デカダンスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
凶獣ガドルの襲来により、文明圏が壊滅した世界。人々は要塞であり居住区でもあるデカダンスを中心に、最後の楽園を形成していた。
ガドルによって腕と家族を奪われた少女ナツメが、追いやられた社会の端っこ。
そこでくすぶる男カブラギが、窮地に見せた勇姿とはッ!?
そんな感じの荒廃世界の命がけ自分探しストーリー、堂々開幕である。第一印象は『”MADMAX”+”モンスターハンター”+”働きマン”』という雰囲気で、各領域が贅沢に頑張っていて、見せ方も抜かりがなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
しっかり作品が、こちらに挨拶してくれる第一話で良かったです。
お話としては怪物の襲撃で瓦解した文明世界を、荒っぽいタフネスで突っ走る無軌道な物語…というには、巨大ロボであり移動都市でもあるデカダンス中心の社会性が、かなりシッカリとある感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
戦士階級と生産階級は明確に別れ、差別と抑圧が弾けそうな世界のタガを、ギリギリ締め付けている感じ。
戦士たちはむっちゃヒャッハーしとるけども、主人公・ナツメは光当たる花形の世界ではなく、その後ろで壁を磨き、守ってもらう側からスタート。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
そしてもう一人の主役だろうカブラギは、光当たる側から日陰にドロップしてきた、くすぶる中年である。
この対比は化学反応を期待させ、なかなか良い。
荒野世界は野放図な広さ、尋常じゃないデカさが生み出す開放感が大事だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
ので、良い美術とビジュアルデザインをブン回して見せつけたのは、良い初手だったと思う。
青い空、広漠たる世界、そこを駆け抜ける鋼鉄。問答無用に良い…。
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しかしそこには生活があり、社会がある。怪物を殺す武器と、人生を守るシェルターが同一存在なのは、なかなか面白い設定だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
刃と子宮が同一化してる場所で話を回すという、SF旅モノの基本をシッカリ踏襲といえば、その通りか。”無限のリヴァイアス”とか”超時空要塞マクロス”とか。
その手触りも、手際よくカナメの時計を”現在”まで進めるストーリーテリングに乗っかって、スルスルと飲み込める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
かなり圧縮率が高いんだが、『あー、だいたいこんな感じか』と世界観もキャラクターもドラマも噛み砕けるよう、色々工夫してくれた第一話でとても良かった。
片手がないから、臭くてヤバい壁磨き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
ナツメの”恵まれない”スタートを追いかけることで、デカダンス社会が強い抑圧によって成立し、バキバキに差別が常態化していることはよく判る。
色んな意味でナイーブなもん主役に背負わせたな、と思うけども、今後どう語っていくかは非常に大事だろう。
腐肉まみれのシンデレラが、ガラスの靴を貰って戦士になりました!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
そういう話になっちゃうと色々ヤダ味がヤバいと思うのだが、裏方稼業も毎日を必死に生きてる様子、戦士階級の命が紙みたいに軽い状況を見落としていないので、そこら辺はヒネると思う。つーかヒネらんとヤバい。
今回はダダダーっと荒野世界を駆け抜け、アクションが動きだし物語が点火する所まで、一気に疾走る話だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
カブラギの過去に何があったか?
巨大ロボ・デカダンスの成立過程は?
そこら辺の疑問はあえての置き去りであり、しかし物語に噛み付くには十分な素材が、ちゃんと提示されている。
例えばナツメは、理不尽な社会に憤りつつも腐らず、目の前の仕事をしっかりやる人だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
ぶっきらぼうなカブラギ組長にも親身に接し、親の仇、自分の腕を奪ったガドルにも、色々あることをちゃんと理解できる。パイプくん、キモかわいくてすっごく良いね…。
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『世の中のことを知らないからこそ、世の中に切り込んでいける若者』という類型を背負いつつも、彼女はステレオタイプに支配されないし、若すぎるエゴの暴走をブン回すわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
かなり好感が持てて、話を牽引するパワーもあるとしっかり伝わる”IGNITION”である。
戦士への憧れを強く持っていた彼女が、人間が紙のように吹き飛ぶ戦場のリアルをその目で見たことで、認識をどう変えていくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
それに乗っかって、戦士と裏方の階級構造、それぞれが見据える荒野世界のリアルも、今後切開されていくだろう。個人的には、社会学の視点があるのは好感触。
カブラギの方は謎多きむっつりオジサンであり、同時にその奥に触れたくなる可愛げと謎のチラ見せも上手いこと行ってて、こっちも気になるキャラだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
ロートルとルーキーのツインエンジンをどうブン回すか、なかなか楽しみである。ベーシックながら、強い物語構造だからな、このW主役。
デカダンス内部の飲んだり食ったり仕事したりを、ジワリと魅せてくれた後はアクションの時間である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
戦士たちのルックは概ねウォーボーイズそのまんまであるが、ガドルの緑の血由来であろう反重力技術が、上手いこと新鮮味を足している。
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壁掃除の時はニアミスで留まっていた”死”が、戦場では凄い気安さで命を略奪していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
同時に平時なら絶対に死ぬ落下は、戦場を包むふんわりとしたバブルに覆われて、一瞬の奇跡を生み出す。
壁に張り付いた日常と、荒野で暴れ狂う戦場。それが交錯する瞬間は、なかなか印象的だった。
カブラギは不安定な浮遊戦闘を、画面中最も巧妙に乗りこなし、ガドルを殺して殺して殺しまくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
その時緑の血を回収しているのが、仇の血で駆動するデカダンス世界の矛盾とタフさを感じさせて、なかなか面白かった。
生きるためなら、敵の血も啜る。そういう世界なのだろう。
人間サイズがやれるのは露払いまでで、デカダンスは超巨大ガドルを前に真の姿を表し、周辺被害お構い無しで超絶パンチをぶっ放す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
裏方と戦士だけに見えた社会構造の断絶は、戦士とロボ管理者という上層の亀裂も、実は含んでる感じ…かなぁ?
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迫りくる巨大な災厄に、突き立てられた鋼の拳。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
その輝きを見て、ナツメは瞳を大きく開く。『やっと終わった…』と、頭を下げてやり過ごした同僚とは違う所に、彼女は踏み込んでいく。
しかしそこには、様々な試練が待つだろう。ふわふわ戦闘は難しそうだし、荒野世界の抑圧は強い。
『戦士としてガドルをぶっ殺しまくって、世界を救う』という、オールドスクールな英雄物語はナツメに用意されていない感じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
パイプくんを撫でてしまったときから、怪物にも色々あって、個別の在り方をちゃんと見ないといけない話なのだということは示されている。
そもそもナツメ自身が、己の身体的ハンディを理由に社会の壁に夢を阻まれる被差別者である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
個人を個人として見る。
荒野世界には過ぎたヒューマニティが、このお話の軸になっていく…のか? ここら辺は、今後の展開を見守りたい所だ。職業的サクセスと殺戮を、どう絡めて立てるか、かなぁ…。
そして最強の戦士であることが判ったカブラギは、なぜ壁磨きに甘んじているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
若い立場から上昇していくナツメに対し、高い所から落ちた段階で、また戻っていく(だろう)物語を背負うカブラギ。
彼の過去を彫ることで、デカダンス社会の内情、そこに渦巻く感情も見えてくると思う。
カブラギが回収してたノイズとか、最後に写された謎の空間とか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
気になる謎も上手くチラ見せされて、次回以降への視聴意欲を煽ってくる。
ガドルの血を燃料に社会が駆動している以上、人間と怪物は見た目以上、相互侵犯しとる感じか?
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ドラマが踊る世界の広さ、そこに存在する生っぽい社会の諸相、そこで生きる群像の顔。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
作品が見せるべきものが、力強いパワーと巧妙な繊細でどどんと押し寄せてくる、良い第一話でした。
魅力的なワケわかんなさと、適切な説得力の同居。難しいけど必要なことを、ちゃんとやってくれた。
荒々しくも細密で、開放されているようで抑圧に満ちた荒野世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月8日
ここをナツメとカブラギがどう泳いでいって、何を成し遂げるか。そのドラマの軌跡が、どういうテーマを彫り込んでいくか。
今後に期待が膨らむ、良い点火でした。エンジンが本格始動するだろう二話以降も、とても楽しみです。