乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
透明な悪意を掻き立て、カタリナの破滅を狙う黒い影。
闇の魔力にねらわれたメアリは、その姿を消した。
ついに明らかにされる会長の本性と、一筋の涙。
悪役令嬢は無垢なる救済を携え、”破滅フラグ”に立ち向かう。
そんな感じのアニメはめふら、最終局面開始ッ! である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
チラホラと匂わせてきた会長のラスボスオーラを回収して、最後の”破滅フラグ”にカタリナとゆかいな仲間たちがどう立ち向かうかを、丁寧に刻んでいくエピソード。
背景の境界線や明暗を的確に活用し、キャラの心境を見せる演出が冴えた。
この冴えた絵作りを誰がやっているのか。『演出:一夢庵ひょっとこ斎』は何も教えてくれない…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
あれか、『風流せい! 破滅フラグで風流せい!!』という、最終回直前のメッセージなのか。さぞ名のあるアニメ戦士とお見受けしたが…。
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まぁコンテの澤井さんや、他のスタッフの力添えも大なんだと思うけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
ポップで楽しいお話を元気に弾ませつつ、伝えるべきメッセージをしっかり圧縮して画面に仕込む演出力が最後まで続くのは、このアニメの強いところ。勝てる態勢作って、勝つべくして勝ってるなぁ…。
さて、唐突に吹き荒れた断罪の嵐から物語は開始する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
ゲーム内部で必ずやってくる固定イベントは、”カタリナ”が”私”となり周囲を変えてきても、なお起こる。
その源泉はカタリナの悪辣な人格ではなく、何者かの黒い悪意であるが…。
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男衆が冷静に振る舞う中、独り握りこぶしでグッシャー告発状握りつぶしている、メアリ・ハントの”獣”に信頼感しかねぇけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
ゲームでは向こうに周り”カタリナ”を断罪してきた攻略対象は、『こいつバカだから難しいハメ技とか無理だよ!』と、罵倒めいた信頼を寄せてくれる。
それは追放後生き抜くためにクワ持ったり、玩具の蛇を投げる練習をしてたから回避できた”破滅フラグ”では、当然ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
僕らが見てきたように、彼らが体験してきたように、カタリナが他人の痛みや苦しさに自然と寄り添い、救済の意識すらなく手を差し伸べてしまえる、自然な優しさ故だ。
カタリナはなんで自分が助かったのか、運命が変わったのか自覚していない。無知で無垢…バカだからこそ人間の大事な部分を良い方向に変えて、窮地を本気で助けてもらえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
この性質が、モテモテなのに全く脈がない、恋愛鈍感体質とも繋がっているのはなかなか面白い。
自分が恋の対象になりえると、世界と自分の成熟をカタリナが自覚してしまうと、物語の味は大きく変わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
チチだけ育った脳内六歳児が、己の行い故に皆に愛され、人生の厄介事を蹴り飛ばす痛快。
僕が作品に感じる醍醐味は、『モテてる、イイコトしてる』とカタリナが自覚してしまう壊れる気がする。
カタリナは事態の深刻さも、その不自然さも気にせず、モグモグご飯を食べる。それで良い…もっとお食べ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
まぁ難しいことは周りの人がいろいろ考えてくれるので、カタリナ様は人間の根っこを支える部分にズカズカ踏み込んで、決定的な一発を入れれば良い…
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とは終わらず、運命はまず本来の”主人公”を闇に飲み込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
フラグを乗り越えたと一安心して、破滅の兆しを見落としてしまう。『そういう難しいことに気を配るの、カタリナ様に出来るわけねーだろ!』ってのはその通り。
出来ないことは、ちゃんと出来ないと描く。欠落の描写には、一貫性が必要だ
カタリナ様のおバカが、愛おしく貴い彼女の資質であるのは、断罪のシーンでも見て取れた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
皆口ではああ言いつつ…いや、心のなかでもそう思ってるわけだが、『バカで見落としばっかしてるから、カタリナ様はダメ!』とはならない。
それは今まで取り返しが付いてきて、補ってくれる他人もたくさんいる
それが今回も取り返しが付くのか…マリアを救出し、会長の心にたどり着き、自分の命も救う未来を掴めるかが、クライマックスの勝負になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
相手の表面を精査する賢さよりも、本質をぐっと掴んで踏み込む直感。闇の奥にある涙を見落とさない、優しい鋭さ。
それが、カタリナ唯一最強の武器だ。
そういうものを、全局面で放射していることを会長との会話はシーンは示す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
この後もそうなんだが、基本会長は画面を分断する縦の線を横切らない。境界線の奥に、冷たく自分を放り込み隔離する。
他の連中とは違って、お前に”攻略”はされないぞ、と線を引く。
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スクエアで冷たい直線が作る、背景の檻。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
そこから差し出された欺瞞の暖かさを、カタリナは素直に手に取り、飲み込む。
知らない、疑わない。
カタリナの愚直な無防備に、会長は未だ踏み込まない。人の心を操る魔力と、光を拒絶するネジレを笑顔の奥に隠し続ける。
カタリナ様が小難しい背景設定とか調べれるわけないので、そこらへんはジオルド様のお仕事になる。アンタ優秀だねぇ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
他者を歪ませ、自在に操る闇の魔術。それが人の命を啜って咲く魔花だとつぶやく時、ジオルドの声は少し熱を帯びる。
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それが僕には、少し嬉しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
カタリナが背負う暖色の輝きと、ジオルドが窓を鏡に見つめる、冷たい月明かり。
”賢い”ということは真実を暴き、正義を為すために必要な力であるけども、同時に人の心を冷ます声質を持っていると思う。
ジオルドはそういう、冷光に向き合い続けてきた。
世界の理も、自分の能力と立ち場も、全てが見えてしまう過剰な知性。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
それに冷やされていた彼にとって、カタリナがどういう存在であったか。恋も政治もゲームと受け流す冷たさに、散る命に燃える心を持っているのか。
クライマックスに必要な情報を伝えつつ、様々な情感の籠もったシーンだった。
先週の愛しい空回りと合わせて、『余裕に見えるジオルドが結構おバカで、必死なんだ』と判る描写が最終局面で出てきた。良いことだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
同時に状況を根本的に制圧するべく、マリア救出と並走して情報集めをテキパキこなす優秀さ、ある種の冷徹さも見えて面白い。
ジオルドに、カタリナのような暖色の温もりはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
人間の一番柔らかいところを直感的に見据えて、グッと踏み込みすくいあげる。そういう事はできない。カタリナが”バカ”なのと同じだ。
だからこそお互い違う資質が噛み合って、状況をより良い方向に進めていくのは面白い。相補う、物語の妙味だ。
あと『生まれ持ってそんな力を持っているなんて…』と、カタリナが言いかけたのは短いけど大事な描写だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
それが犠牲を前提にした後天的力だという、情報だけではなくて。
『…』の後に省略されただろう『可哀想』という思い、自分の命を狙う敵にすら想像力を伸ばしてしまう仁徳が滲んでいる。
キースの時もそうだけど、カタリナ様は傷ついた人を見ると自分の利益とか不利益とかガン無視して、可哀想だから手を伸ばしてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
他人の辛さを勝手に想像して、自分のものと引受けて自分に出来ることをする。
人間に当たり前に備わって、でもなかなか行使できない共感と善行を、悪役令嬢はブン回す
それが、幼少期のように無自覚な奇跡を呼び込み、バッドエンドの向こう側に物語を連れて行くのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
人格を形成する大事な時代に、出会うことがなかったからこそ運命と心を捻じ曲げた”隠しキャラ”に、カタリナの身勝手で尊い共感は届くのか。
最後の課題が表に出る前に、ひっそり魅せているのは上手い。
まぁそういう人なんで、涙を流すのは常に自分の破滅ではなく、大事な”誰か”のためですわ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
ドチャクソ粗雑な、たった2ページの転生チート。『こんなもんが役に立つわきゃねぇだろ!』と言いたくもなるが、カタリナ様目線だと最後の防衛線なわけよ。
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前世のゲーム知識は、メタ領域からカタリナに特権を与えているようでいて、あんま役には立っていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
思いが溢れれば効率的な攻略蹴っ飛ばしちゃうし、そもそも完全攻略なんてしてないし、バカだから対応策もピントがズレてるし。
何時だって悪役令嬢は、一番素朴な”人間”で運命と闘ってきたのだ。
なので、突破口は何時でもフラリと開く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
カタリナが保険医と繋がる境界線は、カッチリした直線ではなく、柔らかなヴェールで描かれる。そしてそこを、身を乗り出して越境している。メアリとの境界線も、”樹”という自然物で距離は近しい。
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対して会長が、危うい宵闇に伸ばしてくる手は人工物の硬い線で遮られ、カッチリした縦線で遮断されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
あくまで、お前の領域に踏み込む気はない。
殺意にすら研ぎ澄まされた隔意はしっかりビジュアル化され、対してカタリナは素直に手を伸ばす。
生徒会室で、差し出された紅茶を飲んだように。
会長が偽りを保ったまま、差し出してくる手。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
それは不意に蘇った記憶、無自覚に無防備に口をついて出る真実によって崩壊していく。モノトーンのあっちゃんも、前のめりに”線”越えてるねぇ…。
一回はトボけた会長も、二度目の指弾には陰りをまとう。
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突如叩きつけられた憎悪、壁の向こうの悪意。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
それは脳天気なカタリナにとってはなかなか想像できないものだし、真実を探る情報も足らない。
会長は闇の魔力を使う。人の心を操る。
そのために犠牲になった人命は、彼が望んで捧げたのか、はたまた別の事情があるのか。
遠巻きに冷たい悪意を投げつけて、『どっかに行ってくれ!』と吠えるのは、身にまとった闇を剥ぎ取るほど、カタリナから伸びる光に惹かれているからか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
境界線を超えて、叩きつけられる感情には、完全な害意というには少し、湿った感触がある…気がする。
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光と闇の対峙シーンで、マリアが発している”光”が如何にも主人公らしい強い白光なのが、ジオルドと話すシーンでカタリナが発していた暖光なのと、面白い対比だなと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
彼女は世界でも珍しい光の魔力に選ばれた、特別な存在。でもその特別さは、会長の闇を強くするばかりだった。
同じく闇を抱えていたジオルドが、背中を温めてくれるかけがえのない光とすがるカタリナは、”主人公”では本来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
世界全ての悪意を背負って、カタルシスのために断罪される…その運命を変える人格も持ち得なかった、ただの端役だ。
しかし今、ゲームではない現実で彼女は、間違いなく”主役”だ。
カタリナが”集約”なのは土ボコしか出来ねぇお粗末な魔力のおかげでも、物語内部にメタ的に設定された役割でもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
彼女がひどく無防備に素朴に、他人の痛みに共鳴して、自分の足で心の柔らかい部分に、そっと手を伸ばし続けてきたからだ。”主人公”の強い光ではなく、暖かな光を背負い続けたからだ。
自分の手を握りつぶす、直接的な害意。演技でしかなかった絆を、カタリナはもう一度つなごうと…もっと近い場所で涙を拭おうと、頬に手を伸ばす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
自分を闇の中に置き、心を悪意の仮面で覆った奥にある物語の真実。そこに、カタリナは踏み込もうとする。
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バッキンバッキンに悪意叩きつけられてるのに、泣いてる子供に手を伸ばしてしまえるのは、彼女が”バカ”だからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
自分の窮地にも利益にも無頓着で、人間にとって一番大事なものをすぐ見つけ、踏み込んでしまえる資質を持っているからだ。
人がそうあるべき、でもなれない善良さを抱えているからだ。
それでグイグイ先に進んできた物語は、会長が張り巡らせる境界線の奥へ、一足先に主人公を進めた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
偽善を嫌い、心からの善性を信じられない。しかしそれを直接排除するのではなく、まどろっこしい心理操作で『どっか』に遠ざけようとした。
会長のおこないが、仮面を守ろうとする賢しさからくるのか。
はたまた笑顔と悪辣、二重の仮面に隠した思いが軋みつつ、救済を求めているからなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
闇の奥の真実を、光の勝利を早く見たくなる、良い前編でした。
いやまぁ…あの涙に添えられた手を見ちゃうと、まぁカタリナ様大勝利以外のルートがねぇ。善因は善果を呼ぶと、素朴に信じ続け叫び続ける話だからね
つーかああいうボコボコに殴られた結果誰にでも噛み付くようになった子猫みてーなボウヤは、聖女に己を受け止められ、張り巡らせた防壁を突破されると”秒”だってのはよく知ってんだよなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
過去攻略してきた連中も、そういう頑なさを切り崩されたからこそ、カタリナ様にメロメロなわけで。
ドキドキするヒキと、『カタリナしか勝たん!』という安心感の両立は流石だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月6日
『心を閉ざしたヤツは、暴かれた時、もろいよ』と、さとりが囁く最終決戦であります。
カタリナ様が人生を切り開いてきた、唯一最強の武器。
”愛と勇気”が闇を払うのか。
次回後編、非常に楽しみですね!