ドロヘドロを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
平和な”空腹虫”に突如現れた、狂暴なるキノコ怪人。煙の手に落ちたニカイドウは、強制的に彼のパートナーにされてしまう。
そんな事情を知らぬまま、しかし運命はカイマンを飲み込んでいく。
十字目の死刑囚、悪魔の友情。
荒れ狂う暴力の渦中、未来は何処へ転がり出るか。
そんな感じの加速するカオス、ドロヘドロ第10話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
ここまで基本分断して描かれてきた、ケイマン一行と煙ファミリー。幕引きが近くなり、再び大きく接近して衝突することとなった。
出逢えば血みどろ、暴力は不可避。そういう宿命が画面を赤く染めるのを、回避するべくすれ違ってたのかもしれん。
しかし煙ボスがマジカル・マフィアの素顔をむき出しに、ニカイドウを力でモノにしちゃったからには、呑気な日常は続かない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
因縁、拷問、銃と魔法。誰かを思えばこそ、誰かを傷つけるカルマの渦が、色んな連中を飲み込んでいく。
そこにやるせなさと、奇妙な爽快感がある。
今まで通り、どす汚れつつもペーソスのある不思議な日常を見ていたかったような。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
そんな日々の背後から、ジワジワ滲んでいた世界のエゲツナサが、遂に本筋に躍り出てきたのに頷くような。
なかなか不思議な気分だ。見知った顔…になっちゃったトンチキ共が、血みどろで殺し合うのは心が痛むな…。
そういう気持ちになるのも、魔法世界の奇妙にズレた、しかし僕らに通じるものが沢山ある日常を、しっかり描いたからこそだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
今血みどろの闘争に身を投げている連中は、顔の見えない怪物ではない。食って笑って必死に生きる、当たり前の命で…だからこそ、仲間と欲望のために死狂いで走る。
野球やったり餃子焼いたり。そういう時間は、暴力の大嵐と地続きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
暴力と日常が遠く離れているように見えて、必然的に”そう”なっている、カルマまみれの塵世。それをずっと書いてきた話だからこそ、生まれる奇妙な透明感と切なさが、今回の超暴力にはあったと思う。
お話はキノコ怪人襲来から始まる。煙ボスの遠隔操縦暴力は一切容赦なく、”空腹虫”の日常を食いちぎる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
バウクス先生が立ち向かった時、『あ、殴られて気絶すんのかな?』とか思ってたら、即ドロドロでキノコ送りだった。それがドロヘドロ!!
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/3RK4KPEuKv
ニカイドウはアスから譲り受けた魔術師の仮面を、ずっと屋根裏に取っておいた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
消し去りたくても消えはしない、己の特別な力。それを思いやってくれた友情を被り、必殺のスピンキックで胴体真っ二つにする。
…魔法関係ないよね? 超フィジカルだよねその威力?
そう、決着はニカイドウのスーパー筋力で付くとしても、魔法使いの仮面は決定的な仕事をしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
過去に向き合うということ。消したはずの自分を取り戻すこと。
ボーッとしてるカイマンより先に、窮地を前にしてニカイドウは、”自分の顔”を掴み取った。それが冷たい目をした、殺人鬼の仮面でも。
ニカイドウが煙ボスに目をつけられ、ボスがコメディアンからマフィアに表情を変えたのも、元はと言えばカイマンを助ける行動が原因だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
友情は失われた真実への道を開き、そこはいつでも血塗られている。悪魔と魔法使いが跋扈する、狂った超暴力世界なら、そうなるしかない。
ニカイドウは決意を込めて仮面を付け、そういうルールに正面から向き合う道を選んだ、とも言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
立派な心がけだが、それが必ずしも結果に結びつかないのがドロヘドロである。
血の扉、臓物の鎖。煙ボスの捕獲作戦は周到だ。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/egShy18yIC
ボスは今回、マフィアとしての顔、非情の魔法使いの仮面を色濃く見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
『時間を操る魔法使い』を手に入れるためには、過去の怨念も忘れ、相手の意志も踏みにじる。
雑魚には煙一閃言葉を封じ、己の欲望に向いまっしぐら。これが演歌歌手、もう一つの貌だ。
かつて一日魔法世界旅でそうだったように、カイマンはニカイドウの窮地に踏み込めない。のんきに手を振り、視界の先で何が起こってるか、想像もできない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
恐らくそれが、彼のカルマなのだろう。ボケた繰り返しをぶっ壊すには、別の友情がいる
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/Jv3fiMGvgN
心と能井の回想、過去から襲いかかった亡霊を跳ね除けるロマンスに彩られた、青い夜。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
ブルーナイトもまた契約強制のヤダ味、もう一つの貌を顕にする。よりにもよって、俺達の煙ボス主役で。
扉の向こうから、親友の窮地を見るしかないアス…
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/yblWgszVv3
肋骨バキバキに切り開かれ、内蔵観音開きのグロ絵面なのに、妙にロマンティックで爽やかな心能井。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
悪魔の契約書を胸にねじ込まれ、望まぬパートナーシップへ引きずり込まれるニカイドウ。
同意と強制、ロマンスと悪夢が同居するブルーナイトは、かくして更けていく。
心と能井のピンチを、知らず救ったカイマンの行い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
それを裏切るような強制契約だけども、まぁ煙ファミリー、そこら辺の事情一切知らんからなぁ…。
不可思議に転がる運命は、美しいものを照らしもすれば、骨肉の争いを暴きもする。だがそれは、この世界の一つの側面に過ぎないのだろう。
恩と縁が繋がる糸を、人間たちは見抜けない。狂騒の只中で現実は転がり続け、死んだり笑ったりを繰り返しながら、少しずつ進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
その先に何が待つにしろ、ダイスを転がす原動力は欲望だ。
己のための願いと、誰かのための祈りを寄せ集めたタピストリ。それが…ドロヘドロ!
煙ファミリーは情け容赦なくカスカベ博士を拷問し、ジョンソンは博士を心配する。巨大ゴキブリにも三部の情、パートナー契約は血みどろの鎖、と。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
アス、ジョンソン、丹波社長…脇役たちの”友情”が、色々輝く回でもあるな。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/fdaER2hKkH
散々ノンキしてたカイマンは、悪夢の迷宮をさまよい、過去への扉を開ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
ここの美術は最高に良かった。現実で何も知らずボーッとしてるカイマンが、内側に重たいものを抱え込んでいることがよく判る。高木渉の演技も最高。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/KG4hd8RqJJ
カイマンは記憶と一緒に主人公力も落としたかのような、面白いキャラだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
雑魚には強いけど、名前あり相手に無双は出来ない。友達大事だけど、本物のピンチにはのんびり座ってる。あっけらかんとしてるのに、殺しにためらいはない。虚ろな内面を抱え込んで、明るく素直でバカっぽい。
色んな矛盾が、魅力的に蜥蜴顔の奥にぶち込まれた混沌。彼自身が、”ドロヘドロ”というチャーミングな混沌を象徴するという意味では、やっぱり”主役”なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
暴力的で不確かで、信じられるものはなにもない。
それでも空白を埋めるべく、欲望に背中を押さえる。ふらつく体を、友情が支える。
カイマンの悪夢は現実に続き、丹波社長はタフに従業員を受け止める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
魔法もねぇフツーの世界で生きれてる僕には、情と縁を大事にする丹波社長の『普通』が、ひどくありがたく見える。
けど、魔法世界だと相当の変人なんだろうなぁ…。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/cSNREKiI66
丹波社長の人徳は、明日死ぬ死刑囚にも続いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
焼けただれた顔を見ても、一切動じない胆力。『明日死ぬとしても、生きた証の美味いパイを腹に収めたい』という、当たり前の祈りに答えるスタンス。
足元に地獄が広がっていても、人は今を生きて死に、繋がっては殴り合う。不思議な生き物だ…。
魔法使いとしてのマスクも、人間としての皮も引っ剥がされた死刑囚は、パイを飲み込む。『俺の顔より良く焼けてらぁ…』というブラックジョークが、最後の晩餐のチェイサー代わりだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
そしてそんな男を、カイマンは頭から丸呑みにする。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/9HbGkqzK3X
失われた記憶へ繋がる、唯一の鍵。それを”食べる”のを止められないのは、丹波のパイを望んだ死刑囚と同じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
無駄かもしれない。でも、求めずにはいられない。
カイマン必死の探求は、やっぱりヒントだけを出して正解には至らない。死刑囚が掌に隠す写真は、見ることが出来ないのだ。
食っては吐き出し、殺しては殺される。修羅界めいて繰り返されるカイマンのクエストが、答えにたどり着く時。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
己を満たす”糧”を彼が飲み込めた時、なにかが決定的に変わるのだろう。しかし、今は未だその時ではない。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/06Rq0F6AAB
アスはスタイリッシュ足切断でカイマンを現世に繋ぎ止め、ニカイドウの運命を教える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
カイマンが自力で真実にたどり着けない所に、彼のキャラクター性があると思うね。芯が無くて、だからこそ凄く必死に求めているのだけど、その歩みがクリティカルな場所に届かない。それが物語全体を駆動させてる。
アスは悪魔という立場故か、直接ニカイドウを助けられない。運命の解決を主役に任せ、悪魔の友情は鈍く消える。切ねぇ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
『人情コメディは終わりだァ!』と、ガスマスクとラバースーツで武装したカイマン。
その背を、社長の人間力が掴む。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/19rVXAkyT8
ズルズルとバックしてくるカイマンのキメきらない姿に、笑うと同時にホッとした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
丹波社長が抱える『人としての当たり前』が、未だ引力を保ってるからカイマンは戻ってきた。
殺し殺され当たり前、殺伐とした世界に生きていても、誰かも自分も大事なものだ。
カイマンはニカイドウから離れ、魔法使いの世界に腰を据えることで、白紙の記憶に凄く大切なものを刻めたのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
まぁロクデモナイ超暴力ルールが、ホッコリを容赦なく押し流していくのもこの作品なんだが…さて、どうなるかな。友情と無惨が別に対立しないのが、ドロヘドロだし。
ジョンソンの友情は鎖を解き、カスカベ博士を開放する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
しかし時は遅く、ニカイドウはすっかり契約書のギアスに囚われてしまった。
アスの仮面を睨みつけるチダルマに、不穏な空気が漂いまくり。当たり前の友情、この世界だと対価が高いなぁ…
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/CbU7cH0Eoh
過去は忘れ、ニカイドウをファミリーにする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
煙ボスの決定に、藤田は首を縦に振れない。しかし横に降ってファミリーを出ていく度胸もない。
未だ抱え込む、松村のミンチ死体。ボスや心が置き去りにした軟さが、涙になって溢れ出る。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/ekvtGMcgfF
仮面を外した藤田の涙、それを受け止める平たい恵比寿の胸は、正解だが唯一絶対ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
ニカイドウの意識を奪い、強制的に己のモノにするボスの生き方だって、一つの答えだ。ロマンティックにお互いの心臓を見つめる、能井と心の距離感も。
そして決意の特攻を、丹波の”情”で一日遅らせたカイマンも
色んな答えが入り混じり、衝突して赤い火花を散らす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
カスカベ博士の銃弾に、心先輩はネイルハンマーで応える。お互い譲れないものがあるなら、そういう事も起こりうる。
銃を突きつけられた焼き芋屋の”眼”が描かれてるの、好きな演出だな…
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/92kF0q3h2l
カスカベ博士がクールに脅す相手も、また人間で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
カイマンがザックザック殺してきた魔法使いもそうだから、藤田はボスの決定を飲み込めない。
お互い血が通っているからこそ、取った取られた、守った守られたも成立する。
複雑怪奇な因縁の絵の具が、混じり合って生まれる塵世という絵。
それは強くうねりながら、様々なキャラクターを飲み込んでいく。潤滑油は友情と暴力、Welcome to 混沌。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
そんな感じの、クライマックス開始なエピソードでした。色んなキャラクターの核になる事件や感情が、ググッとお互い絡まり物語が加速する。そういう気持ちよさがパワフルに押し寄せてきました。
凶暴な顔を表に出してきた煙ボス。悪魔の友情、人の絆に導かれたカイマン。仮面を被り直す決意をくじかれたニカイドウ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月18日
バラバラだった物語がギュッと結集し、衝突し炸裂する。その先に、どんなクライマックスが生まれるか。
ドロヘドロアニメ最終盤、非常に面白い。次回も楽しみ。