かくしごと を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
新人賞への応募は減少し、印刷所も殿様待遇はしてくれない。斜陽産業たるマンガ業界に身を置く、可久士の悩みは深い。
それでも妙に生真面目に、徹夜もいとわず働く父の、背中を見ながら育った娘。
箱に詰まった愛しさに、添える指先。流れる涙。
そんな感じの、漫画家奮戦一代記である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
今回はお仕事漫画としての顔が、ちょっと強い仕上がりだった気がする。
新人賞応募に、ギリギリの直し。
ブーブー文句をたれ奇行に猛ダッシュしつつ、漫画業に生真面目な可久士の性格がよく滲む運びだった。
可久士は間違いなく奇人なんだが、妙に小市民的な部分がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
世評を気にし、サボりはせず、時代の変化とか評判の浮沈とかに悩まされつつも、目の前の娘と仕事に必死に勤しむ。
そのコンパクトな善良さが上手く描けていることが、このアニメが好きなポイントの一つかもしれない。
最初は面倒くさがってた新人賞選評も、姫が笑顔で語りかければ、俄然やる気。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
ベテランらしく鋭い評論もこなし、ついでに読み易すぎる長期連載にもチクリと一発入れる。
山のような応募作で溢れたのも昔の話、画業を取り巻く環境も変化をしている。
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大げさな箱に取り囲まれ、文字通り”箱入り娘”になった姫ちゃんが可愛いけども、ユーモアの奥にはシリアスで生っぽい業界事情が薫る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
ここら辺のジワリとした洒落にならなさ、生臭さが、なかなか良いスパイスとなり未来編に伸びてる感じだ。
可久士は何故原稿を閉じ込め、姫の前から去ったか?
結果だけが示されている謎のヒントが、果たして今回書かれた漫画家稼業の世知辛さにあるのか、ないのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
明らかにトーンが違う現在と未来を、繋ぐミッシングリンク。
それを色々想像しながら愉しむのも、色んな要素を貪欲に取り込んでるこのアニメの楽しみだ。
まぁ凄い膝カックン来るかもだけど…。
可久士は原稿に向き合い、そこに込められた若手の本気とも向き合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
『なんだかんだ、この絵の向こう側には人間がいて、そいつには親がいるのだ』
そういうところに想像力が伸びる”マトモさ”が、可久士への好感度を上げる。
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とっても大事な姫に向き合うように、一作一作ちゃんと読んだ感想は、十丸院のヤバい仕事でダイナシにされてしまうが。いや、マジ可哀想。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
つうか今回、十丸院のヤバ力が随所で暴れて、ヤツの怪物性がよく判る回だった。2つのこと同時に覚えられないのに、”自称・仕事できる”はヤバ。
可久士の面倒くささもお当番制でたらい回しにされ、『イヤだけどしょうがないから』担当されていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
僕は姫ちゃんLOVEな”父”としての顔で付き合うから『そこまでかぁ…?』とも思うけど、仕事相手としてみると、確かに面倒かも。
ここら辺は久米田先生の自省と自虐を交えたネタかなぁ…。
まぁアシスタントを”お当番”にして、原稿を鎌倉の家に詰め込んでる奇行考えると、たしかに面倒ではある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
壁に貼られた、三分割の当番表。それは二分割になってしまったが、未だに可久士を律し、支える。
人生の大事な”当番”を背負えるまで、愛娘を育てる
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そんな成長を楽しみに、ドタバタ生きてる可久士が何故、姫と切り離されているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
コメディの一幕一幕、日常の輝き一つが積み重なるたびに、疑問は深くなる。
溺愛するだけではなくて、時折客観的に娘と自分の距離を見直す冷静さも、可久士の良いところよね。
そんなお話の後には、カンヅメを巡る大騒動。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
お父さんが毎日買ってくれるお菓子自体は、あんま好きじゃないけど。
お父さんが好きだと思い込んでる、その優しさを壊したくない。
ポケーっとしてるようで、姫は結構敏い娘である。SUKIだな…。
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ホテルにカンヅメでテンション上がり、スキャンダルへのいらん心配なども重ねつつ、可久士はやっぱり描く。とにかく必死に描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
グダグダ愚痴りつつ、無茶なスケジュールも飲み込んで走り、アシスタントも手伝ってくれる。
ここら辺の堅実な仕事描写、結構好き。バスローブだけど。
んで、担当作家がねじり鉢巻で仕事している裏で、十丸院はヤバな本性を存分に暴れさせていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
唸るさすまた、咲き乱れるクラッカー。父の見てないところでも、後藤家はなかなかにトンチキで楽しい。
千田襲来で、ビビる姫ちゃんが可愛い。
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父の『かくしごと』を姫が知らないように、父も徹夜仕事の裏で何があったか、姫が本当に欲しい”カンヅメ”が何かを知らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
一番近くにいても分からないものはあって、それでも世界は愛を潤滑油に回っていく。
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増えたキャラを活かして、姫なりの『かくしごと』が可愛らしく描かれたのは、なんか妙にホッコリしてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
学友との付き合いもそうだが、姫が姫なりに独自の世界を作っていると描かれると、大げさだけど”尊厳”みたいのを大事にしてくれると感じる。
何でも自由にできる、愛玩動物では当然ないのだ
可久士もそれはよーく判っていて、金メダルがいつか銀メダルになってしまう日を思いつつ、その温もりを愛おしく抱く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
父と娘が睦み合う角度、その訳のわからなさがリアル。
なんつーか、生活を共にしてるとこういう、訳の分かんねぇ姿勢も生まれるよね…
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少しクセのある”17”を、未来は父の存在証明として愛おしく撫でる。それは汚れ、隠され、失われてしまったものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
でも、たしかにそれはそこにあった。刻まれた思い出、箱に閉じ込められた愛を、姫は涙と一緒に抱きしめる。
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『なんでこーなっちまうんだよ!』と半ギレしつつも、姫が年経てなお、父を好きでいてくれることが指先の表情から伝わり、なんとも切なかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
金メダルに名前と時間を刻んだ時は、可久士が見据えていた必然的な変化。避け得ない人の儚さ。
それを何も知らなかった姫が抱きしめる未来に、父はいない。
”カンヅメ”を縦軸に話を転がし、最後に愛の詰まった”缶詰”でまとめるウマさも含めて、相変わらず貪欲で巧妙な話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
コメディを転がす小粋な小ネタと思ってたものが、シリアスなドラマでキラッと光るの、上手い相転移だよなぁ…ベテランらしい、スマートな仕事。
未来の事情やキャラの根っこをジワッと煮出すタイミングと量も上手い。今回表に出た十丸院のヤバさとか、現代編で既に動いてる鎌倉の”箱”とかね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月1日
ジリジリと輪郭を狭めるように、現在と未来を繋ぐ輪が見えてくる。しかしその全貌…失われた愛の行方は、まだ見えない。
ミステリとしても、次回が楽しみ