GREAT PRETENDERを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
迫る麻薬制作の実演、FBIからの誘い、詐欺師たちの不協和音。
エダマメをグツグツと煮込む状況は、静かに温度を上げていた。
その只中で、青年は家族の肖像を見る。
無邪気を装う子供と、それを守らんとする父に過去を重ね、選んだ道とは…。
そんな感じのクライマックス直前、グレプリ第四話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
こっちの期待通り、サラザールおじの個人的な事情を掘り下げ…つつ、主人公エダマメがなぜ半端な詐欺師か、心の奥底に何を望んでいるかを、じっくりスケッチするエピソードとなった。こういう、綺麗にカウントを整える話に弱い。
あと、もう取り返しようがない己の黄金期を、現在に重ねて生き方に悩む話にも弱い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
カッサーノにアンダーソン、下ネタと暴力をブン回すヤな大人白人が目立つからこそ、子供の脆さと強さ、震えつつ自分なり大事なものを守ろうとこらえてる姿を見落とさない、エダマメの純朴がよく刺さる。
過去回想と現在の重ね方、サラザールと相互に影響し合う様子が鮮明に描かれるので、エダマメの心の動きも的確に伝わるし、彼をドンドン好きになっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
第一エピソードは主役(つまり作品)への愛着を作る大事な話だと思うので、こういう魅せ方でしっかり土台作ってくれるのはありがたい。
エダマメは他人を陥れる詐欺師でありながら、芯の部分に正義や真実への信頼が強い。それが裏切られたからこそ、やけっぱちで詐欺師になった、という部分も描かれてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
その源泉を探るのも、今回のエピソードの機能であろう。
やはり鍵は、幼年期にある。
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清く、正しく、美しく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
オヤジが真っ直ぐに背筋を伸ばして、仕事を果たす姿に目を輝かせた。
肩車で歩いた美しい夕日の中、染み込んだ教えを険しい現実が裏切ったとしても、”家族”への愛着と消えない倫理は、呪いのようにエダマメを縛る。
朝、夕、夜。時間を変えて、幾度も切り取られる家族写真。
それがエダマメの視界を何度も横切る時点で、彼の心が何に支配されているか、視聴者にもよく判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
見ている側もハメてくるコンゲームとしてだけでなく、キャラやドラマを動かす燃料もまた、結構ひっそりと提示され、視聴者の解釈を待つスタイル。
品と食べごたえがあって、僕はとても好きだ。
苦し紛れの改装要求は、時間は稼ぐが問題を解決はしない。カッサーノは家父長的な豪腕でもって、状況を強引にぶん回してリミットを切る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
それはポーラに筒抜けで、ドローンを駆使した監視でもって、エダマメに狙いを定めている。
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”ふり”でしかなかったアンダーソンの監視が、バレバレの旧時代式アナログだったことを踏まえて、最先端な監視装置でポーラの凄みを見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
カット単位の受け渡しだけでなく、話数をまたいで意味を作る演出の視力も、やっぱこのお話いい。まとまった話数を繋げて、エピソード作る強みって感じ。
写真や映像に誰かを捉えるカットもこの話数多用されていて、他人との距離、心の置けなさ、それを超越して身近に置く意味とかを連動させてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
まだ腹の底を見せてないローランは、常に携帯電話越しにエダマメと通話する。
それは遠くて、心を置ききれない距離感。だから、裏切りもする。
わざわざ鼻を摘んで、サラザールを起こさないようにコンタクトするアビーのプロっぽさと、それに気づかず感情のままデカい音出しちゃうエダマメ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
それを聞き逃す間抜け…に見えて、抜け目なく網を張ってるサラザールのキレ。
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夜の会話は、色んなものが見えて面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
『ん?』と引っかかった所が大概意図的で、後々種明かしがある所が、フェアなコンゲームっぽくて気持ちいいね。
流石に元ギャングボス、タダの間抜けな脳筋ではないわけだな、サラザールおじも…。
それを知らしめる前に、ワンクッション侮らせてくるのが巧い
あらゆる創作は人間が作るものなので、それを受け取ったときの反応もまた、ある程度以上計算されシーンは積み上がるものだと思うけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
視聴者のリアクションを予期して掌で転がすためには、狙った反応を引き出すよう、ドラマや描写をしっかり仕上げないといけない。
設計図だけあってもダメで、パーツだけ転がっていてもダメ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
理念と実践の幸福な連動が、狙ったとおりにハメる創作の妙味を生み出すと思うけど、このアニメはそこら辺、非常に的確に、細密に組み上げてくれて気持ちがいい。大伽藍としてのフィクションにかぶりつくのが、僕は好きなのね。
サラザールとエダマメの距離感は、まだ遠い。シート一つ分開けた距離感から、家族の肖像を視てもう一歩踏み込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
自分が守りたいと願って、もう壊れてしまった幻影を見ながら。
こっからは…優しいおじさんをバコバコお前ら(とエダマメくん)の心にぶっ込む時間だッ!
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息子がおじに飛びつくときの勢い、それをタフに受け止めるオヤジの腕力。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
ここまで印象づけてきた『カプセルトイ好き』という属性を上手く使って、エダマメが息子と…彼に重ねている幼年期の自分と接近していく様子も、巧妙に描かれる。
それは優しさと正しさに満ちて、だからこそ裏切られた傷は深い。
エダマメがサラザール一家に思いを寄せることが、最後の決断を決定づける話運びなんだけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
サラザールの側でもエダマメを親しい存在として受け入れ、心のなかに入れていく様子が丁寧に書かれる。
このサラザールおじの表情芝居とか、本当に良い。一気に彼が理解る。
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エダマメは子供と同じ視線に降りて、自分の大事なものを差し出せる青年である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
”七人の侍”なんかもコスりつつ、かつて裏切られた子供だからこそ判るものを、至近距離で感得していく。
パパは立派なボディーガードだと、はしゃぐ子供の笑顔。
しかしその裏には、寂しさと嘘があるのではないか。
自分が父の裏側を想像すらしない、無邪気な子供だったからこそ、子供なりの賢さと、それを表に出さない優しさに感じ入る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
子供をただの純朴の象徴とは描かないことで、その複雑さを感覚できるエダマメの繊細さ、詐欺に染まりきらない呪いの強さが、よく伝わってくる。
エダマメの中には、父に背負われた時代の清廉がまだ生きているし、失われたとはいえ(あるいは、だからこそ)”家族”への愛着も強い。非常にナイーブな意味で”子供っぽい”キャラなのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
そこに、露骨なファルスネタを押し付けてくるアンダーソンが割り込む。
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後にタマを潰すカッサーノにしても、距離を離して自分を遠隔操作してくるローランにしても、エダマメの周辺には父権的存在が多い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
自分の生き方を暴力的に、あるいは甘言で規定しようとする大きな存在に揉まれつつ、エダマメはこの事件を通じて、自己決定可能な成人へと己を変えていく。
そのフェティッシュの一つが”メガネ”である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
元々必要はなくて、”博士”を演じるための嘘の道具は、ポーラからのプレゼントとして、さらなる欺瞞のツールとして、エダマメの手に託される。
『ローランは利用してるだけ』と、ポーラは言うけども。
手渡された贈与は、最初から嘘と裏切りに満ちている。
涙雨のさなかに詐欺師の生き方を選んだあの瞬間から、エダマメは嘘と裏切りを商売にしてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
しかし心の裏には、父の教えと温もりを裏切れない自分があり、母を守れず世間に見放された痛みがうずいている。
それに目を塞いで、日本一の詐欺師とごまかしてきた日々は、ローランとの遭遇で終わった。
ポーラから送られたメガネは、エダマメが詐欺師として大人として何を選択するか、再度突きつけてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
麻薬を作るのか、作らないのか。
FBIに仲間を売るか、詐欺をやりきるか。
流されているようで、世界が…そして自分がどんな存在か感覚し決定するチャンスは、常に主役にある。
そうやって己を押し出した先に、どんな物語が待っているか。次回最終回を迎える第一エピ、その先の第二、第三ととても楽しみである…が、まぁそれは一個一個の描写を肥えた先にこそある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
野球場から、ぐっと縮まった距離。それは心の間合いでもある。
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エダマメはやっぱり”子供”に寄り添って、オヤジが判ってくれない(判ってくれなかった)複雑さに、しっかり目を向ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
それは何もわからないまま破綻した、自分自身の幼年期にもう一度目を向けて、自分の大事なものを思い出す歩みでもあるのだろう。
そんな子供を仲立ちにして、サラザールとの距離も縮まる。悪徳に身を置きつつも、家族を守るために闘う男。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
それは、家庭をないがしろに嘘と悪を積み重ねてきた、自分の父親のネガとして、エダマメの目に眩しいのかもしれない。
自分は間違えたからこそ、今目の前の”親子”は守りたい。
浅ましい代理行動ともいえるし、人間らしい切実さが匂うともいえる、青年詐欺師の想い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
それが美しい色彩にいろどられた、美しい日々にしっかり見えるのは、やっぱり良い。
息子が長く長く手をふる仕草、それをやめた後の暗がりで、彼の思いがしっかり伝わるのも素晴らしい。
全体的にこのアニメ、描いて伝えて判ってもらうようになっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
謎もキャラも、映像内のヒントを頼りに、自分で気づいたほうが面白い…という造りなんだと思う。僕はこうやって、解釈を委ねつつもしっかりガイドラインがあって、見せたいものがブレず伝わる話が好きだ。
やっぱり携帯越しなローランの忠告を、家族の肖像を背負いつつ受け止めて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
エダマメは嘘の象徴であるメガネを取ろうとして、可愛いくまちゃんに秘められたもう一つの嘘に気づく。
今更ながら、息子の部屋だったわけねココ。あえて掃除してねーのかサラザールおじ…。
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ここに監視カメラがあるということは、深夜の密会はサラザールに筒抜けだ。しかし、カッサーノは自分ではなく、会計士の”ボール”を潰した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
暴力を引き合いに、空々しく語られる”ファミリー”の絆。
それがスカスカだってのは、皆さんご承知だ。
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一座席分の間合いから、しみじみ良い時間を共有して距離を詰めたサラザール(”良き父”)に対し、カッサーノは過剰に間合いが近いし、ボスぶってる割に見下されているし、家族の規律は脅迫と暴力で維持してるしで、全てが悪い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
エダマメは、奴が振る舞わす父権とマチズモにはすり寄れない。
アンダーソンが脅迫文句として『刑務所でオカマ掘られろ』と持ち出してきたのと、カッサーノの”バッティング”は重なっていると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
性のほのめかしと暴力が連動している、過剰なマチズモ。人間の柔らかい部分に寄り添うどころか、バットでぶち壊す荒々しさ。
そういうのは、非常にナイーブな幼さを未だ生かしているエダマメ(と、彼を主役にするこの話)にはシックリこないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
エダマメは、己の中の子供に嘘をつかず生きる。
そういう決断を示唆するように、欺瞞と暴力、優しくない性に満ちたカッサーノは、非常にヤな感じに描かれる。
悪しき父の館から”ホーム”に帰ってきて、エダマメはサラザールの真意を問いただす。それはつまり、自分が何を求め何をしたいか、過去と現在に問い直す行為だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
ゴミまみれのテーブルを背負って語られる、ゴミまみれの半生。
自分は汚れた。だからこそ…。
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監視カメラで縛り付けられたクマちゃんと、苦いアルコール。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
同じ思いを共有する二人を見事に暗示するフェティッシュを切り取りつつ、サラザールは”父”の、エダマメは”息子”の想いを、それぞれ代弁する。
それはお互いの心の中にある、柔らかいものを晒す行為だ。
妻との約束があるから、まだ悪党を続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
母さんは死んでしまったから、詐欺師になろうと思った。
息子と父、お互いの立場は違えど、サラザールとエダマメはとても近い存在として描かれる。
立場が違うからこそ、自分ではよく分からないものを代弁して、そこに近づく助けにもなりうる。
サラザールとの対話を通じて、エダマメは父との思い出、何も知らなかった自分を見つめ直す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
猫グッズにまみれた玄関、ナスの味噌汁に文句をいう枝村少年、全てが壊れた瞬間を見守る親子猫…。
小道具に喋らせる演出が元気で、とても良い。マジ悲しい…。
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これで第2話の隙間が埋まって、枝村真人という人間が更に良く見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
カッサーノの信頼を勝ち得た、本気でクソ映画にのめり込んでしまう純朴さが何処から来て、どう裏切られたかも。
お母さんを、本当に心から守りたかった切実さも。
いやー…この過去でああいう別れ方するの、キツすぎるっしょ…。
真実裏切り得ないものが、なんなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
息子の思いを代弁することで、自分の中の子供と語り直したエダマメは、メガネ(嘘のツール)を手に取り決断を伝える。
裏切りの条件は、サラザールの保護。見据えるのは、闇の中輝く、家族の肖像。
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という感じの、枝村青年人生迷い旅でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
いやー…非常に良かった。この話数を挟むことで、エダマメがどういう価値観を持ち、何を譲れないかがよく見えた。
ここをしっかり描くことで、クライマックスに果たすだろう決断と変化がストンと、腑に落ちる。とても面白いと感じる。
そういう準備をしっかりしてくれて、非常に良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
エダマメが自分の中の真実と向き合う鏡な、サラザールおじさんもチャーミングにタフに…『あ、この人には肩入れしちゃうわ…』って描いてくれて良かった。
二人がお互いを、心のなかに入れていく描写が凄く印象的でした。
お互い自分の譲れないものを語ってるんだけども、それが相手の心に届いて何かを動かす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月30日
そんな相互作用の連続として人生があり、物語がある。
作品が見据えている骨太なビジョンが、ジワリ染みる交流と決意から見えました。おもしれーなこのアニメ…。
第1エピのトリを飾る次回も、とても楽しみです。