BNA ビー・エヌ・エーを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
古き狼は夢を見る。血に赤く塗られた、罪と後悔の夢を。
それを呼び覚ますかのように、獣達の街に迫る影。
蛇の囁きが怪物を呼び覚ます時、最古と最新の神話が出会う。
銀狼よ、封じた牙を解き放つのは誰がためか。
少女よ、閉ざされた過去を知りたがるのは何故か。
そんな感じの核心突入、士郎さんの秘密大公開エピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
描写や配置から推測していた所が、大体当たっており安心するも、士郎さんの抱え込んでいるものの重さ、みちるを待ち構える運命のデカさを思い知らされ、無邪気に喜んでもいられない話であった。
幾千の同胞の血を受けて、人間と獣人の行き着く果…屍と血の湖から生まれ直した過去。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
幾度も繰り返される人の愚かさに激情を鎮められず、神獣体を封印した過去。
ムッツリと不器用に黙り込み、獣のあるべき生き方を体を張って守ってきた、現在と未来。
どれもこれも神話級に重たく、年相応に浅はかで、だからこそ可能性に満ちたみちるの現状と、面白い対比であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
そんな重たく難しいものを受け止めきれない、ちっぽけな自分。そこから始めて、自分に背負えるものを誠実に引受けていくみちるの姿勢が、ひどく眩しい回だった。
市長の『何故知りたいのか?』という問いかけにみちるが答えるシーンが、おそらくはこのアニメの中核だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
残酷な興味でも、無邪気な同情でもなく、知ることで”知らない”を…それが生み出す偏見と差別を乗り越えていきたい。
だから、手の届く範囲で、”知らない”を知っていきたい。
ちっぽけな少女が、自分の内側から絞り出した答えは多分、とても正しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
第4話でリサが、ニナを窒息死させかけた”正しさ”とは違う、内省と慎重が宿った、ある意味臆病な働きかけ。
自分が何も知らない無力を視野に入れなければ、傲慢と偏見がいつでも、正しさを歪めていく。だから、一歩ずつ。
みちるを主役に、そういうありふれて当たり前でとても大事な”智”への目覚め、それが実際の生活で覚醒し駆動する様子を描くことで、僕らに開示されるあり方。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
それに伴う困難と希望を引っくるめて、このお話が書きたい(と僕が受け取るもの)が見えてくる。そういう話であったと思う。
主役の過去と、暴力に脅かされる生き死に。今回のお話の重たさを象徴するように、アバンで士郎さんがうなされている悪夢は、重たく鮮烈だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
OPで印象的な、みちるの瞳のクローズアップ。そこに宿ったシリアスさは、士郎さんにも宿る。
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現実と地続きの悪夢から醒めて、彼はチョーカーを撫でさせる。それは封印であり、傷を塞ぐ包帯でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
蔑まれ、傷つけられ、死んできた。被害者となり、加害者ともなった。
獣人と人が相争う一千年の歴史を、その体に刻みつけてきた証が、縛り付け覆い隠す首環だ。
みちるの言を受け取らず、自分の正しさを押し付けているように見えた、序盤の大神士郎。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
その揺るがなさがどこから生まれてきて、実は常に揺らぎ続けていたことが顕になるのが今回だ。
首環は決意とともに引きちぎられ、傷と過去は暴かれていく。封じ、揺らがぬようにするだけの理由があったと判る。
寡黙に重たいものを飲み込み、それでも真摯に血を流しながら、人と獣人のあり方に向き合っている士郎。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
そのスタンスと、アランのあり方は正反対だ。彼は今までと同じく全てを”ながら”で受ける。
正対せず、携帯を弄りながら話す。
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彼が救済されたことが、教団への熱狂を掻き立て変化を生み出しているのに、まるで他人事のように受け流し、状況を高みから見下ろす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
台詞以外のメッセージ伝達が巧いのがこのアニメのいいところだが、状況に向かい合う”姿勢”はアランの尻尾を掴ませないまま、不信感を高めていく。
『コイツは信頼できない。真っ直ぐ向き合っていない』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
そんな感情はおそらく意図的で、みちるの幼いひたむきさ、それに感化され次第に彼女に向き合うようになった士郎への共鳴と、しっかり対比されている。
がむしゃらに、時に血を流しながら、目の前の理不尽に牙を突き立てる。地に足を付け、踏ん張る
そういうスタンスを積み重ねてきた主役たちに比べ、アラン(と、彼の長い手が伸びる教団やシルヴァスタ)の表現は冷たく、上っ付いて、斜に構えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
キャラクターが物語にどういう角度で突き刺さっていて、何を背負うか。それを明瞭に見て、的確に表現する腕が活きたアバンだと思う。
ハリボテの神様が、借り物の威光を張り巡らせるアニマシティ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
言葉にならないモヤモヤを抱えながら、みちるは先週掴み取った”飛ぶ”能力を発揮し、しかしその飛翔は低い。
ピンガが教えた世界の不自由と、己が何者か知らぬ青春の悶え
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それに押さえつけられた翼は、借り物の神威を演じるなずなのそれよりも、小さく縮こまっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
教祖として、大人と対等に渡り合い、誰かに強く求められる親友。それを見上げることしか出来ない視線は、"日渡なずな"というアイデンティティを否定する化けの皮を、まだ剥がせない。
”Deus Louve”…なずなは自分の新しいアイデンティティが、ラテン語とフランス語のちゃんぽんであることとか、”狼神”を意味することとかを、知っているのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
仮初の自己を他人から借り受けること、自己実現の快楽に足を止めてしまう危うさを?
彼女の”化ける”力は、彼女自身に由来する。
しかし先週の経験から”飛ぶ”能力を己のものとしたみちるのようには、その可能性を掴んではいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
求めるまま、求められるままに狐から狼へ、なずなからデウス・ルーヴへ、偽りをまとっていく。
そんな大人びた世知が、自分がいちばん大事なものに火を付ける凶器に成りかねないと、まだ知らない。
あの時の離別から変化した、環境と関係性。そして自分自身を伝える言葉を持ち得ないまま、みちるは今日も青春に身悶える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
その不器用な未熟が、無理な背伸びを危うく続けているなずなと対比されて、僕には妙に愛おしい。
キミの迷いは、間違っていない。そう、思わず声をかけたくなる。
小うるさく大人の事情をぶつけてくる士郎と、いつものようにじゃれ合いつつ。開放されつつも、周囲を檻に囲われた天井で、二人は同じコートには入らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
しかし士郎は真っ直ぐみちるの方を向いて、”仕事場”へと同行を持ちかける。
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遠い昔に改造され、『獣の領域を越えさせられた』同志だと後に判明するクロが優しく間に立つ、二人の断絶。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
隣り合いつつもなかなか歩み寄れなかった距離が、士郎の働きかけで変化していく。
彼がみちるを見て、向き合い、その可能性に惹かれ態度を改める様子は、これまでも丁寧に積み上げられてきた。
みちるを遠ざけてきた士郎の領域…”大人”の領土に招き入れるには、彼なりの変化が確かにあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
みちるはそれを全て感じ取ることは出来なくとも、何者でもない”子供”から変化できる可能性に惹かれ…また、無自覚に作られている士郎への信頼に導かれて、暗い場所へと歩を進めていく。
矢場が閉じ込められている檻には、ボリス≒シルヴァスタ≒アランの長い手が伸びていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
横領よりも罪深い罪、教団と製薬会社を繋ぐ黒い秘密。
扉を閉ざして生まれた密室の囁きが、つまらない犯罪者を神話級の怪物へと変えていく。
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コソコソと、顔も正体も意図も隠した蛇は正々堂々入り口からではなく、非常口から消えていく。ここにも、アランに通じる非正当性、正面を避ける不安定さが見え隠れする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
矢場自身も会社の金庫から甘い汁を啜っていたが、蛇達が身を潜める陰りはより深く、彼を犠牲に飲み込んでいく。
牢獄という檻をぶち壊し、”犀”というトーテムを異形に変質させながら、矢場は暴れ狂う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
これまで暴力と浅慮に結び付けられてきた”獣化”という現象の、もっとも危うく最も浅はかな発現。それは犀から奇っ怪なキメラへと”化ける”力だ。
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銃砲を弾き飛ばし、言葉も通じない獣の中の獣。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
大神は街の守護者、獣のルールの裁定者としての特権を失い、非常に苦戦する。
第2話で『女子供は引っ込んでろ!』と、不器用にマチズモを振り回していた男が地に伏せる時、少女はこれまで遠ざけられてきた暴力の渦中へと、己の意志で踏み込んでいく。
大神の専売特許だった戦闘能力が、荒れ狂う暴力を止めるためには必要であることを、みちるはこのとき飲み込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
無力でいて良い子供の特権から、自分の足で踏み出した、とも言えるだろう。
子供にそんなことをさせたくないから、大神は体を張ってきたわけだが、しかしみちるは止まれない。
何も出来ない自分を知っているからこそ、何か出来る自分に成りたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
みちるを(そして多分、あらゆる子供たちを)突き動かす衝動に背中を押されて、みちるは大神の領域へ入門してくる。
それは警察署へ同行することを呼びかけた、大神自身の変化が波及した決断だ。
みちるの決意は未だ小さく、慣れない戦闘でどう戦えばいいか、悩み身動ぎする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
大神は年長者として戦友として、助力を差し出しエールを送る。
『強く、もっと強く羽ばたけ!』
その言葉こそが、みちるの翼を大きく変化させていく。
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ボリスの奸計で怪物に落ちた矢場は、もう言葉を使えない。荒れ狂う暴力≒獣性を制御し、誰かと繋がり隣り合う道には戻れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
飛び、落ちる。
幾度も繰り返されたモチーフは、共同体の中で暴力が爆発する事態を回避し、みちるが不条理と戦う武器として、すこし位相を変えて再演されていく。
放たれたシュートが空を泳いで、ゴールに入る(あるいは入らない)ように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
翼を自在に生み出しうる少女たちは、しかし現実の重力に惹きつけられて、よく落ちる。
高い空を求めつつも、不自由な心と世知辛い世間が邪魔をして、思うようには飛べない。飛んだとしても、すぐ落ちる。
バスケ部所属だった”人間”みちるが、アニマシティという新たな現実ではまだ、ゴールを決められていないこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
空を求めつつ、不自由に取り囲まれていること。
これはこのお話を規定する、かなり大きなフレームだと思う。だから文句なく高く跳ぶのは、お話が一つの答えを掴みきった後…最終回なのだろう
大神との絆、新たな可能性で掴んだ”攻撃”は矢場を止め得ず、大神は致死の血を流す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
暴力が交錯する瞬間、否定し得ず産まれる”死”の生臭いリアリティを前に、初心な子供は無力に震える。
暴力の嵐を前に、人間はとても小さい。
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それでも(他人と自分の)血を流しながら、ずっと戦ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
みちるにとって初めて出会う極限的暴力という異物は、大神にとっては自分を生み出した揺籃であり、呼吸し吐き出す日常である。
大したことない。俺はまだ、戦える。
そう強がることで、いつでも立ち向かってきた。
ここで獣=人たる士郎が、人でなく犀でも無くなってしまった矢場に対し(再度)小さく書かれるのは、とても印象的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
手綱を離し、自分の中の獣に、誰かが押し付ける謀略に身を任せてしまえば、身の丈は膨れ上がる。
でも弱く小さい存在であることにしがみつくことでしか、守れないものはある。
士郎はそれを手放したくないから、チョーカーで傷と力を封じてきたわけだが、みちるが暴力の手中に落ちたことで覚悟を決め、”化け”る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
それは切り取られた腕を刃に変えて、暴力の嵐に同一化していく矢場の変化とは違い…そして同じだ
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化けること、変わること。己を捨て、先祖返りすることで現状を突破していくこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
それはヒロイズムの源泉であり、一歩間違えば制御を失う危うい力だ。大神が一歩先んじて体験した危うさに、みちるの可能性もまた、隣接している。
それでも、大神士郎は自分を引っ掴み、赤い血を流し続ける。
神々しい完全獣化を果たし、怪物を四つに断ち割っても、士郎の傷は癒えない。赤い血を流す弱い人間であることを、手放しはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
弱い誰かと自分自身を守るために、不器用な狼神が支払う赤い対価は、神様になっても消えやしないのだ。ハードボイルドだねぇ…。
大神と市長が共有する秘密を、今回のみちるは聞き落とさない。大人の事情に耳をそばだて、おずおずと踏み入っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
アニマシティに流れ着いて、理不尽と発見に揉まれながら過ごした日々が、少女の魂を変化させている。
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神に変じつつ、あくまで人として傷つき血を流す大神が、傷を癒やすソファ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
それと同じ高さにみちるは腰を落とし、市長は立ったまま背中を向ける。
自分と大神が経験した、重たい現実。共有される秘密と覚悟に、ちっぽけな少女が踏み込む資格があるか、ないか。
それを、賢明なハダカデバネズミは測っている。アニマシティという”巣”を作り、人間と獣人の関係性を少しでも善くした社会的偉人が、真社会性のトーテムを持っているのは、少し面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
"Mole Rat"は果たして、人間最強の道具たる言葉で、重い真実を話してくれるのか。
そこに踏み込むためには、みちるの内省…それを外側に羽ばたかせる”言葉”が鍵となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
みちるは今までこの街(目の前にいる市長が作った街!)で経験し、発見した様々なものを繋ぎ合わせて、自分の…その心に写った世界の真実を、自分の言葉で伝えていく。
ここまでみちるは、色んな”新しい自分”と出会ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
獣人でしかない自分、何も知らないからこそ知りたい自分、人でもある自分。
今回大神に認められて、彼が身を置いてきた暴力と正義の領域に踏み込んだことで、みちるは偏見と差別に満ちた自分を発見する。
それは、いつでもそこにいる。
しかし様々に思い知らされることで、”知らない”は変わっていくことが出来る。そのこともまた、みちるはアニマシティの喧騒から学び取っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
自分が変わることが出来る存在であること。過ち傷つき、傷つける弱い存在であること。
その両方を見据えることで、過去の扉が開いていく。
なずなと話している時は、取ってつけた虚飾を象徴していた狼神像が、士郎が傷ついたこの場面では彼の傷と秘密を象徴するように”化け”ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
コンテ・牛嶋新一郎の冴えであろうか。象徴系を闊達に使いこなす冴えが、今回特に元気だ。
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一千年前から繰り返されてきた、人と獣人の関係性。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
言葉で積み上げた共感が、刃で簡単に引き裂かれ、身も蓋もない結論と落ちていく、ありきたりの悲劇。
その犠牲を全て吸い上げて、大神士郎は神へと変わった。殺されたから殺す、復讐の獣に。
その赤い神話を、市長はみちると同じテーブルで話す。
暴力と対話が複雑な渦を巻く、銀狼の神話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
市長はその語りべであると同時に、当事者でもある。
憎むべき敵…人をやめた獣と同じく血まみれの自分に気づいて、納めたはずの牙が、再び荒れ狂う現場に、彼女はいたのだ。
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アバンで印象的だった瞳が、大神の生き方が変わるシーンで再び顔を出している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
それは自分の悪夢を映し、獣に堕ちた自分を反射する鏡であり、誰かと繋がりうるコミュニケーション・メディアでもある。
怒りと暴力に身を投げ、言葉を捨てることはそれを閉ざしてしまう。
士郎は暴力がもつ理不尽な危うさ、それに押し流される自分の弱さを、既に知っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
知っているからチョーカーで封じ、知ってなお獣人が獣人として生きれる夢を守ろうと、体を張って戦ってきた。
死に、怒りに我を忘れ、己を封じる。
傷だらけ、間違いだらけの、あまりに人間的な神話。
大神士郎は、今もなおそれを生きている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
銀色の救世主と、綺麗に祭り上げられるだけじゃない。荒れ狂う力を恥じ、人のあるべき姿に悩みつつも、掴んだ答えを譲らぬよう意地を張り続けている。
その重さが、みちるには判らない。
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判らないからこそ、自分がわかるものをそこに繋げて、すこしでも解ろうとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
善良と優しさで包んだ無理解が、少女を殺しうることを既に見ているからこそ。
その他にも世界に満ちている沢山の理不尽と、それでも自分にできることを一個ずつ、己のものにしてきたからこそ。
みちるは天井の柵が作り出すフレームからあえて飛び出さず、自分と士郎の境界を…男女/年齢/体験/価値観の差異を身長に保ったまま、そこに橋をかけていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
自分を捨て、他人を塗りつぶして一体になる気持ちよさではなく、判らない現実を微笑んで受け止めて、いつか自由に飛ぶ空を見上げる。
立派だなぁ、と思ったし、このアニメを見続け、みちる達を好きになってよかったなぁ、とも思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
な~んも知らないぼんくらティーンである事をちゃんと描いてきたからこそ、ここでみちるが果たす変化(あるいは飛翔)には温もりと重力がある。
斜に構えず、テーマとドラマに正対してる手応えがある。
神の実在を、親友だけには伝えたい。虚栄心を満たすために踏みつけにしているハリボテが、血肉を伴った隣人であると教えたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
みちるの真摯なワガママを、チョーカーを取り戻した士郎は受け入れる。
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ピンガが先週背負い表現したように、翼は自由への切符ではない。空にすら銃弾の檻があり、権力と重力はいつでも、複雑に獣と人とを縛っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
それでも力強く羽ばたけば、柵(窓枠、ガラス、見えているけど超えられないもの)を飛び越えて、大事なひとへとたどり着ける…かもしれない。
なずなの元へ真実を携え”飛んでいく”運びには、前半おずおずと差し出されてきた空と跳躍…そこに続く飛翔のモチーフが、みちるの变化能力の成熟、自己像の確立とともにより前面に押し出されてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
イカルスのように、人の飛躍は常に墜落と隣合わせだ。獣人に”人”が入る以上、それは避けられない。
分かり合いたい。自分でいたい。大事なものを守りたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
そういう地面に足がついた願いも、争いの宿命に飲み込まれ、血に塗れ暴走して、獣の素顔を簡単に顕にしていく。
碌でもなく身も蓋もない方向へ、現実なる物語は簡単に滑り落ちていく。
そういう繰り返しを、大神は喉に刻み、みちるは知らない
一千年に渡り刻まれた、血みどろの秘史。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
獣にとっても人にとっても悲劇であるそれと、切り離された元・人間。何も知らない子供。
であるからこそ、”Bran New Animal”として新たな変化を掴めるかもしれないみちるは、最も旧き獣である大神と今回共に闘い、その歴史を共有した。
知ること。語ること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
人の領分であるはずの智慧と言葉が、断絶を乗り越える力強い翼となりうるか。それが上から目線の特権ではなく、浅はかでバカな小娘ですら(だからこそ)掴み取れる、血の通った美質であると示せるか。
後半は、如何に思いを伝えていくかという闘いも大事になりそうだ。
そして悪徳の重力は、その正体を隠しながら静かに這い寄る。真実を預けたふりで、密室の只中何かを企む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
四つにかち割られた矢場を変質させたボリスと、アランは同じ仕草をする。それが静かな雄弁を伴って、二人の共犯を教える。
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オープンエアでありながら、それが柵に囲まれている不自由な…人間的な領域であることを強調されて描かれる、バスケコートのある屋上。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
この物語を凝縮したような、主人公たちの魂が繋がる舞台と正反対の、閉じて不実な密室にアランとボリスが身を置くことは、つまり彼らが”敵”だということだ。
しかし彼らが何を企み、何を求めて秘密を撒くかはまだ明らかにならない。それが顕になった時、主役たちが真実求めるものもまた、鮮明になるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
瞳は世界が入る窓であると同時に、己を写す鏡でもある。それは相容れぬ”敵”の瞳であろうと同じであることは、士郎の回想が示した。
何も知らず、だからこそ知りたいと願うみちるは、”敵”の瞳に/瞳から何を見出すのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
知り、生きようとする願いを捻り潰す暴力の領域へと足を踏み入れ、血みどろに傷つきながら戦ってきた士郎の過去を知ったことは、みちるに何を与えるのか。
物語も、いよいよ佳境に入ってきた。
士郎の”大人っぽさ”に反発していたみちるが、傷と弱さを封じながら不器用に戦ってきた彼の生き様を、それを知ろうとしなかった己の愚かさを認め、だからこそ知りたいと、彼が”子供”である自分を遠ざけようとしてきた理不尽な世界へ踏み込む翼が欲しいと明言できたのは、とても良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
その自己認識こそが、みちるの翼だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
腕を伸ばし、力強く太く変え、翼を羽ばたかせる。みちるのフィジカルな変化は、つねにメンタルな改革と混ざり合いながら、彼女に立ち向かう力を与えている。
”化ける”能力は、みちるの心とシンクロしながら、その可能性を拡げているのだ。
この幸福な小休止の後に、おそらく密室から陰謀が溢れ出す。偶像と祭り上げたなずなを、謀略で絡め取ったアニマシティ全体を飲み込んで、”敵”が動き出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
人を血泥に投げ落とす引力の存在を、けして無視できないお話しである以上、暴力と理不尽は力強く、義人達を打ちのめすだろう。
しかしそれでも、知ろうとする智慧、解ろうとする心、歩み寄る言葉と翼が人を”化け”させると、希望を捨てない能天気なお話しでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
差別、暴力、理解。
非常に現代的で、同時に普遍的でもある問題へ、獣の皮を被って切り込んでいくお話しの底を、人間性への信頼が支えていること。
それを確認できる、転換点のエピソードでした。とても面白かったし、良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月28日
士郎さんが血と憎悪に狂う宿命を克服できていないと示した以上、多分もう一度、彼は獣になるのだろう。その時ハンパな狸が、彼の内なる人を呼び覚ましてくれることを、強く期待している。
次回も楽しみだ。