ドロヘドロを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
カイマンは、魔法の国に迷い込んだ白兎。何も知らぬまま、無軌道にノンキに突き進む。
ならばそれに付き従うニカイドウは、訳ありのアリスか?
陰鬱な表情を過去に向け、コネクションと異能を活かして情報を集める。
その先に待つのは悪魔の契約と、虎穴への突撃ッ…!
そんな感じの、ドちんぴら IN ワンダーランドなドロヘドロ、魔の5である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
相変わらずカイマン組と心チーム、両方の血なまぐさい日常をザッピングしつつ、その運命が複雑に絡み合い、またどーでもよくすれ違っていく様子を、丁寧に追いかけている。
ゆったりした群像劇としても、仕上がりが良いな…。
カイマン達は博士の協力により、観光気分で魔法の国に殴り込みをかける。命の値段とノリが軽いのはこの作品の良いところで、命がけの特攻にも悲壮感はない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
しかしニカイドウの瞳は、妙に冷えて鋭い。その視線は秘めたる過去を見据える。
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『カイマンの素顔が見たい』ってのは、御存知の通り嘘ではない。ニカイドウとカイマンの友情は、性別も秘められた過去も超え、溢れかえる暴力なんぞ気にもせず本物だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
しかしその真実味と、抱え込んだ重たい過去は同居できる。気軽な態度と、溢れかえるほどの超暴力も。
矛盾…とされているものが持つ対消滅性が、魔法界(の延長線にあるホール)では発揮されず、相反するものが奇妙に同居してしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
死んだはずのものが歩き回り、暴力を罰する法は無い。しかし無法の中に、奇妙な暖かさと美しい街並み、旨そうなメシが確かに存在する。
理路整然としたロゴス中心主義では、捉えきれない人生のケイオス。その1ピース1ピースを、極彩色で切り取って生まれたパッチワーク。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
むせ返るような想像力とセンスが、そこに確かな脈動と命を与えてくれる。不可思議だが、面白い。そういう話がずっと続いている。
心一行も超暴力をぶん回し、藤田をいじめた奴らを血みどろサンドイッチに変える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
恵比寿に手を出されて怒り、暴力に屈せず諦めない。フルフェイスじゃない仮面を引っ剥がされた藤田の顔は、人間の表情をしている。
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ここら辺、静かな覚悟を兎マスクに隠したニカイドウや、仮面つけようが外そうが息するように殺せる心&能井とは、ちょっと違うキャラ造形である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
藤田は作中一番”人間”っぽい。魔法もステゴロも強くないし、恵比寿の面倒もよく見る。傷つくからこそナイーブな心を保てる、人間性の不可思議を保持する
戦闘能力が高い”プロ”なお歴々は、そういう分かりやすいヒューマニティからは遠い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
魔法のある世界では、息するようにぶっ殺せないと生き残れない。普通は死んでる状況を何度もひっくり返し、生き死にの一回性を前提に組まれた”人間”の論理と倫理なんぞ、この世界ではなんの価値もない。
しかしそれでも、藤田がハンパな煙しか出せず、顔も隠しきらず、毎回恵比寿の面倒を見続ける姿に、僕らは妙な安心感を覚える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
顔が赤くなる程度の、強制されたコミュニケーションとしての暴力。これを掃除屋が振るうと、人間は真っ二つになり、心臓をブチ抜かれる。”ミキストリ-太陽の死神-じゃん”…
そんな掃除屋にも当然、仲間への情がある。だから人間真っ二つにして、真っ黒通り越して紅いジョークで場を和ませようとするのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
アイスを渡す手は血塗れだが、恵比寿は無邪気に喜ぶ。ホントに能井姉ちゃんが好きねぇ…。
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この世界で『強くなる』ということは、人非人に成り果てるってことだ。それを危惧したから、掃除屋は藤田の特訓志願を蹴った…というわけでもないだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
言ってたとおり、単純にかったるかったのだ、多分。
でも、藤田が『強くならない』ことに、仮面をハンパに付けていることに、僕は妙に安心する。
それは(一応)主人公ポジションに居るカイマンたちが、あまりにも無軌道で躊躇いのない生き様を突っ走る、危うさから生まれるものかも知れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
いじめには惨殺チョップ、タクシーにはナイフぶっ刺し。ホント”秒”で暴力メーター振り切れるな
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ぶっ刺されたタクシーの運ちゃんはゴミのように放り投げられ、カイマン達も場当たりに墜落し、銭と家を手に入れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
一見ラッキーにも見えるけど、その鍵を使う場所はさっぱり分からない。記憶が白紙のカイマンは、犯罪稼業もあまり賢くはやれないのだ。
迷い続ける。それが彼のキャラ性だ。
その迷路をショートカットするのに暴力をぶん回す傾向含めて、重たくやろうと思えばいくらでも重くなる物語。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
しかしカイマンは暴力にも無明にもあまり悩まず、サラッと殺し間違える。
何もかも成り行き任せだが、後ろは振り返らずガンガン進む。その軽やかさが、蛮行を爽やかに喰わせる。
”首”は復活するも言葉を喋れず、心と能井はノンキなオフを終えて仕事に赴く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
カイマン達は悪魔のレストランで、悪魔から手紙を受け取り、過去に襲われ気を失う。
それぞれの日常が勝手に踊り、引力に惹かれるように近づき絡み合う。
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その前段階が、不思議の国の妙に作り込まれた日常の中で、ジワジワと煮込まれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
ニカイドウの過去の匂わせ方、ホールとは少し違った生活臭の漂わせ方。
魔法使いの国の描写は、別角度から作品の魅力を深めてくれる。今回魔法の街を描く筆に、ある種の”異国情緒”があるんだな。
カイマンは混沌の中で”栗鼠”という名前を思い出し、目覚めて魔法使いのイカれっぷりを揶揄する。いや…君も負けず劣らずだと思うよ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
再度の対決…を匂わせておいて、心チームとカイマン一行はニアミスし、掃除屋劇場が始まる。
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ここでカイマンの尾行がバレているのは、彼の浅はかさを象徴するようで面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
魔法の国、自分の過去に飛び込み、冷たい表情でプロに徹するニカイドウとの対比で、今回カイマンのいきあたりばったりな生き方、そうなるしかない空白の深刻さが強調されている…気がする。
心先輩が怒りのスタイリッシュアクションでぶっ散らばす雑魚にすら、カイマンの狙いはバレていた。そのくらい雑な歩みで、彼は進むしかないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
心先輩も雑っちゃ雑なんだが、圧倒的な実力と凶気に裏打ちされたクルードさだからなぁ…。
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蘇ると知りつつ、能井が頭にトンネル開けられて凶相を顕にする。素顔でもバチバチ殺せる心先輩が、いつもの飄々を捨てるのは能井絡みの事が多い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
後にニカイドウ相手に悪魔が問いかける、恋よりも熱く、友情よりも危険な関係性。
それが二人を繋いでいるのだ。良いよなぁ、この距離感。
恵比寿も思わずゲロリな、”プロ”の現場。その凄惨さに怯えられるナイーブさはないけども、掃除屋コンビは陰りのない爽やかさで以て、軽妙に着実に、一緒に進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
ここら辺、軽薄と深刻に分断されていくカイマン組と面白い対比になってて、複数主人公っぽいな、と思う。
悪魔が知ろしめす魔界の空の下、ニカイドウは憂鬱に指先を見つめる。煙を封印した絆創膏こそが、取ってつけた兎マスクではない、本物の”魔術師の仮面”というわけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
そんなアンニュイを知らないまま、トカゲ頭はノンキに眠りこける。
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むしろそのイノセントを守りたいからこそ、捨てたはずの故郷について来て、封じたはずの煙も出したわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
お互いの過去を知らずとも、本気で相手を思いやれるカイマンとニカイドウ。
酸いも甘いも共有し、だからこそ強く繋がった心と能井。
むき出しの弱さを全面に、健気に結びつく恵比寿と藤田。
人の繋がりにも、色々ある。全員男女コンビなんだが、ぜーんぜん恋の湿った感触がない所が、なかなか独特で良いと思う。そういうのより血糊ドバドバだからさ、林田先生は…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
魔法ボーグとして復活した栗鼠と、魔法使いに戻っていくニカイドウ
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優雅と凄惨、復活する過去。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
二つの陣営を対比と共有で行き来しつつ、群像は加速していく。
序盤のいじめシーン前に、魔法サイボーグ技術が普通人・藤田には高嶺の花だと描いておいたことで、煙ボスの資金力、度量がよく判るのは上手い運びだ。
ボスお金も威厳も覚悟もあんだけど、扱い雑よねどっか…
ニカイドウは手慣れた仕草で金を奪い、証拠を握りつぶし、悪魔に接吻する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
カイマンのぼんやりした素人仕事とは、あからさまに違うスピーディーで洗練された、魔術犯罪者の立ち回り。
赤い部屋に蠢く蛆虫が、彼女の抱える秘密を啜る。
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そんな状況でも、ニカイドウはアスの問いかけに真摯に答え、可愛く赤面もする。心を凍りつかせたプロの瞳が、カイマンとの友情を前にするとホワッと、体温を宿す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
それは無軌道な殺戮者であるカイマンにとっても、お互い様だ。
アスは悪魔なのに、情が判るいい男だなぁ…。
相棒覚悟の独断専行を知らぬまま、のんびり青い空の下聞き込みを続けるカイマン。彼は今回最後まで蚊帳の外で、ニカイドウの危機も知らず間抜け呼ばわりである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
凄惨な生首拷問を、指を指して笑う栗鼠の底も素性も、さっぱり見えない判らない
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しかしそれぞれの運命は火花を散らしながら接近し、謎は新たな謎を生みながら解明している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
そのスピード感。ブラックな笑いと、凄惨な赤が入り混じりつつ、底抜けの軽さと明るさ、ゴリッと芯のある覚悟が顔を出す。
そういう話だったと思います。カイマンはノンキだったがな!!
カイマンの失われた記憶と繋がりそうな、栗鼠の存在が何をもたらすのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
彼に繋がった”十字眼の組織”は、魔術エリートである煙ボスとどう衝突していくか。
全ては不鮮明なカオスのただ中にあり、しかし一筋、生き様と覚悟が”芯”を入れている。
揺らがないスタイルが、プロの条件だ。
友のため過去に向き合い、抜身の刃のような怜悧さを取り戻しつつあるニカイドウもまた、己のスタイルを取り戻していくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月12日
しかしそこには、捨てるだけの理由があったはずだ。それもまた、運命に繋がり、次の物語を惹き寄せてくるだろう。
次回もとても楽しみである。