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— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
アニマシティの生活にも慣れてきたみちるに、突如現れた偶像(アイドル)。
それはかつて別れた親友、日渡なずなだった。
獣人の救世主を演じる”かわいそうな友達”を助けようと、東奔西走するみちる。
しかしその一歩は、新たな摩擦と痛みを生むのだった…。
そんな感じの、ギザギザハート獣人青春物語、折返しの第六話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
みちると同じく”化ける”能力を持ちながら、怪しい宗教で教祖(アイドル)を演じるのにためらいがない、ズルくて大人な少女、なずな。
狐と狸の化かし合いをやるには、ピュアすぎる主役が苦い涙を飲み込むエピソードである。
教団の裏表、みちると大神が嗅ぎ取った”匂い”が真実を突いてるか否かは、今後話しを転がしてみないと見えてこない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
仮面の奥の嘘、隔たりつつも確かに疼く思い出。
何が本当なのか、時分で見つけて決めなければいけない思春期真っ只中の、青臭い痛み。
思い込みのまま突っ走り、浅薄に真実を決めつけるみちるの急所を、的確に抜いたなずなの一撃。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
それを受けて主役と物語がどう転がっていくか、なかなか面白い折返しになった。
獣達の畏敬と救済を司る”銀狼”をめぐるやり取りも、大神を巻き込んでなかなか面白い伏線である。
僕は大神は名前の通り神なる存在だと読んでいて、その伏線は既に、幾重にも張り巡らされている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
彼が過去を嗅ぎ分ける能力は、獣を超えて神の領域に入っているし、市長がアニマシティを作るまでに色々あった雰囲気も、随所で匂わせている。
しかし彼は、堂々”神”に祀られはしない。
人の皮をかぶり、獣人”大神士郎”を名乗り、神なる獣の四足は滅多に見せない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
みちるが獣混じりの人であるように、大神は人に混じった神、ということなのかも知れないが…そうなると、”化ける”能力はみちるの専売特許ではなく、大人で頑なな大神の特性でもあろう。
風呂の入り方で突き合う、ごくごく普通のホーナー一家。素朴な信仰を預けられている”銀狼さま”は、辛い暮らしを乗り越えるため作り出された虚構…ということに、現状なっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
何故大神は、神の座から降りたのか。
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人の皮をかぶり、人の目線で獣を守るところまで身の丈を縮めたのは、どんな理由があるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
ハードボイルドな”大人”の謎を、今後掘り下げていく気配が濃く漂う冒頭である。
新聞記事に書かれている、シルヴァスタ会長の養護施設訪問もキナ臭いんだよな…情報量が多い出だしだ。
大神は捧げものの虚栄を引っ剥がして、中に秘められた干し肉を食ってしまう。彼が”銀狼”であるなら、それは不当なズルではなく、願いを聞き届けた正しい報酬でもあろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
『餌をくれなきゃ助けてくれない奴が、神様なはずがない』
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そこにこそ大神の矜持がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
彼は神を名乗らないまま、獣人のプライドを売り飛ばした凶獣達の爪牙を折り、アイデンティティを剥奪する。
『お前は獣じゃない』
そう暴力的に定義できるのは、彼が神だからか。
はたまた、獣として人として守るべき一線を、無言で守っているからか。
そういう所に、幼いみちるは全然目線を向けない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
他人の事情を斟酌せず、目の前三センチの価値観で突き進んでしまう傲慢と危うさは、後になずなに逆撃される急所でもある。
しかしその考えなしの見ず知らずは、悪いことばかりなのだろうか?
確かに事故で足を怪我し(なずなの”手”の怪我と良いシンメトリーだ)、バスケの道は閉ざされ獣混じりになった。親友が拉致される瞬間にも気づけず、運命はネジ曲がっていった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
しかし臆せず踏み込み手を伸ばすことで、彼女が救ったものが沢山あることは、既に物語のなかで見てきたとおりだ。
美質と弱点は常に背中合わせで、そんな”自分らしさ”をどう使っていくか、導いていくか学んでいくのが、青春を扱う物語(あるいは物語そのもの)の重要なポイントだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
みちるの特質は今回、一番大事な人から攻撃される。それは真実を抉っていて、同時に全てではない。
大神の行方をウッカリ見失い、悪い大人に犯罪の片棒担がされるような浅はかさと、その大神に影響を与える真っ直ぐな変化の兆しは、多分繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
片方を手放せば、もう一方も崩れてしまうような有り様のバランスをどう捕まえて、自分と世界に答えを出すか。
今回の迷い道も、その途中であろう。
借金の見せしめに火炙りにされるような、人間性の枯れ果てたスラム。獣人は人を焼く炎を前にする時、人の皮を剥ぎ取って獣の素顔を見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
そのBestialityに、仮面の集団が待ったをかける。しかしそれも、神の降臨ではない。
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なずなは”化ける”能力を活用し、火炙りを止めて崇拝を集める。それは獣人社会に深く根を下ろした”銀狼さま”への信仰を、横からかっさらう狐の狡知だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
ジャッキーを火刑の柱から下ろして、インチキ浄水器を使って実際に助けるのは、あくまでみちるである。
”化ける”ということ。”変わる”ということ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
過去に檻をぶっ壊し、弱いものに道を示してきた狸の特質は、同じく”化かす”動物である狐によって、もう一つの使い方を示される。
それは他人の功績を掠め取り、自分たちにも仮面を付けて、都合の良い結果だけを剥ぎ取る”大人のやり方”にも使えるのだ。
みちるは当然、そういう難しい事情はさっぱり判らないまま、無防備に教祖様の真実を探ろうとして捕まり、なずなに助けられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
フードを外し、素顔を見せるなずなの人相は、都合よく色んな顔を使い分ける器用さに満ちている。
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”銀狼さま”ではない、狐の素顔。それを唯一晒し共有する程度には、なずなは相変わらず親友で…しかし、何もかもが変わってしまってもいる。みちると同じように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
少女二人の友情を夜景に焼き付ける、淡いピンクの色合いが非常に良い。
この優しい夜だけが、世界の真実ならどれだけ生きやすいだろうか。
しかし世の中にはみちるが全然見通せない薄暗さと、その奥で蠢く複雑さが確かにあって。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
『それを知らないから学ぼう』と、例えば第4話で思ったはずのみちるは、今回傷も疑いもなかった無邪気な幼年期
に、少し退行してしまう。
それくらい、なずなのことが大事なんだなぁ、とも思う。
教団の裏にある胡散臭さ。神様を偽る存在を、許せない理由。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
市長室に漂う闇は、少女たちの屋上よりも冷たくクールだ。譲れない理想を抱きしめつつ、常に付きまとう現実の重たさから、目を離さない万人達の夜闇。
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大神が”銀狼さま”としての自分を表に出さないのなら、教団の虚偽をひっくり返す資格も力もない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
彼が神を名乗らない、完全獣化の特別さを表に出さない理由は、やっぱりこの段階では見えない。
なんかデカい引っかかりが、やっぱりあるのだろう。そういう面倒くさい事情を壊すのも、主役の特権か。
先の話と不確かな読みは横に置いて、大人になりかけの少女たちもまた、虚実ないまぜの複雑さと無縁ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
というか、運命はその中心に彼女たちを置く。
一足先に獣になり、利害の間で生き残るために嘘を飲み込んだ少女。
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”化ける”力を突破力に変えて、新天地でも己を偽らず、真っすぐ進み続ける少女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
そのあり方は近づいては離れ、間に電灯と知らない思い出を挟みながら揺れ続ける。
神を演じる”偶像(アイドル)”は、大人を前に人間を装い、大神もまた、視線を隠す。
大神がなずなの化けの皮の奥に、何を見ているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
みちるはそこで立ち止まり、黙考することは出来ない。その行動主義が掴み損なうものもあるし、それだけが掴み取るものも、またあるだろう。
どちらにしても、みちるに出来ることと出来ないことは、かなり鮮明に描かれている。
ここがハッキリしていることで、出来なかったこと、知らなかったことに踏み込んでいくドラマも鮮明になるし、お互いの長所短所を噛み合せ、難所を切り抜き変化していくダイナミズムも動く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
大神やなずなも合わせて、キャラクターの持つ能力や価値観の範疇が明瞭なのは、作品のいいところだ。
例えば大神は、教団の胡散臭さは見えてもそれをみちるに説得することは出来ない。自分の一部を切り崩して、相手に通じる言葉を柔軟に選び取るのは、大人でマッチョな彼には難しいのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
そこをみちるとの邂逅が変えていく兆しも、まだ変わりきらない頑なさも、鮮明で面白い。
みちるは己の信じるままに、狐の紋章を首から下げ、蛇の視線を舐め回す。瞬膜の描写が良いね…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
仮面を外さないこと。素顔を見せないこと。化けて偽ること。
そういう蛇の奸智に嫌悪を抱くピュアさが、みちるの”らしさ”であろう。
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おそらくみちるの直感は正しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
ここまでこの物語は、素顔を見せること、現状を認めた上で進んでいくことを、強く肯定している。
仮面を付けたままのボリスは、そんな作品のコアに反した存在だ。しかしみちるが欲しい虚栄は、大人な彼の掌からしか与えられない。
獣混じりになっても…なったからこそ手に入れた”化ける”力で、夢の”偶像(アイドル)”を演じ続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
なずなの自己充足も、みちるの浅薄な視界には収まりきらない。そういうのは”キモい”のだ。
この語彙の無さが、逆にみちるの純粋さ、頑なさを強調していて雄弁だと思う。
みちるは素朴に『友達を助けて、良いことをしよう』と、市長と親しい特権を振り回す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
なずなはそれを利し、あくまで”偶像”として仮面を被ったまま、己が演じる救済を差し出す。
錯綜する視線の只中で、なずなはみちるを追い抜く。
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親友として肩を並べ、騙し騙されなんて考えられないと思っていた関係性が、なずなの成熟によって突破されていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
ダイナーの朝はとても美しくて、哀しい青春のスケッチだ。
なずなが拉致され、ボリスに”救われ”る経験を、みちるは知らないし、真実想像しようともしていない。そこには断絶がある。
教団の権益と責任を背負うものとして、市長相手に駆け引きを演じるなずなに、みちるは置いていかれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
それは賢さの距離、偽りの只中で生き抜く覚悟の差…現実を飲み込み大人になっていく存在と、取り残される子供の間にある断崖だ
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それは命がかかったあの時、もう届き得ないものとして離れていたものなのかも知れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
友達を助けたいと、愚直に真っすぐ突っ込む歩みは、運命を変え得なかった。
アイドルへの夢も、バスケへの情熱も、へし折られて獣混じり、運命に押し流されてこの街に流れ着いてしまった。
それでも二人は出会い直して、親友みたいに見つめ合って、でももう、時間は戻らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
なずなが突き刺す言葉の刃は、みちるに痛手を与える。
それはみちるが薄々感づいていた自分の未熟を、的確にあぶりだすからだ。『正しい』からだ。
その痛みが、生み出すものもまたあるだろう。
同時にそれが取りこぼしているものも沢山あるはずで、ダチを助けてぇと恐怖にすくまず、身を投げだした”人間”影森みちるの勇気と友情が、嘘だなどとは思いたくない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
しかし世界の複雑さ、自分の危うさを知ってしまったみちるは、己の中の正しいものをも、信じ切ることは出来なくなっている。
その危うさと苛立ちが、”大人”の証明だなどとは思いたくないし、この作品もそうは進めないだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
しかしこの段階を経由しなければ、より善く”自分らしさ”をつかみ取り、親友との適正距離を新たに作り出すことは出来ない。
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みちるは狐の虚像を投げ捨てて、なずなに背中を向けていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
『それで終わり、これでお別れ』と割り切れないから、写真立ての中の友情を反芻して、ままならない想いを枕に沈めもする。
決別と対話、思い出と現実。
どちらに進めば良いのか、青春の迷妄は深い。
そんな感じの、みちるの中間点でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
僕はこのアニメの、青臭い青春に大事に寄り添いつつ、それが幼く取りこぼすもの、大人が見据え支えているものも怜悧に視界に入れてるバランス感覚が、とても好きです。
今回みちるを描く時も、そういう内省がどこかに冷えてて、制御を効かせていました。
みちるの過去も現在も未来も、完全に間違いではなく、また最善でもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
何かを取りこぼしつつ、他の誰もつかめないものを握りしめて進む主人公が、より善い場所へ自分と物語を運ぶために。
絶対必要な摩擦と思弁を、痛みを込めて叩きつけられる回でした。
僕は明るいみちるが…”も”好きなので、今回の屈折に折れず、親友の虚栄も拒絶も飲み込めるような一歩へと踏み込み直して欲しいなと、身勝手に思ってしまいます。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
でもキツイよなぁ…友達との距離を認識するのも、足らない部分を叩きつけられるのも…。
周囲の人はフォロー! 聞いてんのか大神!!
なずなが”銀狼さま”を話の中心に持ってきたことで、ハードボイルドな人狼探偵が隠しているものの輪郭も、ちょっとずつ見えてきました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月14日
様々な人の震えと頑なさを飲み込みながら、揺れるアニマシティ。その群像が後半戦、どんな物語を作るか。
次回も楽しみですね。