乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
無敵の転生令嬢として、ゲーム構造も破滅フラグもぶっ飛ばし爆走するカタリナ。
”主役”たるマリアの窮地を救い、過去の陰りを打ち払う言葉を無自覚に投げかける。
知らず植え付けた笑顔の苗木は、どんな大木に育っていくのか。
そんな感じの、人格無双・令嬢暴れ旅第5話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
人たらし特攻のカタリナ様が、金髪のフワフワ女をすんごい勢いでズブズブのズブにしていくエピソードである。
でもしょうがねぇ…あんな魂に刺さる言葉を、真心と一緒に叩きつけられちまったら人間は”救われ”ちまうからよ…。
キャラ紹介がだいたい終わって、どっしりマリア一人と向き合う今回のお話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
カタリナからは見えない影の部分も、かなりディープに描いてきた。
この世界は存外優しくなくて、どす黒いものも多い。ゲームではカタリナ一人に圧縮されていた悪意と無情は、色んな場所に拡散している。
カタリナ様はバカで無垢だし、周囲の人々も彼女にかく在れかしと、ある種の防壁を作る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
だから、世界の薄暗い部分は見えない。見えないことが、そこにとらわれている人を開放する。『愚者の特権』とも言うべきものを、カタリナは常に体現し、まっすぐ力強く進む。
やっぱ、児童文学だわなこれ。
破滅フラグをメタ認知し、そこから”カタリナ”を守る賢い立ち回りをしているのに、カタリナはいつでも人生に前のめりだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
本心から人を好きになり、そのことを隠さない。
貴族のクソみたいな差別意識も、劣等感や嫉妬や憎悪も振りちぎって、あるがまま自由に振る舞う。
マリアと仲良くなるのも、運命に対峙する自衛手段だったはずなのに、今ではすっかりにへら顔、心の底からズブズブである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
男だろうと女だろうと、綺麗で素敵な人が好き。恋愛がピンとこない幼さが、フラットな態度に繋がってるのは面白い。
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しかしこの段階では距離を詰めきれず、二人の視線は90度にねじれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
キャラクターの立ち位置、距離感で心理を表す描写がこのアニメ、さりげなくて上手いけども。
この生徒会室のアングルも、後々乗り越えるための現状スケッチといえる。
今二人の距離は”ここ”なわけだ。
そこにするっと挟み込まれる、会長の描写。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
『カタリナがゲームを知りつつ、習熟していないのはうまい設定だなー』と、今更ながら思う。
チート転生者でありつつ、知らない部分(+カタリナ自身のバカ)があるので、未知の余白が残る。
会長がどんな裏設定を持ち、どんなルートで危機をもってくるか。
それはカタリナ様にとっても不可知領域であり、だからこそ意識しない優しさが、静かに会長に降り積もることにもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
おそらく隠し攻略キャラで、非常に厄介なネジれを抱え込んでると思うのだが…。
他キャラが幼少期にクリティカルな出会いをし、人生変えられちゃったのに対し、会長は”今”逢うわけで
ゲーム知識が一切なくても、破滅の運命とか人格のネジ曲がりとかに、カタリナ様は立ち向かうことが出来るのか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
そういう事を試すキャラだから、チマチマ巧妙に描写積んでる印象はある。
この読みどうりに転がるか、楽しみでもあるけど。
今はマリア攻略大戦争である。マジでカタリナの一発一発が重い
よそよそしく距離を取るマリアの、周囲にざわめく黒い影。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
好きだから守りたい、仲良くなりたい。
相変わらず変わらぬ義姉の純朴に、かつて救われたキース。そんな彼の『姉さんはやっぱり良いなぁ…』という表情が良い。判る…。
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カタリナは素朴なツチボコと、悪役顔に宿る凄味でマリアのピンチを救う。自分の破滅フラグ回避するために磨いた魔法が、他人助けてる所地味に良いよね…善良。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
しかしマリアを一番深く助けるのは、何よりも飾りのない心からの言葉であり、迷いのない真っ直ぐさだ
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特別な資質ではなく、努力を積み重ねる行いが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
歪み無く他社を受けとめる、その優しさが。
マリア・キャンベルがマリア・キャンベルであることが、愛の源泉である。
後に見るように、”才”という呪いに振り回され家庭をぶっ壊されてきたマリアにとって、その言葉がどれだけ救いであったか。
当然、カタリナは知らない。頭のどっかに、設定として知っていたかも知れないが、バルコニーから飛び降り背中にかばった時は蒸発している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
生きること、自分の大切なものを恥じず怯えず守ることに、カタリナ・クラエスは常に一生懸命である。
その言葉に行動はなく、行動に嘘はない。マジ義人。
その懸命さが、結果として心の一番柔らかい部分を穿ち、彼女を誰かの大切な存在にしていくのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
幾度も繰り返されたパターンではあるが、何しろ真実なので何回やっても良い。私心なく愛に飛び込むこと以上の愛の苗木は、この世にはないのだ。
カタリナ様がモテる過程に、むっちゃ納得行くの偉いね。
かくして生徒会室の90度から、心通い合う”真横”へと立ち位置を変えた二人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
ここでも、キースの役割を略奪していたと気づくのは、行いの”後”である。賢しいチート知識はあくまで補助でしかなく、根っこには果断な善良さが常にある。
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ゲームで決定的に関係や行動を変える”フラグ”を、カタリナが横取りしていく構造。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
これは悪役が主役になる転倒であり、同時に男性だけに特権化されているヒロイズムを、女性が主体となって獲得していく立ち回りでもあると思う。
ここら辺結構リブな風が流れてて、闊達で好きなところである。
守られる、与えられる、変えられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
そういう受動態の存在としての”女”を前提に組み上げられる、乙女ゲーなる構造体。
まぁここまで”いかにも”なのは実際のゲームにはないのだろうけど、何処にもないからこそユートピアではある。
その良さを悪役令嬢の立ち位置からハックしつつ、風通し良く改変する
貴族社会に伴う搾取と差別と偏見から、土いじり大好きなカタリナ様が開放されている所含めて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
オールドスクールな不自由を元気よく破壊し、素朴で善良な啓蒙意識を無自覚にぶん回していく所に、カタリナの強さがあるのかも知れない。
まぁ当の本人は、基本なーんも考えてないのだが。
おかげで女達の過剰重力がメリメリと、気づかぬ内に存在を強めて包囲もしているわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
”お慕いしております”に滲む微かな甘やかさを、気づかないヘテロな世界認識。攻略対象軒並み”カタリナLOVE”な現状の無自覚。
そこのズレもまた、なかなか面白い所だ。
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世の中の悪意とか、周囲の恋心とかにはまーったく気づかないんだが、親友の顔に現れた陰りはちゃんと見て取って気にしてる所に、カタリナ様の”視力”がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
バカなんだけども、人間にとって大事なものは絶対に踏まない。むしろ最速で気づいて、心の苗木に、必要な水を惜しみなく注ぐ。
そういう主人公の美質を、細やかな表情作画の中にしっかり込めて演出している抜け目の無さが、作品全体を支えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月2日
無邪気な作品を作っているのだけど、制作姿勢は非常に賢明で繊細。
『フツーに面白い話は、フツーじゃ作れねぇんだなぁ…』と、見るたび再確認させてくれるアニメだ。
さてBパート、義弟を引き連れての田舎参りで、カタリナはマリアの実家の敷居をまたぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
土を弄り、疎まず学ぶ姿勢のスケッチが、見事な美術と噛み合って善い。ドデカかぼちゃんに喜ぶ姉弟が、童話から飛び出してきたような頑是なさ。
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(カタリナに投影されている『土いじる姫君』のイマージュは、昨今再評価されて気味な『トリアノン離宮のマリー・アントワネット』に重なってんのかなぁ、などとも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
庶民趣味の象徴としての農業、泥を浴びるのをいとわない素朴さを主役に刻むのに、土属性はやっぱりいい仕事をしている。)
ど田舎でも元気いっぱいのカタリナが、視野に入れない世界の陰り。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
ガラスの向こうで微笑む娘の視線を、母は素直に受け止めきれない。街はさざめく雀の噂で満ちて、キースはその飛沫から、純朴な姉を遠ざけようとする。
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才ゆえに崩壊した過程。実態のない噂話という、無責任な凶器。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
かつてキース自身が苛まれ、今でも世界に満ちているものと無縁でいることで、カタリナはおバカな無垢を続けている。
それは彼女の魂から溢れる美質であり…こういう目立たない、周囲の差配の結果でもある。
姉さんには世の中の汚いこと、何も知らないでいて欲しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
キースが笑顔の防壁で守る祈りは、果たしてカタリナにとって善いものなのか、仇となるのか。
その純粋さに決定的に救われてしまったキースを思うと、『過保護』と決めつけるのも、また難しいねぇ…。
口さがない噂話から逃れた時、二人が木”陰”に入っているのは細やかで上手い。日向と日陰を生かし、人生の陰影を焼き付けてく演出方針は結構徹底してるよね、このアニメ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
カタリナは自分が人生の”影”に触れたことに気づかぬまま、マリアの家へと踏み込んでいく。
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そこに溢れる笑顔が、娘の笑顔を生み出す触媒となる瞬間を、母は静かに見ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
Bパートは視線の描写、時間と人間の変化を見抜く”眼”が活写されているが、ここをゆったりと描けるのはマリアに強くフォーカスした成果だと思う。
母の瞳を鏡にすることで、無敵主人公の影が見えてくる。
何も知らず、実直に土を耕すクラエス兄妹の後ろで、マリアは己の人生をこねくり回す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
世界の主役となりうる、見分不相応な”才”。
望まぬ光は強い影を呼び込んで、家に罅を入れた。
それでも立ち上がり、過去を取り戻すように菓子を焼くたび、幸福は指から逃げる
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無敵の主役が晴れ舞台の裏で積み重ねた、焼きそこねのクッキー。受け止められなかった、対等で率直でいたいという願い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
それを噛みしめる少女の瞳に、流れた苦い涙。
カタリナの振る舞いは、知らずそれを受け止めていた。
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学園での涙に、どれだけの重さがあったのか。後追いで判る、良い回想シーンであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
”悪役令嬢”がバカながら自分なりの、自分だけの努力を積み重ねていたように、”無敵の主役”にも苦労があり、涙がある。
考えてみれば当然だが、時に見過ごしてしまいがちな、人間の当たり前。
そういうのを、類型的な物語ポジションに閉じ込めずに一個一個積み上げることが、プラスチックなキャラに血潮を通す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
こういう微細な筆が、色んなキャラに伸びてるのはやっぱり良い。今までボイスドラマで補強してた部分を、今回は本編にブチ込んできた感じだね。
母にもまた、後悔と悲しみがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
そしてそこから解き放たれ、新たな一歩を踏み出せる事実も、母は娘の背中、窓越しに見つめる友情から見て取る。
『カタリナ←マリア←母』という視線の連鎖に、なんとも言えない奥行きがあって好きだ。
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泣きぬれて人生の闇に囚われた過去から、娘は顔を上げた。そこへと導いてくれた人への、感謝を形にするために。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
思い出に閉じ込めていた型抜きを取り出して、娘と横並び、手を添えあって前に進んでいく決意を、母は静かに前進させる。
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カタリナは窓の向こう側で、太平楽に土いじってるだけなんだけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
その善良さは直接触れ合ったマリアだけでなく、母に波及して人生をより良い方向に変えていく。
そういう影響力のデカさが、詩情のある静かな画作りにジワリ滲んでいて、Bパート終盤は非常に良い。善良さのドミノ倒し。
楽しい時間を共有し、別れていく人生の恩人へ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
母は真摯な瞳と言葉を向け、娘はその重さをしっかり認識する。
じっくりと時間を使った、至近距離の非言語コミニケーション。親子の情感を丁寧に膨らませ、馥郁と味あわせてくれる見事なシーンだ。
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ここは台詞を使わず、情景と表情でもって親子が取り戻したもの、ここから新たに始まるものを描いたのが、背筋が太い演出で良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
分かりやすく説明して届ける部分と、視聴者の読解に任せる部分のバランスも上手いよね、このアニメ。美しい夕景の強みも、最大限活かしてた。
まぁ母の愛情を肌に浴びて、帰った実家ではカタリナ様、こってり油をしぼられるわけだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
これもまた、愛あってのこと。なんだかんだ、ママン娘のこと好きだよね…当たり前っちゃ当たり前なんだけどさ、あんな義人がみうちにいると。
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ジワリいい話で終わらせきらず、最後に一笑い交えて爽やかに飲み干せる配慮含めて、非常にリッチなエピソードであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
こうして腰を落として1キャラじっくり見せられると、アニメとして、物語としてのベーシックが非常に骨太で多彩だと再確認させられる。普通につえーわこのアニメ。
マリアの陰りに踏み込むことで、人生の薄暗さから守られるカタリナ、その純朴さがすくい上げるものもよく見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
まぁ脳髄完全にベビちゃんのまんまだから、大人で難しいネタから守ってあげたいと願うキースの気持ちはよーく分かる。バカ(褒め言葉)だからなお前の姉貴ッ!!
しかしその身に宿した無自覚の”義”を見ていると、捻じくれて厄介な人間の性根と向き合っても、ちゃんと”勝てる”んじゃないかとも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月3日
学園という揺籃は、カタリナの幼き純朴を育むのか、荒波で試すのか。そこら辺も気になる、良いエピソードでした。
次回も楽しみです。