクル、日常を離れた”ヴァイキング”の生き様でみっしり満たした話だけに、当たり前を生きる強さというのは描かれにくい。
それが終わるこのタイミングで、自分の戦場を人倫に定めたレイフを、どっしり描く。
刃ではなく帆を、絶望ではなく希望を握りしめて戦ってきた11年と、その前の航海。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
そういうものが非常に力強く、尊厳を持って描かれるべき光だと今、このタイミングで語るのはとても大事だと思う。
答えはそこにある。なければならない。
だが、業と絶望の壁は分厚い。現実はあまりに難しい。
そのままならなさをこの作品はずっと見据えてきたし、レイフもまた牢屋の前、少年をくるむ闇の前でしっかり見る。苦しみ、考え、それでも踏み込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
そんな強さと正しさを、間違えきった”ヴァイキング”の土壇場と並走させる筆が、非常に強かった。
やっぱアンタは”やる”男だった…マジ偉い。
とは言うものの、話の主軸で暴れまわったのは愚かなる”ヴァイキング”であり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
アシェラッドの奸智と傲慢、致命的な間違いのツケがどこに行き着くかも、拳を握りしめる一大事である。
賢いつもりで、人間を侮って足元をすくわれる。兵団を壊滅させられたカルマが、ここでもう一度襲う。
それに飲み込まれ骸を晒すか、何かしら未来を掴むか。あるいは、その両方か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
先が読めねぇが、まぁ死ぬよな…これで活きると、主役どう見てもハゲだもんな…。
追い続けた仇の背中が、自分のいない政治の極で散った後、トルフィンは何を思うのか。
そこもひっくるめて次回最終回、確実に凄まじい波が来るだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
その後に、新たな物語が続いてほしい気持ちが強くあるけども、今は一つの終わりをしっかり見定めたいと思う。
間違え続けた”ヴァイキング”が、己の墓碑銘をどう刻むか。その先に、いかな光と闇が踊るか。
来週も楽しみ。
追記 ”son”が繋ぐ希望と呪いを、焼き付けた姓。”家”という鎖に繋がれて活きるしか無い時代は、今もまだまだ生き残り軋み続けている。
ヴィンランド追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
レイフおじさんの姓は”Eiríksson”であり、”エリックの息子”という血縁、継承がそのままかばねになっている。
古ノルド語からそのまま継承された”son”は英語で”息子”を意味し、今も残る。
トールズソンとしてのトルフィンは、父の後継だからこそ復讐の泥に堕ちた。
なおレイフ・エリクソンの姓に刻まれた”エリック”はかの名高き”赤毛のエイリーク”。グリーンランド入植の父祖であり、”赤毛のエイリークのサガ”に歌われる大冒険者である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月23日
実は相当に毛並みが良い血筋。ハゲたけど。
…トルフィンのモデル、ソルフィン・カルルセフニなのか。今更だけど。
同時にアシェラッドは”ウォラフソン”という姓を、自分では基本名乗らない。世間がそういう存在…『ウォラフの後を継ぐもの』として認識したとしても、デーン人ではなくウェールズ人、父ではなく母の血を引き継ぐものとして自認している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
誰かの息子たる誰かとして、社会に人間が認識されていた時代。
その残滓は、ノルド文化が長く伸びるヨーロッパ諸国に、多数残る”──son”という多数の姓が示している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
クヌートもまた、偉大なるスヴェンの王子、クヌート・スヴェンソンとして存在している。
王子だからこそ、楽土を現実に焼き付ける大望にも道筋が着く。王子だからこそ、当たり前の愛に裏切られる
その皮肉を背負って、北海皇帝たる未来へ漕ぎ出せるのか。最終話は、そういうところも掘るだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月22日
しかし”クヌートソン”たる継承者は、結局帝国の冠を抱けない未来を思うと、継承の複雑な顔、父子の複雑怪奇な繋がりは難しく、面白い。
やっぱファザー・コンプレックスの話だよなあ、コレ…。