星合の空を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
友の敗北を背に、眞己と柊真は己の試合に挑む。
いかな強敵が相手でも、ダブルスは一人で戦うわけじゃない。”ペア”である強みを活かし、快進撃を続ける二人に、立ちふさがる壁。
そんなコートの物語の背後で、うごめく青春の蹉跌。
僕たちは何処から来て、何処に行くのか。
そんな感じの、地区大会中盤である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
主役ペアの試合に並走する形で、いろんな連中の家庭事情がグネグネとうねる。
部活と家庭、どっちが”本物”なのか。苦しい現実を忘れるために、ラケットという魔法の杖を降っているのか。
この並走は、そういう問いかけに答える構成かなとも思う。
両方本気で、両方シリアスで、だからこそ壊されたくはない。護りたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
そういう中学生の脆い健気を、大人も世界も乱雑に蹴り飛ばす…時もある。人もいる。それが非常に大事なのだと、しっかり見据えて守ってくれる人もいることを、書き忘れないのは偉い。
だからといって、世界が全て善良な色に染まるわけではない。世の中はあまりに複雑な色彩で踊って、多彩な傷がかさぶたを作り、引き剥がされて痛むのを繰り返す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
この夏の勝負も、そんな人生の1ページであり、1ページでしかなく、かけがえのない唯一の時間なのだ。
それを、横断的にスケッチしていく話
出だしからして、直央のヘヴィな乖離が襲いかかる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
素直に笑える場所に入り込む、携帯電話越しの毒。それをバックに閉じ込めれば、全てが解決するわけじゃなくても、今は黙っててくれ。
クローゼットに閉じ込めれば、全部はなかったことになる。
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母という鎖への対応は、彼の虚言癖と全く同じ場所から出ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
『問題から逃げるな。傷を恐れず立ち向かえ』
そういう”正しい”意見をぶん回すには、直央の逃避は体温がありすぎる。逃げて、忘れて、嘘で固めることでしか、許されない生存戦略の一つが、バックの中の携帯電話だ。
これを逆向きに照らすのが、”母”の描写である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
鳴らない電話に刻まれた、赤ん坊時代の我が子。
母の認識はそこから一歩も動かず、直央は永遠に自立できない子供のままである。
貴方が未熟でいつづけれくれれば、無意味な私に意味がある。
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”母”という役割に縛り付けられ、孤立を息子に押し付けることでしか生存できないどん詰まり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
それが携帯電話にこだまして、もう子供じゃないと拒絶されている。
お互いのリアルな痛みを受け止めあえない、親子の肖像。お違いがお互いを追い詰めて、依存し傷つけ合う。
緊張と自閉を孕んだ2人の関係は、多分物語が幕を下ろしても続いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
モニタの外側の世界で、百億の母子が、一億の他人たちがそうしているように、崖っぷちに足をかけつつ当たり前に続いていくだろう。
劇的なるものは、そうそうやってこない。それでも、人は生きて世界は続く。
そういうコンティニュアスを切り取るのが、このアニメの狙い…の一つかな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
例えば柊真と眞己の抱擁のように、自分と世界を劇的に変化させる一瞬は確かにあるが、必ず確約されているわけでもない。
しかし当たり前の閉塞を全て無視するほど、世界も無感動ではない。
色んな形の家族、色んな形の青春、色んな形の人格。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
その多彩さを、全てが決着するわけではない継続性の中で抉って、想像させること。
可能ならば、そんな想像性をモニタの中のキャラクターから、外に広がる面白くもねぇ”現実”に引っ張り出すこと。
そういう働きかけを欲望して、物語は刻まれている…
の、かなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
確実に全てを語りきるには過大なモノを、意識して盛り込んだ物語の運び。次回最終回を迎えても、スッキリ終わるわけがない。
その収まりの悪さは、おそらく狙った結末だ。終わらない物語の一端、人生の一幕を様々に描く。衝撃の余韻を、長く響かせる。
そういうつもりでお話を作っていると僕は思うのだけども、なかなか自信はない。いい作品ほど奥行きがあるから、それを見通すほど自分の目が良いのか、やっぱり不安になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
でも見通せない物語ほど、目を凝らして読みたくなるものだ。そうやってお話と対話するのは、見当違いになっても楽しい。
コートの外で現在進行系の閉塞が”一時保留”される中で、柊真は試合を睨みつける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
突破できない過去。愛されない自分。
ジョイくんの隙に目を凝らしても、簡単にリターンされる現実のように、出口はどこまでも遠い。
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勝ちさえすれば、母は自分を愛してくれる。兄のように優秀ならば、自分にも価値が生まれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
勝ち負けにこだわり、コートに焼き付く柊真の焦燥は、愛を求めて届かない閉塞から生まれてきている。
同時に、兄のコピーになりきれない己の不才、閉じ込めても顔を出す”自分らしさ”にも。
直央だって、ママの求める赤ん坊のままならストレスは感じない。抑圧への反発として、虚言で脳を塗りつぶす必要もない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
でも、誰かが求める都合の良い自分になんてなれない。
『俺は俺』という尊い孤独が、否応なく殻を破って顔を出す時代。思春期のままならなさが、魂に擦過を刻む。
そこを突破する一つの窓として、友情と出会いがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
勝ちにだけ拘って狭くなる視界を、”見る”ことに天稟を持つペアが広げてくれる。
テニスは、一人だけでやってるわけじゃない。
眞己の言葉が、二人だからこそ掴める勝ち筋へ柊真を進めていく。
やっぱ天才の影響力の物語だ(でもある)なぁ…。
ペアとしての結束力。相手との信頼感。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
これは王寺くんとの練習試合でも、強敵に食らいつく足場になった。王寺くんはプライドを投げ捨てて、相棒に体重を預けることで勝ったけども、ジョイ君はサラッと勝負も関係性も、ソフトテニスも投げてしまう。
そういう生き方も、まぁある。尊敬は出来ないけど。
ペアで勝つ。ペアで負かしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
眞己と呼吸を合わせて戦う中で、柊真は”桂木”呼びだった出会いを思い出す。
無遠慮に差し出した誘い。唇を歪めて求められた銭金。
そこに込められた惨めさと傷を、何も知らなかった自分
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そこから全てが変わっていって、ボンクラ共は本気になった。”ペア”であることの意味を見据えて、何にもならねぇことに気合を燃やした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
俺たち、一緒にいたほうが良い。
その眞己の祈りが、デコボコに一箇所を見つめる皆を繋いだのだ。そんな変化の渦の中に、柊真もいる。
三ヶ月前、”部活”に眞己を引き込んだ時は見えなかったもの。むき出しの暴力、天才児の震え、烈火の怒り。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
そういうもの全てを、眞己と一緒にボールにぶつけているから、柊真は過去を思い出したのだと思う。
あの出会いから変わって、ここにいる。”ペア”であることで、変わっていける。
その希望が、諦めたくないとしがみつく姿勢が、勝ちを引き寄せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
魂が焦げるほどに欲しかったものを掴んで、柊真は涙をこぼす。勝ちたかった。負け続けたくなかった。己に価値があると証明したかった。
それを叶えてくれたお前に、涙一つ。
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部活の地区大会で勝ったからって、何かが動くわけじゃない。眞己の親父なら、ツバを吐いてせせら笑うちっぽけな勝利。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
でも、それは柊真が何よりも欲しかったもので。あまりにも焦がれたから視野も狭くなり、当たりもキツくなったけど、それすら推進力に変えてたどり着いた場所で。
そんな必死を判っているから、周りも大きく喜ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
御杖さんが飛鳥くんとわっきゃわっきゃ、ニヒリズム投げ捨てて大喜びしているのが非常に良い。
ヤバ女達の視線から自分を守るのに、”悠くん”の背中使ってるのが良いよなぁ…マジ仲良くなった。
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母の過干渉を一時忘れて、本気で抱き合う直央もいいし、微笑みながらクズの存在証明を受け取る絹江ちゃんもいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
最底辺と侮られていた連中だって、立ち上がることが出来る。結果を刻むことが出来る。
今回の”勝ち”は、柊真だけでなく絹江ちゃんの家柄コンプレックスも動かしたんじゃなかろうか。
一つ勝ちを重ねても、戦いは続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
”新城”の名字にほくそ笑むチャンピオンが、柊真が何に縛られているかを後ろから照射する。
『あの涼真の血縁なら、確かに強いだろう』
そういう視線は、家族の外側からも飛んでくる。一回勝った程度じゃ、引き剥がせない
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”ペア”であることが眞己と柊真の強みだったわけだけど、チャンプは絆十分、実力最強で付け入る隙がない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
最後の壁として十分な相手に、どう食らいついてどう己を突き刺すか。結末に至らない(だろう)現在進行系の物語が、どういうエンドマークを付けるか。
そこら辺が気になる相手である。
一方サイドコートでも、人生は動く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
直央が受け取ったのと同じ、携帯電話越しの”母”の声。
凛太郎は実母の手紙を閉じ込めず、思わず走り出す。
その背中を、やっぱり”ペア”は見ている。迷わず、追う。樹マジ頼んだ!!
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抱き合うのか、怒鳴り合うのか、何も言えないのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
凛太郎が駆け出した先に、何が待っているのかは判らない。
何が待っていてもいいと思う。義父母に包まれ大きくなれた、今の自分。子供ではなく、大人でもない不安定な”今”に、母との再開が必要だと心が吠えたから、凛太郎は駆けた。
それを見過ごせないと思ったからこそ、樹は追った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
実母にアドレスを教えていた義父母の思い、息子の晴れ舞台を見届けるしかなかった母の願い。
全てがそこにあるものとして、嘘なく刻み込まれぶつかっていく。その衝突の先に、また新しい物語が待っているのだろう。
”大人”なるものに必要(と判断され、実際に必要であるが、しかしそれを掴み取るのはあまりにも難しい、ただ時間を使えば手に入るものではない)な強さと優しさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
凛太郎と樹が駆け出した先に、その手がかりが待っているのか、いないのか。掴めるのか、掴めないのか。
どう転がっても、それは嘘じゃない
そういう多彩で持続的な物語(の片鱗。この書き方をする以上、片鱗にならざるを得ないもの)を、このアニメは書きたいのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
結末を得れるもの。判然としない混沌から、それでも人生を続けるもの。
色んな連中が、それぞれの物語を抱え突き進む群像。孤独と自尊を知る、青春という季節。
その只中で他でもない”己”を見つけ、削り磨き上げていく時、誰かと一緒にいたほうが良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
その傷と痛みと震えをしっかり”見て”、時に寄り添って抱きしめてあげたほうが良い。
青春の諸相を追いつつ、そういうメッセージが骨にある所が、このアニメの良いところだと思う。
スポットライトが彼らを照らし終わった後も、人生という舞台が作品の中で続くと感じさせるためには、良い幕引きが必要だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
その一つとなるだろう”敗北”の気配が、チャンプ圧巻のプレイに宿る。
微動だにせず、お互いを補う。サーブも強い。
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スイートスポットを外してくる技量と力強さ、相手がどれだけ”本物”か判る目の良さは、やっぱり眞己の特質なんだな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
『ソフトテニス舐めんな』
すっかり骨抜きにされたと思っていた王寺くんが、言うべき言葉を口にする。まーそれは突き刺しておかないとダメだよね、やっぱ。
三ヶ月の付け焼き刃。圧倒的な経験と力量の差。漬け込みたい”ペア”の断裂も、そこにはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
迫る”負け”を前にして微笑めるのは、テニス自体を、テニスをし”部”にいることで変われた自分を、眞己が肯定しているからだろうか。
クールでありながら、目の前の出来事に三昧できるのも、眞己の才よね…。
実際、ここでチャンプに眞己が勝つのもなんか違うと思うし。スポ根ジャンルの良いところを借りつつも、勝ち負けの興奮で話をドライブさせてきたわけじゃないからね、この”部活アニメ”。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
どう負けるか、負けから何を掴むか。
継続性の物語、最後の試合(だろう)に何を描くかは大事だ。
そして最後に投げ落とされる、最大級の爆弾。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
オイおふくろ、何スッキリした顔してんだオメー…。
おそらく離婚だと思うが、そういう家族の一大事を柊真抜き、涼真に全預けで回しちゃう所が、新城家の歪である。そらー歪むわ…。
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しかしどうにも行き詰まってしまった関係性は、フレームを作り直すことで再生する…かもしれないってのも事実で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
願っても届かないもの、望んでも掴めないものを、涼真は視野に入れつつ拘らない。変化し失敗していく世界を、泳ぐ術を体得してる感じ。大人だ…。
それでも大事な”弟”として、守らなければいけない”あいつら”が、試合を終えて帰ってくる時。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
愛され憎まれる”兄”は、一体どんな言葉をかけるのだろうか。
次回、最終回。語るべきことは多く、語る時間は少なく、しかし全てが決着しないだろうことに、妙に納得もしている。
なかなか独特の視聴感で、次回が非常に楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月25日
最終話に積み重なるだろう、少年たちの決着と未決。続いていく人生ひとまずの幕を見届けた時、僕はどういう気持になるのだろう。
結構、いい気分になるんじゃないかという予感と期待が、胸にある。そういうアニメを作ってくれてる。
次回も楽しみ