かくしごと を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
後藤家に、新たな家族がやって来る。時に諦め、時に焦がれた一匹の犬。妻の実家から届いた小さな命に、姫は瞳を輝かす。
過ぎゆく時間の中で、継承されるもの。繋がりそこねて、儚く消えたもの。
深い謎を映して、材木座の海は蒼い。
そんな感じの、漫画家と少女と犬、かくしごと第七話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
ジリジリっとミステリの箱が開きはじめて、過去の事情とか家族構成とかが見えてきたこのお話。
前回オープンになった、母方の祖父との軋轢なども照らしつつ、基本は姫の成長ダイアリーである。
と同時に、ナイーブで子供っぽい部分が強い、可久士先生を素描する話でもあり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
犬を飼うと想像しただけで涙腺をやられ、娘に肩ポンとなぐさめられてしまうお父さんは、なかなか可愛い。
犬と同列に堕ちて、慰めてアピールする所も卑しくていい。
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今回は”犬”という、無条件で感動引っ張ってくるズルい大駒を持ち出した話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
しかしあんま派手に事件が起こらず、比較的蛋白に進むところが逆に、良い生っぽさを出していたと思う。
入れ違いで里親になりそこなったり、身近な人の体験談から考えを変えたり。
色んな小さいことが積み重なって、”犬を飼う”という結果にたどり着く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
そのイベントだけが大事なわけではなく、飼うか飼わないかウロウロ逡巡するなかで、家に1人きりの姫の寂しさを思ったり、そこに寄り添う犬のありがたさを考えたり、過程にこそしみじみ生活の味わいがある。
漫画家あるあると自虐をコスりつつも、こういうどっしりした味と解像度がシーンに焼き付いているところが、このアニメの良いところだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
この小さな幸福感を、未来編でメッコメコに活用しているところ含めてな…。
未来で姫は孤独になっておるが、犬はどうなったんだよマジで!
そこら辺はいつもどおりの”かくしごと”、箱が開く時を楽しみに待つとして。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
久々に目黒川探偵事務所のバカガキ共が出てきて、ちょっと嬉しい回でもあった。この子ら出てくると、児童としての姫にフォーカスされるので好き。
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こしゃまっくれた子供らに過剰警戒されあげく無視されたり、一本背負いの特訓めいた散歩練習をしたり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
のんびりマヌケな生活の間に、ジリジリと重たいものが挟まっていく。
『家に母がいなければ、犬は飼えない』
悪気なく発せられた世間話が、ズキリと姫の心に刺さる。思わず可久士も握り拳だ。
ここのやり取りは世間一般を浮遊する”普通”なるものが、透明な刃となって人を傷つける様子を鮮明に切り取っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
『漫画は賤業』と可久士が己を苛むのも、そういう無邪気で残酷な視線を意識すればこそだろう。
僕らを取り巻く透明な嵐に、この作品は笑いの奥底から鋭く冷たい視線を送り続けている。
お母さんがいないから普通じゃない。普通じゃないから、犬とともにある幸せを諦めなきゃいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
顔のないモブたちが当然と飲み込む”普通”の檻から、親子は
隔離されている。
だが普通じゃない彼らの生活が、人として当然の温もりと優しさと愚かさに満ちて輝いていることを、僕らは見てきた。
ならば、拳を握って可久士が駆け出す心には、感じるものも多かろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
そしてそれをすくい上げるように、(リムジンの御輿からは降りないものの)自分の家族を差し出してくれる”ダテナオト”。
祖父は、可久士が言うほどクズではないかもしれない。
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『まぁ可久士先生、相当性格ヒネてっからね!!』というのはさておき。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
犬に夢中になっても、未だ父の温もりを求める姫の幼さが、なんとも微笑ましい。
”父の十戒”を刻むことで、犬≒漫画家≒父としての可久士が立体感を持ってくるのは、綺麗ななオチだ。
同時にズレたタイムスタンプでもって、”継承”というテーマへ話を繋いでいくのも忘れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
漫画家とアシが、相互に影響されながら系譜を繋ぐように、姫の横顔になごる母の面影。
うんまぁ、犬のマネしまくるポンコツでもあるわけだけど…。
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師匠が弟子に似てくるように、影響は一方通行ではなく相補的だ。愛する娘にほだされて、可久士もまた変わっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
それは”かくしごと”として秘められている、妻との生活でも同じだったのではないかと、僕は考える。
愛する人と出会い、別れたことが、可久士をどう変えたのか。
あるいは変わったものを守るために、様々な努力を重ねているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
鎌倉の家が荒廃し、姫が孤独に涙を流す未来を既に知っていると、麗しき”継承”がどうしようもなく断絶してしまう事実も、思わざるを得ない。
時間と運命の残酷さは、永遠に続くと思いたくなる日常のスケッチを、常に際立たせる。
過去における母の不在。未来における父の不在。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
2つの喪失が姫を取り囲んで、実際そこに何があったかは未だ”かくしごと”である。
絵の中に祖父が閉じ込めた、美しき母の面影。健やかな成長を願われた姫は、ミステリの渦中で美しく孤独だ。
こういう描画と構成の切れ味が、日常コメディを引き締める。
可久士がカメラから消えた未来で、その系譜は途絶えてしまったのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
断片的な描写から、コメディが内に秘めてるシリアスさの答え合わせはまだ、難しい。
つーか藤田一門へのコンプレックスといい、実在の久米田先生が濃く匂うな、今回…。
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犬を飼い、ピアノを習い、料理を作る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
姫は色んな人達に囲まれながら、色んな体験を積み重ねる。
幸福であるように、健やかに育つように。
そんな祈りが折り重なっても、辿り着く場所がハッピーエンドとは限らない。
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過去編をオレンジベースの暖かな色彩で、未来編を透明感のある蒼い色合いで塗り分けていることが、2つの世界に横たわる断絶と変化を強調して、なかなかいいなと毎回思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
鎌倉の景色は思い出の下町に比べて、冷たく美しすぎる。非人間的で、だからこそ孤独に綺麗だ。
少女たちが制服に身を包み、先生の髪も伸びた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
何もかもが移り変わる世界。
そこに取り残された姫の隣に、父はいない。
広漠とした空と海の蒼を見ていると、それが尚更強調され、巧くてエグいなぁとしみじみ思う。
だーかーら、犬はどうなったんだよ!!
そんな感じの、ガール・ミーツ・ドッグなお話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
後藤家を取り巻く暖かさと少しの寂しさ、拳握りしめて立ち上がるタフさが”犬”を鏡に見えて、新しい家族としていい関係を作っていけそうな期待感が高まるほどに、確定した未来の寂寞が良く突き刺さる。
凄くこの話らしい、”犬”の使い方でした。
未来の残酷さに目を向けつつ、今目の前を満たす幸福をちゃんと見据えているのも、この話の強さで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
姫と犬と可久士が、どういう生活を今後積み上げていくかも楽しみです。
祖父の出番も増えてきて、箱の中身がより濃く見えてきた中盤戦。どういう方向に転がしていくか、次回も楽しみです。