虚構推理を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
琴子が矢継ぎ早に積み重ねる、第二・第三の”真相”
ある時は無念を残した亡霊、またある時は狂気に囚われたなりすまし。
移り変わる鋼人七瀬の有り様を巡り、虚構の綱引きは続く。
果たして知恵神は、現代の荒神を封じうるのか?
そんな感じの、超・推理合戦最終幕その二。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
用意してきた物語を2つ3つと重ねて、六花と虚構綱引きするエピソード…なんだが、やっぱ絵面的にアニメだと地味だなッ!!
相手は匿名無名の有象無象、その後ろにいる六花と直接の論撃バトルもなし。絵的にも動きが少ない。
七瀬が消えるか残るかっていうバロメーターも、九郎先輩がミンチになっては蘇る泥仕合だしで、なかなか変化に乏しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
ここら辺、小説とアニメというメディアの違いが生んだ難しさだなぁ、と思う。僕は既に、ネタを知っちゃってる側だからなぁ…そこの新鮮さでは驚けんし。
とまれ、琴子が最後の一矢に向けて状況を作っていく今回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
モブが指摘してるように、そして琴子が最初から言っているように七瀬殺しは”なんでもあり”である。
不確かさをクダンの異能で事実に書き換え、嘘も方便と面白さを積み上げる。幽霊がいるかいないか、真相はどっちでも良い。
想像力を種族的特性とする人間にとって、恐らく”現実”なるものはそもそもにおいて”なんでもあり”で、だからこそ怪異譚も噂話も生まれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
大事なのは事象それ自体が『どうであるか』ではなく、『どうあって欲しいか』という願望だ。
それを納得させるために、面白さは大事になる。
琴子は怪異の審判者として、幽霊とは”実際に”あっている。彼らがどういう思いとロジックで現実に残り、何を為すかはよく知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
その上で第二の推理では、亡霊としての七瀬の物語を騙り、世論を誘導していく。
©城平京・片瀬茶柴・講談社/虚構推理製作委員会 pic.twitter.com/Q81uZ8AOJV
見てきたような動機の推察、聞いてもいない告発状。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
幽霊譚(に限らず、様々なフィクション…あるいはノンフィクションとされるものすら)は、理不尽に筋道をつけるために生まれる。
こういう悲惨な死に方をしたから、世を恨んでいるだろう。亡霊になってもおかしくない。
死者が亡霊になるわけではなく、結果が原因に訴求する物語構造。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
それが実際の所、綺麗にひっくり返っている”事実”を琴子は知りつつ、いけしゃあしゃあと都合のいい物語を語り倒す。
そこで納得させなければ、顔のない噂は怪物を生み続けるからだ。
琴子の詭弁が、秩序を害する側ではなく維持する側に立ってるのは、人間社会にとって幸運なことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
”面白さ”に飛びつく脆弱性をハックすると、世界も事実も簡単に形を変える。
境界線を定める巫女が望むものが基本、手に入る超金持ちの家系だったのも、ある種のラッキーか。物欲薄いよね…。
舌先三寸で世界を書き換えうる琴子も、九郎の心は操れない。今回の傲岸なタフさを見てると、多分『操らない』のだろうな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
俯瞰で世界を見る語り部が、誰かの思いを勝手に想像し、捻じ曲げる。そうすることで、より好ましい結果を引っ張り込む言論の戦場。
九郎もクダンの能力で、言葉を使わず結果だけを引き寄せられる。ある程度以上、琴子の繰り言に耐性があるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
しかし二人が、恋人でもなく腐れ縁でもなく、微妙な間合いでじゃれ合い続けているのは、臆病な震えと意志の尊重…人間を維持する最後の一線を守ってるから…だと思う。
琴子は七瀬の真実だけではなく、それを提出する自分の立場も自在に変える。物語作者であり、犯罪の糾弾者でもある曖昧な存在。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
その『なんでもあり』の例外として、九郎への純情をあえて残している感じもある。まぁ車の外では、ボッコボッコの殴り合いだけどね…。
琴子が向き合う匿名空間で、無邪気に荒れ狂う『かりんちゃんかわいそう!!』という憐憫。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
そんな”かわいそう”な亡霊は、六花が増幅させた顔のない悪意に踊らされて、九郎をぶっ潰してる。
そんな”事実”に、琴子は動揺しないし客にも見せない。
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今公園で展開されている、なんの味もしない暴力劇が”事実”だと伝われば、琴子の狙いは失敗するのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
恋人がモズの早贄にされようが、亡霊の涙が嘘っぱちだろうが、語る物語に穴があろうが、実在の人物に噂が撥ねようが。
あるべきものとあらぬべきものの境界が定まるなら、なんでもありでどうでもいい
一生喋り倒す琴子の奮戦には、そういう『プロの神様』としての矜持みたいのが、透けて見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
幽霊譚からくるりと手首を返して、騙られる入れ替わりトリック…に怯える女を、巻き込む巨大な虚構劇。
かもしれない。
となりうる。
考えられる。
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尤もらしさを山と詰め込んで、積み上げる第三の推理。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
その急所を、匿名の仮面を被った六花が射抜く。俯瞰で怪物を生み出す/消し去る、言語術師同士の綱引き。
それは曖昧な指示を確固たる現実に変える、九郎の異能にも突き刺さる。
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こうして見ると、六花さんは九郎のシャドウでもあり、六花のシャドウでもあるのだな。二人は己の影と、三角関係言論血みどろバトルをやっとるわけだ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
この濃厚な対比から、紗季さんはやっぱり遠い。遠いこと、普通であること、置き去りにされることに、彼女の物語的存在意義がある。…悲しいね。
鋼人七瀬という巨木を倒すには、第二・第三の推理は決めてたり得ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
楔を打ち込むように、『面白いお話が見たい』『納得したい』という欲望に嘘を流し込み、足場を整える。
その過程と同時に、多層な真実/虚構が成立しうる”場”それ自体を見せたい話なんだな、とは思う。
理性によって観測される、たった一つの確固たる真実。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
そういう現代の世界モデルを、”語り”という旧い技術で崩し、現代に蘇った祟神を封じる。遠くに消えたはずの中世の闇は、どっこい元気だ。
メタメタにメタな決戦の構図といい、色んなものを揺るがす超変則異能ミステリも、そろそろ終幕の頃合いです
物語で物語を殺し、納得で願望を飲み込む解決策である以上、やっぱり騙られる”物語”の強度が重要で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
満を持して放たれる第四の推理が、どのくらい真芯を射抜く”面白さ”を持ちうるか。
アニメとしてどう魅せ、演出するかは大事そうです。次回も楽しみ。